皮男 外伝?



前回までのあらすじ

ある機械を使ってクラスのアイドル、中川美也子の皮を作った宇藤くん。
自分はその皮を被り、また彼女に自分の皮を被せて、まんまと入れ替わる。

気持ちイイこともしたし、自分の身代わりは皮に任せて、これからは中川さんに成りすますのであった・・・。

ついに入れ替わりを果たした宇藤くん。
これからは中川美也子だ。

自分のことは皮男に任せてあるので、なんの心配もない。

多少の不安もなくはないが、それ以上にワクワクしていた。

この振り上げた手も、ステップを踏む足も、アイドルのような顔立ちも、可愛い声も、着ている制服も下着に至るまで、ぜ〜んぶ中川美也子のものだ。

「え〜と、なんだっけ・・・?」
たしか部活に行く途中だったはず。

自分のことはいろいろと調べてある。
文芸部だ。

あたしは中川美也子なんだから、中川美也子として生活しなくちゃならないのだ。

あたしは部活に参加するため、拠点としている図書室に向かった。


図書室入り口

「あ、美也子ちゃん。やほー」
あたしが扉の前に立つと、後ろから声をかけられた。

振り向くと、そこには小柄な女の子がいる。
えーと、確か同じ文芸部のヤツだったよな。

「あ、ゆみちん。やほー」
あたしは名前を思い出して、応じた。

「ちょっと遅れちゃったね」
「そだね」
あたしも彼女も、部活の開始時間よりやや遅くなってしまった。

まあ用事があったからなんだけど、文科系は体育会系と比べて、そこまで時間に厳しいわけではないのでまあ許容範囲かな。

それより、知り合いに会ってもまったく疑われていない様子に、内心ほくそえんでいた。

やった、バレてない!

まあ、あたしは中川美也子なんだから、当然なんだけどね。

図書室の中に入ると、一角に部員が集まってミーティングをしていた。
「遅いよー」
「すいませ〜ん」
「すみません、ちょっと用事があったもので・・・」

言いつつ、あたしたちは席に着く。
議題は、今後の活動内容とテーマに関して。

・・・聞いてはいたものの、ほとんど頭に入ってこなかった。
そういえば、文芸部って普段どんな活動をしてるのか、名前からじゃわかりにくいよねー。

「・・・が、来月開催される予定です」
「中川さん、楽しみにしてたでしょ?もうすぐ目録でるわよ」
「え、あ、はい」
いきなり話を振られたので、ちょっと焦った。

「美也子ちゃん、行くんでしょ?なにか掘り出し物があったら、押さえといてね」
「あ、うん」
あたしは生返事をした。
なんのイベントだろう。
心当たりは無いなー、当然かもだけど。


部活を終えて帰宅する。
道すがら、ちょっと考えてみた。

あたしにはまだ足りないものがある。
この先ずっと中川美也子をやるなら、それを補わなきゃならないんだ。


自宅

「ただいまー」
「おかえり」
自宅に帰ってきた。
ごく普通の一軒家だ。
部屋は2階かな?

階段を上がると、「MIYAKO」と書かれた札を下げてある部屋があった。
どうやらココらしい。

ちょっとドキドキしながら中に入ってみる。
自分の部屋なんだから遠慮なんかする必要はないんだけど、それでもドキドキする。

広さは6畳くらい。
ベッドと机、衣装ケースに本棚といろいろ置いてあるため、あまり広くは感じない。
ピンク系とかフリルとか派手なものもあまりないので、女の子らしさも薄い。

あと、ちょっと散らかってる。

うーむ、現実はこんなもんか。

でも、ここにあるものは・・・そう、全部自分のものなのだ!

ワクワクしながらさっそく物色を始める。
どこに何があるのか、把握しとかないとね。

クローゼットを開ける。
私服が吊るしてあった。
ワンピースやスカート、Gパンなどカワイイものからカジュアルなものもある。

次は衣装ケースだ。
中を見て、心拍数が上がった。
そこにはTシャツと、それに下着などが入っていたのだ。
こちらはきれいにたたんである。
おそらく母親が整理してくれているのだろう。

結構、数あるなぁ。
男のときは、下着なんて4〜5枚で回していたのだが、女の子はそれよりももっとたくさん持ってるもんなんだな・・・。

種類もいろいろあった。
派手なもの、地味なもの、色は明るいものが多い。
でも黒もある。

しばらく眺めていたが、全然飽きなかった。
・・・で、ちょっと気づいたことがある。

パンツによって、使用感というか着用感というか、くたびれ具合が違うのだ。

赤とかピンクとか、あと黒も、カワイイやつとか派手めのものはあまり使われた感じがしない。
逆に、白とか縞々とかワンポイントなどは結構穿かれてるっぽい。

普段ばき用と、特別な日用で分けてるってことかな?

