ShortShort...
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つるりんどう短編集
作:つるりんどう

雪菜と利雄の一年後−a

「うえ〜、痒いよ〜」

 11月上旬のちょっとほんわり暖かな日曜日、カーテンの締め切られた女の子の部屋で、一人の少女が体を掻き毟っていた。
そんな彼女の動作を、人の少年が慌てて止めに入る。

「こらこらッ、そんなことしたら傷が残っちゃうじゃない!」

「だってぇ〜」

少年の力強い腕によって、手の動きを封じられた少女は辛そうに顔を上げた。
ちょっと幼さを残しながらも……でも確実に大人の女性へと変わりつつある思春期の女の子の顔だ。
長髪の髪を後ろに流し、カチューシャで留めているところが、なんともかわいらしい。
優しげな瞳に、丁度よいバランスの取れた鼻が顔の構成を見事整えている。

それに対して、少年の方は、逞しい体つきをしていて、当に健康男児そのものである。
少女のちょっとガラスのような繊細なイメージと対照的ともいえる。
何か運動をやっているのだろうか……腕も体格の割に結構太く、胸板も発達しているという感じだ。

と、そんな二人を見ている間に、少女は体を震わせ始めた。

「え?どうしたの?……」

「か、痒くてもう我慢できん〜」

少女はしかめっ面をして、かわいらしい顔が台無しである。
少女の雰囲気は、どちらかといえば、もう片方の少年に似つかわしいように思えるのだが……

「むー、しょうがないでしょ。
 あたしの体はアトピーなんだから……」

今度は少年が溜め息をつくように、女の子言葉で喋り出した。
どうやら、この二人にはとんでもない秘密が隠されているようだ。

「はぁ、もう入れ替わって、1年かぁ〜。
 また辛い季節の到来だなぁ〜」

少女は体をヒクヒクさせながら、遠い目をして呟いた。
そう……
彼女=菊川 雪菜と彼=和田 利雄は1年前に体と心が入れ替わっていたりするのだった。




「う〜……う〜……」

 雪菜は利雄に消毒とクリームを塗ってもらいながら、痒さに耐えていた。
1年前、入れ替わったときもそうだった。
健康そのもので、アレルギーなんかとは全く無縁な人生を送ってきた元利雄は、いきなりちょっと体が弱くてアトピー持ちな雪菜の体に閉じ込められてしまったのだ。
雪菜も1年中アトピーが出ているといえば、そうではなく、お肌が乾燥してしまう冬が主に発症期間だったりするのだが、丁度アトピーが出てくる頃の11月に入れ替わってしまった元利雄にとっては悪夢だった。

「なんで、こんなに痒いんだよ〜」

「ごめんね、利雄君。
 あたしの体のせいで、辛い目に遭わせちゃって……」

「な……い、いや‥それはいいんだけどさ、なんとかならないもんかな〜」

申し訳なさそうにする元雪菜にちょっと自分の無神経な発言に対する罪悪感を感じ、雪菜は焦り気味に取り繕った。

「でも、これからが大変だよね。
 去年のことで分かってるとは思うけど、冬場はちょっと汗かいただけでカユカユになっちゃうから……」

「……う〜ん、そうだよなぁ。やっぱり他人になるのって簡単じゃないよなぁ〜」

「え……」

雪菜は苦笑いしながら、上半身ブラジャーだけの自分の体を見下ろしながらいった。

「あのさ……
 俺……最初は、雪菜さんみたいにかわいい女の子になれてラッキーだって思ってたけど、かわいいってだけで喜んでられないだもんな。
 1年間、雪菜さんとしていたけど、他人になるってことは、その人の大変さや苦労も全部引き受けなくちゃならないってことだろ?
 ホント、身にしみて感じたよ。見た目で羨ましく思ったりしても、その人として生きるのが、どんなに大変かってこと……」

「……かわいいって?……」

利雄は姿に似合わずもじもじしながら、雪菜に尋ねた。

「え……あ!別にイヤらしい意味なんてないさ。
 えっと、その……雪菜さんって、俺の好みのタイプだったからさ。入れ替わった後、ちょっとドキドキしたりしてたってこと……」

雪菜は顔をポッと赤らめると、左手を後頭部に当てたまま、視線を泳がせた。

「ふぅ〜ん、利雄君って、あたしみたいのがタイプだったんだ……」

利雄は雪菜の言葉を吟味するようにいった。

「いやー、でもさ……まさか、自分がタイプに女の子になっちゃうなんて……
 幸いというか、災難というか……」

「ごめんね……」

「あ、いや……また余計なこといっちゃったかな……俺。
 別に雪菜さんが謝るような事じゃないよ」

「違うの!」

「え?」

利雄のどこか真剣な声音に、雪菜は目を見開いていた。
利雄は息を吐き出すように、自分を落ち着かせるとそっと口を開いた。

「あのね……利雄君はどう思っているのかよく分かんないけど……
 あたしって、やっぱり利雄君に迷惑掛けてるよね。
 あたしは、利雄君になって、アトピーの痒さからも解放されたし、生理もないの……
 元気な利雄君の体になって悠々と遊んでるだけ。
 それなのに、利雄君は初めて体験するアトピーにも生理にも女の子としての生活にも耐えてるんだもん。
 だから、あたし、利雄君に申し訳なくて……その……」

