の・う・い・し・ょ・く
の・う・い・し・ょ・く
Oh, my!! It's me!?
作:つるりんどう

***警告***

このものがたりはおとなのひとむけにかかれています。18さいになっていないひとはここでもどってくださいね。

この小説には、できうる限り過激な描写は抑えてあるものの、18歳以上向けのコンテンツが含まれています。ですので、申し訳ありませんが、18歳未満の方はここでお戻り下さい。


 住宅街の一角に、古ぼけた洋館の邸宅がある。
もう何年も手入れがされていないのか、元は綺麗な青地だった壁も今はペンキがはがれ、色もすっかりすさんでいる。
庭もかなり荒れているているものの、その広さはこの辺では類がないくらいに広い。
それもそのはず……
その家は、なんでも代々資産家だったらしく、数年前その主人の愛妻が亡くなるまでは、とても華やかな生活を送っていたらしいのだ。

さて、この夕暮れにその邸宅の長い壁沿いを一人の少女が歩いていた。
地元の高校のブレザーとスカートを着た彼女は、二人分の重箱を両手に持ち、ブラブラと揺らしている。
一歩一歩歩むたびに揺れる、肩まで伸びた黒髪は彼女のかわいらしさを引き立てているかのようだ。
そして、その微笑を絶やさぬ顔。どこか家庭的な雰囲気も帯びたそれは、見るものに心の安らぎをも与えてくれる。

彼女は、宮下 由里。高校2年生の女の子だ。
その彼女こそが、この邸宅の持ち主の一人息子の京口 博人の幼馴染だった。
彼女の母親と、彼の母親が親友だったため、二人は赤ちゃんの頃からの付き合いで、博人の母親が亡くなってからは、彼女が夕食をたびたび届けていたりする。

「さてと、博人もう帰ってるかな?」

 彼女は京口家の玄関まで来ると、そう呟きながらつるバラに覆われたインターフォンを押す。

『はい?』

 するとインターフォンから声変わりを済ませた男の子の声。それが同じ高校2年生の京口 博人だった。

「あ、博人ぉ〜。あたし、あたし。夕飯持ってきてあげたよ〜」

『わぉいつもありがとう、由里ちゃん』

 インターフォン越しとは、なんとなくいい雰囲気の二人。
そう……
二人は何時の間にか惹かれあうようになっていたのだ。





 玄関先に夕飯を取りに行く博人とそれを渡す由里の二人をカーテン越しから怪しく見つめる一人の人影があった。

「ぐふっ、ぐふふふふふ……がぁ〜はっはっは。とうとう、長年研究してきたSBMW-脳移植法を実践するときが来たぞぉ。そう……このときをどれほど待ち遠しく思っていたことかぁッ。うぅぅぅ〜……あぁ、これでわしもわしも……」

 この涙を流しながら、訳の分からないことを呟いているのが、この館の主、京口 征四郎である。
今白衣を着ながら一人で喋り続けている彼の姿は、どう見てもマッドサイエンティストにしか見えないが、彼の愛妻 京口 里香子が亡くなるまで、ほんとにまともな医者だった。
大学病院の脳神経科で働きながらも、難病の治療法の研究を続け、前途有望な研究者として注目もされていたりもしたのだ。
だが、里香子の死後、すべてを忘れたかのように脳移植の研究に没頭し人が変わったようになってしまい、学会からも危険視され、大学病院すらクビになったのは、もう12年前のことだ。
地元でも、彼が発狂したのでは?という噂が流れたが、数年もしないうちにそれも忘れ去られ、今では彼がどこで何をしているかさえも世間では全くといってもいいほど知られていない。
なぜなら、彼はずっと屋敷に引きこもり、脳移植の研究をしていたからである。

