兄貴と俺
作:みのむー


 俺は、固まっていた。朝起きてみたら、隣に……
(いやいや、落ち着け。これは幻覚だ。1、2、3。せーの、おやすみー)
すると、何かが、ツンツンと頬をつついてくる。
「おはよー。ゆうちゃん。って、こーら、何見えないふりしてるのよー。もー。せっかく起こしにきたのに」
「何してやがりますか…… うっとおしいから、や め ろ!この、バカ兄貴がー。離れろ、気色悪い」
「あん、そんなこといっちゃやだ。今はお姉ちゃんでしょ。それより、朝の挨拶は? 言うまで離れないからねー」
「はいはい、分かったよ。おはよう。あき姉」
「ん、良く出来ましたー。はぁーと」
と、言いながら、ようやく俺から離れてくれた。
「ああっ、くそ。バカ兄貴、毎朝、毎朝。何考えてるんだか」
タンクトップとホットパンツだけと言うナイスバディが際立つ姿で、毎朝布団に入って、起こしに来るんだから、思春期真っ最中の俺をからかうにも程がある。
(兄貴が変わってから、四日目かー。)
っと、俺の名前は優貴。いま、家がややこしい事になっている。
 事の発端は、失恋して、一週間程の旅に出ていた兄貴の晶が、いきなり女になって帰ってきたことからだ。
 なんでも兄貴によると、熊野三山に参った際に
「女からモテモテになりたい」
と願った所、その願いを曲解した八咫烏によって、女性にされたそうだ。
 八咫烏に元に戻すように泣き付いた所、無いと言われたらしい。
 この異常事態を俺以外の皆があっさりと受け入れたが、俺だけは馴染めない。
 くそー。俺の好みの顔と体をしやがってからに。
「ふんふーん」
と、兄貴が前から、やってくるのが見えたので、おどろかしてやろうと思い、
「わっ」
とやった所、勢い余って正面衝突してしまった。
「あいたたた」
「あれ? 大変ー。ゆうちゃん、あれ見て」
と、指差すので、そこにあったガラス戸を見ると、俺の姿が女になっていた。
「なんじゃ、こりゃー」
「あはは、ぶつかったら、これも、うつるみたいだね。まいったねー」
「まいったじゃねー。何とかしやがれ」
「うーん。とりあえずレズる?」
「うわー。ばかー。やめっ……」

おしまい。



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