やっべえ・・・何か変なオーラ出してるッ!? 電車で寝ちまって駅で起きて慌てて電車降りたら、ツヤツヤ黒髪ロングでセーラー服の見知らぬ女になってましたって説明したら・・・信じるのか? 文:SKNさん
でもこれ以上待たせるとアイツ手に負えないからな・・・ まあ、軽〜くいくか。 「おう、わりいわりい!いや〜参ったよ電車降りたらさぁ・・・」 「あ、ううん。私も今来たところ・・・って佳織!?何でアンタがここに居るのよッ!?」 「なんだ、知り合いなのか?」 「アンタね・・・いつも大事なところで湧いて来て・・・小学校のときのコージ君やタケシ君や、中学のケンジ君や合唱部の裕子先輩や、うちのビーグル(♂) のジョンまで・・・私の好きになった相手をことごとく横取りして、最後はゴミみたいに捨ててきたくせに!」 女や動物も混じってる!? 「ジョンなんかあれから犬小屋に引き篭もったままなのよっ!?また私が好きになったカレを・・・その虫も殺さないような顔と牛みたいなチチで横取りするつ もりねっ!?」 「いや、だから人の話を聞け!俺はな〜・・・」 文:SKNさん
「内田さん、さっきの娘友達?」 「ううん、知ってるけど友達でも何でもないの。ただの腐れ縁っていうか・・・高田君は気にしないで。」 「ふぅん・・・内田さんは可愛いな。」 頭を撫でられて半分溶けかかっている内田。 「はい、お手。」 「わん♪」 「よしよし・・・次はチンチンと伏せを30セット。」 「わ・・・アンタ・・・佳織ねッ?」 「鈍いな、美夏は。これで今回も私の勝ちね。私の美夏に寄って来る害虫は私が必ず始末する!」 「もー!何なのよアンタっ!いったい何のつもりなの!?それにどーやってそんな・・・」 「ふふふ、偶然であったホームレスの魔道師から魂を入れ替える指輪を買ったの。10500円で。」 「それで高田君と・・・魂を!?」 「そうよ。高2から公立に転校して私から離れられるとでも思った?私達オ・ト・モ・ダ・チじゃない。ほら・・・ついたわ。」 ツタが巻きついて原形が見えない古い洋館の前。 「な・・・何なのよココ?」 「教会よ。」 「教会って・・・何するの?」 「決まってるわ。今は私達の関係をとがめるものは誰もいない。健全な男女の恋人同士。そうなればここで永遠の伴侶として誓い合うの」 はあっはあっ、あ、いた!あいつらあんな所で何を!? 文:SKNさん
俺の体の学ランの襟元をしっかりと両手で掴み、ぐっ、と自分の顔に引き寄せた? まさか・・・キ・・・キ・・ 「誰と・・・」 内田さんの上半身が反転してバランスを崩した俺の体。 「誰が・・・」 すっ、と腰を落とす吉田さん。俺の体が泳いで・・・ 「恋人同士ですってッ!!?」 吉田さんの腰が跳ね上がり、俺の体が綺麗なアーチを描いて地面に叩き伏せられる。 「一本!」 「いっぽん!!」 「一本ッ!」 通りすがりの宅急便の運転手と買い物のオバちゃんと小学生の総合判定で美夏の一本勝ちが確定した。見事な背負い投げだ。 「よ・・・吉田さんッ!」 「高田くん・・・あっ、今のは・・・あの、うちの父が道場やってて・・・子供の頃から柔道をむりやり・・・」 俺の体は完全に気を失っていた。 「ゴメンね、このバカのせいで・・・とにかく何とか元に戻させなくちゃ。このバカ佳織が目を覚ましたら私に合わせてくれる?何があっても。」 「あ?うん。判った。何とか早く俺を元に戻せさえすれば。」 「う・・・うん・・・」 俺の体が目を覚ました。 「行くわよ?えい!」 「にゃ・・・にゃあああっ!?」 いきなり背後から胸を!? 「う・・・ん、いたた・・・・あっ、何やってるのよっ?美夏!!!」 文:SKNさん
