甘い誘惑

「あなたが欲しい」
男が女にこんなことを言われたらどぎまぎしてしまう。
まして好きな女の子に急にこんなこと言われて断る男なんて地球上に存在するはずもない。
長沢修一は小田麻里のそんな誘いにフラフラとついていった。
麻里は同級生で、修一が大好きな女の子だった。
身長は結構高く、髪が長く、顔は美人だ。
モデルをしているという噂もある。
欠点を挙げるとオカルト研究会という怪しげなクラブに参加していることくらいだ。
しかし修一にとっては、女の子はオカルトが好きだから、くらいにしか思わなかった。
修一もそれなりに女性に人気があるのだが、生来の弱気な性格が災いして未だにガールフレンドができないでいた。

予兆はあった。
クラスの複数の友人から麻里が自分のことを調べているということを聞かされていたのだ。
どこに住んでいるかとか家族構成はとかそんなことを聞かれたと。
好きな女の子のタイプとかそういうことがないのが不思議な気もしたが、とりあえず彼女が自分のことに興味を持ってくれているらしいということは感じていた。
それにしても急に「あなたが欲しい」と言われるとは思わなかった。
断れるはずがない。

修一が麻里に連れて行かれたところはオカルト研究会の部室だった。
まだ太陽が沈むまでは数時間あるはずなのに妙に暗く湿り気を帯びているような部屋だった。
床には変な幾何学模様が描かれている。
(こういうのって魔法陣とか言うんだっけ?)
修一はその模様を見てそんなことを考えていた。
麻里は修一をその幾何学模様の中心辺りに招き入れた。
「わたしはあなたが欲しい。長沢くんは?」
麻里が修一の目を見つめて言った。
「ボクも小田さんが欲しい」
修一がそう言うことがあらかじめ決められていたかのようにそう言い返した。
「じゃあ契約成立ね」
麻里が瞼を閉じてキスを求めるように修一の方に顔を向けた。
修一はやったと思いながらもドキドキするのを隠すかのように、平静を装いながら彼女の肩を抱き彼女のキスに応じた。
その瞬間二人の周りが一瞬真っ暗になった。
まるで漆黒の闇の中に迷い込んだようだった。
ヌメッとした生暖かいもので覆われたような感触が全身を包んだ。
そうまるで温めたスライムのような感じだ。
だがそれも一瞬のことだった。
すぐに元の景色に戻った。

だが、修一にとっては理解できない状況が続いていた。
キスする前は彼女の肩を抱いて彼女の方を見て少し下を眼を開けて見ていたはずだ。
今は自分が肩を抱かれ、少し上を向いている。
しかも眼は開けていたはずなのになぜか閉じている。
何となく不思議な感覚に覆われながら修一は瞼を開けた。

(!?)
目の前にあったのは見慣れた自分の顔だった。
いや、自分の見慣れた顔とは少しだけ違う。
その違和感はあったが、少なくとも麻里ではなかった。
その修一らしき男はニヤリと笑った。
「だから私はあなたが欲しいって言ったでしょ?で、長沢くんもそれに応えてくれた。だから私たちはお互いの身体を交換できたのよ」
その言葉に驚き、修一は自分の身体を確認しようとした。
そのとき、どこに隠れていたのか女の子が5、6人出てきた。
「本当に入れ替わっちゃったの?」
そう言って近寄ろうとしたとき、修一の姿をした男が大声を出して制した。
「魔法陣には入らないで。まだ不安定な状態だから」
異様な緊張感が部屋中を覆った。
誰も微動だにしなかった。
もちろん修一も動きを止めてしまった。
10秒ほど経っただろうか。
スッと床の模様が消えた。
それを合図に周りにいた女の子たちが修一らしき男を囲んだ。
「本当に麻里なの?」
「そうよ。で、そこに立っている私の姿が長沢くん。よね?」
「えっ....ああ...」
修一はようやく自分の姿を確認した。
白いブラウスに紺のカーディガンを羽織っている。
下半身は紺地に赤のストライプの入ったスカート、つまり女子の制服だ。
「何がどうなったんだ?」
「ふふふ、理解できないでいるようね。そりゃそうよね、私だって急にこんなことになったら理解できるはずないもんね。ちょっとこっちに来て」
修一は修一らしき男(周りの女子は「麻里」と呼んでいるのできっと麻里なんだろうと思いつつも、まだ頭の中ではそれを認められないでいた)に連れられて全身の映る鏡の前に立った。
「今のあなたの姿よ」
修一は鏡に映った姿を見て驚いた。
そこに映っているのは紛れもなく小田麻里だった。
修一は手を頭に持っていき、髪の毛に触れた。
手に柔らかい髪が触れた。
鏡に映っている小田麻里も同じ動作をしている。
修一は手をマジマジ見た。
いつもの手ではない。
白くて綺麗な手だった。
修一は改めて鏡を見た。
隣に立っているのは見慣れた自分の姿だった。
そこでさっきの違和感の理由に気がついた。
いつもは自分の顔を鏡でしか見たことがない。
鏡に映った顔は当然左右が逆転している。
さっきは生まれて初めて他人の目で自分の顔を見たために感じた違和感だったのだ。
「どうして...?」
修一は何とか自分の疑問を発しようとしたが、頭がこんがらがってうまく言葉にできなかった。
しかし隣の修一の姿の男が質問の意図を汲み取って答えてくれた。
「もう分かっていると思うけど、長沢くんと私の姿を交換したの。さっきまで床に描いてあった魔法陣って交換の儀式で使うものなのよ。その魔法陣の中で私は長沢くんが欲しいって言ったら、長沢くんも私が欲しいって言ってくれたわよね?」
「そういう意味じゃない...」
修一が口を挟んだ。しかし麻里は言葉を続けた。
「とにかくお互いがお互いを欲しいって言って、キスをすると身体が入れ替わるって書いてあったの。半信半疑だったけどそれを試してみたの。そしたら今経験した通り。本当に入れ替わっちゃったってわけ」
「俺たち、ずっとこのままなのか?」
「残念ながら私ができるレベルはそんなに高度なことはできないの。だから多分24時間以内には元に戻ると思うわ。それに元に戻す方法を知らないもの。その間だけでもお互いの身体を経験するのもいいじゃない?」
「で...でも....」
「長沢くんは私の身体を好きにしていいのよ。こんなチャンスなんて滅多にあるわけじゃないから利用してもいいじゃないの?」
「本当に明日には戻るんだな?」
「多分ね。正直な話よく分からないの。あるタイミングで突然戻るんだと思うけど」
「とにかく時間が来れば戻るんならいいけど」
「ただし、肉体が精神を侵食すると元に戻らないって書いてあったから、気をつけてね」
「肉体が精神を侵食するってどういうことだ?」
「さあ?とにかく、そんなことにならなければ元に戻るはずよ」
「とにかく明日までだからな。明日は元に戻してもらうからな」
「はい、今度こそ契約成立ね」
麻里はみんなの方に向き直った。
「そしたら女の子初心者の長沢くんを家まで案内してくるから、その後会おうね。私から電話するから」
麻里は修一の手をひいて部屋を出ていった。


