オフィスにて・・・

作:らんおう



 「岩城さん、緒方君がその、さっきから戻ってこないんだ」
 大山課長が言い辛そうに清美に向かって口を開いた。
 「緒方先輩なら、さっきたしか」
 先輩OLの緒方和美がトイレに行ったのは20分ほど前のことだ。
 「これから会議なんだ。すまないが君、呼んできてもらえるかね」
 「わかりました」
 そう言って清美は席を立つとフロアの奥にある女子トイレに向かった。
 清美がトイレの入口を開けると、その先には鏡を見つめ立ちすくむ緒方和美の姿があった。
 和美は鏡を見ながらにやにやと笑みを浮かべていた。
 「あの、先輩」
 「あ、岩城さん。どうしよう、あたし、変なんだよ。鏡を見てて、自分の顔なのにこの女かわいいじゃん、なんて、想っちまって。ああ、こんな言葉、使っちゃうなんて、あたしもあの病気に、あ、あ、あたしは女、女なのに、女、俺、女、俺、女の身体してるんだよ。うう、うは、たまんねー女、そうだよ、俺女なんだよ」
 そう言うと清美は再び鏡に視線を戻す。
 「うーん、俺ってこうしてみるとスタイルもいいし結構いけてるぜー」
 そう言うと清美は自らの双房を両手で鷲掴みにしてもみ始めた。
 「ふへー、あ、あん、この柔らかさ、弾力たまんねーなぁ、よくぞ女に生まれけりってかぁ」
 「あの、先輩、会議があるので部長がお呼びです」
 「はぁー会議ぃ、やってられるかよ。俺はこれから病欠だ。何たってあの病気にかかっちまったんだからな。これから家に帰ってたっぷりと女の身体を堪能、いや治療だよ。治療しなくちゃなぁ。ひひひ」
 酔ったような口調で鏡に映る自分を見つめながら乳房を揉み続ける清美に背を向け、和美はトイレから出ていった。



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