佳織のあの表情、行けるわね。何とか自分に戻りたいって思わせなきゃ。高田君、ちょっとだけごめんねッ! ちゅ・・・うううううぅ! 「んんん・・・ぱっ、ほら、相手がアンタの顔でも心が高田君ならこの通りよ?」 「なっ、なっ、今すぐ離れなさいっ!美夏は私のモノよ!!」 「んっ・・・んっ・・・ぷは、誰のモノだって?んっ・・・んんっ。」 「私っ!」 「んんん・・ぱ、私が佳織の?」 「そうよッ、早く離れなさい。ああっ?舌・・・」 ふふっ、焦ってるわ。もう一押しね。本当は佳織なんかとキスしたくないけど、ない筈なんだけど、何なのこの昂ぶり・・・ 「はぁあ・・内田・・・さぁん・・・俺・・・」 ”きゅんっ!!” きゅん・・・って、私何を・・・ 恥らって体をくねらせている高田君、後ろから抱きしめているとその温もりが。そして潤んだ目でなんて表情を!? 「ダメ!!それ、私がやるんだからッ!」 香織が掴み掛かってきて・・・ 文:SKNさん
俺はもう呆然と眺めるしかなかった。 こうして俺の肉体は内田さんの物に、佳織という危ない女の魂は内田さんに・・・ 「何やってるのよっ!早く戻しなさいよッ!」 どっちにしろ俺の体は女言葉で喋ってるわけで・・・止めて欲しい。 「どうしよう・・・それ無理。」 「ええっ!?何で?」 「だって私が買ったの、使い切り2回タイプだったから。」 「な・・・何それ?」 「だって・・・2回タイプは10,500円で、無制限タイプが12,800円だったから・・・」 「バッカじゃないの?普通無制限買うでしょ、その場合。」 使い切り、って事は俺たちはずっとこのまま!? 「その流しの伝道師とかって、どこにいたのよ、早く見つけないと・・・」 「ホームレスの魔道師だってば。うちの前で屋台出してたんだけど・・・どっかいっちゃったの。」 「な・・・そんな都合よく屋台なんて・・・」 「美夏がその男と付き合い始めたって報告を聞いて、私毎日お祈りしてたの。そしたら家の前に屋台が出てて・・・」 ・・・・ 「ルシフェル様がきっと私の願いを聞き届けて・・・」 サタンは止めとけよ、サタンは。 「とにかく、私が美夏で、美夏がその男になったんだから・・・可愛がってね♪」 あの・・・俺は? 文:SKNさん
まさか・・・おれはずっと・・・この体で!? あ・・・れ・・?俺、泣いてるっ!? 何で・・・女みたいに? ぶんぶんと頭を振る。何なんだよチクショウ・・・この体のせいかッ!? 「た・・・かだくん。何て可憐なの・・・ハッ!?私ったらこんな時に。ちょっと佳織!?とにかくそのさすらいの特級厨師とやらを見つけて指輪を手に入れな いと、私たち一生このままなのよ!?心当たりはない?」 最後の一文字しか合ってませんが・・・ 胸元を掴まれてブンブン揺すられている美夏(中身佳織)。 「ほあああ・あああ・あ、あっ・・・あそこに居た。魔道師。」 「はああっ?」 背もたれのないベンチに、何やら商品らしき物が並べられていて、その向うで黒マントの人影が? 「あのホームレスの魔道師から指輪を買ったのよ。」 「超ラッキー!!高田君っ!悪いけど指輪買ってきてくれない?」 「えっ?俺が?」 「佳織がお得意さんだから。今は高田君が佳織だし。」 「えっ・・・そうか。じゃあしょうがないな・・・」 並べられた商品の向うに、何やら金色のふさふさしたものが動いている。 「あの〜?」 ぴょこん、と顔をあげたのは、金色の髪の毛を二つに縛った目の青い、小学生ぐらいの女の子だった。 「ぱられるせんすオンBBS初回本、後4部です、なの。」 「はい?」 「無料コピー本の配布は終わっちゃいました、なの。」 俺は回れ右して二人のところに戻った。 「だめだ、外人で話していることがまったく理解できない。」 文:SKNさん
