僕はママ?
北村亮は、ある夜、寝る前までは小学校の5年生の男子だったはずだった。
しかし、彼は朝起きると、なぜか彼の母親の姿になっていたのである。
あわてて起きた彼が、自分の部屋に行ってみると自分の姿をした少年が学校に行く支度をしていた。
亮は目の前にいる自分の中身が母親だと直感的にわかった。
「ママ! 大変だよ、僕とママが入れ替わっちゃったみたいなんだよ!」
「はあ? なに言ってんのママ? ママは、はじめからママじゃん」
目の前の亮は不思議そうに、亮を見上げる。
「えっ、僕は亮だよ! 今、僕の姿になっているのはママじゃないの?」
「 もー、ママってばドラマの見過ぎだよー。入れ替わるなんてわけないでしょ、それより僕のランドセルどこか知らない?」
もうひとりの亮は、きょろきょろと周りを見ました。
「あ、えっと、それなら、たしか机の下に置いてあると思うけど・・・」
亮はいつも母親がランドセルを片付ける場所を思い出しながら答える。
「ありがとう、じゃあ、いってくるねママ」
もう一人の亮はにっこりと笑って言った。
「あっ、えーと、行ってらっしゃい、えーと、車に気をつけるのよ?」
よくわからないまま亮はいつも母親が言うように言った。
そして、もう一人の亮は勢いよく外へ飛び出していった。
「行っちゃった・・。」
亮は”亮”の出て行った扉を呆然と見つめた。
「僕・・・、じゃなくてアタシ頭が変になっちゃったのかしら???」
亮の”ママ”は、そうつぶやいて、その場にへたり込んでしまった。
その頃、外では、”亮”が班の集合場所へとかけていた。
「やっぱり、子供の体は軽いわねぇ」
「亮には悪いけど、しばらく代っていてもらっちゃおっかなぁ」
”亮”は、そう言うと嬉しそうにほくそ笑むのだった。