彼は、ひとしきり叫び続けてから、ようやく落ち着くと、手製の麻酔銃を持ってその部屋を後にした。

そして、階下でお茶を誘われて入ってきた由里と博人が床に静かに倒れたのはその直後のことだった。












「うっ、うぅぅ〜ん」

 一体、どれほどの時間が過ぎたのであろうか。
博人がまどろみの中、目を覚ましたのは、窓から太陽の光が差し込む頃であった。
それにしても、体がだるい……
それだけでなく頭がズキズキするように痛む。
博人は頭を押さえながら起き上がろうとするが、思うように体が動かないことに気づく。
まるで自分の体ではないかのようだ。

「ふふふ……もう目覚めたのか、博人? だがまだ動かない方がいいぞ。まだ神経がくっついたばかりだしな」

 どこか篭ったような音であるが、博人は確かに自分の父親 征四郎の声を聞いた。
どうやら、征四郎がそばについていてくれたらしい。
博人はなんとなく安心感を覚えながら、昨日のことを思い出してみようと試みる。
そう……確か、玄関先まで由里を迎えに出てその後の記憶がない。

(そっか。その後に僕倒れたんだな。風邪でも引いてたのかな? にしても、父さんがずっと看病してくれてたなんて……)

元々素直な性格の博人はいいように解釈して、再びまどろみの中にもどっていっ……

「!? とっ、父さんッ」

「おぉぉ〜、いいなぁ、博人。こんなものが自分のモノになっちゃってぇ〜」

だが、突然博人をまどろみの中から再び引きずり出したのは、胸を這わす父親の手だった。
くすぐったさとともに、きしょく悪さとかすかな痛みが伴う。

「なっ、何すんだよッ」

思わず胸を隠す博人の腕に、柔らかな2つの膨らみがムニュとつぶれた。

「ひあぅッ!?」

チーン……

 脳が初めて受信したその感覚に、博人は一言発した後、冷や汗を流しながら……まるで溶け出す氷の像のように固まってしまった。

「ふむふむ……どうやら、うまく接合しとるな」

 それを興味深げに眺めながら、カルテに書き込む征四郎。

カキカキ……

カキカキカキ……

 征四郎がドイツ語をカルテに流れるように書き込む音だけが部屋に響く。

「はッ!!」

 女性ならではの、パニック症状を初めて体験した博人は1分後ようやく自分のしていることと自分の体に起きている変化に気がつくことが出来た。

「おっ、女〜!?」

 それが由里になって初めて博人が叫んだ声だった。





「なぁにィ〜、うるさいなぁ……」

 大声で叫んでしまった博人の側で、聞き慣れたようで聞き慣れない声がする。
ふと、博人が声のする方を見ると……
なんとそこには、博人自身が隣のベッドで横になっているではないか!