利雄は声音は次第に沈んでいった。
その直後、困惑した表情を浮かべていた雪菜は突然両手をパンッと合わせた。

「ごめんッ!」

「……な!?」

そんな雪菜に、利雄はただビクッと驚いていた。

「……なんで」

「違うんだ……
 俺は雪菜さんになったこと自体を嫌がったり苛立ったりしてるわけなんかじゃないんだ。
 ホント、ごめん。
 いつも雪菜さん心配ばっかりかけて……
 俺が言いたかったのは、いかに自分が無神経だったかということなんだ。
 だって、最初は俺、正直言って雪菜さんになったことに喜んでたんだぜ。
 わー、これが雪菜さんの体なんだ!って。
 胸がこんなにある……女の子のココってこうなってるんだって!」

「……え、え(赤面)」

「な?最低だろ?
 雪菜さんが雪菜さんとして経験してきた辛さなんか知らずに、あーんなことやこーんなことしてたんだぜ。
 もう幻滅だよ。
 今の俺でもそう思う。
 これも1年間、雪菜さんでいたせいかもしれないけど、上っ面だけでその中身を見ようとはしなかったんだな、俺は……
 だから、こんなかわいい女の子が自分のものになったって勝手に喜んでたんだ。
 雪菜さんの前じゃ、早くもとに戻らなきゃ!このままじゃ大変だって振りしてたけど、最初の頃は内心そんなこと考えてたんだぜ」

「……そう、なんだ」

利雄は恥ずかしそうに上目遣いに雪菜を眺める。

「ほら?
 謝った事後悔してきただろ?
 俺って所詮はそんな奴なんだよ……」

「利雄君の……エッチ……」

利雄は静かにそう呟いた。

「ははは……
 エッチでごめん」

雪菜は乾いた笑いを飛ばしながら、照れていた。
というか、余計なことを喋りすぎたと今更ながら後悔しているのかもしれない。

「そ‥それよりさ、早くやってくれないかな?
 さすがにこのカッコは寒いんだよ」

雪菜はそういうと、身震いして見せた。
確かに11月に上半身ブラ1枚というカッコは寒いのだろう。
まだ消毒の途中だった。

「あ……ごめんなさい」

利雄はようやく我に返ったように、手にしていた消毒の瓶に気がつく。
慌てて強酸性水を手にすると、ずっと握り締めていたせいか、中身まで温まっていたようだった。

「じゃ、するよ」

「うん……」

ペチャペチャ

利雄は少し心が軽くなったような気分を感じながら、1年前までの……かつての自分に触っていた。
顔の方はまだ目立たないけれど、体には、ところどころ赤い発疹が出来ている。
よく見ると、利雄が来る前に掻いたのであろう爪の跡も残っていた。

「駄目じゃない……掻いちゃ」

「ごめん。
 そうはいっても、時たま我慢できなくなるんだ」

「んもう……
 でも大切にしてよね、一応あなたの体なんだから」

「うん、分かってる。
 雪菜さんの体を傷だらけにするわけにはいかないもんね」

雪菜はおどけてそういった。
でも、そういう雪菜を見ていると、利雄はなぜか愛しく思える気がした。
確かにこれはかつての自分の体だ。
そして、できることなら早くこの……本来の自分の体に戻りたいと思っていた。
しかし、今こうして感じている気持ちは、自分が利雄として生きているからこそ感じているものなのかもしれない……
利雄はそう思った。

「あれ……どうしたの?
 雪菜さん、顔赤いよ?」

ふと気付くと、雪菜は心配そうに利雄を見つめている。
そうして上半身を肌蹴ている雪菜を見ていると、利雄は体の奥が熱くなるのに気付いた。

「な……なんでもない……」

慌てて否定するが、なぜか始まってしまった興奮は押さえられず、元雪菜は初めて体験する謎の衝動に困惑していた。
確かに、元雪菜とて、利雄になってから男の子の体験を全くしていないわけではない。
だってもう高校1年生の男の子なのだから、男の子がどんなことをやっているかぐらいは当然分かっている。友達からその手の本を貸してもらったこともあるし、男の子が女の子に対して抱いている気持ちも分かれるようになっていた。
しかし、元の自分に対してそんな感情を自分が抱いてしまうとは……想像できようか?

(あ……あたし、何バカなこと考えてるんだろ……)

元雪菜は必死にその思いを振り払おうとしたが、返って自分の性の特徴たる部分は興奮していっているようだった。

「雪菜さん、もしかして自分の体に欲情しちゃってたりする?」

元雪菜のそんな思いを知ってか知らずか、雪菜はいたずらな表情を浮かべてそう尋ねた。

「な、何いってるのよッ!?」

「……えッ?」

元雪菜は自分でも驚いてしまうほどの大声を張り上げてしまい、驚いた。
どうしてこんなに自分は向きになっているのだろうか?
分かっているはずなのに、それをそんなにも否定したいのだろうか?
元雪菜は自問せざるを得なかった。

