5.暴漢と、初めてのキス
その日、香山は暇だった。いや正確に言うと週末の休みはたいてい暇だった。女性になって一般社会
になじめばなじむほど暇になった。女性雑誌などもその体になれるためにも女性社員との自然な会話になれるために読みあさったが、ポイントをつかむと後は簡 単だった。週末は一人だったのだ。今日も適当なおしゃれをして外出してるのだが、親しい友人はまだいなかった。いやたとえいたとしてもそれが女性では相手
に恋人がいれば自分は後回しにされるし、男性の親しい友人となるとこの年齢ではイコール恋人になってしまう。今日は半年前から始めたジムを終え、帰宅する ところだった。
「!!」いきなり口を塞がれた。そして驚く間もなく車に連れ込まれた。
「おほー^—、いい女じゃねーか。いいのか、こんないい女」
「かまやしねーよ。おほ、シャワーの後らしいな。いいにおいだ。おい、おれが先だからな」
「な、なに、あなたたちは。」
「なーーに、すぐに終わるよ。なかよくしたいんだよ僕たち。お姉さんと、あははは」
「だれか、、、誰かーー あうっ!」みぞおちを強くなぐられ、声を失う。
(い、いや。 まさか、こんな。 これって、レイプ? いや だれか・・・・)
ジャケットをはぎとられ、後部座席で両腕を広げられ脚を押さえつけられる。ブラウスの上から無造作に豊かな胸をもみしだかれる。
「いい体だぜ。いままでで最高かもな。おい、早く脱がせよ。カメラは、カメラはどこだ?」
(こんなの、いや ああ、力が出ない。 男の人ってこんなに力が強いの? このままじゃ、わたしされるだけされて裸で外に転がされちゃうの? )そんな思いが頭を駆け巡る。気を失いそうだった。
ドンドン。車の外から乱暴にたたく音がした。
「やめろ、何をしてるんだ」
(あ、松下課長・・・・・)知っている顔を見て香山は気絶した。
ふと気がつくと、おぞましい犯人たちは車のうち外で気絶していた。そして香山は松下に抱きかかえられて松下の車に乗せられようとしていた。
「さあ、もう大丈夫だ。乗って。」
「は、はい。ありがとうございます。」
松下が車を発車させる。よく見ると犯人たちは20歳前後の若い男たちだった。
(あんな年下の男だったの?)子供のような男でも女性を思
い通りにできることを知って愕然とした。そして思い通りにされそうになった自分は女性だったからということをあらためて思い知らされたのだった。胸には暴 漢者につかまれてもまれたおぞましい感触が残っており、悔しくて悲しくて気持ちが悪かった。
「自宅まで送りましょう。ちょうど通りかかったもので、香山課長らしいと思い、車を止めたんですが、本当によかった。」
「・・・・」香山は泣いていた。お礼を言おうにも、安心したことによって声も出なかった。
・・
「あの、せっかくですので、お茶でも」
「そうですね、このまま一人にするのもなんだか。では失礼します。」
「この部屋に男性が入るのは松下課長が初めてですよ。うふふ。」
「それは光栄ですね。よかった。少し話す元気が出たみたいですね。」
さすがに松下は元女だった。こういうときに女性は一人になりたくいないと考えるのを知っていた。松下はさりげなく香山を気遣ったようだった。とりとめのない話をして、香山の気分を慰めた。
「そろそろ帰りましょう。独身の妙齢の女性の部屋に男性がいると危ないことが起きそうですから」
「そんな、、、あの、今日は本当にありがとうございました。」香山はようやく落ち着いたようだった。
「いえいえ、そんなこと。たまたまですから。会社ではあえてこの件については話さないでください。何を噂されるかわかりませんからね。」
「は、はい、わかりました。 え?」
松下の唇が迫ってきたかと思うと、香山の唇を塞ぐ。それは
あまりに唐突だった。いや、唐突に感じたのは香山だけで、松下はおそらく計画的だったのだがそんなことは香山にはわからなかった。しかし、男だったときの 香山だったら同じことをしていたはずだった。女になったがために、いや、女であればいついかなるときも隙を見せてはいけなかったのだ。
「じゃ、帰ります。見送りはいいですよ。今日はゆっくりしていた方がいい」
あまりの出来事に声も出なければ足も動かなかった。しばらくして香山はベランダに出て松下の車が見えなくなるまで見ていた。左手を唇にあて、右手はやわらかくバイバイをしながら。
車の中で松下はにやついていた。「まさかあんな場面に遭遇
するなんてな。思い切り利用させてもらおうか。あんなに無防備なのは男を知らないからさ。ふふん、仕事はやり手、美人でスタイルもよく、気が強いが、いわ ゆるウブってやつだ。実際は俺より年上だそうだが本当の女にするのが俺の役目みたいなそんな感じさえするぞ。こんなことも男ならではの楽しみだな。」運転
しながら松下の股間は大きく膨らんでいた。既に頭の中では香山を裸にしていた。そして自分は啼いて許しを願い出ている香山を見下ろして、ニヤつきながらま さに香山の処女を奪おうとしていた。