トッカえもん 作:ガオガイガー |
オレの名前は、金剛・旭(こんごう・あきら)。 プリン好きの一般ピーポーだ。 冷蔵庫には、いつも数種類のプリンがストックしてあるし、休日は手作りプリンに挑戦するプリン好きだ。 とある休日の午後、オレの人生が変わるイベントが起こった。 この日のオレは少し上機嫌だった。 田舎から母が上質の砂糖を送ってくれたので、オレは趣味のプリン作りにそれを使った。 型に入れ、後は固まるのを待つばかり。 TVを見ながらゴロゴロして過ごす。 あと1分足らずで出来上がるだろう瞬間、オレの人生を変えようとする阿呆が襲来した。 ドガンッ!! ガラガラガッシャーンッ!! 台所から物凄い音がしたので、俺は慌ててそこへ向かった。 「な、なんだ?」 「アイタタタ・・・頭打ったよぉ」 そこには、プリン塗れのド○えもんがいた。 「ノオオオオォッ!」 オレは思わずムンクの叫びのような表情になっていただろう。 冷蔵庫のドアが開き、中の引き出し部分が全開になり、冷蔵棚は滅茶苦茶に床にぶち撒かれていたのだ。 当然、手作りプリンとストックのプリンもパーだ。 「な、なんだお前は?」 「こんにちは、ボク、トッカえもんです」 プリン塗れのド○えもんモドキは、オレの存在に気が付くと、つとめて何もなかったかのように立ち上がって、オレに挨拶してくれやがりました。 しかも、声まで大山○ぶ代似である。 「あのぉ、あなたはコンゴウアキラさんのパパさんですか?」 「は?」 質問まで訳解らん。 思わず、小一時間問いつめたくなくなるヤツであった。 「って、待てや。お前、どっからウチに揚がり込んだんだよ?」 「引き出しからに決まってるじゃないですかぁ。ヤダなぁ、未来からタイムマシンから過去に移動すると、出口が引き出しになるんですよ。常識ですよ」 「・・・・・どこの常識だよ、それ? じゃ、ないっ! つか、オレのプリン弁償しろっ!」 「美味しかったです、ご馳走様」 「うがああっ、話通じてねぇっ!」 オレは頭を抱えた。 ド○えもんモドキは・・・いあ、トッカえもんは淡々と話を進めようとする。 コイツ、外見はまんまド○えもんなんだけど、ター○ネーターみたいに無表情なんだよ。 ちょっと怖いよっ! 「あなたはコンゴウアキラさんのパパさんですか?」 「ちがうっ!」 「じゃあ、お兄さん?」 「オレは一人っ子。独身、25歳、彼女いない暦25年だ。結婚なんか、もっと先だ。ついでにオレの名前は金剛旭だ」 「アレ?」 オレの言葉に、トッカえもんは首を傾げた。 そして、いきなり目から赤い光線を放ち、オレの全身を照らし出した。 「うわっ! なにすんだ、いきなり!?」 「サーチ完了。イレギュラーを確認」 うわ、もう何がなんだか・・・。 「頭痛くなってきた・・・・もう、いい、帰れ!」 「ダメだよ、歴史は正さないと・・・すぐ修正します」 うわー、人の話聞いてねー。 そう言うと、トッカえもんは突然、足の裏から空気のようなものを噴射し、アパートの窓ガラスをぶち割って外へと飛び立ってしまった。 その姿は、ダルマ型ロケットみたいであった。 「・・・・・タケコプターは?」 一人台所に取り残されたオレは呆然と見送る事しかできなかった。 当然、ブツブツ文句を言いながら後始末を始めるしかできない。 「なんなんだ一体・・・」 台所を片付けて、割れた窓ガラスに応急処置でビニールを貼り終える。 「ふう、ガラスは明日に業者が来るから、今夜はこれで我慢するかぁ・・・・くそ」 悪態ついて、床に座った瞬間。 「お待たせしましたー!」 ガシャーーーンッ!! 割れてない方の窓ガラスをぶち割って、トッカえもんが帰還した。 いや、もう2度と来るなと言いたい。 しかも、自分の身体よりも大きく膨らんだ袋を持参している。 もう、どうツッコンでいいかわかりません。 「お待たせしました、コンゴウアキラさん」 「待ってねぇよ・・・」 あぁ、随分風通しがよくなったもんだ・・・。 オレは、トッカえもんの存在を警察に通報する事にした。 トッカえもんを無視して、充電器にセットしたままの携帯電話を取りに、部屋の隅にダッシュ。 携帯電話を取り出し、ボタンを・・・。 プスッ おや? 首になんか刺さったような気が。 振り向くと、オレの首にゴツイ注射器の影が・・・。 うっ、力が抜ける。 ドサッ 「すぐ終わりますからねぇ、アキラさん」 「う・・・あぁ、あが」 床に倒れこむオレ。 声はおろか、指一本、身体が動かせない。 倒れたオレを見下ろしながら、トッカえもんはお腹のポケットに両腕を突っ込み、ゴソゴソと何かを探し始める。 トッカえもんはすぐに、ポケットの中から何かを引っ張り出した。 ピコピコピコンッ ポケットからそれが取り出される瞬間、あの独特の音がなった。 それに、トッカえもんの手の周りがピカピカと光ったような気がした。 「つけかえ手ぶくろぉ〜!!」 トッカえもんの手には、【つけかえ手ぶくろ】が装備されていた。 