ある忍びと主の日常
 作:K27


 朝起きると、まず朝食を食べる。制服に着替える。そして学校に直行なのだが、一つだけ問題がある。
――生徒が学校に登校すると言う普通の日常。その中で何故か俺だけ目立っている。皆の視線が矢のように降り注がれる。
その理由は明らかだ。周りにいる誰よりも不自然だからだ。もちろん俺がでは無い。その原因とは『コイツ』の存在にある。

「何を見ているのですか? 主殿。女子のスカートばかり見て……まったくイヤラしい」
「ちょっと待て! 誤解するんじゃねえヨ。俺は神に誓って断じて見てねえから! ホントだからな。それよりもいい加減付いてくるなよ」
「そうは行きません。主殿はワタクシ、雛菱(ひなびし)がお守りすると今は亡き、旦那様に誓ったのですから」
「オイィ。俺の親父を勝手に殺すなよ! つーか……はぁ?」
「どうしたのですか、主殿! 大丈夫ですか! 御気を確かに」

 頼むから揺すらないでくれ。気持ち悪い。ああ神様。どうかこの愚かなクノイチを現代から過去の世界へと飛ばして下さい。
俺は天を仰ぎ、両手を合わして嘆願した。……当然の事ながら、何も起きない。それが駄目なら、せめて願わくば普通のカッコにしてくれると助かるんですが。いやマジデ。
ホント可愛いのに勿体無い。

「いい加減、帰ってきてくだされ。主殿」
「…………」
「おはよう! 今泉(いまいずみ)くん」
「!」

 オオオ! この声は全生徒が憧れる、学校のマドンナで友人の雪花(せっか)さんじゃないか。俺は放心状態から一気に脱すると雪花さんのいる方を笑顔で振り向いた。
 俺の笑顔に答えるかの様に彼女も愛らしく微笑んでいる。それに今日も彼女のチャームポイントのツインテールがピョコピョコ揺れている。ついでに胸も揺れている。

「オハヨウゴザイマス! 雪花さん」
「フフッ、朝から元気だね。今泉くんもクノイチさんも。さっきまでボーっとしてたけど、大丈夫?」
「大丈夫デスヨ。これくらい雪花さんの笑顔がみれれ……」

 俺が楽しく雪花さんと会話をしていると横から雛菱が無理やり会話を遮ってくる。

「ムッ、御主如きが主殿を気遣うなんて無礼ではないか!」

 『パン』と乾いた音が辺りに響き渡る。えっ!? それと同時に周りの生徒が足を止めた。彼女を見ている。雪花さんの右頬が朱色に染まっていく様子を。
ヴォイ! お前いきなり何やっちゃってんの!? しかも平手打ちした。 つーか、ホントにいきなりの事で雪花さん固まっちゃったよ。
 ウワ、泣いちゃっている。不謹慎だけど一瞬ドキっとしちまったよ、俺。イカンイカン。それより、な、何てことを……。

「アタシはそんなつもりじゃ……」
「フン、抜けぬけと……恥を知れ。御主の魂胆などみえみえじゃ。……あろう事か主殿を誘惑するなど……けしからん!」

 そう言うと雛菱は懐から短刀を取り出す。どうでもいいが、今泉家の家紋入りだ……って、ドウデモよくねぇ! 
 コイツがそれ使って刺したら、俺まで疑われる……じゃなかった! 雪花さんを殺す気か! 江戸時代じゃないんだぞ!
 危ねぇ。目つき怖。完全に殺る気だよ、コイツ。マジでどうしよう。やべー俺まで完全にパニくってる。

「この場で腹、掻っ捌いてくれる」
『キャーー』

 雛菱が短刀を抜くと同時に周りの生徒の阿鼻叫喚の嵐。ついでに俺も。雪花さんは……あっ! 逃げた。しかも速い。赤くも無いのに普段の三倍だ。
スゲーや雪花さん! だが、それに付いていく雛菱はもっと凄い。何となく癪だが。

「戦いの最中に背中を見せるとは……言語道断!」

 ……それ以前に戦いでは無いと思うんだけど。つーか。一方的な殺人じゃないか? コレって……。
――学校の玄関に入る直前に雪花さんは斬られた。それも背中からバッサリと。雛菱にとっては残念な事に腹では無かった。彼女は舌打ちをして悔やんでいるようだ。
俺は慌てて彼女に駆け寄る。何故か血は出ていない様子。やりやがった。俺の雪花さんを……よくも。