ひとつ取り出してみる。
水色の縞模様で、レースのついてるやつだ。
普段ばき用っぽい。

男のトランクスに比べると、布地が少ない。
小っちゃいなー。

クロッチを確認すると、何度も使われたらしく、ざらざらと毛羽立っていて、ほんのり黄色い染みもあった。

明日はこれ穿いていこうかな。

次の引き出しにはブラジャーが入っていた。
数はあるが、パンツほどではない。
これも使い込まれているものと、そうでないものがあった。
また、バラになってるものも結構ある。

女の子の下着は、上下で1セットになってるものかと思っていたが、組み合わせは意外にテキトーなんだなー。

さて、衣装ケースを閉まって今度は、と。
ベッドに目を向ける。

ピンク色のスウェットの上下が無造作に置かれていた。
着替えたとき、脱ぎ散らしたような感じだ。

ベッドに飛び込む。

女の子のいい匂いがした。
今日からここで寝るんだ。

スウェットを引き寄せ、顔をうずめた。
すうぅ

何日か連続で着てるらしい。
ベッドよりも濃い匂いがした。

あー、したくなっちゃったな・・・。

『ただいまー!』
どたどたどた
バタン

元気な声と、階段を駆け上がってくる音は、そのまま隣の部屋に入っていった。

突然のタイミングにびっくりして、あたしは我に返る。
よっと。
ベッドから降りた。

とりあえず着替えちゃおう。
あたしは制服を脱ぎ始めた。

まずはブレザーの上着を取る。
部屋を見回してハンガーを探すが、見当たらない。
クローゼットの中かな?
とりあえずベッドの上に放り投げておく。

次にリボンタイをほどき、首から抜いた。
これもベッドに放る。

スカートに手をかけた。
チャックを開け、下におろす。

スカートのチャックは側面についている。
男なら何かが引っかかるところだが、今は女だ。
でも、ちょっとお尻が引っかかった。
ズボンを脱ぐのとは、やはり感覚が違うなぁ・・・。