「「「売れちゃった!?」」」 「はい、なの。ついさっきそちらの方と同じ服を着た方が買っていかれました、なの。」 「うちの高校の女子ね。リボンの色は?」 「え〜と、水色だったかな?」 「1年か・・・どうしよう・・・何に使うつもりなのかしら、そのコ。」 「えっと〜、使い方は説明してません。綺麗で気に入ったみたいなので5000円にオマケしちゃいました。なの。」 佳織・・・何遠くを見て聞こえない振りを? 「ホッ・・・・・ントに困ってるの。何とかならない?魔術師さん。」 内田さん、頑張ったな、意味もほぼ合ってる。 「じゃあ〜問屋さんに聞いてみますね。ちょっと携帯貸して貰えませんか?私の止めら・・・電池が切れちゃって。」 本当に困っているのか? 「ええ、あの無制限のほうを買いたいってお客様が来てて在庫があれば・・・有るんですか?え、支払いが3か月分?大丈夫ですよ、儲かったら利息もつけて ど〜んと払いますから。・・・判りました。オタクとは金輪際お付き合いしませんから。ぷち。」 少女はくるっと振り返った。 「ごめんなさい、問屋さんにも在庫無いみたいです、なの。」 コイツはウソツキだ。 「高田君のご両親が海外滞在中で、一人暮らしだったのはラッキーね。」 俺たちは、俺のマンションで取り合えず対策を練る事にした。おねえ言葉の俺をこれ以上公衆の面前に晒しておく訳にも行かない。 「あうっ・・」 最後尾を歩いていた、巨大なリュックを背負った金髪のちっさいのが自動ドアに引っかかっている。 「おい大丈・・・って、なんで一緒について来てんだよ!?」 「一緒にいれば何かお手伝いができるかも、と思いまして、なの。」 まあ一般人の俺たちよりは何かの役に立つ可能性もあるかもしれない。 「ご飯と、お風呂を貸していただければお手伝いいたしますわ、なの。」 称号は本当だったのか? 「タオルここ置いておくから。」 「ありがとうございま〜す、なの。ふんふん〜ん♪」 鼻歌を歌って上機嫌だな・・・って演歌かい。 文:SKNさん
「ふぅ、いいお湯だった。あなたたち、食事は?」 20分ほどして、お風呂からあがった魔導師は、なんと大人の女性の姿になっていた。 「…元の私の姿なら勝ってるのに…」 「そ、そういう問題じゃないでしょ…!!」 佳織は図らずも美夏の姿でいる自分にためらいを感じ、 美夏はこの期に及んでのんきな佳織に、幼い頃からの腐れ縁ながらも、憎めない意外な一面を見た気がした。 文:歩さん
いや、全然勝ってないだろう、佳織さん。 でも確かに胸だけなら・・・うわっ!!?だ、誰も見てないだろうな?(すげー柔らかい・・・) 「な・・・何なのその反則なカラダは?」 「これが私の本当の姿よ。このおチビちゃんが面白半分に封印を解いてくれて数百年ぶりに開放されたのは良かったけど、奪った肉体がこれじゃ魔力もヨワヨワ だし、空腹になると元に戻っちゃうし。」 「あ、あなた・・・何者なの?」 「私?史上最悪の魔導師とか呼ぶやつらもいたけど、皆殺しのメイって呼んでもらうのが割りと好きかしら?ふふふふ・・・」 現代風ドタバタから一気にダークな展開か? 「おチビさんの姿だと身動き取れないから困ってたのよね。礼を言うわ。パチンコも出来ないし居酒屋も入れないし。さてと、ふうん。3LDKで南向き、駅も 近しコンビにもスーパーも、ツタヤもあったわね。なかなかいいじゃない。」 メイがニヤリと意味ありげに笑う。 「な・・・何がいいんですか?」 おずおずと尋ねる俺の声は、裏返って震えていた。 「決まってるじゃない。」 メイの口から舌がべろっっと出てきて、そこにあった指輪を指でつまむ。 「これが何かわかる?」 「そ・・・それは無制限の!?売れたって嘘だったのッ?渡しなさい・・・・ぐあっ?」 飛び掛ろうとした美夏がはじかれた様に壁に激突した。 「嘘なんか言ってないわよ。無制限は売れちゃったけど、2回タイプならまだ一個あったのよ。聞かなかったじゃない?」 メイが指輪を嵌める。 「私は嘘はつかないわよ。ふふっ・・・あはははっ!」 「何なのよこのエロい体は〜。」 「あんた達、もう用は無いから私の家から出て行ってくれない?」 おねえ言葉に磨きが掛かっている。俺の体・・・ 何故かズボンのベルトを緩めて覗き込んで・・・ 「まあまあ・・か。」 何を基準に・・・いや、考えるのは止めよう。 「これでパチンコいって帰りに焼き鳥屋でビールだな。」 「あの・・・俺高校生だから基本的にどっちもダメだと思うけど・・」 「何ッ!!?まさか・・・そんなっ!!!!」 文:SKNさん