「敵将討ち取ったり。やりましたよ! 主殿」
「ふ、ふざけんなぁーー!」

 雛菱が勝ち誇っている所に、俺は後ろに回り込み、走りこみシャイニングウィザードI2(プロレスラー武○敬司の技に俺が改良を加えたモノ)を入れる。
傍から見ると、巧く決まった様に見えたのだが。

「イタっ!」

 痛いと言う割には見事な受身を取る雛菱。やっぱり全然効いてない。完全にダメージ0だろ、お前。

「よくもぅ、やってくれたなぁ。雛菱ぃ?」
「待ってくだされ、主殿。よく見て欲しい」

 俺はもう一度、雪花さんを見てみた。額に汗が滲み出ており、微かだが呼吸はしているようだ。よかった生きている。 
 俺はホッと胸を撫で下ろす。動かないところを見ると気絶しているのか。俺は確認ついでにソッと胸に手を伸ばす。決してやましい気持ちがある訳では……。
 ああ?! 駄目だ。俺には出来ない。思わず目を隠す俺。横から雛菱の声が聞こえてくる。

「ワタクシが責任を持って、雪花殿をカンビョウいたしまする」
「エッ、ってオイ!? ごほ、ごほ」

 俺がちょうど、目を見開いた時。雛菱は雪花さんを軽々と背負っていた。そしてアイツは、俺の目の前からいきなりドロンしやがった。
 シマッタ! アイツ……雪花さんをどうするつもりだ!? 俺の脳裏に嫌な映像が一瞬過る。マズイ……このままじゃ、俺まで犯罪者のレッテルが張られちまう。
 あたふたしている内に学校の鐘の音が鳴った。焦っても仕方が無い。今はとりあえず、教室に向かう事にするとしよう。廊下を歩きながら俺は冷静になる事に努める。
 よくよく考えたら、まあ、看病って言ってたし。いくらアイツでも病人相手に無茶はやらないだろう。うん、絶対そうだ。大丈夫。俺はとにかくプラス思考で考えた。
 しかし、どうにも腑に落ちない。雛菱の言葉が喉に引っかかった魚の骨のように思えたからだ。
……まさか、あっちの看病じゃないよな。『完病』(病を完遂する事)。俗に言う『死』である。またもや、俺の脳裏に映像が流れた。さっきより鮮明だ。
それと同時に、嫌な汗が一斉に体中から噴出すのを感じた。そんな時だ。背中を誰かに叩かれたのは。

「うひぃ!」

 俺は後ろを恐る恐る振り返る。何故かそこには連れ去れた筈の雪花さんがいた。

「せ、せ、せ……」

 俺は旨く声が出なかった。あまりの驚きに頭が混乱していたからだ。その様子を見た、雪花さんが先に声を掛けてくる。

「今泉くん、キテ」
「エッ?」
「ハヤク」

 雪花さんはそう言うと、俺に向かって手招きをする。俺はとにかく彼女の後を素直に付いてってみた。
――立ち止まると、なにやら周りを確認している。そして何故か近くのトイレを覗き込んでいる。どうやらトイレに誰も居ないのを確かめていたようだ。
 するといきなり俺の手を掴み、無理やり近くの女子トイレに引きずり込んだ。何がどうなっているんだ!? 俺を個室に連れ込むと彼女はいきなり俺にキスをしてきた。鍵もしっかりと掛けて。

「うぐぅ……うんん……」

 抵抗できなかった。いや、抵抗したくなかった。気持ちが良くて心地よい。それに嬉しかったからだ。お互い服が乱れていく中。次第に俺は彼女の腰に手を廻していた。自分でも信じられない。彼女の壊れそうなくらい柔らかい身体。
 俺はそれを手馴れたようにソフトに扱う。肌に触れ合う胸の感触。俺は思わず掴んでいた。彼女は喘ぎ声を上げる。透き通ったような声だ。俺の目線には可愛らしい唇がある。柔らかい唇から流れる彼女の唾液。俺はそれを上手に綺麗に舐め取る。
 至高の味がした。彼女の汗と二人の唾液が混ざり合い高度な液体となっていた。それは凄く濃厚で甘酸っぱいんだ。彼女はお礼にさらに激しいキスを俺に見舞う。
 俺はくぐもった声しか出せない。彼女の舌が俺の喉の奥まで侵入してきたからだ。不思議とそんなに苦しくは無い。いつのまにか敏感になってくる俺の身体。ズボンが破れそうだ。