1年前なら、こんなこと思いもしなかったろう。
でも、男の子として生活している間に、女の子の裸は返って見慣れないものになっていた。
見たいものになっていた。
だから、多分、こうして第二次成長を迎え、女らしさを誇示し始めた雪菜に興奮している。
当たり前のはずだった胸に……。
当たり前のはずだったアソコに……。

「……雪菜さん?」

息も荒々しくなってきてしまった利雄に、雪菜の不安げな顔が迫っていた。

「わッ!?」

心がここから飛んでしまっていた利雄はただ驚いて雪菜を突き飛ばしてしまう。

「キャッ!」

ドンッ

雪菜はまるで女の子のように弱々しく転倒した。
もちろん、雪菜の体は女の子なのだが、元利雄が入っている雪菜がこんなに軟弱に見えたのは初めてだった。

「あ……」

元雪菜は今自分が何をしでかしてしまったかにようやく気が付いて、自分の両手を眺めながら呆然としていた。

「な……何するんだよ?」

雪菜は頭を摩りながら、辛そうに起き上がってくる。
このシチュエーション……
元雪菜には覚えがあった。
男の子になって初めてアレを体験してしまったときに、友達から貸してもらい見ていたあのビデオだった。

「あ、はは……えっと、その……。
 ご‥ごめん……」

それを思い出してしまったせいか、元雪菜は余計に動揺を強めてしまった。
言葉がもう普通に出てこない。
多分、何かを期待してしまいそうになる自分とこんな風になってしまったことに恐怖を感じている自分に引き裂かれてしまったためだろう。

「どうしたのさ、突然突き飛ばしたりして?」

雪菜は訝しげに尋ねてくる。
その言葉の一語一語の響きが、元雪菜がドキマギさせた。

「あの……えと……。
 ちょっ、ちょっとあたし、な、なんか変な気分になっちゃって……」

(何いってんのよ、もう!あ・た・し・はッ)

元雪菜は頭の中がぐちゃぐちゃになっていくのを感じながら、落ち着かなきゃ落ち着かなきゃとひたすら念じていた。

「ね、ねね、ねぇ……
 と・利雄君って、あ‥あたしみたいのがタイプっていったでしょ?
 そ、それって、やっぱりあたしの容姿のことだよね?」

「え……」

「だ‥だから、別にあたしの性格とか、あたし自身のことが好きだっていってるんじゃないんでしょ?」

(あーもうッ!何ボロを出してるのよ、あたし……)

元雪菜は思わず泣きそうになってきた。
冷静になりたいのだけど、体のアソコが我慢できなくて、それが余計に自分の感情に火をつけて混乱させてる。
それが元女の子である元雪菜には耐えられなかった。

「雪菜さんの性格とか……雪菜さん自身のこと……?
 あ……」

雪菜は何かに気付いてしまったのか、まるで女の子のように右手で自分の口を塞いだ。
その表情は、当に恋する乙女のものだった。

「それは……あの……好きだけど」

雪菜は頬を林檎のように紅に染めあげるとぼそぼそと呟く。
聞いて欲しいのだけど、まだちょっと聞いて欲しくない……そんな感じがした。

「な、何……いっ、今なんて?」

利雄は心臓が胸から飛び出しそうになった。
確かに今、雪菜がその唇から紡ぎ出した言葉。
それは……

「今好きっていったの? 利雄君……」

利雄はもう一度確認するように恐る恐る聞き返してみる。
すると、雪菜は恥らいながらもようやく利雄の方をちらっと見て

「……うん、別に雪菜さんの体だけじゃない……雪菜さん自身が俺は好きだよ」

と縮こまるようにしてそういった。

前々から気になっていたこと。
そして、怖くて聞けなかったこと。
拒絶されるのが……
嫌われてしまうのが……
恐ろしくて、今の今まで喉の奥に引っ込めていたこと。

それが今、雪菜に受け止めてもらえたこと。
それは、利雄……元雪菜にとって心から願っていたことだった。

「ホントなんだ……」

「ホントさ。なんで好きな女の子の前で嘘つかなきゃならないかな?」

「そっか……」

「そうだよ」

「あたし、今でも女の子かな?」

元雪菜は笑い泣きしながら、元利雄に聞いてみた。

「うん、そもそも俺らはお互い気になりあってから、入れ替わったのかもしれないじゃない?」

「そっか……」

元雪菜は久しぶりに流す涙に爽やかな気分を覚えていた。
男の子になった当初、元に戻りたいと泣いたことはあったけれど、元利雄の人となりを知るにつれて彼に迷惑は掛けまいと泣くことを長い間我慢してきたのだ。
それが今、彼に認めてもらえたことで、ようやく安心して心から気持ちのよい涙を流すことが出来たのだ。

「安心した?」

「うん……」

「元に戻れるかは分からないけど、俺らって最高なペアだと思うよ。
 だって相手の痛みを知っているからね、お互い……」

「そうだね」

「なんだか、心からホッとしちゃった……」

「そう?」

「うん!」

利雄は力強く頷いた。

「ふ〜ん、それはよかった。
 最初は、もしかして雪菜さんが男の欲望に突っ走ったのかと思ってびっくりしたよ」

「そ、そう?(ギクッ)」

雪菜の無垢な笑みに、思わず顔を引きつらせる元雪菜。

「だって、いきなり押し倒したもんね」

「いや、あれは押し倒し……(ビクビクッ)」

(やっぱり、あたし‥あれって、押し倒してたのかな?……)