「はあああ・・・・・・」 金髪ツインテな内田さんの口から魂が抜けそうになっている。 メイが俺の肉体に転移し、その魔力が失われた体はメイに乗っ取られていた少女の姿に戻っていた。 「高田君、お腹すいたよぉ。」 「いや、万が一ってこともあるから、我慢してくれると・・・」 その服装で金髪エロボディに変身してしまったら・・・ 気が付くと俺たち3人はマンションの外に放り出されていた。何度か部屋に戻ろうと試みたが、オートロックは開かない。 ピザ屋の配達にくっついて突入も試みた。しかし中に入った途端に視界が180度反転して外に出てしまう。何かが仕掛けてあるらしい。 「とにかく、この指輪で1回は入れ替われるから、誰か一人は自分に戻れるのよね。あ、高田君はダメだけど。どうする?佳織、アナタが先に戻る?」 「えっ、そんなのダメよ。」 「私に・・・譲ってくれるの?」 「そうじゃなくて・・・自分に戻ったら・・・自分のじゃ・・・中身が高田君な私が居なくなっちゃうと・・・その(ぽ)」 「それは同感ね。」 君たち・・・いつの間にそんなに仲良しになったんだい? 「私よりか高田君は絶対私が似合ってる。私が保証するわ。」 全然嬉しくないんですが。 「じゃあ、いくよ?えいっ!」 指輪が輝いて、そしてぽろぽろと崩れ去る。 「ふぅ〜やっと戻れたわ。お先にゴメン。高田君。」 「えっ?ああ、いいよ。」 「本当にゴメンね、バカ佳織のせいでこんな目にあわせちゃって。」 「いいえ、本当に悪いのは私なんです。」 金髪ツインテな佳織さんがゆっくりと顔を上げた。 「か・・おり?」 「佳織さんにはちょっと休んでもらってます。私はアンヌ・ド・ノートルダム。魔法アカデミーの3年生です。はじめまして。」 「は・・・はぁ?」 魔法アカデミーという学校の地下に封印されていたメイを興味本位で開放してしまい、自分の肉体を奪われたらしい。佳織の魂は無事で、本人の了解を得て話し ているそうだ。 「私はメイに自分の力を使われないように必死で抵抗してました。でも、貴方の肉体を得たメイは強力です。」 「お・・・俺に魔力なんてないだろ?」 「いいえ、潜在的な魔力は相当なものです。何もなければ気づかずに人生を終えてしまう人が多いのですが。とにかく応援を呼ばないと。電話貸していただけま すか?」 内田さんは自分の携帯をアンヌに手渡した。 「有難うございます。」 ダイヤルもせずにいきなり携帯を耳に当てる。 「ca va?oui moi...」 暫くして電話を切り、内田さんにかえすアンヌ。 「有難うございました。やはり数日は掛かるみたいです。」 俺たちは顔を見合わせた。 「数日って・・・あなたはどうするの?どこに泊まるつもり?」 「佳織さんと相談して、佳織さんの家に泊まることに。」 「あなたと高田君が?」 「応援が来るまで佳織さんに体はお任せします。高田さんも、フォロー無しで佳織さんとして家に帰るわけにも行かないでしょうし。こう見えても私、アカデ ミーの特待生で3年の主席なんですよ?これぐらいの魔法は・・・」 見る見る金髪が黒髪に変わる。 「私は妹の・・・そうですね、杏奈ということで。因果のある人が近づくとそう認識するようにしておきますね。では・・・・・・あっ・・・はぁ、はあ あ・・・」 「か・・・佳織?」 「んふう・・・大丈夫。もう私だから。びっくりした〜いきなり頭の中に話しかけられて。」 「大丈夫なの?」 「うん、大丈夫。さ、家に帰ろうよお姉ちゃんッ!」 文:SKNさん