「あううぅ」

 俺は精一杯、声を出そうとする。だが言葉にはならない。彼女は察してくれたのか。小悪魔的な笑みを浮かべながら、俺のズボンのファスナーを降ろす。
 解放されたムスコ、凄まじい匂いと共に。先端から汁が出ている。雪花は俺の膨れ上がったムスコを優しく扱い。そして、彼女のたわわに実った果実で挟んだ。
 雪花の胸が上下するたびに俺のモノは、酷く興奮する。下腹部からこみ上げてくるモノが今にも彼女の顔へと振り注ごうとした時。雪花は咄嗟的に俺のムスコを口に含んだ。
 ――そんな……嘘だろう。憧れの雪花さんが俺のムスコを咥えている。
 彼女の舌が絡みついた、次の瞬間。彼女の口内は俺のモノで満たしていた。口元からホンの少し漏れる、白濁な液。でも彼女はそれを吐き出さなかった。あろう事か彼女は俺にニッコリと微笑み、美味しそうに飲み込む。
 甘美なフルーツを食べるみたいに。――いつも、美しく可憐な彼女のイメージが俺の中で消え去っていた。妖艶、淫乱……それは、彼女の為にある言葉だと思い始めている。

「美味しいね。今泉くんのコレ」

 悪ふざけをする少女のように彼女は俺のムスコの先を指で弾いた。節操の無い俺のムスコはすぐに勢いを取り戻し始める。

「ウフフ。元気だね。それじゃ……」

 彼女はそう言うと、俺のムスコを掴み、彼女の秘部へと導く。

「ンン! スゴイよ。今泉くんの半身がワタクシの中で暴れていますぅ。あっ、あふ。ひぅ!」
「せ、せ、雪花さん! 雪花さん! す、好きだぁーーー!」

 俺が今まで言えなかった言葉が口から飛び出した。突然の事に彼女はビックリしている。俺はそんな彼女の唇を無理やり奪った。
 さっきまでと味が違っていた。ヒドク苦く、今まで感じた事がない。ふと、雪花を見た。彼女の瞳から一筋、涙が零れ落ちていた。
 嬉涙か? 違う。あの表情は、まさか悲しんでいるのか。――そういえば何かが違う。違和感がある。そうか、やっぱりな。だったら、俺が本当に愛しているのは雪花さん……彼女じゃない!

「雛菱……好きだよ」
「!?」

 俺が彼女にそう言うと彼女の動きが静止する。彼女の顔が熟したリンゴのように赤く鮮やかに染まる。

「今、何と仰ったのですか? 今泉くん」
「もう一度、言ってやるから、よく聞けよ。お前が好きだ……雛菱」

 俺が彼女に対しての愛の言葉を口にすると、彼女の表情は、ぱあっと明るく輝いた。――しばらくして、俺達は乱れた息と制服を整える。

「いつから……分かっていたのですか?」
「お前の下手な演技だ。分からない方がどうかしている」
「流石です。主殿ぅ?」
「な、泣くなよ。雪花さんの顔で。俺のムスコがまた起っちまうじゃねえか。……今度は本当のお前とヤりたいんだからさ……」
「今何と?」
「何でもネエヨ。それより……」

 俺は気になっていた事を雪花(雛菱)に尋ねた。

「お前の姿どうなっているんだ。それに本物の雪花さんは?」
「ひゃぁ、いっぺんに聞かないで下され。そ、それに、近いです……主殿」
「うっ、スマン。で、でも、いつもの事じゃないか」
「そうですけども……そうです! 実際に見てみれば分かります」

 雪花(雛菱)はどう言う訳かいきなり制服を脱ぎ始める。

「お、お前! 何で脱ぐんだよ」
「黙って見ていてくだされ。主殿」
「……うん」

 俺は彼女の言葉に頷くと黙って見る事にした。従者を信じるも主の勤めだしな。――手早く、制服のブラウスやスカート――ブラジャー、パンティ等の下着類を全て脱ぎ去る。
 そして彼女は一糸纏わぬ姿になる。とてもじゃないが目のやり場に困る。タダでさえ、個室は狭いのに。こんな事だったら出るべきだったかな。
 おいおい、割れ目がみえちゃってるよ。他人の姿だから恥ずかしくないのか。

「なっ!?」

 俺が一瞬、別の所に気を取られていると、雪花さんの背中がパカっと割れた。彼女は自分の首の後ろを両手で握り締め。一気に前へと剥がした。
 すると中から、美しい黒髪の女性。いつも俺の側を離れない従順な奴。現れたのは、まさしく雛菱だった。俺は信じられない光景を目の当たりにしている。
 彼女は彼女(雪花)の全て脱ぎ捨てると、皮は重力を失ったかのように潰れた。