元雪菜は思わずあのときの光景とあの手のとしかいえない……とあるビデオでのワンシーンを重ねてしまい、脳内圧力が最大値となる。

「ハッ(大赤面)!?」

「あれ……」

と同時に、運悪くというべきか、雪菜は利雄の……これまた、とある場所としかいえないところにまたも不思議な膨らみを見つけてしまい固まった。

「あ……」

利雄は自分の大失態に気付き、目をウルウル〜とさせて大事な場所を雪菜の視線から匿った。

シーン

そう……
これもまたなんとも描写しようがないが、気まずく重苦しいとでもいうのであろうか……
そんな空気が雪菜を部屋をどんよりと汚染していく。

(な‥なんでこんなときに限ってこうなっちゃうのよ〜(泣))

元雪菜は自分の肉体の本能を呪いながら、心の中で盛大に号泣していた。

「プッ……」

そのとき、
目の前の一角からその空気は突然破られた。
柔らかな雪菜の笑い声が、部屋に広がり、凍りかけた空気を溶かすように、暖かくしていくようだ。

「アハハハハハハ……雪菜っておかしいッ!!」

「んんん‥もう、笑い事じゃないってばぁ〜」

突発的に笑いの衝動にでもつかれたのだろうか、とうとう大声で笑い出す雪菜に利雄は顔全体を焦がしていた。

「アハ、アハハハハ……ゆ、雪菜さんでもそうなっちゃうんだね、安心したよ」

雪菜はさもおかしそうに利雄のナニを指している。

「あ〜ん、もう最悪よ。
 なんだって、あたしが……(泣)」

元雪菜は我慢ならないのか、頭を押さえて嘆いていた。

「いいんじゃないの?
 男の子なんだから、今は……」

「でも……」

雪菜はとってもたまらなさそうに腹を押さえているが、元雪菜はまだ許せないらしい。

「ま、そんなに気にしないでよ。
 雪菜さんはちょっと気にしすぎ。
 俺もソイツにはお世話になったし、まあ別にそうなったからって雪菜さんのこと嫌いになったりしないよ」

「でも、恥ずかしいよ……コレ」

元雪菜は顔を膨らませて唸った。

「うーん、そうはいっても好きな人の前でそうなっちゃうのは仕方ないよ。
 俺も入れ替わってなかったらそうなってたんだろうし……」

「そう?」

「でも、ホントすごいことだって思わない?
 他の人たちならこんな体験できないんだよ?
 好きな人になって好きな人の全てを知っちゃうって……」

「……そうかな?」

「俺さ、雪菜さんの辛さも知っちゃったけど、気持ちよさも知っちゃったからね」

「む、利雄君のスケベ」

「雪菜さんも俺の……知っちゃったんでしょ?」

「ええええええ〜ッ!???(赤面)」

元雪菜は雪菜に見透かされた気がして、全身の毛が逆立ったような気がした。

「いいじゃない、俺たちは相手の全て……うん、全てじゃないかもしれないけど、相手のいろんなところを見てきて、その上で好きになったんだから」

「……うん」

元雪菜はなぜか元の自分が妙に大人に見えた。
こんな風に自分に言い聞かせてもらう日が来るなんて思いもしなかった。
他人が入っているだけで、こんなに大人びるものなのだろうか?

「すごいね……利雄君って大人だよね」

「そう?」

「違うよ、それ……
 雪菜さんがいたから、俺がこうなったんじゃないかな」

「む……それって、あたしが頼りないせい?」

「そうじゃなくて……
 俺、雪菜さんに習って日記付けるようになってたんだ。
 悪いけど、雪菜さんの日記も見せてもらった。
 雪菜さんがどんな悩みを抱えて、どんな風な考え方をしていたのかってことも見せてもらった。
 それで、俺、一生懸命に日記書けるようにしたんだ。
 精一杯一日を生きればそれだけで書くことはいっぱいあるでしょ?
 雪菜さんが元に戻ったときのために、できるだけ何があったか伝えたかったし……
 それに俺はどんな考えをもって、今を生きているのか……
 そう……
 自分で自分を見つめたかったから、色々書いてきたんだ。
 そしたら、色んな自分が見つかった。
 今俺たちはとんでも状態にあるけど、その中で俺は、俺たちはどうしたらいいのかなってことも考えた。
 その結果が、これ……
 俺は雪菜さんのことが好きで、雪菜さんも俺のことが好きだったって結果なんじゃないかな?」