修一は麻里に麻里のマンションまで連れて行かれた。
両親とも働きに出ているということでマンションは修一と麻里の二人きりだった。
「今日からここがあなたの部屋よ。好きに使ってくれていいのよ」
『今日から』という表現が少し気になった修一だった。
しかし、修一にとって初めて入る女の子の部屋だったということもあり、緊張で突っ込む余裕がなかった。
整理整頓はされているものの意外とさっぱりしている。
「私の部屋に男の子を入れたことはないのよ。まさか初めての男の子が自分になるなんて夢にも思わなかったけどね」

麻里はベッドに腰掛けた。
「そんなとこに突っ立ってないで座れば?」
修一は言われるままに麻里の隣に腰掛けた。
「なあ、どうしてこんなことしたんだ?」
「元々私は自分のことがあんまり好きじゃなかったのよ。そりゃ自分でもいい女だって思わないことはないわよ。でも小田麻里なんてふざけた名前は嫌だったし、何かとうるさく言われる女性という立場も嫌だった。だから男の子になりたかったのよ、それも大好きな子に」
「小田は俺のこと、好きだったのか?」
「うん、今でも好きよ。私より背が高いし、格好良いし、優しそうだったから。長沢くんは?」
「俺も小田さんのこと、好きだけど」
修一は恥ずかしそうに言った。
「じゃ、お互い好きな人の身体になれて幸せだよね?」
「それとこれとは話が違う」
「そう?私は長沢くんになれて嬉しいけどな」
「.....」
一瞬沈黙が流れた。
「服、脱げる?」
唐突に麻里が言い出した。
「だ....大丈夫だよ、多分」
修一は焦った。
「多分ってことは大丈夫じゃないかもしれないのね。じゃあ、私が教えてあげる」
麻里は修一の言葉を無視して修一の着ているカーディガンのボタンを外した。
「カーディガンのボタンはいいんだけど、ブラウスのボタンが逆なの。どうしてこんな面倒なことになってるのかしらね。慣れないと外しづらいから私が外してあげるね」
「そんなことしてくれなくていいよ」
「遠慮しなくていいのよ」
麻里は半ば強引にブラウスのボタンを外して、ブラウスを取った。
「ブラジャーは後ろに手を回してフォックを外してもいいけど、肩のストラップを外してカップを取ってクルッと半周させればフォックが前に来て取りやすくなるわよ。やってみる?」
そう言うと、肩のストラップを外した。修一の乳房が麻里の前にあらわになった。
「やめろよ」
修一は身をよじって胸を隠した。
「いいじゃない、そもそも私の身体なんだから」
麻里は強引に修一を正面に向けた。
「でこうやって回すと....ねっ、フォックが前に来るでしょ?つけるときは逆にやればいいの、やってみて」
修一は言われた通り、ブラジャーを半周させてカップを乳房にあてストラップをつけた。
「こんなふうにしてつけるんだ」
「ねっ、面白いでしょ?女の子にならないとこんな経験ってできないわよ」
「そうだな。そういう考え方もあり、かもな」
「でしょ、でしょ。だからこういうこともあり、よね?」
麻里は修一のブラジャーの上から乳房を揉んできた。
「やめろよっ」
「いいじゃない、減るもんじゃないんだから。長沢くんも女の子の身体に興味があるでしょ?」
「そっ、そりゃそうだけど」
「自分で経験しておくと、元に戻ってから役に立つんじゃない?」
麻里はブラジャーの中に手を滑り込ませてきた。
「あれっ、もう感じてるんじゃない。乳首が硬くなってるわよ」
麻里の指が修一の乳首を軽く摘むように刺激を与えた。
「...ん.....」
「どう?いい感じでしょ?」
「...やめろって...」
「どうして?すっごく感じてるんでしょ?座ってるのがつらかったら横になってもいいわよ」
「...そんなこと.....」
麻里は修一の背中に手を回し、ブラジャーのフォックを外した。
そして手のひら全体で乳房を揉むように愛撫した。
修一は目をつぶって耐えていた。
横になるのを意地でも拒否しているかのようだった。
それでも麻里から逃げずに揉まれるのに身を任せていた。
「そんなに頑張らないでもっと楽にしたら?」
麻里はそう言いながら修一の胸に顔を近づけてきた。
目をつぶっていた修一はその動きに気がつかなかった。
「...ん....」
胸の先から全身に快感が広がり、修一は思わず艶っぽい声を出してしまった。
麻里が修一の乳首に舌を這わせたのだ。
「ふふふ、気持ちいいでしょう?」
麻里は片方の乳房を揉みながら、もう片方の乳房に舌を這わせていた。
修一は目をつぶって必死に耐えた。
快感に飲み込まれて自分の意識がどこかに行ってしまうのを防ぐかのよう必死にシーツを握り締めていた。
麻里は修一の身体中を愛撫した。
いつの間にか修一はショーツ一枚にされてしまっていた。
ショーツの股間にはクッキリとシミができていた。