「ふぅー。流石に中は少し暑い」
「うぇ? 本当にどうなっているんだ」

 俺は素っ頓狂な声を出しながら、雛菱の脱ぎ捨てた雪花さんの皮らしきモノをマジマジと見た。
 触ってみると、ゴムの様な手触りなのだが。それにして本物の人間のようだ。まるで生きているみたいだ。
 何となく、中を覗き込んでみた。嘘だろ……人間の臓器がビッシリとある。平べったくなっているが、どう見ても臓器だ。
 思わず、俺は悲鳴を上げそうになる。しかし、彼女が俺の口を柔らかい掌で塞ぎこんだ。俺は思わず彼女を見た。
 人差し指を立て、それを俺の口元に持っていく。俺の唇を指で動かして。どうやら、『静かに』と言っているようだ。雛菱は既に忍び装束に着替え終わっている。

「お静かに、主殿。少し廊下がザワついて来ました。それにこの皮は本物の雪花殿でございます」

――何だって!? 

「大丈夫です、主殿。死んではいません。いわゆる、仮死状態と言います。元に戻そうと思えばいつでも戻せます」
「ふも、ふごふむぅ」(訳 本当に戻るのか?)
「はい。我が秘伝の忍法。皮一枚の術でございます」
「ふげふもふへぃがほわふひぃなふはほ」(訳 お前絶対に俺の言っている意味が分かっていないだろ)
「有難き幸せ。ふむ、そうですか。やはり、ワタクシの目に狂いは無かった。主殿は雪花殿に恋していたのではなく。雪花殿になりたかったのですな」
「ほふとまへ! ふげふもひふれふてぃるんは。ひひかふふもせ」(訳 ちょっと待てぇ。何勝手に話を進めているんだよ。いいから離せ)
「はい。その為にワタクシが肌身離さず暖めておりました」

 頼むから少しは俺の話を聞いてくれ。
 ――俺を無視すると雛菱は俺の服を無理やり脱がしに掛かった。片手で俺の口を押さえ、片手で俺の服を上手に脱がす。普通出来る芸当ではない。
 無抵抗な俺を裸にすると、すぐさま先ほどの彼女の皮(雪花)を拾い。足先から巧く履かせてきた。しかも体中を撫でるようにして。妙に気持ちがいい。
 皮の中はしっとりとしていた。自分でもびっくりしている。俺の脚は男にしちゃあ、細いほうだが、彼女の脚にピッタリと収まる。まるでシンデレラの靴の様に。さしずめ、俺はまだ変身途中か。
 素早い手付きで上半身も着せる――自分の胸に妙な重さ(これが巨乳と言う奴か)を感じる頃には。もはや、俺の皮膚が露出しているのは、顔だけになっていた。すぐさま、彼女は慣れた手つきで俺に雪花の頭を巧く調整しながら被せる。最後に体中をペタペタと触ってくる。
 馴染ませているんだろうか。

「おっと、忘れる所でした」

 何を思ったのか、雛菱は俺の股間を指でグリグリと弄りはじめる。口から声が漏れる。そんな嘘だろ。俺の股間(今は彼女の)から愛液が滴り落ちている。
雛菱はヌラヌラと光る指先を俺に見せるとそれを口に含んだ。チュブチュブと舐めている。

「主殿の汁は最高に美味です」
「!?」

 この言葉を聞き、俺は顔が火照るのを感じた。しばらくして――どうやら終ったのか俺の口から手を離した。俺はとりあえず文句を言おうとするが。

『何するんだよ。エッ!? 声が……』
「フフ。これぞ、忍法声写しの術でございます」

 俺は胸がドキッとした。この声って……。俺の口から女性の様な透き通った声が出た。

「もちろん雪花殿の声でございます。そして、えい!」

 彼女の掛け声と共に彼女は俺の額に指を当てた。視界がぐらつく。

「うう……何するのよ。クノイチさ……ハッ!」
「これで、完璧に雪花殿ですね。主殿」
「一体、どう言うつもりよ。クノイチさん!」
「従者は主の為に。ワタクシばかり、楽しんではいけないと思いまして。前々から主殿は雪花殿になりたいのだと思っていましたから」
「どうして、そうなるのよ! ワタシはアナタが好きなのに」
「知っていますよ。でも、それなら、どうしてサレルがままに雪花さんになったんですか?」

 うぐ! 痛いところを衝いて来やがる。確かにそれは俺の隠れた本心かも知れないな。学園のアイドル――雪花さんになってみたいと言うのは。

「それに、ご安心くだされ。もう嫉妬などいたしませんよ。主殿の本音が聞けたのですから」
「クノイチさん……でも、今泉くんが今度はいなくなるんじゃ……」

 俺が全てを話し終わる前に雛菱は懐から誰かの皮を取り出した。




 ――後で楽しみましょうね。主殿……。





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