でっかくなっちゃった(※エロなしです)

 

「だから、なんで俺の体を貸さなきゃならんのだ」
 この台詞を言うのも何回目か。いい加減俺もイライラしてきた。そして、返ってくる返事も全く同じだ。
「だから何回も言ってるじゃない。隠し芸大会で手品をやるのに、男の体じゃなきゃ出来ないって」

 

 美幸もイライラしているのが口調から良く分かる。いい加減にしなさいよ、この分からずやが、とでも内心思っているのだろう
「そこだよ。何で男の体じゃなきゃ出来ないんだ?」
 ようやく俺は、正しい形で疑問をぶつける事が出来た。これでようやくこの押し問答も進展するか……
「そりゃあ、男の体にしかないものがあるでしょう」
 なんだそれは。ヒゲか? それとも筋肉とか? いや、もしかして****の事か? どうにせよそれが手品に何の関係があるんだ。なんか嫌な予感がしてきたぞ。
「せっかくの爆笑ネタ、思い付いたからにはやるしかないでしょ? 『びっくりしてでっかくなっちゃった!』って」
 ………………
 えーっと……。何処から突っ込んだらいいんだ……
 もう俺は美幸の方を見ていない。頭を抱えながら、どう突っ込めば良いのか必死に頭を巡らせる。
「とりあえず、だ……。それは手品じゃない。二つ目に、それは相当に時代遅れだ。三つ目に、それはびっくりしても大きくならん。そして何より……確実に誰も爆笑せんわっ!」
 よし、言ってやったぞ。というか、三つ目の突っ込みは確実に余計だったな。ちょっと後悔……
「別にそんなのどうでも良いのよ。もし失敗しても、恥をかくのはアンタなんだから。あたしは自分が思い付いたネタをやり遂げたいだけなの。良いからとっとと体貸しなさいよっ!」
 こいつ、確信犯か!? ってしまった。油断した! 意識が……

 目を覚ましたのは24時間後。俺――つまり美幸は忘年会を欠席という形になった。
 元の体に戻った後、忘年会で何があったのかを確認すると、女子社員は誰も教えてくれなかった。
 それだけでも、あれを本当にやってしまったのだなあという事がなんとなく認識できた。
 しかし、ようやく親しい後輩から教えられた内容は、想像の斜め上を通り過ぎた上で三回半くらい捻りを加えた内容だった。
 「びっくりしてでっかくなっちゃった」は言わずもがな、「ほーら、こすればランプの精ならぬ男の精が出てくるよー」だとか、「さぁ、そんな鳩的な白いものを出すためにご協力くださる女性社員はおりませんか?」と、まだまだまだまだ……
 部長以上のオヤジ社員にはバカ受けだったらしいが、それ以外の大多数には……

 後に残ったのは、会社での「先輩、意外と度胸あるんですねw」という、良いのか悪いのか分からない評価だけだった。
「あ、そうそう。先輩、あのサイズで『でっかくなっちゃった』はないですよぉwww」
 ……会社、辞めるかな。



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