麻里は修一の両脚を肩でかつぐようにして、ペニスを修一の股間に当てた。
「もうやめよっ、なっ」
「何言ってるの?ここまで来て。男でしょ、覚悟を決めなさい」
麻里が腰に力を入れて、グイッと腰を突き出した。
修一は股間に強い違和感を感じた。
「痛い!」
修一は自分の身体に入ってくる物体を感じていた。
何となく気持ちが悪く鈍い痛みがあった。
「もっと身体の力を抜いて。そうしないと痛いだけよ」
修一は身体の力を抜くように意識した。
それでも自分の身体の中に入っている異物を感じ、どうしても意識がそちらに行き、少しの緊張感が残った。
「長沢くんが私のものをキュッキュッて締めつけてくるわよ。そんなに欲しいのなら動いてあげるわね」
麻里は腰をゆっくり動かした。
修一は身体の中で動く異物の感覚をどうしていいのか分からなかった。
痛いことは痛い。
しかしうっすらと快感のような物を感じるような気がする。
修一は眼を閉じて股間でうごめく物を感じていた。
「ああぁ」
突然麻里がため息のような声を出した。
修一は自分の中で麻里のペニスが痙攣して精液を出されているのを感じた。
麻里の身体の力が抜けたように修一に覆い被さった。

「中に出しちゃった。長沢くんのオマ○コってすごく気持ちよかったから。妊娠したらゴメンね」
「妊娠って...。妊娠するのか?俺が?」
「そりゃ今の長沢くんは女の子なんだからエッチしたら妊娠するかもしれないでしょ?」
「そんなぁ...妊娠なんて困るよ。.....でもすぐに戻るって言ってたよな?」
「...ああ...うん、...そうね。じゃあ、元に戻ったら、長沢くん、責任取ってよね?」
「そんな...。小田が出しちゃったんじゃないか...」
「あらっ、責任を取ってわたしと結婚するのは嫌なの?」
「そりゃ小田のことは嫌いじゃないけど、俺たちはまだ学生だし」
「長沢くんって意外と意気地なしなのね。学生でもわたしのことが好きなら結婚してくれてもいいんじゃない?」
「....」
「ふふふ、きっと大丈夫よ。きっともうすぐ生理が始まるわ」
「生理?俺、生理になるのか?」
「だって長沢くんは女の子なんだから生理にならないと赤ちゃんが産めないじゃない?もし生理になったらタンスの一番上にナプキンが入ってるから使ってね」
「そんな...。俺は生理なんて経験したくないし、赤ちゃんだって産みたくないよ。どうせ元に戻るんだろ?」
「多分そのうちにね」
「そのうちじゃなくて明日だからな」
「最初の予定では明日だったけど。でもまあ一日じゃほとんど何も経験できないでしょ?1ヶ月くらいの方がいいんじゃない?」
「入れ替わっちゃったことは仕方ないけど...。絶対に明日には戻るからな」
「はいはい、分かってます。それじゃ、私は遊びに行くから」
「えっ、今から?」
「今からってまだ7時にもなってないじゃん。翠や希美たちが待ってるのよ。大上くんと遊んでることにすれば10時くらいまではいいんでしょ?」
「そんなことまで調べたのか?すごい執念だな...」
「褒めてもらってどうも。それじゃ、また明日ね、麻里ちゃん」