「あ!!」

「え!?」

 二人はまるで自分の偽者さん発見しちゃいましたとばかりに、互いに相手を指差して、詮索するような目つきで見詰め合う。

「誰、あんた?」

「誰って、京口 博人だけど。そっちこそ、誰なんだよ?」

「あ、あたしは、宮下 由里よ。…………ん? て、あなた、博人ですって!?」

「いィィィィ!? じゃあ、君が由里ちゃんだっていうの?」

「「まっ、まさか……」」

 ようやく自分らの身の上に起こっている事を悟り二人が同時に呟いたそのとき、

「そう、その通り。実はなんとぉッ、わしがお前たちの脳みそを入れ替えたのだッ。だぁ〜はっはっは!!」

 二人の会話を阻むように、征四郎は自らの力を誇るべく二人の間に立つ。
だが、彼を襲ったのは、尊敬の眼差しなんかではなく、侮蔑と抗議の眼差しだった。

「へぇ〜、やっぱり父さんの仕業だったんだ」

「ふ〜ん、どうせそんなことじゃないかと思ったわ。だって、おじ様、いつも『脳移植、脳移植』っていってるんだもん」

 せっかく移植が大成功したというのに、そんな反応されてしまった征四郎はおろおろするばかりだ。

「な、なんだ、せっかく手術が成功したんだぞ。うれしくないのか?」

「うれしいとか、うれしくないとかそういう問題じゃないだろッ!!由里ちゃんまで巻き込んじゃってもしものことがあったらどうするんだよ!!」

「そうよ、おじ様。で、ちゃんと元に戻してくれるんでしょうね?」

 この長年の研究成果が今やっと出たというのに、あまり冷たい二人に征四郎は『ム○クの叫び』状態だった。

「なんということだ……お前たちなら、この研究の偉大さが分かると思っておったのに……しくしく」

さびしく泣き始める中年親父に、由里になった博人は冷たい視線を投げかけながら、

「で、何がどうしたっていうんだよ、父さん?」

と仕方なく尋ねてやる。

「むふ……」

「「むふ?」」

突然背中を向けていた征四郎が肩を震わせる。
そんな征四郎に由里と博人は思わず嫌な予感がした。

「よくぞ、聞いてくれましたぁッ!!」

そんなにもうれしかったのだろうか、征四郎はあたり一面に唾を吐き散らさんばかりに喋り出す。

「「やれやれ、また始まったよ……」」

 そう……
もうこうなってしまっては誰にも征四郎を止める手立てがないのだ。
それに、実際実験台にされた身としては、自分達の身の上に起こったことを聞いておきたかったので、二人はおとなしく話を聞くことにする。

「さぁさぁ、お立会いお立会い。

 これから始まりましたるは、『SBMW-脳移植法』についての講義でございまする」

「SBMW-脳移植法?」

「むふふ……よくぞ、聞いてくれました。それこそが健全な男女間で脳移植を可能にする技術のことじゃ」

「健全な男女間で?なんで、男女間なの?」

「あ?だってもくそもあるか。男女間で脳移植したら、性的な問題があるじゃろう?」

「え……いやだから、その……よくわかんないよ、父さん」

「いや〜、だからじゃなぁ。女性は女性型の脳になるし、男性は男性型の脳になるじゃろう。だから、女性型の脳を男性に移植したり、男性の脳を女性に移植したりしたら問題がおこるのじゃ」

「「ふ〜ん……」」

「ん?お前ら全然分かっとらんじゃろう。せっかくだから詳しく説明したる。

いいか。男性型の脳になるか、女性型の脳になるかは、生まれてくる前に決まるんじゃ。つまり、母親のおなかにいるときのホルモンバランスで決まるといっていい。だからもし、おなかにいるときにホルモンのバランスが崩れたりすると、男性型の脳を持つ女の子や女性型の脳を持つ男の子が生まれたりもするじゃ。

だから、世の中には、自分の性や体に違和感を持ってしまう人もおるじゃろう。

それでじゃ、もし正常な男性の脳を女性の肉体に移植したとしてもじゃ、女性ホルモンがあるからといって、脳が女性化したりはせんのじゃ。もう生まれる前に決まってしまっておるのでな。
となると、正常な男女間で脳移植をやると、その二人は今の性を受け入れられず、生殖活動ができなくなる恐れがある」

「「生殖活動!?」」

 それを聞いた途端、なぜだか二人は顔を真っ赤にして俯いてしまうが、説明途中の征四郎はそんなこと気づいちゃいない。

「んで、わしは究極の解決策を考えついたのじゃ。要するに、脳をそのまま移植するのではなく、性的に特徴的な部分をできる限り残しながら、記憶をつかさどる部分など本人が本人たるのに必要な部分だけ交換すればいいってことにな。