元雪菜は心が熱くなるのを感じながら、昔の自分を思い返していた。
毎日、寝る前に日記を付けていた自分、それを元利雄は続けていてくれたのだ。
新しい雪菜として。

「うれしい……」

「え?」

「そっか。利雄君もそうだったんだ。
 日記はあたしの思いをぶつける場所だったもんね。
 それで、利雄君も……」

「うん……おかげでちょっと賢くなったかな?」

「……もう」

「でも俺、変わったよな」

「そう?」

「雪菜さんのおかげでいい方向に変われたと思うんだ。
 やっぱり好きなもの同士、いいように変われたらいいよね」

そうにこやかに微笑む雪菜。
元雪菜は自分の中に溜めてきた感情が爆発しそうになった。

「あたしも変われたかな?
 あたしも利雄君のいい影響受けて変われたかな?」

「うん……雪菜さんって元気になったよね。
 とっても素敵になったと思う」

雪菜は優しくそういった。
1年間の女の子としての経験がそうさせるのか……元利雄の言動はちょっぴり女の子っぽくなった気がする。

「じゃあ、いい?」

元雪菜は我慢の限界に到達して、今にも起爆装置が入ってしまいそうな自分の心臓を押さえつつ、雪菜に近づいた。
もう体のコントロールは何かに奪われていて、自分が今それに操られているような感覚だった。

「あ……う、うん」

雪菜のほんの少しおどおどした……初々しい返事を聞きつつ、
利雄は自分の顔を雪菜の顔に近づけていった。

(あ……あたし、自分とキスするんだ……)

なぜか、今は異性となった自分とキスすることに異様な興奮を二人は覚えた。

チュッ

ほんの軽いタッチ……
そんな柔らかな……
ささやかな接触ではあったけれど……
二人にとっては最初の、初めてのキス。
ファーストキスだった。

確かに相手は以前の自分かもしれない。
でも、今の気持ちは間違いなく好きな人とキスできた充実感だった。
だって、互いに相手を元の自分の中に見つけていたから。

だから、二人はとっても幸せだった。

「「ふぁ〜」」

雪菜と利雄は永遠の口付けから覚めたように、恍惚した表情を浮かべていた。
互いに肉体的には本来の自分。
でも、なぜか相手が欲しかった。
相手を自分の手の中に入れておきたかった。

「んんん……」

利雄がギュッと抱きしめたせいだろうか、
雪菜は苦しそうで気持ちよさそうな声が漏らす。

元雪菜にとっては、甘く柔らかい女の子の体。
元利雄にとっては、逞しく力強く硬い男の子の体を
感じ取っていた。

「あ……うっ」

「どうしたの?」

「当たってる……」

「あ……ごめん」

「ううん、いいよ。後で気持ちよくしてあげるね」

「え?本気なの?」

「う〜、そんなにしておいて、どうするつもりなのさ?
 でも本番は絶対になしだからね!」

雪菜は利雄を釘付けするようにいった。

「ほ、ほほ‥本番って、そんなことするわけないでしょ?」

利雄は動揺ありありである。

「ふ〜ん、そんなこといってもどうせ家じゃしてるんでしょ?」

シュポーッ(赤面)

利雄は返事の代わりに、荒い鼻息を雪菜に返した。

「もうっ、利雄君のバカ……」

「ごめんごめん……」

「ええーい、こうなったら……」

「え!?」

利雄は思い切ったように雪菜の背に回していた手を戻すと、雪菜をそっと持ち上げベッドに横たえた。
雪菜は状況把握が出来ないまま、オロオロと利雄を眺めている。

「利雄君……」

利雄はそう呟くと、ブラを捲り上げた。
すると成長過程の小振りではあるけれど、1年前よりは僅かながら大きくなった本来の自分の胸が露になった。
ホントは雪菜を驚かせようと思っていただけだったのだが、意外にも自分がドギマギしてしまう。

「あ……え、何?」

雪菜はなぜか妙にそわそわして、利雄の様子を伺っている。

(あ、あたし、何自分に興奮してるのよ……)

そんな雪菜を見ていると、元雪菜は自分の象徴が余計にビンビンになってくるのを感じ取ってしまった。

「ごめんね……」

「え?」

唐突に謝罪する雪菜。
ふと雪菜の顔を見つめると、頬をピクピクさせながら、雪菜は視線を逸らしていた。

「どうせならツルツルなお肌の方がよかったと思うんだけど……
 こんなお肌でごめん……」

元雪菜は、元利雄の謝罪した意味に気付きハッとした。
そう……
今目の前にある雪菜の半裸体。
でも、そこには、雪菜のアトピーと闘っているお肌があった。
そのことを雪菜は謝ったのだ。

「あのさ……
 1年間、俺が痒みに負けなければ、こんな風になってなかったと思うんだけど……
 こんなにしちゃってごめん」

雪菜はピンク色に染まりつつある柔らかな皮膚の所々にある赤い斑点を気にするように体をよじっていた。

「いいよ、そんなの……
 利雄君の体かわいいよ。あたし、そんなの気にしない」

「そう?」

「うん。あたし、利雄君のこと愛しいって思ってるよ」

利雄は微妙に不慣れな手つきで胸に触った。
そうすることが、雪菜を安心させると……そう思ったから。

「ほら……」

利雄はそっと胸を優しく摩ってやった。
周りから力を入れることなく、ホントにゆっくりと……

(いきなりしたら痛いもんね……)

