パーツチェンジ

作・よしおか

第三幕 プリティ・う〜んマン?


 スポットライトが、舞台中央を照らす。そこには、格子柄の着物を着て、胸当てのあるフリルのついたエプロン姿の美少女が立っている。昔のカフェの女給姿。(昔の喫茶店のウェイトレスの事)


美少女  「みなさま、よくいらっしゃいました。みなさまのお越しを、一日千秋の想いでお待ちいたしておりました」

客(特に男)「ざわざわ・・・・」

美少女  「あら、みなさま。いかがなされましたの。私の顔に何かついていますでしょうか」

(男1)  「綺麗な顔」

客(特に男)「なにかっこつけてるんだよ。自分だけ売り込みやがって」

 客(男1)が坐っているらしいあたりの席で、サンドバックを殴るような音がする。

美少女  「みなさま。お止めになって。嗚呼、美しいって罪なのですね」


 その時、上手から同じ姿の美少女が野球応援用のツインメガホンを持って登場。

 着物の袖を顔に当てて、さめざめと泣く美少女の頭を力の限り殴る。


      『ぼこ〜〜〜〜〜ん』


反響音が劇場内にこだまする。


美少女  「いた〜〜〜い。なにをなさるのですか。痛いじゃありませんか」

美少女2 「それはこちらの言いたいことですわ。わたしの姿でなにをなさいますのですか」

美少女  「いや〜、退屈だったもので、ちょっと。ね」


 姿形のそっくりな美少女が、二人。舞台に立っている。客、唖然とする。


美少女2 「もう、早くもとの姿に戻ってくださいよ」

美少女  「戻りたいのはやまやまなのだが、戻れないので・・・」

美少女2 「うそをつかないでください。わたしの姿で、浴室の鏡の前でなにされているのか。知ってましてよ」

美少女  「ドキッ!」

美少女2 「早く戻ってくださいましよ」


 そのとき、上手から新たな人物が登場する。この二人のそっくりな第3の美少女である。


美少女3 「博士。助手さんも、いいかげんわたしに化けるのを止めてくださいません。この間などは、お二人ともわたくしの姿で、わたくしのうちの参られるものですから、家人が戸惑ってしまったではないですか。あとで説明するのに困りましたわ」

美少女  「え、ということはこの子ははかせ?」

美少女2 「そうなりますわね。どうかしら、本物そっくりでしたでしょう。記憶や話し方、仕草もコピーもできるように改良しましたのよ。これでしたら、どなたさまにもばれる事はありませんわ」