うわっははは……わしって、なんと頭がよいのじゃろ」

「て、まさか。父さん、今の僕の脳みそって?」

「そうじゃ、ベースは由里君のモノを使っておる。だから安心してよいぞ。今の博人の脳は、ちゃんと女性型じゃ。まぁ、すぐには意識できんかもしれんがの」

「えぇぇぇ〜ッ!! じゃ、じゃあ、あたしの脳も……」

「そう博人のベースにしとるから、CTスキャンしても男性型の脳にしか構造的には見えんじゃろ。
ほれ、その証拠にこれを見てみい」

そういいながら、征四郎は机からおもむろにエロ本を取り出して開いてみせる。

「どうじゃ、由里君になっている博人は同性じゃからもはや何も感じないじゃろ。で、博人になっている由里君は何かくるものがあるじゃろう?」

「そ‥そんなことないわよ」

そういいつつも、顔を真っ赤にしてしまう博人になっている由里。

「ま、ということで、二人とも今の自分の性に見合った脳型になっておるということじゃ」

「「そ‥そんなぁ〜」」

 二人は真っ青な顔をして、貧血を起こしたかのようにベッドに倒れこむ。
まぁ無理もない、ちょうど思春期の男女にはあまりにも刺激が強すぎたのだろう。

「それで、ここからが肝心じゃ。まず移植する前にじゃが、免疫の問題がある。

移植してから、その脳がその体の免疫システムに攻撃されてはかなわんのでな……


色々とショッキングかつエグイ話を聞かされて、博人と由里はダウンしてしまったが、それにも気が付かず熱心に熱弁を振るう征四郎。
さぁ〜て、二人の運命はいかに?





<後書き>
こんにちは、つるりんどうです。
なんかお祭りしてるとのことなので、連休がてら書いてみました。(それにご要望も頂いていたので)
今回はかなり医学的なサイドから『脳移植』について迫っています。
え〜、女性の体に脳移植したからといって女性化したりしないの〜?と聞かれると思うので、書いておきますと医学的にはその通り、男性型の脳がわざわざその程度のことで女性化したりはしません。(あぁ、信じていた人いたら、ごめんなさい。でも、TSFの世界なら事実を無視してもいいでしようから気にしないで下さい。(^^; )
男性型の脳になるか、女性型の脳になるかは、おなかにいるときのアンドロゲン(男性ホルモン)の量で決まります。ですから、病気でアンドロゲンに似た働きをする物質が発生してしまった女の子が男性型の脳になったり、アンドロゲンが足りなかったために、女性型の脳になったりする男の子がいたりするのです。
それで、今回の移植ですが……あ、マイクが…… ピーガガガカ。キーン



「まだ、わしの話の途中じゃ。いきなり終わらすとは失礼なやっちゃな。
んで、免疫の話でじゃが……
まず遺伝子治療によって、二人の免疫システムを出来る限りにかよったものにするのじゃ。このへんは、腎臓移植のドナー選びについて考えてもらえるとよく分かる。免疫の型が合わんとたいへんなことになるからな。
ま、一応、今二人には免疫抑制剤を打ってはいるのじゃが、遺伝子治療は完了しとるから多分もう問題はないじゃろう。

そして、次に神経の問題じゃ。
こいつをうまくつながん限り、どうしようもない。
以前、海外で他人の腕の移植を行って成功した例はあるが、手のひらの感覚を感じれるようになるまでに半年以上もかかったんじゃぞ。こんな自然回復を待っとったら時間がいくらあっても足らんわい。
そこで、わしはアメリカの企業からナノマシーンの技術を入手したのじゃ。
そして、ペアにしたナノマシーンに神経の接続先を探索させ、移植後にできる限り早く、相手の体におけるそれに対応した神経と接合できる技術を確立したわけじゃ。
すごいじゃろう。

で、次は手術のときの問題じゃ。
普通に脳を開くとなると、髪の毛をそらなきゃならん。これは、できる限り早い社会復帰を考えると極めて大きな障害となる。だから、頭皮はそのままの方がいいじゃろう。
それに、脳を摘出した後の体の維持の問題も大きい。
だから、頭皮も含め、体は血液の代わりに無害な不凍液を注入し、冷凍しておく。こうしておけば、手術に時間がかかっても大丈夫じゃからな。
これは、いわゆる肉体の冷凍保存技術の応用ということじゃ。

そして、ナノマシーンによって、3次元的に解析した脳神経図から、どこからどこまで取り替えるかを……
あ、こらッ!!何をするか。まだ説明の途中じゃあ……」

ピピーッガガカ‥

つるりんどうです。このままだと話が終わらないので、マイクを強制的に奪取しました。
こんな状態で続くかどうかは分かりません。リレー小説ということで、誰か続き書いてぇ〜!!
お願いです。だから、このマイク受け取ってぇ!!
追いかけて来るんだよ、あの人がぁ(泣)


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