麻里は外に出るとすぐに翠に電話をかけた。
「もしもし、私」
しばらく何も答えが返ってこなかった。
「もしもし、私よ。麻里よ」
「ああ、麻里なの?」
「どうして答えてくれなかったの?」
「だって携帯には名前じゃなくって番号が表示されたし、出たら変なオカマみたいだし、普通警戒するでしょ」
「だってこれ長沢くんの携帯だし仕方ないじゃない。それにしてもオカマってひどいわね」
「だって今の麻里は長沢くんなのよ。男の声でそんな女言葉使われたら気持ち悪いわよ」
「それもそうか。うん、気をつける。で、今どこにいるの?」
「駅前のスタバにみんないるよ」
「OK。すぐ行くから待ってて」

麻里はみんなが待つスターバックスに急いだ。
店に入るとみんながいる場所はすぐに分かった。
「ヤッホー、待った?」
「待った、待った、待ちくたびれたわよ。今まで何してたの?」
「えへへ、ちょっとね」
「何よ、思わせぶりね」
「まあいいじゃない。でどうする?男の子の身体をみんなでじっくり観察でもする?」
「ええ、嫌だぁ〜」
「いいんじゃない、そのアイデア採用!」
麻里の案にそれぞれの反応があったが、満場一致で決定した。

「どこか適当な場所はある?」
「あたしんち、いいわよ」
星出那美が手を挙げた。
「じゃあ那美んちに行こうか」
麻里は6人の友達を引き連れて那美の家に向かった。
「で、どうする?早速裸になろうか?」
「ええ、嫌だぁ」
「いきなりは、ね」
意外とみんなのノリは悪かった。
「じゃあ、どうすればいいの?」
「まずは上だけ、じゃない?」
「よね?」
「うん、そうかも」
麻里は上半身裸になった。
「長沢くんって意外と胸板厚いんだ」
「抱き締めてあげようか」
麻里はそう言うと一番近くにいた那美を抱き寄せた。
「きゃっ」
那美は小さな声を出して、麻里に抱き締められていた。
「あたし、男の人にこんなふうにされたの、初めて」
「で、どんな感じ?」
「安心に包まれているみたいな暖かい感じがする、かな?」
那美のそんな感想に別の二人が歩み寄った。山田良美と高木典子だった。
「わたしたちも抱き締めてもらってもいい?」
「うん、いいわよ」
麻里は良美と典子を同じように抱き締めた。
「男の人に抱き締められるっていいわね」
「わたし、今日眠れそうにない」
初心な二人の言葉を翠がさえぎった。
「何言ってるの?まだまだこれからじゃない」
翠は麻里の前に立ち、いきなり麻里にキスした。
「きゃあ」
「えぇ〜、うっそ〜〜」
周りの騒ぎを無視して二人は長い間唇を重ねていた。
やがて翠の手が麻里の股間をまさぐり始めた。
「麻里ったら興奮してるよ」
翠は麻里のズボンのベルトを緩めて、ズボンを足元に落とした。
麻里のブリーフの前が大きく膨らんでいた。
翠はブリーフの上から麻里のペニスを握っていた。
翠に握られることにより麻里のペニスの硬度はますます硬くなっていった。
「気持ち良くしてあげようか?」
麻里は小さく頷いた。
翠はひざまずき、麻里のブリーフをずらしペニスを取り出した。
部屋の中は異様な緊張感に包まれていた。
「長沢くんのペニスって意外と大きいのね?」
翠は右手でペニスを握り、先端を舐めた。
「どう?気持ちいい?」
「気持ちいい」
「もっと舐めてほしい?」
「うん」
麻里は両手で翠の頭を押さえた。
「そんなに押さえつけなくっても舐めてあげるって」
翠は麻里のペニスに舌を這わせた。
口の中にも含んだ。
しばらくの間翠はフェラチオをしていたが、何の拍子か急にやめた。
「はい、あたしはここまでね。もう時間も遅いし、あたしは帰るから」
そう言うと翠はさっさと部屋を出て行った。
「じゃあ、わたしたちも帰るね」
急に我に返った良美たちがぞろぞろと部屋をあとにした。
残されたのはだらしなくペニスを出した麻里と部屋の持ち主の那美の二人だけだった。