「あの・・・ここが佳織さんの家?ですか?」 高級住宅地を見下ろす丘にそびえ立つ豪邸。 「そうよ、私とお姉ちゃんの家。」 「苗字・・・西園寺さんっていうんだ。」 「うん。ベタでしょ?」 実際にメイドさんと執事さんが存在している。こんな世界が現実にあるなんて。 俺と佳織さんは、ここのお嬢様の佳織・杏奈姉妹としてごく普通に受け入れられている。 「お帰りなさいませ、お嬢様。」 「たたたっ・・た・・たっ・・・いだっ」 「ただいま帰りました。お姉ちゃん、いこ。」 広い。うちのリビングの倍はある。 あのお姫様みたいなベッドで寝るのか? 「か・お・り・おっねええちゃああんっ!!」 「はっ?」 すかさず身をかわしてしまった。 杏奈がベッドに刺さる。 「ひっどぉい、お姉ちゃん・・・」 「か・・・佳織さんはそっちじゃないですか。」 「んふふ、家の中ではちゃんとお互いの役を演じるって約束でしょ?ちゃんと優しい私のお姉さんの役してくれなきゃダメ。」 「かお・・・杏奈?ちょっとキャラかわってませんか?」 「とにかくこっちにきて・・・普通の姉妹みたいに一緒にベッドで・・・」 「どんな普通ですか、それ。」 ドアがノックされる。助かった。 「お嬢様、お茶をお持ちいたしました。」 「ちっ。」 メイドさんがトレーにティーセットとスコーンを載せて入ってきた。何か小さな音が聞こえたような気がするが、気にしないで置こう。 メイドさんがテーブルにトレーを置いて、素早くドアに鍵をかける。 「何やってるのよ佳織!何であなた達が姉妹で私が住込みのメイドさんなのよっ!」 「美夏〜すごい似合ってるわ、キュート!ね?お姉ちゃん。」 「えっ?あ・・・うん。本当だ。可愛いな、そういう服の内田さんも。」 「あぅ?ほ・・・ほんと?そうかな・・・えへへ・・・」 「美夏・・・溶けてるよ?」 「はっ、でもメイドじゃなくて私も姉妹とかに」 「・・・・」 「ちょっと何で胸見るのよ?」 「わかりにくいと思いますので、私(わたくし)が話しているときはこの水色の瞳で・・・黒のときは私、佳織ね。」 「それは判り易くて助かるよ。」 「はいっ。」 「という事はいま俺に抱きついて胸に挟まっているのはアンヌさんってこと、かな?」 「はい。私も常々素敵な御姉様がいたら、って思っておりまして・・・むふんっ。むはあん・・・柔らかくて気持ちいぃ〜。」 文:SKNさん
一体何なの?家族は海外で、一人暮らしだって言ってたのに。 大体、普通の人間が私の術を突破してこの部屋に辿り着けるなんて有り得ない。 女が入って来る。背が高い。この男と同じぐらいありそう。顔立ちも良く似ている。血縁の者である事は間違いなさそうだ。 「何よ、ぼ〜っとして。この建物、誰かが悪戯してあって疲れちゃったわ。」 「え?あ、ああ。」 とにかく状況の把握をする必要があるわね。 「あ、ちょっと電話。」 携帯を取り出して、新しく登録した西園寺佳織を呼び出す。 『はい・・・どなたですか?』 いぶかしげな問いかけを無視し、佳織の中の男の魂に意識を直結して必要な情報を探る。 「あ、高田っす。こないだの委託販売のあれ、完売っす。売り上げは・・・」 関係ない会話をしている振りをしながら、大体の情報は引き出した。 二卵性双生児の姉、芽衣(めい)。私と同じ名前の女。 中学の途中から南フランスの全寮制の学校に留学している。 そして、その学校で両親も教鞭をとっている。 「・・・うん、じゃあ夏コミ頑張ろうぜ。じゃあ、おっつ〜。」 電話を切る。 「何?ナツコミって。」 「え、ああ。最近新しい趣味みつけてさ、本作ってそこで売るんだ。」 「貴方が?ふ〜ん。まあ、趣味を持つのはいいことだけどね。」 「それより、なんで急に帰国を?7月まで帰らないって言ってたよね?正月に。」 「急な用事が出来てしょうがなく、ってとこかな。早い所見つけて連れて帰らないと単位が・・・」 間違いない。この女がアカデミーの差し向けた追っ手。 いい肉体だ。いずれはこの女も私の体にしてやろう。 しかし今は、役目を果たしてもらうとするか。 「あ、もう一軒電話。」 再び佳織を呼び出す。 『な、何なんだ!?訳のわからない話を一方的にしやがって!早く俺の体を返せっ!』 「解った。ちょっとおチビちゃんに代わってくれる?」 