でも、実際は1年ぶりの胸の感触に元雪菜はかなり高揚感を覚えていた。
それは男の子としての感覚なのかもしれない。

「あ、ふ……ふぅ〜」

また元利雄の方はといえば、気持ちよさそうに元雪菜にされるがままにまかせていた。
そして心地のよい気持ちよさが体に広まり、緊張を解いていく。
思えば、雪菜になったとき、衝動に任せて胸を揉んでしまい、痛くてしょうがなかったことを密かに思い出した。
雪菜とて、元は男の子である。
女の子になったときは、雪菜の体を興味本位で調べてしまったものだ。
今となっては、バカらしい……というか、
恥ずかしい過去なのだが、女の子の体の感覚は初体験だったのだからしょうがない。
でも、普通の女の子と同じで、当たり前になってしまうば、それまでという気もする。
生まれついての女の子が、そんなことを考えないように、元利雄にとっても、慣れてしまえば、あまり自分に興奮することはなくなっていた。

「う、ふぁ〜」

とはいえ、全く興奮することがないわけでもない。
雪菜という女の子が自分の好みの容姿であったという要素も大きく、一人エッチのときはかなり盛り上がっていたりもする。
女の子の感覚は、それなりに気に入ってしまっていたが、他人に愛撫してもらうというのは今日が本当に初めてだった。
だから、いつもより興奮して感じているのかもしれない。

(こんな感じなんだ……女の子って……)

そう……
雪菜は改めて女の子の感覚というものを味わっていた。
男はどちらかというと、一極集中型である。
それに対して、女の子はク○のような男的要素はあるにせよ、体全体からほんわかと快感が広がるのだと雪菜は思った。
でも、今ここにまさか雪菜という女の子の感覚を味わっている自分がいるというのは、1年前の自分からすれば驚くべきことだったろう。

「あ、あん……」

雪菜は我慢できず、色っぽい声を上げてしまった。

(気持ちいいのかな?……)

一方で元雪菜はそんな雪菜の喘ぎ声を聞きながら、ドキドキしていた。
今目の前にある体は間違いなく1年前までの自分の体である。
だから、気持ちいいところは分かってはいるのだが、感覚的にどう気持ちよかったのかとなると今ではよく思い出せないような気もする。
なぜなら、元雪菜はこの1年の間、利雄の体でいたからだ。

男の子の体は女の子と基本的に違う。
胸はないし、アソコの造りも全然違う。
あの辛い生理だってないし、ある意味、とっても楽な1年間だったといえるのかもしれない。
でも最初は嫌だった。
特にあの大事なところが特に……

まずいうと、恥ずかしい。
そして、気持ち悪い。
その二言に尽きていた。

どうして、こんなモノが自分についているのか悩んだものだ。
でも、いざそれと毎日ご対面〜な日々を送っていると意外なそれの便利さが分かってくる。
それは立ってトイレが済ませるということ。
これはとてもすごい体験だった。普通に立っている姿勢でそのままできちゃうのだ。
あのおしっこを済ました後のブルッとくる感じは一度体験すると病み付きになりそうだった。

そして、男の子版生理?とでもいうべき、夢精?
これは夢の中でも妙な興奮を感じてはいたのだが、確かに気持ちよかったと覚えている。
とにかく、生理とは違って、こちらは気持ちいいのだから、男の子は羨ましいものだと今は思う。
でも、最初はその処理に大いに苦悩し、羞恥心との格闘する日々が続いた。

(う〜ん、それはともかく……あたし、興奮しちゃってるのかな……)

まあ今では、一人エッチぐらいの何のその……というわけではないにしても、男の子の反応には女の子な心がチクチク痛む。
元雪菜としては、男の子の気持ちよさが嫌いなわけではないが、それでも罪悪感が伴うものであるのには変わりなかった。

「あんっ!ちょっと、雪菜〜」

ふと胸を愛撫する手が力みすぎていたのに気付き、利雄は慌てて手を引っ込めた。
どうしだか、分からないけど、雪菜の胸を見ているとそれが触りたくてたまらない。
これってもしかして、男の子の感覚なんだろうか?
元雪菜は自問していた。

「ふぁ〜、うーん……やっぱり他人にしてもらうのって自分でやるのとは全然違うね」

雪菜は利雄が愛撫を止めたのを見て一息吐くとそういった。

「そう‥なの?」

「うん、俺のやり方が雪菜さんのやり方と違うのかもしれないけど、雪菜さんにやってもらうのって、くすぐったくて気持ちよかったよ」

「そっかな?」

「うん……」

「ねぇ、聞くけど……
 利雄君って、あたしの……えっと、そのアレどうだった?」

利雄は恥ずかしかったけれど、せっかくの機会だったので、素直に聞いてみることにした。

「え?ああ……うーん、そうだな。
 とっても気持ちよかったよ。女の子って、なかなか最後の感覚が男より曖昧だから、結構快感長いんだよね。
 でも、乗ってくるまで時間かかるけど……
 って、随分恥ずかしいこといってるな、俺……」