次の日、修一は小田麻里として学校に行くべく、マンションを出た。
マンションの前では塚口翠が立っていた。
「おはよう、長沢くん。昨日は眠れた?」
「何だよ、偵察か?」
「何よ、その態度は。せっかく慣れない身体で困ってないかなって心配で来てあげたのに」
「心配してくれるんだったら、早く元に戻してくれよ」
「あたしは無理よ。麻里に頼まなきゃ」
「小田じゃないと元に戻せないのか?」
「そりゃそうよ。麻里が一番魔力が強いんだから」
「でも小田も自分では戻せないって言ってたじゃないか」
「そう言えばそうね。じゃあ時間が解決するのを待つしかないんじゃない?」
修一と翠は一緒に学校に向かって歩き出した。
「そうしてると麻里に見えるね」
「そりゃこの身体は小田なんだから当たり前だろ」
「そうじゃなくって、歩き方とか全然普通なんだもん。普通に女の子できるんだ。長沢くんが麻里になってるって知らない人が見たら普通に麻里だと思うと思うよ。もしかしたら長沢くんってそういう人だったの?」
「まさか。別に無理して女の子の振りしてるつもりはないんだけどな」
「だったら魔法のせいかもね」
「そうかもな」
「だったら言葉遣いもちゃんとすれば完璧じゃない」
「俺と小田が入れ替わってるってことを知らない人間の前ではちゃんと喋るよ。たぶん大丈夫だと思う」
「でも、そんな喋り方しても麻里がふざけてるとしか思わないと思うよ。それくらい長沢くんって自然なんだもん。いっそのこと、麻里になっちゃいなよ」
「やだよ、絶対」
「そうなの?本当に?結構馴染んでいるように見えるけどな。でもちょっとお疲れみたいだけど」
「そりゃこんな状態になって精神的にまいってないわけがないだろ?」
「どうだか。どうせ昨日麻里の身体に悪戯してて寝不足なだけでしょ?」
「なっ...」
修一は言葉につまった。もちろん図星だったからだ。
「ほら、言い返せない。いいのよ、気持ちは男の子なんだから女の子の身体に興味あって当然よ。きっと長沢くんになった麻里も寝不足になってるんじゃない?」
「そうなのか?」
「さあ?気になるんだったら、麻里に聞いてみたら?」
そんなことを話していると背後から声をかけられた。
「おはよう、翠。おはよう、小田さん」
長沢になった麻里だった。
「おはよう。で昨日あれからどうだった?」
「那美がなかなか帰してくれなくって大変だったのよ」
その言葉に驚いたのが修一だった。
「まさか星出を抱いたのかよ?」
「そうよ、悪い?処女は好きな人にあげたいからって。那美って長沢くんのことが好きだったんだよ」
「だからって...」
「いいじゃない。那美って可愛いし」
「でも俺は小田のことが好きなんだから」
女の可愛いは男のそれと全く違うことが多い。
このケースも全くその通りだった。
那美は修一の感覚では"可愛い"の対極に属する女子だった。
修一は優しさからそんなことには全く触れず、麻里のことが好きという表現を使った。
「へへへ、ありがとう。那美もそれは分かってるから大丈夫よ」
「他には変なことしなかっただろうな?」
「さあ、どうかしら?じゃあね」
修一と離れて、麻里は翠と一緒に先に行った。


放課後になった。
修一は元に戻してもらうために麻里を探しにオカルト研究会の部室に行った。
そこには麻里が待ち構えていたような体勢で立っていた。
「やっと来たわね」
麻里は間髪を入れず修一の手をひっぱり自分のところに抱き寄せてキスをした。
昨日のような一瞬のキスではなく、長いキスだった。
麻里は修一の口に舌を入れてきた。
修一は抵抗することもできないどころか挿入された舌を必死に吸っていた。
時間にすると1分以上はあっただろう。
「はい、これで契約延長完了ね。今度のキスは長かったから1ヶ月くらいは持つかもね」
「なっ、何てことをするんだ」
「あらっ、長沢くんもキスは大好きなくせに。それに昨夜私に抱かれてあんなに感じていたじゃない」
周りの女子がざわついた。
「ええ、ウソ〜ッ」
「長沢くんの処女奪っちゃったんだ」
周りの女子のヒソヒソ話が聞こえる。
修一の顔は真っ赤になっていた。
「そんなこと、ここで言わなくたっていいだろ?」
「あら、どこだったらいいの?別にいいじゃない、みんな私たちが入れ替わっているの知ってるんだから」
「それとこれとは話が違うって」
相変わらず周りではヒソヒソと話をしている。
修一は居たたまれなくなって部室を飛び出した。
「本当に修一くんを抱いたの?」
修一が出て行って開口一番聞いたのは翠だった。
「そうよ、女の快感を教えてあげた方が魂の定着は早くなるんでしょ?」
「えっ、じゃあ、今さっきのキスは?」
「あんなもの、キスしたいからしただけよ。魔法の効果には何も影響ないに決まってるじゃない」
「昨夜抱いたことで入れ替わりの時間が延びたのに、それをキスのせいにしたの?」
「その方が面白いかなと思ってね」
「麻里は元に戻る気はないの?」
「当然よ。絶対に男の方がいいもん。女だと制約をつけられてできないこともできるし、何てったって月1回のモノがないだけでも嬉しいじゃない」
「で、修一くんに女の快感を教えて『肉体が精神を侵食する』状態にしようってことね?」
「そう。だから入れ替わりが長くなるのはキスしたせいだと思っておいてもらった方が一人エッチも罪悪感なくできるでしょ?」
「麻里って本当に恐いわね、これからは気をつけなくっちゃ」


家に戻った修一は下腹部に違和感を覚えていた。
元々男だった修一は変な物でも食べたかなと考えていたが、やがて女の月に一度の印が流れてきたのを知り、顔を赤らめながら生理用ショーツにナプキンをつけて着替えた。
「女って毎月こんなことがあるのか。面倒だな」
その夜は下腹部に弱い痛みを感じていた。

生理は最初の日だけ軽い痛みがあったが、それほど重い物でもなく、1週間ほどで終わった。
生理の初日以外、修一は家にいる間、胸を触ったり、陰部を触ったりしてオナニーに耽っていた。
それが肉体が精神を侵食していっている状態とも知らずに。