『もしもし?メイ、アナタいいかげ・・・』 「追っ手が到着。」 これで全ての仕掛けが発動する。 「おい、杏奈?どうしたんだ?」 「う・・・・くっ・・・・」 電話を落として杏奈が倒れる。 「杏奈ッ!?」 「お・・・姉ちゃん、体が・・・痛い・・・」 全身ががくがくと震え、汗が噴出している。 「大丈夫か?アイツが何かをしたのかっ!?」 「・・・体・・・に・・・何かを・・・仕掛けてあった・・・み・たい。」 のた打ち回るその肉体が、どくどくと蠢動しながら形を変えていく。 「杏奈・・・杏奈・・・」 何も出来ずに俺はうろうろするばかり。 「うふふ、あははっ。これが私のプレゼントよ。」 不敵な笑みを浮かべて俺を見るその顔は、まさしく最悪の魔導師、皆殺しのメイそのものだった。 その目からぼろぼろと涙をこぼし、必死に首を横に振り続け・・ 文:SKNさん
狡猾な女魔導師がただ肉体を入れ替えただけではなかったのだ。 俺たちは思いもよらない出来事の連続で、そこまで考えも及ばなかった。 完全にその魔導師の姿となった杏奈。不敵な笑みを浮かべ、本人の意思とは関係なく官能的な唇が開く。 「まもなく追っ手が来るわ。悪い魔導師の魂は捕らえられて、再び暗い地下へと封印されるのでした。めでたしめでたし、と。ふふふっ。」 うちの高校の校庭ぐらい有りそうな庭を、青白い月の光が照らしている。その追っ手というのはどこから来るのだろうか。 なんとか杏奈を、アンヌさんと佳織の魂を救いたい。 でも何もできない。 せめていち早く追っ手を見つけ事情を説明するぐらいしか・・・ 「ここにいたんだ・・・」 「あ、内田さん。」 白い手すりに並んで寄りかかる美夏。 「なんか・・・すっかり私の本性がバレちゃったな。可愛い女の子、頑張ってたのにな〜。」 「内田さん・・・」 「佳織の顔で内田さんなんて呼ばれると何か変な感じ。あの・・・、うん、あの美夏、って呼んでくれない?」 「えっ?あ、うん。美夏・・・」 「佳織、子供のときからずっとこんな感じで・・・ぎゃーぎゃーやり合ってたんだけど、大好きなんだ、本当は。助けてあげたいの。」 「そうだな、絶対に助けないと。それとさ、美夏って・・・本当に可愛いと思うよ。飾らないままで十分、って俺何を・・・」 顔が熱くなる。月の光というのは何かが有るのかも知れない。 「!?」 美夏の両腕が俺の首に回り・・・ 文:SKNさん
「こほん・・・・」 「!?」 どれ位時間が経ったのかも解らないほど、俺は美夏と痛い位に抱き合って・・・ 「そろそろよろしいですか?子猫ちゃん達。お嬢様と使用人のW禁断の情事、楽しませて頂いて非常に恐縮なんですが。」 いつの間にかバルコニーと同じ高さに人が浮いている。 黒いローブをはためかせ、手には金色に輝く錫杖。 「えっ?姉貴・・・なんで???」 「あら、私も仲間に入れてくれるの?じゃあ用事が済んだらあとでたっぷり遊びましょう♪天国を見せてあげる。」 間違いない。フランスに留学しているはずの姉だ。なんでここに?姉貴が・・・追っ手? 姉の背後に焔の様なオーラが広がる。 「お楽しみの所をお邪魔しちゃいましたが、ちょっとそこを通していただけますか?奥に居る人に大事な用があるので。もう20分もお待ちしたんだけど、終わ りそうもないし。」 「姉さん、俺の話を聞いてくれ!」 「姉さん?非常に残念ですが、私にはそんな爆乳で可愛い妹は居ないわ。俺っ娘ってちょっと萌えますけど。」 「頼む、中に居る、メイに見える人は・・・違うんだ。攻撃しないでくれ!!」 文:SKNさん
