幼馴染の一日交換(前編)
作:Tira


柔らかい日差しが降り注ぐ晴れた土曜日の昼過ぎ。
女の子らしいピンクの壁紙に統一された六畳ほどの部屋に、白いベッドや明るい木製の勉強机などが置いてある。
もちろん、カーテンもピンク色。
この部屋の住人は高校二年生の丹浦香澄(にうら かすみ)。
彼女の自慢は毎日手入れを欠かした事が無い、黒くて長い髪。
そして、にきびの無い、大学生の姉に似たほっそりとした顔だちだ。
A型で清潔好きの彼女は、いつも部屋を綺麗にしていた。
そんな彼女は今、皺の寄ったピンクのTシャツと白いホットパンツ姿でベッドの上に寝転がり、漫画を読みながらお菓子を食べていた。
鼻を穿る姿に、妙なギャップを感じる。
絨毯にはティッシュのかたまりがいくつも散らばっていて、匂うと女性のいやらしい香りがした。
昨日学校に着ていったセーラー服も、無造作に机上に放置されたままだ。
「まあっ!香澄っ、少しは片付けなさい」
「ええ〜、そんなの邪魔くさいし。お母さんが片付けてよ」
「どうしたの?綺麗好きのあなたがこんなに……まるで別人みたいじゃない」
「そうかな。別にお……私はいつもどおりの私だけど」
「ねえ勇次君。何とか言ってくれない?」
母親の影から現れたのは香澄の幼馴染、徳神勇次(とくがみゆうじ)だった。
部屋の中を見た瞬間、ムッとした勇次は香澄の姿を見て更に拳を握り締めた。
「あっ!勇次君」
「あっ!じゃないでしょ。信じられないっ」
「お母さん、飲み物入れてくるから。香澄、きちんと片付けなさいよ」
「は〜い」
呆れ顔で部屋を出た母親の足跡が消えた後、勇次は怒りを露にした。


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