毎晩オナニーしているため、当然のようになかなか元に戻らなかった。
修一の精神は知らず知らずのうちに麻里の身体に馴染んでいた。
3週間もすると自分が男だったことが錯覚であるようにすら思えてきた。
そんなある日のことだった。
「おい、長沢」
修一は思わず立ち止まり振り返った。
そこには親友の大上智史が立っていた。
「立ち止まったってことは、やっぱり、小田は長沢なのか?」
「な、何言ってるのよ?声がしたから振り返っただけよ」
修一は慌てて否定した。
「俺、オカルト研の奴らが話してるのを聞いたんだ。長沢と小田が入れ替わったって」
「そ、そんなこと、あるわけないじゃないの」
「俺、その話を聞いて考えたんだけど、最近の長沢って妙に明るくって何か偉そうじゃん。それに比べて小田は前の高飛車な感じが取れて何となくいい感じなんだよな。入れ替わったって考えるとそれって納得できると思うんだけど」
智司は結構冷静に二人を観察しているようだ。
「そんなの気のせいよ」
「そうかな?」
「そうよ、じゃあね」
あまりこの場にいるとボロを出しそうな気がして、修一は少しでも早くこの場から立ち去ろうとした。
「あっ、この前借りた千円、明日返すよ」
「ああ、分かった。じゃあ.....ってあっ」
「へへへ、ひっかかったな。俺は小田には千円なんて借りてないから、やっぱりお前長沢なんだな」
修一はその場に立ったままで何も言わなかった。
それは智司の指摘が正しいことを表していた。
「どうしてこんなことになったんだよ?」
「ここじゃ、ちょっと」
「それじゃ久しぶりに俺の家に来るか?」
「この姿でか?」
「嫌か?」
「ああ、こんな姿でお前のお袋さんに会うのは何か恥ずかしいし」
「別に長沢だって分からないから問題ないと思うけどな」
「そりゃそうなんだけど、やっぱり俺としては何となく恥ずかしいから」
「それじゃどうする?」
「俺の家に来てくれるか。両親とも会社で誰もいないから」
修一は智史を連れて家に帰った。
そこでこれまでの経緯を智史に話した。
ただし、麻里に抱かれたことは伏せておいた。
「そうか、そりゃ大変だな」
「女になって特にいいことも悪いこともないんだけど、いいことと言えば周りの男どもがやけに優しくなったことくらいかな。最近は学校から帰ったら、そのまま帰っておとなしくしてるだけさ」
実際は帰るとひたすらオナニーに励んでいたのだが、それは話さなかった。
「じゃあ、明日遊びに行こうぜ」
「遊びに?」
「毎日家に閉じこもってるだけなんだろ?不健康じゃないか。何かしたいことないか?」
「そうだな....最近あんまり身体を動かしてないからな。...ボーリングとかがいいな」
「じゃ、明日はボーリングに行って、夜はJリーグでも行かないか」
「Jリーグなんて久しぶりだな」
「よし、決定。じゃ、明日の午後に駅で待ち合わせしよう」


待ち合わせ場所に現われた修一はTシャツにジーパンという姿だった。
「よっ、待ったか?」
「おぅ、ちょっとだけな」
智史は嘗め回すように修一の身体を見た。
「そんなにジロジロ見るなよ」
「いや、私服の姿って見るの初めてだから」
「女の服ってさ、絶対身体の線が出るんだよ。Tシャツにしても身体にピタッとはりつく感じでさ、ジーパンだってお尻パンパンだぞ」
修一は両手で自分の尻を叩いた。
「あんまり女はそんなことしないぞ」
「中身は男だからな」
「それにしても...」
智史は次の言葉が言いにくそうだった。
「それにしても...何だよ」
「いや、べつに」
「言えよ」
「お前が嫌がるかなと思ったんだけど、お前ってスタイルいいな」
「そうか」
そう言われて修一はまんざらでもないような顔をした。

久しぶりのボーリングは楽しかった。
女の身体のためかボーリングでも重いボールは持てなかったし、速いボールも投げられなかったが、コントロール重視でスコアをまとめた。
夜は横浜ダービーを観戦した。ゲームの内容はイマイチだったが、久しぶりに修一は自分の置かれた状況を忘れて楽しむことができた。
その日から修一は智史と過ごす時間が多くなった。

入れ替わって2ヶ月が経とうとしたころ、廊下ですれ違った麻里が修一を呼び止めた。
「もうそろそろ戻れるみたいよ。来週の月曜にでもオカルト研に来てね」
それだけを告げると立ち去った。

修一はその言葉に少なからず動揺した。
その理由について修一はすぐに思い当たることがあった。
智史だ。
認めたくないが、修一自身、智史のことを男性として異性として意識しているのだ。
「もうすぐ元に戻れるんだって」
修一はいつものような智史に会うと開口一番そう告げた。
「そうか。俺たちの交際ももう終わりだな。ちょっと寂しい気がしないでもないけど」
「そうだよな」
二人の間に沈黙が流れた。
「なあ、修一。俺、そのままのお前と一緒にいたいんだけど」
「どういうことだ?」
「お前、そのまま小田の姿でいてくれないか?」
「.....」
「で、俺とちゃんとつき合って欲しい」
「....そんなこと言っても中身は男だぞ。それでもいいのか?」
「いいんだ。というより俺は中身が長沢の小田のことが好きになったんだ」
「えっ!?」
「俺のためにもう少し小田のままでいてくれないかな?」
「そうなんだ。...少し考えさせてもらってもいいかな?」
修一はすぐにでもイエスと言いたい自分を抑えてそう言うのが精一杯だった。