美少女  「博士。それ、僕にも貸して下さい」

美少女2 「よろしくてよ」

美少女3 「よくな〜い」


 美少女2が、美少女に渡そうとするブレスレットを、美少女3は取り上げようとして、落としてしまう。


美少女2 「まあ、落としてしまいましたわ。精巧な機械ですから壊れてしまったかも・・・」

美少女3 「どうしましょう」

美少女  「博士。ぼくはどうなるのです。このままの姿で暮らすのですか」

美少女2 「そうなりますわね。わたくしたちは、この姿のままですわ」


 二人の美少女が顔を見合せて、絶句する。


美少女2 「なんてね。わたくしのブレスレットはこちらですもの」


 美少女2、ブレスレットに付いているちいさなケースのふたを開けて、なにやら操作する。

 舞台突然暗くなり、フラッシュが舞台を照らす。美少女2、奈落へ降りる。入替りに長身の男。奈落よりせり上が

ってくる。長身の男が、美少女の立ち居地に付くと、舞台の明かりがつく。


長身の男「どうだ。このコピーミラージュの威力は」

美少女  「あの、どなたでしょう」

長身の男「何、わしがわからんのか。わしは、博士だ」

美少女  「はかせ?でも博士は・・・もっと・・こう・・・なんていうかぁ・・・」

長身の男「小柄で、年寄りってか」

美少女  「は、はい」

長身の男「この姿はな。町をうろついていたら近寄ってきた男がいたから、姿を取り替えてやるといったらのって来たのだ」

美少女3 「で、そのかたは?」

長身の男「そいつは、いまは、三毛猫のオスになっておる。変えてやると言ったのを、入れ替ると勘違いしたらしいのだ。この五分刈りの頭もなれるといいものだぞ」

美少女  「鬼畜だね」

美少女3 「本当ね」

長身の男「なにかいったか?」

美少女2人「いいえ、なにも」

長身の男「そうか。おい、ラボセキュリティ。ふたりの会話を再生しろ」

女の声  「はい。わかりました。『鬼畜よねえ。私達どうなるかわかったものじゃないわ』

      『本当ね。その前に、博士を・・・・』

      『そうね。うふふふふ』」

美少女  「私達そんなこと言っていません」

美少女3 「いったいなんなのですか改ざんもはなはだしいですわ」

長身の男「こいつは心の声も拾うように改造してあるのだ」

 美少女  「博士。どうして男に戻られたのです」

(長身の男をこれから博士と呼ぶ。美少女は助手少女)


 博   士「それはな。男じゃないとTSが楽しめないだろう。男から女になるから楽しいのであって、女から女になってもつまらん。せっかく、コピーミラージュが完成したのだから、変身を楽しまんとな」

 助手少女 「博士。それよりも、ボクを元に戻してくださいよ」

 博士    「この間の説明を忘れたのか。お前は元には戻れん」

 助手少女 「でも、このマシーンを使えば、完全な男には・・・」

 博   士 「なれん。これは女性変身専用だ。誰がむさい男になりたいものか。わしが、男になったのは、リセット機能にこの姿をダウンロードしとるからだ。だから、お前は、男には戻れん」

 助手少女 「そんな。それでは、ぼくはこのまま。また股間に激痛が走るのですか」


テーブルよりシープホーン型のヘッドフォンを一つ手に取るとふたりに近寄った。

 

博  士 「そのためにこいつを作ったのだ。さあ、こいつを付けるのだ。さあ、助手よ、つけたまえ。」

 

博士、助手少女に差し出した。

 

助手少女「博士。これはなんですか?」

 博  士 「そんな事知る必要は無い。さっさとつけるのだ」

助手少女「は、はい。よいしょっと。これでいいですか」

 博  士 「よしよし。それでは行くぞ」

 

博士。テーブルの上に置いてあった先端に丸い突起のついた二本のバーと正面に3個のダイアルが横並びにつ

いたテッシュボックス2個の大きさで扇型の金属製の箱を手に取ると、左手で取っ手を、右手で、バーの右の方を

握って、前後に動かした。


博  士 「ガッツポ−ズだ。助手」

助手少女「マッハ」


助手少女。両手左右に広げ、運動系のオッスのポーズをとる。


博  士「それは、ジャイアント・ロボだろう。もう一度やり直し。ガッツポーズだ。助手」

助手少女「ガオ〜〜〜〜っ」


助手少女は、両手を上に上げ、ガッツポーズをとる。


美少女3「なんて恥ずかしい格好をするの」

助手少女「だって、体が勝手に動くのよ」

美少女3「そんなばかな」

博  士「本当だよ。ヘッドホーンに耳を当ててみなさい」


美少女3。助手少女のシープホーンに耳を当てる。


女の声 「ね〜むれ、ね〜むれ。わたしのむうね〜に。きゃはははは」


 その歌が繰り返し流れている。


美少女3「この歌は?」

博  士「この歌か。歌には力は無いが、この声は『キャンディボイス』といって、頭の中をとろかせ、人の言いなりにさせる作用があるのだ」 

美少女3「言いなりに、でも、このヘッドホーンを外せば・・・」

博  士「お前は直接聞いていないから、まだその魔力に魅入られていないが、直接聞いたらその魔力から逃れられなくなるのだ」

 美少女3「お、おそろしい。あら、だったら、その操縦器らしきものはなんですの」

 博士  「おお、これか。良くぞ聞いてくれた。これはな、マイクと送信機だ」

 美少女3「はあ?」

 博  士「左のバーの先端部分にマイクがあり、3っつのダイアルは、高音、低音、ボリュームの調整ダイアルだ。」

 美少女3「じゃあ、右のバーはなんですの?」

 博  士「これは、発電機じゃ。だからいつでも何処でもつかえるというわけだ」

 美少女3「ハァ〜〜〜、ダサ〜〜」

 博  士 「何か言ったか」

 美少女3「あ、ラビセキュリティが・・・。いえなにも・・・いえ、ゴメンナサイ。博士の天才性はわたしのような凡人には理解できなくて、つい」

 博士  「ふん。そうだろう。おっと、ラボセキュリティのスイッチを入れるのをわすれておったわ。スイッチオン・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10と」

