王女ソフィ
「ソフィ王女よ、お前がいけないのだぞ、お前がワシの求婚を素直に受けてわしを王にしていれば、子供の頃より可愛がってきたお前と体を入れ替えるなんて真似はしなかったんだ」
ソフィ王女はニヤニヤと笑いながら言うと、パウルマンの肥満した顔に自分の顔を近づけた。ソフィ王女の金色の長い髪がパウルマンの肩にかかる。
パウルマンは抗議の声をあげようとしたが、体は太い縄が肉に食いこむほどにきつく縛られ、口にはしっかりと猿轡がされており、うめくだけしかできない。
「ん? 何かしゃべりたそうにしているな? だが、いくらワシの体になっているからといって、まだ、ここで大声を出されてもらっては困る。悪いが猿轡ははずせないな」
ソフィ王女はその美しい指で、優しくパウルマンの二重になった顎をなでた。
パウルマンは嫌悪の表情を浮かべ、首を振ってソフィ王女の細い指を振り払った。
「キヒヒっ、まあそう嫌がるな。 そうだ、これからワシがどうするか知りたくないか?」
ソフィ王女は楽しそうに言った。
パウルマンはソフィをにらみつけたが、ソフィ王女はパウルマンのその表情を満足気に眺める。
「わしの配下に腕の良い魔術師がいてな、ワシとお前の身体を交換してくれた魔術師だよ」
言い聞かせる風に言うと、ソフィはパウルマンの頬をなでた。パウルマンは振り払おうとしたが、ソフィはパウルマンの頭を両手でしっかりと押さえつけて自分の方を向かせた。
「戴冠式の前に、魔術師にお前の頭から、記憶や思い出・特技・趣味、それに身に着けている仕草や振る舞い方、口調などのパターンを抜き出して、ワシの頭に入れてもらう、それからお前の頭をわしのしぐさや口調や振舞い方のパターンで上書きしてやるんだよ。もちろんお前の記憶は消させてもらう」
「なぜ、そんなことをするのかわかるか? こうすればワシらが入れ替わっている事を些細な事から疑うものはいなくなるだろうからな。そういう些細な事から真実を見抜く賢いヤツはワシの方を本物と信じるだろうよ」
「分かったようだな?そうお前の忠実な侍女のサリアのことだよ。あの女にはこれまで何度も邪魔されてきたが、あの邪魔な女がこれからはわしの忠実な侍女になるわけだ。 」
ソフィがしゃべり終えるとパウルマンの頭から手を離す。パウルマンの頭は力なくうなだれた。
「そう気を落とすな、ワシは平和主義者だからな、お前には、記憶喪失になってしまったパウルマン大臣として退職してもらうつもりだ。その後は好きに生きるがいいさ」
ソフィ王女の後ろでドアをノックする音が聞こえた。
「そろそろお前のすべてをもらう準備ができたようだ」
おしまい
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コメント:
絵を描いてたら、また黒い感じの絵になってきたんで、また黒い話をつけちゃいました。
状況は、王がなくなって男子の王位継承者はなく、急遽、若い王女が王に即位する。その戴冠式の前夜の出来事って
感じです。