姉は俺たちの直ぐ前に立って、俺を見た。 「せっかく欧州魔術評議会とアカデミー理事会の伝言と届け物のついでに、伝説のメイ様とお手合わせできると楽しみにしてたのに。貴女達何者ですか?」 「で・・・伝言?届け物?」 「そう、今から366年前グレゴリオ暦16XX年、評議会は禁じられた暗黒魔法を使用した咎によって魔導師メイの魂の300年の封印を決定しました。」 「・・・あの、もう一回・・・」 「だから、366年前グレゴリオ暦16XX年、評議会は禁じられた暗黒魔法を使用した咎によって魔導師メイの魂の300年の封印を・・・」 「・・・って、過ぎてない?それ。」 「そうなのよ。封印したアカデミーの手違いで、ちょっと66年ほど過ぎちゃってゴメン、って伝言を。」 「じゃ・・・じゃあ、メイはわざわざこんな事しなくても?」 「なんでこんな状況になっているのかその辺、もうちょっと詳しく教えてくれますか?」 「ふ〜ん、なるほどね。それで晶はそんな巨乳で可愛いお嬢様の肉体を乗っ取って思いのままに楽しんでるってわけね。」 「なっ・・・変な言い方するなよ!」 「そしてこっちが私が連れ戻しに来た、ちびっ子アンヌっていうわけか。なるほど・・・面白い術が掛かってる。解くわよ?」 「・・・うにゃあ・・・・タカダさまぁ・・・」 メイそっくりの肉体の背中が裂け、中から杏奈が出てくる。 「これも禁じられた古代魔法の応用ね。自分の肉体の一部を使って分身を作る秘法。でも分身には魂が無いから、あなたが中に仕込まれたのね。」 杏奈の抜け出た後の肉体は着ぐるみののようになってしまった。 「とにかく、一旦皆自分の肉体に戻します。時間が経つと器に合わせて魂も変質してしまうから。」 「自分の・・って、俺のカラダはまだメイが?」 「晶はしょうがないから、これで我慢しなさい。本人に届ける予定の・・・」 芽衣が手をかざすと、バルコニーの床に魔方陣のようなものが浮かび上がった。それが一際明るく輝き、中心部から棺桶のような物体が。 「魂と分離して保管してあったメイ本人の肉体。」 「えええっ?俺がこの・・・エロ金髪に!?」 「大丈夫、一時的にだから。メイだって自分の肉体が戻るって判れば晶の体にいる理由なんて無いでしょ?」 「まあ、そうだと思うけど・・・・」 なぜか一抹の不安が・・・ 「そしてこのメイの脳には、当時稀代の魔術研究家として知られたメイの暗黒魔術についての記憶もあるはず。試してみて損は無いわよ?出来れば私が試したい ぐらいだわ。禁じられた暗黒魔法の数々・・・」 「いえ、俺は結構ですから。って・・・何だよその目は?」 「あ〜あ、戻っちゃった。」 佳織はなぜかちょっと残念そうだ。 杏奈はその佳織にべったりとくっ付いている。 そして俺は自分の体を見下ろした。 「はぁ・・・」 文:SKNさん
「だってあなたが結構です、っていうから。」 悪徳商法のテレアポ並の強引さだ。 しかしこの肩に掛かる重量、佳織さんほどじゃないけど結構な大きさだ。そしてなんだろう?今までは他人の体を乗っ取っているって違和感があったのにまるで 無い。しっくりくるっていうか、まるで元から自分の体のように感じてしまう。肉親、しかも双子だからだろうか。 「晶・・・くん、大丈夫?」 「あ・・・美夏、私は大丈夫よ・・・う?お・・俺はだ、大丈夫・・・」 おかしいぞ?いま口調が勝手に・・・ このままでは取り返しの付かないことになりそうな気がする。このままツンキャラとして生涯過ごすのはまっぴらだ。 メイの体で陶然としている姉。 「素晴らしい・・・この知識があれば世界を3回ぐらい征服できちゃうわ。これこそ求めていたもの。」 「何でもいいから家に帰るわよ!か、帰るぞ・・・姉貴。とっととメイの話をして体を取り返す!」 「・・・で、評議会とアカデミーはどんなオトシマエ付けてくれるって?」 自宅に帰ると、メイは録画したプリキュ●とかいうアニメの最新話を鑑賞中だった。 「それは他人の体を奪って、多少の禁呪を使用したことでチャラということになりません?」 答えるのは当の本人本来の姿、伝説の魔導師メイの体の姉だ。 「は〜あ、もっと早く言ってくれなきゃ。暫くは無理。万が一に備えて、魂をこの体に合わせて完全に同調させちゃってるし、エヴァ初号機なら暴走するぐらい に。無理に魂を抜くと肉体に・・・」 俺は唾を飲んだ。 