僕はママ?(4)
「亮の体だと、ずっと遊んでていいから楽だわ〜」
居間で携帯ゲームで、遊んでいた亮が小さくつぶやいた。
「え、何か言った?」
離れたところで、食器を洗っていた亮の母親が聞く。どうやら水の流れる音で、亮のつぶやきは聞こえなかったようだ。
「なんでもないよママ」
「そう?」
亮の母親は、また食器洗いに戻る。
「あ〜あ、ママって損だなぁ、ずっと家のことばかりやらなきゃいけなくて、なんで僕、じゃなくて、アタシがママなの? 子供っていいなぁ、ずっと遊んでられて、アタシもゲームしたいよ・・・」
今度は、亮の母親がつぶやく。
そのつぶやきも食器洗いの水の音で、亮には聞こえないようだ。
食器洗いを終えた亮の母親は、亮の背後にたつと、ぎゅっと亮の肩を掴んだ。
「きゃっ!」
思わず亮が小さな悲鳴を出してしまう。
だが亮の母親は、そんな亮の悲鳴は気にならなかったようだ。
「ねえ、亮、それママにちょっとやらして」
「どうしようっかな〜」
亮はもったいぶった口調でそう言った。
「ねえ、そんな意地悪言わないで、おねがい。ちょっとだけでいいから」
「だめ〜、だって僕がやっているんだもん」
亮は嬉しそうに言う。実は同じようなやり取りが元の体の時にあって、
亮はその仕返しをしているのだ。
ふと亮の母親は考え込んだ。
「もう9時じゃない。子供は寝る時間よ」
厳しい口調で亮の母親は言う。
「えー、まだ9時じゃないの」
亮は抗議する。
「だめです。ママのいう事を聞きなさい」
強い命令口調で亮の母親は言った。
「何よ、いばっちゃって」
亮は小さくつぶやいた。
「なんか、言った?」
「なんにも言ってないよ」
亮はそういうと、ゲーム機を持って部屋に戻ろうとした。
「それは置いておきなさい」
亮の母親はゲーム機を指差して言った。
「なんで」
「こっそり寝床でやらないように、それはママが預かっときます」
得意そうに亮の母親は言う。
これも亮が以前に母親に言われた言葉だった。
「ちぇっ」
亮は仕方なくゲーム機を置いて、部屋に戻っていった。
亮の母親は嬉しそうにゲーム機の電源をつけたのだった。