11.はじまり

 ホテルの最上階のレストラン。窓際の席だったから、素晴らしいサンセットと次には見事な夜景に心を奪われる私。

「どうした?無口だね。調子が悪いのか?」

「あ、ううん。あ、いえ、ごめんなさい。あんまり綺麗だったから。」

「佳織も綺麗だよ。ロングスカートで脚が見えないから残念だけど、ワンピースが似合うね。お嬢様って感じだよ。」

「そんな。。恥ずかしいです。」

俯く佳織。ガラスに映る自分の風情が目に入り、健司の言う通りだとナルシストに落ちる。

「行こうか。」

「はい。」

素直に従う自分が可愛い。

 

 エレベータールームでいくつかのカップルとすれ違う。男の方は必ず佳織を視姦していく。そして相手の女はあからさまに不満の表情をする。

(笑いが止まらんね、こりゃ。イイオンナを連れ歩くってこんな気分なんだな。優越感ってやつか。会社では鬼課長なんだぞこれで。れっきとした一流ホテルでこれからこの女を犯すんだ。正々堂々とな。いかんな。もう勃ってきた。」

佳織の細いウエストを抱き寄せ、エレベーターから降り、部屋に入る。

 

 部屋に入ると直ぐに歯磨き。次には健司さんも。ロマンチックなディナーに酔っていたいけど、もっとロマンチックなコトが控えていた。

「シャワー浴びてもいい?」

緊張を隠そうとして明るく尋ねる。でもにっこりされて窓際に呼び付けられた。

「綺麗だよ。」

私は窓に向かって立って夜景を見下ろす。

(そうね。ほんとうに綺麗だわ。)

健司さんが背中から両腕を回して、おへその前で両手を握る。

(健司さんって大きい。ううん、私が華奢なのかしら。男女ってこんなにも大きさが違うのね。)

「顔をあげてごらん。」

健司さんの意図がわかって恥ずかしかったけど、言われた通りにした。目を伏せて。

甘い蕩けるようなキス。

私はわたしを掴まえてる健司さんのうでにしがみつく。太く力強い腕をにあらためて男のひとの力強さを感じる。

「あ、ダメ      こんなとこじゃ」

「だめだよ佳織。そんな言葉遣いじゃ。」

「ごめんなさい。でもこんなとこじゃ外から見えちゃう。それに部屋が明るいから。」

「見えるわけないだろ、こんな高いところ。」

私は窓際に立ったままワンピースのファスナーを下ろされていた。いとも簡単に床に落ちるワンピース。シルクのキャミソールもあっという間だった。

脚が震え、心臓の鼓動がスピーカーから聞こえるように大きくなっていく。

 

 

 窓ガラスに映る自分の風情が目に入り、自己陶酔する女。一方で、逞しい男の身体が目に入る。眩しくて俯く女を抱き上げて男がベッドに運ぶ。観念した女が下着を剥ぎ取られていく。儀式はようやく始まったばかりだった。

 

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