次の日待ち合わせの喫茶店に現れた修一の姿を見て智史は驚いた。
修一がスカートを履いていたのだ。
智史は制服以外で初めて修一のスカート姿を見た。
柔らかそうな生地でできた膝が隠れる程度のスカートが修一の大人の女性としての魅力を存分にアピールしていた。
「変か?」
修一は照れながら言った。
「いっ、いや。すごく綺麗だ」
実際修一は綺麗だった。
喫茶店にいた人たちも必ず修一のことを見ていた。
男は羨望と好色の視線を、女性は羨望と嫉妬の混じった視線を送っていた。
「座っていいか?」
言葉を失っていた智史に修一は微笑んで聞いた。
それも魅力的だった。
そのとき初めて気がついたが化粧もしているようだった。
「あっ、うん」
智史は修一から視線を外せなかった。
そのせいもありなかなか会話の糸口がつかめなかった。
「昨日の話なんだけど........二人きりになれるところで返事していいか?」
ようやく修一が切り出した。
「二人きりになれるとこ?お前の家か?」
「いや、今日は両親がいる」
「俺のとこもダメだぜ」
「恋人が行く休憩できるとこ...じゃダメか?」
修一のその言葉に智史は驚いてただただ頷くだけだった。


二人はホテルに向かった。
噂では聞いているが、二人とも行くのは初めてだったので緊張して、何も話さなかった。
何軒かのホテルがあった。
「どこがいい?」
「どこでもいいよ」
修一はそんなこと聞くなよと思っていた。
智史は修一の手を握り、適当なホテルに飛び込んだ。
入ったところで部屋を選ぶ必要があった。
「どこがいい?」
「どこでもいいよ」
相変わらずの智史の質問に修一は素っ気なく答えた。
早く人目につかない所に移動したい、そんな思いでいっぱいだった。
適当に部屋を選び、ルームキーを取り出すと二人は逃げるように部屋に入った。
部屋に入ると二人は顔を見合わせた。
「ついに入っちゃったな」
「だね」
沈黙が流れた。
「へえ、カラオケができるんだ。何か歌おうか?」
その沈黙を避けるように修一がカラオケ装置のところに移動した。
しかし、智史は何も言わず修一の背後から修一を抱きしめた。
「智史...」
黙って抱きしめる智史に対し、修一は自分の前に回された智史の手に自分の手を重ねた。
「昨日の返事を聞かせてくれないか?」
智史の搾り出すような声に修一は智史の思いの深さを感じた。
「あれからずっと考えていたんだけど...」
「うん」
「お前は俺の正体を知ってるじゃないか?」
「そうだな」
「それで本当に俺のこと、女として見てくれているかちょっと不安なんだ」
修一は少し間を置いた。
「それでもし智史が俺のことを女として見てるのなら俺のこと抱けるんじゃないかなって思って。俺を男として見てるのなら抱けないだろうし、俺も嫌な思いするのは嫌だから元に戻ってしまった方がいいんじゃないかと思うんだ」
「だからこんなところに来たのか...」
「うん」
智史は修一の身体を反転させ見つめ合った。
修一は恥ずかしさから智史の目を見ていられず視線を逸らした。
その瞬間、智史は修一を抱きしめた。
「修一は俺に抱かれてもいいのか?」
「...うん」
修一は智史の腕の中で肯いた。
智史は修一の肩に手を当て、ゆっくりと顔を近づけた。
修一は目を閉じて智史のキスを待った。
智史の唇が修一の唇に重なったときに修一は幸福感で包まれた。
智史は修一をゆっくりとベッドに横たえた。
智史の愛撫は優しかった。
智史のペニスが修一の中に入ってきた。
二度目だったので少し痛みがあったが、その痛みが智史の存在を確かめさせてくれているようで嬉しかった。
智史が修一の中でペニスを動かすと、修一は大きな喘ぎ声をあげ続けた。
智史は射精しそうになると急いでペニスを抜いて、修一のお腹辺りにペニスをおいた。
ペニスがピクッとしたかと思うと、修一のおへそに智史の精子が溜まった。
修一は自分のことを大事に考えてくれているように感じ、嬉しかった。