 美少女3「ハラホレヒレハレ」

 博  士「さて、本格的に始めるか」

 美少女3「なにをはじめるのですか」

 博  士「助手の女性化レッスンじゃよ。男の気持ちをもっとる間は、奴は股間に悩まされる事になるからな」

 美少女3「でも、博士。あの機械で完璧な女性にして差し上げれば問題ないのでしょう」

 博  士「それではつまらんだろう。実験は、楽しまないとな。ぐふふふ・・・・」

 美少女3「ワルねえ」



 第二場 研究室のバスルーム

 美少女3が、湯船につかっている。


美少女3「洗脳による女性教育か。さすが、今世紀最大のマッドサイエンティストだぜ。でも、どうやって、あのマシーンたちをいただくかだな。あの先生、記憶力もマッドだから、設計図なんて物は書かないからな」


美少女3。湯船の中に沈んでいく。


美少女3「(こもった声)いかに天才産業スパイのブルー・コートさまでもあの機械丸ごとは盗めないし。こまったなあ。それに、この変身もあと少しで切れるしな。何とかしなくては・・・」


美少女3。湯船に沈んだまま姿を見せない。湯船からはシャボンが。ぷかぷかと浮かんでくる。


美少女3「う〜〜ん。そうだ。こうしよう」

 

美少女3が湯船より立ち上がる?はずだが、そこに立ち上がったのは、ジャニーズ系の美少年だった。


(男1)「なんで男が出てくるのだ。美少女チャンはどうした」

客(男2)「男の裸なんて見たくねえぞ。美少女3ちゃんをだせ」

客(男3)「ひっこめ〜」

客(女1)「なんですって、わたしのブルー・コートさまになんてことを言うの」

客(女全員)「わたしの〜〜」

客(女1)「わたしたちの、ね」

客(男2)「黙れブ○ども」

客(女2)「なんですって。この○○○。×××野郎。さっさと死ね」

客(男2)「う、う、うわ〜〜〜〜ん」


客(男2)。泣きながら席を立つと、走って劇場を出て行った。


客(男3)「かわいそうに」

客(男全員)「うん」


ドアを叩く音。


助手少女「美少女3さん。お背中流しますわよ。ここを開けてください」

ブルー・コート「助手少女さん?やべ〜、くすりくすり」


ブルー・コート。口の中から何かとりだしそれを噛む。そして、また湯船に沈む。

ふたたび美少女3が浮かび上がる。


美少女3 「は〜い。カギは開いています。でも、助手さん。わたしはここのお手伝いさんですよ。そのわたしの背中を流すなんていいのですか」


助手少女。手に布をもって下手より登場。それを湯船につかっている美少女3の顔に当てる。美少女3。もがくがす

ぐに大人しくなる。


助手少女「ハイ、博士。ご命令どおりにしました」


助手少女。両手を上げてガッツポーズ。

舞台暗転



第三場 マッドな実験室

博士が、なにやら懸命に作業している。その隣には、助手少女が空ろな目をして立っている。


博   士「どうもいかんな。リモコンタイプは操作しないと動かないから面倒だ」


そこへ、上手より美少女3が登場。彼女の頭にはウサギの耳の髪飾りが立っている。


美少女3「ハカセ。オヒルゴハンガデキマシタ。ドウゾイラシテクダサイ」

博  士「うむ〜っ。コンピューターコントロールタイプは、有能だが感情がないな。もっと研究の余地があるな。でも、ふたりの美人助手と言うのもわるくはないか。ぐふふふ・・・・」



―幕―

―第四幕に続く―






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