そこまでいって、雪菜は頬をカキカキした。

「ふぅ〜ん、利雄君はそう感じたんだ……」

本来なら自分にとって当たり前だったはずの感覚なのに、不思議と懐かしいような羨ましいような気がした。

「それより、雪菜さんはどうだったんだ?」

「え?」

「いや、だから本来の俺のアレだよ」

「へ‥変なこといわないでよ」

「だって、先に聞いてきたのは、雪菜さんじゃないか?」

「う……確かにそれはそうだけど」

元雪菜はちらっと自分のズボンを見下ろしてから、唇を尖らした。

「な?どうだった?」

「えーん、恥ずかしいよぉ〜」

「今更何を言うか!」

「だって、そんなのいえないよ〜」

「仕方ない。最終手段だ」

「あっ!?」

雪菜は護りのなってなかった利雄の腰に向かってに集中攻撃を開始すると、一気に絨毯の上に寝転がした。
柔らかい衝撃音と共に、利雄は頭にショックを感じる。

「うわ……すごい!こんなになってる!」

ふと目を開けると雪菜は利雄に逆に跨ると、下半身の方を観察しているようだった。

「や、やめてよっ!利雄君ッ」

思わず恥ずかしくなって声を掛けるが、時はもう既に遅く、

「あッ!?」

利雄は下半身の特に敏感な部分をジーパン越しに摩られる感覚を感じた。
分かってはいたが、そこはもうはちきれんばかりだ。

「なんだかんだいっても、雪菜さんだって、体験済みなんでしょ?」

「う〜ん、今度の利雄君はいじめっ子だ」

利雄はちょっと困惑したように、言い返した。
それにしても、自分の行動が元になっているとはいえ、すごいことにまで発展したものだ。
ホントはいつもどおりの会合で、ちょっと消毒を手伝ってもらうだけだったはずなのに……
まさか、お互いに告白して、エッチの一歩手前のところまで来てしまうなんて。
元雪菜の男の子の部分はもうかなり猛り狂ってきている。

「じゃあ、雪菜さんにも気持ちよくなってもらうね」

そういうと、雪菜は利雄のチャックを引きおろした。

「うえッ!?」

ジーッ

利雄が状況を把握するより先に、ズボンのジッパーは完全開放されてしまう。

「だ、駄目っ」

利雄は慌てて対処しようとするが、時は既に遅く、雪菜はどこか好奇心旺盛な顔つきで利雄のズボンの中に手を突っ込んだ。

「あっ、あうっ!」

直後、利雄は自分の大事なところがキュッと柔らかいもので握られる感触を感じた。
その途端、自分でしてきたときとはまた違う……鋭い気持ちよさが利雄の脳天を突付く。

「うわ〜、男のココってこんなになるもんなんだねぇ。
 1年ぶりともなると、驚きものだよぉ」

雪菜はちょっと女の子っけの混ざった声で感嘆している。

「や……駄目だよ。
 そんな、握ら‥ないで……」

利雄は今にもゾクゾクっときてしまうそうになる自分を押さえながら、うめいた。
そう……
利雄からすれば、さっきから猛り狂い今にもソノ本来の機能を果たしてしまいそうになるソレを必死に留めていたのだから。

「えっと……。
 ちょっとだけ見せてもらってもいいよね?
 元々自分のなんだし……」

しかし、雪菜はすっかり入れ込んでしまったようで、元自分の所有物見たさに夢中になっていて、利雄の声も耳に入っていない様子だ。
雪菜はそのままトランクスの穴かソレを指で挟んで引っ張り出そうとしている。

「あ、あんっ!
 で‥出ちゃうよっ。
 利雄君、待ってっ!」

利雄はその初めて他人に触られるというシチュエーションに内心興奮しながら、爆発しそうになる自分の欲望を堪えていた。
とはいえ、その光景は……
元雪菜にとって、あまりに刺激的すぎた。
今まで元に戻りたいと思っていた本来の自分が好奇の目で、自分が密かに自分を慰めるのに使っていた逸物を漁っているのだから。
そのせいで、それに対する高潮感と元女の子の罪悪感が混ざり合い、更なる倒錯的快感が高まってくる。

「あっ、出てきた……」

元利雄にしては、そんなつもりもなく……ただソレの姿形を確かめたかったのにすぎなかったのだが、その言葉は元雪菜の引き金を引いてしまうのに十分なきっかけだった。
元雪菜は、元の自分に見つめられる中、男の子としての絶頂に達しようとしていた。

「あ、ああっ!
 駄目ぇっ」

プシュ

…………

雪菜が顔をソレに近づけた瞬間、
軽い音が室内に響き、白いものが宙を舞い、放物線を描いて落ちていった。

「はぁはぁはぁ……」

雪菜は反射的に身を引いていたが、頬に一箇所白いものをつけて、呆然とした顔で利雄を眺めている。
多分、雪菜としては、そんな男の子の反応を一年ぶりに見たのだからやはりショックもあったのかもしれない。
しかし、今度は利雄が男の子余韻に浸ってしまい、すっかり目の色を変えていた。