下を向くと、パンツが見えた。
うすいピンクのナイロンパンツだ。

学校で入れ替わったときは、テンパっていたのであまりじっくり観察する余裕はなかった。
でも、いまは自宅の自室だ。

パンツを広げて中を覗いてみる。
もじゃもじゃが見えた。

考えてみれば、このパンツは学校で着替えた時点で使用済みだったんだよな。
中川美也子の秘部が触れたところに、いまあたしの秘部が触れている。

そう考えると、すごいエッチな気分になった。

シャツを脱ぎ、ブラをあらわにする。
やはりパンツとお揃いではない。
白地に青の水玉の、可愛いブラだった。

しばし上からの絶景を愉しむ。
自然と手が胸のところにいき、ブラの下から手を入れようとしたところで、

バタン!
「おねぇちゃんいる!?」
元気な声の主が入ってきた。

「あ、着替え中・・・?まあいいや、今日はあたしが先にお風呂入るかんね。いい?」
「あ・・・うん」

あたしが返事をすると、彼女は部屋を出ていった。
「おかーさーん、ごはんまだー?」

・・・動けなかった。
心の準備をさせてくれない娘だなー。

まあ、してるとこを見られなくてよかった。
興を削がれてしまったので、着替えを続けよう。
スウェットを手に取り、それを着る。

さっきの元気な娘は、あたしをおねぇちゃんって呼んでたな。
そういえば妹がいるって言ってたっけ。

たしか美香ちゃんっていったかな。
会うのは初めてだ。

短く刈り込んだ無造作ヘア。
浅黒い肌。
筋肉質だけど、スレンダーな体。

なにかスポーツでもやってるのかな。
ちょっと元気すぎる気もするが。

そのうち彼女の皮も作って、美香ちゃんを体験させてもらおう。

さて、ごはんまでまだもうちょっと時間があるようなので、あたしは机に向かった。
そこには、ノートパソコンが置いてある。

それを開けて、電源を入れた。
今垣間見る、中川美也子のプライベート。

起動すると・・・パスワード入力画面だ。

指が止まる。
パスワードなんて知らねーや。

がっかりして電源を切った。

仕方ないので、夕飯までマンガを読んで過ごした。


「ごはんよー」
「はーい」
夕飯の支度ができたみたいなので、階下に下りる。
妹の美香ちゃんは、すでに席に着いていた。

『いただきまーす』
食事が始まった。

父親の姿がない。
まだ帰ってきていないのだろうか。
いつも3人で夕飯を食べてるのかな。

食事中、美香ちゃんはしゃべりまくっていた。
学校のこと、部活のこと、友達のこと。

それを聞きながら、適当に相槌をうつ。
おかげでだいぶ彼女のことを知ることができた。

「おねぇちゃん暗いよ、どうしたの?」
「ん、そう?どうもしてないけどな」
「だって、さっきからほとんどしゃべってないじゃん」
「あんたと比べたら、みんな無口になっちゃうでしょ」
「あははは、いえてるー」
ウケた。
おしゃべりだという自覚はあるみたいだな。

そこで母親が会話を割ってきた。
「それより美香。あんた汗臭いんだから、早くお風呂入っちゃいな」
「あー、今日もすっげー汗かいたんだよねー。でもデオドラントしてるから、そんなに臭わないでしょ?」

確かに全然気にはならない。
むしろ制汗剤のいい香りがする。

「じゃ、とっとと入っちゃいますか」
「あんまりお湯汚すんじゃないよ」
「はいはい」
「美也子も、そのあと続けて入っちゃって」
「はーい」

食事を終え、とりあえず部屋に戻る。
美香ちゃんがお風呂を出るまで、ちょっと手持ち無沙汰だ。

携帯を取り出す。

あたしは宇藤くんに電話をかけた。
数回のコールのあと、彼が出る。

『もしもーし、何?』
「あ、ちょっとお願いがあるんだけど・・・」
『ん?』
「あの機械、明日持ってきてくんない?」
『ああ、いいよ。わかった』

あたしがあたしでいるためには、あの機械が必要なのだ。
今日はそれを痛感した。

「で、どう?そっちの様子」
『別に、どってことないぜ。いつも通りだ』
「そ、よかった」
『そっちはどうなの?』
「うん、楽しいよ。念願だった女の子にもなれたしね。ちょっと問題もあるけど」
『ふーん』

バタン!
「おねぇちゃん、お風呂あいたよ。あ、電話中!?」
「あ、ごめん、ちょっと切るね。アレよろしく」
『あいよう』
「なになに、彼氏?」
「そんなんじゃないわよ、入ってくるならノックくらいしてよ、っていうかアンタそのカッコ何!?」

美香ちゃんは、タオルケットを首にかけているほか、なにも身に着けてない。
毛が丸見えだ。

「やー、ごはん食べてそのまま風呂場に行っちゃったから、パンツ取ってくるの忘れちゃって」
「早く出てかないと、写真撮るわよ」
あたしは携帯を構えた。

「ひーw」
慌てて彼女は去っていく。

ずいぶん開放的な娘だな。

さて、風呂か。
あたしは着替えを持って、脱衣場に入った。

壁際に洗濯機がある。
脱いだものは、ここに入れるのかな。

中を覗くと、洗濯物が入っていた。
一番上に、美香ちゃんが穿いていたであろう、パンツがある。

一番最後に脱ぐものだから、洗濯槽の一番上にくる。
理屈には合ってるな。

拾い上げて眺めてみる。
猫のイラストの入った、綿のパンツだ。
小っちゃい。
よくこんなの穿けるよなー。

中を見ると、黄色く汚れていた。
部活で、激しい運動をするからかな。

ニオイは、なんか制汗剤の香りがした。
スカートの中に噴いてるんだろう。
ガニ股でスカートの中に手を突っ込んでる姿を想像して、笑ってしまった。

パンツを洗濯槽に戻して、あたしも自分の着てるものを脱いだ。
それを洗濯槽に入れて、風呂場に入る。


「おかーさん、あがったよー」
「はいよー」
風呂上りに母親に声をかけ、そのまま2階に上がる。

寝るまでまだ間があるな。
なにしよう。
パソコンは使えないし、テレビでも見るかな。

テレビのスイッチを入れた。
それを眺めながら、今日一日を振り返ってみる。

ドキドキとワクワクの一日だった。
これからもずっとこんな日々が続くのだ、と思うとウキウキする。

今度は何をしようかなぁ。



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