ん? すると、あの大きい袋は付属の人造部品でも入ってるのか? いや、待て・・・今のオレ、ピンチなのでは? んぎゃあああああああああああっ!! 【つけかえ手ぶくろ】に見えたそれは、五指の先端が幾重にも枝分かれしだす。 しかも、その先端には針やら小型のメスが見える。 どう見ても、マッドな医療器具にしか見えませんっ! トッカえもんの持ち込んできた袋から、よく見ると血塗れの手足がはみ出しています。 ひいいいいっ!! ウイイイイイン・・・・・ 「それでは始めますねぇ」 針やらメスやらドリルがオレに近づいてくる・・・。 だっ、誰かタスケテ〜〜〜〜〜っ!! キュイイイイインッ! スパッ ブシュッ! ガリガリガリッ・・・・・・ ゴリッ・・・ ギャギャギャッ 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い〜〜〜〜〜〜っ!!!!!! 死んじゃうよおおおおおっ!!! あまりもの痛さに、オレは気絶した。 あ、死んだかも? ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「う、うう・・・むむ」 混濁する意識の中で、オレは目覚めようと必死だった。 真っ暗闇に放り出されたみたいな感覚だ。 意識が起きているのに、身体が眠っているみたいな感覚だろうか? どれくらいその暗闇にいたのかわからない。 突然目の前が真っ白になり、その眩さに目を瞑ってしばらくしてそっと目を開けると、白いカーテンの下がったカーテンレールが目に入った。 カーテンの向こうからざわめきが聞こえてきた。 『心マッサージをしろ!』とか、『点滴を持ってこい!』などと叫んでいることから、ここは病院らしいことがわかった。 そういえばなにやら薬品というか消毒液らしき独特な匂いを感じる。 「目が覚めたかね?」 白衣を着た若い男、恐らくドクターだと思われる男がオレに近寄ってきて、上眼瞼をギュッとあげてオレの瞳を覗き込んだ。 「あ・・・あうう・・・オレ・・私は、なぜここに・・」 ハスキーというのは程遠い、ひしゃがれた酷い声だった。 年老いた老婆のような声だ。 喋ろうとすると、紙やすりで喉の奥を擦られるような痛みが走る。 「喉が渇いただろう。ほら水だ。飲みなさい」 背中に当てられた手によってゆっくりと上体を起こした。 口元に急須の先端が当てられ、それを口に含んだ。 ゴクッ、ゴックン 「何があったか、思い出したかね?」 医者が質問する。 ・・・。 「あっ!」 オレは大きな声が出した。 喉を潤したせいか、先程より声が通る。 ただし今度は裏声で喋っているような気味悪い声だ。 そして、オレはようやく思い出した。 トッカえもんと名乗るクソロボットがしでかした事を、だ。 オレは医者にあの日の出来事を必死に説明した。 しかし、いくら唾を飲み込んでも、声のトーンは変わらない。 相変わらず、気色の悪い声が鼓膜を響かせる。 「そうか、君も災難だったな・・・。ところで、どこか身体で痛いところとかあるかい?」 「そ、そうなんですよ、あの訳のわからんヤツがいきなり押し掛けてきて・・・う、うんっ。特に何も・・・ただ喉の調子が悪いみたいで声が変なんです」 「・・・・鏡を見たら解るよ」 「え?」 医者が移動テーブルの下から鏡を取り出す。 「何もおかしい事はないんだ。ほら、自分の顔を見てごらん」 オレは言われたとおりに、鏡を受け取り自分の顔を映し見た。 「こ、これはオレじゃない・・・女の顔だ。どういう事ですか?」 それは若い少女の顔つきだった。 十代半ばぐらいだろうか? オレはキュートな少女になっていた。 そして、オレはトッカえもんが何をしでかしたか聞く事になった。 あのクソロボットはオレの部屋から飛び出して、何十人もの少女を切り刻み、身体の一部を盗み出したのだ。 そして、強奪した少女のパーツを大量に使って、オレを少女の姿に変えたのである。 ん? トッカえもんはどうしたかって? 警察と自衛隊の連中相手にドンパチかまして、最後は自爆したんだとさ。 怖ろしい事に、のべ300人余りの死傷者が出たとか・・・・。 青い悪魔の惨劇とニュースで報じられたそうだ。 この後のオレの人生は最悪だ。 犠牲者になった少女達の遺族からは恨まれるわ、家族から離縁されるわ、会社をクビになるわ。 最悪だ。 あのオツムのイカレタクソロボットのせいで、オレの人生は無茶苦茶になったのだ。 そして、オレは今、娼婦になっている。 多額の賠償責任を押し付けられていたのだ・・・・。 「イヤだ!」 「うるせえ、テメエのせいで俺達の家族はバラバラだ!」 「ひいっ!」 毎日、何人もの遺族の男達に犯され、町もまともに歩けない日々を送っている。 ちなみに、オレが住んでいたアパートには近藤旭と言う名の少女が住んでいるらしい。 もしかすると、トッカえもんは冷蔵庫から出た時に狂っていたのかもしれないなと、今になって思うオレであった・・・。 あとがき すまん、書いててブラックすぎましたw いきおいだけで、書くのよくないねと、ちと反省><; |