「び、びっくりした……」

それから、暫くの間を置いて……
利雄が荒い息をついている中、
雪菜はようやく口を開いた。

「男の子って、こんなんだったんだね……」

女の子の視点から見る、男の子の生理のその荒々しさに雪菜は少し畏怖の念が篭った声でいった。

「はぁはぁはぁっ。
 だって、利雄君がそんなことするから……」

利雄も利雄で、気持ちよかったとはいえ、結果的に恥ずかしい……ホントなら見られたくないモノを見られたせいか、羞恥心に顔を赤く染めていっている。

「……あは。
 でも、雪菜さん気持ちよかったんでしょ?」

しかし、雪菜は利雄を元気付けるように……勤めて明るく振舞った。

「酷いよ、利雄君……」

「まあ、いいじゃない。
 どうせ、俺が自分の一人エッチの再現を見てたに過ぎないんだから」

「だからって……。
 今、利雄君になっているのはあたしなのよっ!」

雪菜の調子につられてか、利雄もいつもの元気を取り戻す。

「うん……
 ごめんね」

「もうっ、今度は変なことしないでよ!」

「うん……
 分かってるって。
 でも、もしこのままお互いいるんだったら、いつかは……
 そうなんだよね?」

利雄がふと気が付いたとき、雪菜は少し辛そうに一瞬見えた。

「へっ、変なこといわないでよ。
 また、たっちゃうじゃない」

「うん……
 でも、俺、怖いかもしれない……」

「え?」

やはり、雪菜はさっきから無理をしているのかもしれない……
利雄は雪菜のそんな横顔を見つめながら、今それを確信した。

「俺、雪菜さんのこと好きだし……
 一緒にいたいっとは思ってるんだけど……
 その、なんか、怖いみたいなんだ」

「な、何が?」

「雪菜さんのオチ○チン……」

さすがに今度は利雄も突っ込みを入れない。
どこか真面目な顔して、ただじっと雪菜の顔を見ている。

「……どうして?
 どうして、そんなこと」

「だって、今俺は女の子だし。
 もし、このまま俺たち一緒にいるなら……その……
 いつかはしなきゃいけなくなるかもしれないでしょ?」

「え……えっと……」

真剣に赤く染めた頬震わせながら話す雪菜に、利雄は何と言葉をかけていいか分からなかった。

「それに……
 雪菜さんだって、今は男の子だから、やっぱりいつかは……
 そのしたいって思ってるでしょ?
 あ……別に答えてもらわなくていいから……
 その、今日、今雪菜さんを見てて俺が勝手にそう思っただけ。
 ……
 えっと……やっぱり俺も男の子だったから、そういうの分かるからさ」

「利雄君……」

「だから、雪菜さんがホントしたいって思ったときに……
 俺、答えてあげられるのかな?って……
 そう思って……」

「……それで、あたしのオチ○チンが怖かったんだ……」

「…………」

「変だろ?俺……
 ホントは自分のモノだったのに、いざそれを前にしたら、こんなに怖くなるなんて……
 こんなのが自分の体に入ってくるかと思ったら、なんか急に……
 生理的に……嫌になっちゃって……
 だから、俺、雪菜さんとこのまま彼女彼氏の関係としてやっていけるのかなって……」

利雄がそういうと、雪菜は急に黙ってしまった。

「いいよ。そんなの……」

「え?」

「もう、利雄君て変なとこ気を回しすぎだよ」

正直な胸のうちを打ち明けた雪菜に、利雄はやさしい顔でそういってあげた。

「そりゃあね、あたしも今は男の子だから、そういう欲求あるかもしれない。
 でも、利雄君に無理して迫ったりなんて絶対にしないから安心して。
 だって、あたしだって気持ち的にはまだ処女の女の子なんだよ。
 そのあたしが、利雄君に無理強いなんかしたりするはずないでしょ?」

「…………」

雪菜はちょっと驚いたように、涙にぬれた瞳で利雄を見上げる。

「もう……
 利雄君って先走りすぎ!
 女の子だったら、もう少しロマンチックなこと期待して欲しいなぁ。
 エッチなんて、元女の子のあたしからしたら、二の次、三の次ってね。そんなこと、大人になってからで十分だよ」 

「ホント?」

「うん。それに万が一のことがあったって、自分で処理しちゃうから大丈夫だよ」

「……何気にすごいこといってるね、今日は……」

「あ、え?
 や、やだ……」

ようやくいつもの雪菜らしさを取り戻した雪菜に、利雄は顔を真っ赤に染め上げる。

「でも、よかった……
 雪菜さんとなら、女としてでもやっていけそうだよ」

「えっえっ!?
 じゃあ、あたしはやっぱり男役なの?」

「だって、こんなの生えてるじゃん?」

雪菜にナニをつつかれ

「あうっ!」

利雄は前に屈み込んだ。

「このっ、利雄君もおしおきっ!」

「やんっ!」

「ほらっ、やっぱり利雄君は女の子だっ!」

「でも、アタシたちってきっとうまくやれるよね?」

「うんっ、大丈夫」

「元に戻れなくても、大好きでいられるよね?」

「もちろん、オレたちって相手のこと、誰よりも分かってるんだもんね」

二人は、もう一度抱き合って互いのぬくもりを感じあった。


それでは、今回はこの辺りで……





第3回へ



<後書き>
ShortShort...シリーズ、これは『ジャージレッドの秘密基地』(ジャージレッド様管理)に投稿しているシリーズですが、今回は18禁突入?ということで、18禁パートを分離してインクエストにて公開したバージョンになります。
通常版ShortShort...シリーズはリンクから『ジャージレッドの秘密基地』へアクセスしてご覧になって下さいね!
それでは、また別のお話でお会いしましょう!




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