「なあ、お前、本当にこれでよかったのか?」
修一はまだ残っている不安から智史に聞いた。
「お前こそ、本当に小田の姿のままでいいのか?」
「嫌だったらお前とこんなふうにならないよ」
「そりゃそうかもな」
智史は納得したように呟いた。
そしてふと思い出したように言った。
「けど、小田の方はいいのか?」
「さあ、どうなんだろう?考えてもいなかった」
修一は今初めて気がついたように言った。
本当はそれが一番気になっていた点であったが。
「向こうが戻りたいって言ったらどうするんだ?」
「彼女、すっかり男の生活を楽しんでいるみたいだし、きっと大丈夫だと思うよ。それに少し延ばすだけだろ?大丈夫だよ、きっと」
これまで修一がいくら戻してほしいと頼んでもはぐらかしていた小田だから聞くまでもなくこのままの状態でいられると思っていた。
正確に言うと、思いたかったのだ。
「とりあえず聞いてみてくれるか?」
「うん、100%大丈夫だと思うけど、念のために聞いてみる」
「でさ.......」
智史は言いにくい言葉を搾り出すかのように少しだけ間をおいた。
「もし小田もOKだったら本当にそのままでいてくれるのか?」
「うん」
「どれくらいいてくれるんだ?」
「う〜ん、どうしよう?智史が望むまで」
「もし俺がお前と結婚したいって言ったら?」
「それなら一生ってことになるのかな」
「本当に?本当にそれでもいいのか?」
「うん、今のままでいいよ」
二人は見つめ合って、笑った。
そして長い熱い口づけを交わした。
「なあ、今まで二人でいるときはお前のこと、長沢って呼んでたけどさ、これからは麻里って呼んでいいかな?」
「うん、たぶんそっちの方がいいんだよな」
「でさ、もうひとつ頼みがあるんだけど...」
「ん?何?」
「俺と二人っきりのときでも女の子口調でいてほしいんだけど」
「....う〜ん、ちょっと照れ臭いけど...。いいわよ。学校で話している通りに話せばいいんでしょ?」
「麻里」
「智史......んと...私はどう呼べばいい?智史のままでいい?」
「ひと前で大上くんって呼んで、二人っきりのときには智史って切り替えできるのか?」
「じゃあずっと智史って呼ぶわ。それでいいでしょ?」
「だったらみんなに冷やかされるな」
「別にいいんじゃない」
「オカルト研の奴らはお前の正体が分かってるんだろ?何て言われるか分かんないぞ」
「いいわよ、別に。言いたいなら言わせておけば。私は今から小田麻里になったんだもん」
「強いな」
「そうよ、女は強いのよ。だから私のこと捨てないでね」
「もちろんだよ。俺のために麻里になってくれたんだからな」
「智史、愛してる」
「麻里、俺も愛してる」
二人は再びお互いの身体を求め合った。
修一は麻里になれて本当に良かったと考えていた。


「もしもし、あたし。翠」
「ああ、翠。どうしたの?」
「ついにやったわよ、あたし、長沢くんとセックスしちゃった」
「無理矢理じゃなくって?」
「そう。長沢くんは女性として大上智史のことが好きになって身体を許したってこと」
「だからさっき長沢くんからあんな電話がかかってきたのね」
「もうかかってきたの?」
「ええ。もう少しこのままでいたいってね。私はそろそろ戻りたいのにって言ってやったけどね」
「麻里ったら意地悪なんだから」
「それはともかく、長沢くんは自分の意思で抱かれたのね?ということはすっかり身も心も女の子になっちゃったってわけだ。これでもう戻ることはなさそうね。私もやっと安心してずっと男の子として生きていけるってことね」
「麻里は最初っから男の子に馴染んでいたけどね」
「もう翠ったら。言ってくれるわね」
「でさ、聞きたいんだけど、あたしはしばらく長沢くんと交際しててもいいかな?」
「長沢くんがいいんなら別にいいわよ、もう私は麻里に戻ることもないから。...もしかして翠もマジで好きになったとか」
「へへへへへ、当たり!だって麻里の身体に入った長沢くんって本当に可愛いんだもん」
「はいはい、オリジナルは可愛くありませんでした」
「麻里だってオリジナルよりずっともててるじゃない?」
「まあ、そりゃそうだけど。翠だってもててるのに一人に決めちゃっていいの?」
「遊ぶときには遊ぶわよ、せっかく男の子になれたんだし」
「翠はすっかり順応してるわね」
「そういう麻里だって、すっかり男の子してるじゃない。何股もしてるって話聞くわよ」
「そんなことないわよ。決まった子はひとりもいません」
「...もしさ、長沢くんと結婚ってことになってもいいのかな?」
「そこまで思ってるの?」
「うん、何となくだけどね」
「もし翠になってる大上くんが戻りたいって言ったらどうするの?」
「大丈夫。大上くんには毎日のように天国に連れて行ってあげてるから、もうすっかり女の身体に填ってるわよ」
「誰が大上くんのお相手なの?」
「ふふっ、あたし」
「じゃあ、翠は翠になった大上くんを捨てて、私の姿になった長沢くんを選ぶの?」
「変な言い方しないでよ」
「だってそういうことじゃない」
「まあそうなんだけど」
「大上くん、泣かない?」
「泣くかも。ねえ、麻里が大上くんの面倒見てくれない?」
「嫌よ。親友の元の身体を抱くなんて」
「そんな言い方したら、今のあたしは変態みたいじゃない」
「そうね、翠はちょっとおかしいかも」
「ひっど〜い」
「ははは、嘘よ。いざとなったら助けてあげるからいつでも言ってね」
「さっすが親友」
「これからも男同士仲良くしてね、さ・と・し・くん」
「うん、こちらこそよろしくね、しゅ・う・い・ち・くん」


《完》

 

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