「ま、まさか死んでしまうとか?」 「猫の耳と尻尾が生えて語尾にニャンがつく罠を。しかも何重にも防御魔法をかけてあるから、順番に解いても数ヶ月から1年はかかる。」 女子高生、魔女っ娘、メイドさん、何かがまだあると思ったらこれですか・・・ 「貴女はこの自分の肉体に戻りたくないのですか?そしてこの素晴らしい知識が。」 「ん〜、全然。いるなら貴女にあげるよ?もう研究し尽くしたし。二代目皆殺しにメイになったら?譲るから。」 なんという・・・そんな事言ったら姉が・・・ 「本当ですか!?いいんですか?」 って、こうなるだろう。 「どうぞどうぞ。ナツコミの準備も忙しいし。コス写真集のモデルも探さないと・・・ん、なんだ身近にいっぱい居るじゃん。自分だけだと変化が乏しいから な〜。」 まさか・・・俺の体で恥ずかしい格好をして写真に写っているわけじゃ? 「あ、急ぎだったから魂を合わせるに肉体のほうもちょっといじったんだ。」 シャツの前をはだける。なんだ・・・何かが違う。ピンクの乳首にかすかに膨らんだ胸、ほっそりとした体つき、すこしくびれたウエスト!?よく見ると顔の輪 郭も細く、柔らかくなってるっ!? 文:SKNさん
画:紅珠さん 「たか・・だくん・・・高田くぅん・・・」 狭い密室の中で、俺と美夏の吐息だけが響く。 何度も確かめるようにキスを交わし、体の温もりを感じ合って・・・ 『・・・−ルフランス航空・・3便パリ行きにご搭乗の・・・』 「・・・あっ、美夏?行かないと!」 「うぅぅ・・うん。」 美夏の手が俺の胸から離れた。 個室のドアを開くと、洗面台の所に居た人々が一斉に俺たちを見た。 「あ・・はっ。」 照れ笑いをしながら美夏の手を引っ張ってトイレから脱出。早く姉貴たちのところへ・・・ 「うあっ?」 ブラが全部上にずれている。美夏・・・触りすぎだ。 ゴールデンウィークが終わった成田空港は人影もまばらだ。 「あ、来た来た。別れを惜しむのもいいけど空港でサカってると恥ずかしいわよ?」 メイとなった姉が全て見透かしたようにからかう。 俺の体にメイが掛けた魔法は本当に強力で、下手をすれば数年掛からないと解けないということが判り、話し合いの結果メイと姉が二人がかりで解除作業を行う ことになった。 姉はわずか3年で7年間の全課程を修了し、この7月には卒業して帰国する。それまでに二人が俺の体を何とかする間、俺は姉の代わりに高田芽衣として卒業式 まで魔法アカデミーに替え玉として送り込まれるハメになってしまった。 「夏休みになったらちゃんと帰ってくるのよ?杏奈。あなたは私の大事な妹なんだから。」 「うん、うん、うんっ!待っててね。お姉ちゃん。」 この二人は本当の姉妹のように仲良くなってしまった。同じ肉体で過ごしたのが原因かもしれない。 メイがにやにやしながら耳元で囁いた。 「じゃあ、芽衣、頼んだわよ?寮には私の可愛い子猫ちゃんたちがいっぱい居るから、ちゃんとお別れのサービス受けて来てね。」 何か日本語の意味が良くわからない。 「あの、大丈夫かな?俺フランス語判んないし。」 「大丈夫よ。なんで私がメイの記憶を読めるんだと思う?記憶は魂にも脳にも同時に記録されているの。あなたの頭の中の脳味噌には私が入ってるのよ。いい? こうやって・・・」 メイの指が俺の眉間に・・・ 「あっ・・・」 何かが頭の中で繋がった。 「・・・ふふ、本当、これで完全に私ね。帰ったら順番に子猫ちゃんたちを可愛がって・・・・うああああっ!?」 ヤバイ、姉貴に乗っ取られそうになった。 「大丈夫よ、魂が自分なら、脳はその補助装置みたいなものだから。ほら、いかないと!」 杏奈の手を引いて歩き出す。 美夏が泣きながら手を振りまくっている。 遠ざかる日本の風景。 そして物語は夏へと向けて・・・ 文:SKNさん
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