制服少女を手に入れる方法
作:nekome



 俺は制服を着た女子高生が大好きだ。
 制服の考案者が何を狙ってたか知らないが、女子用の制服ってのは、なんであんなに可愛くて、性的なんだろうな。女の子の身体のラインを存分に活かし、強調する。セーラー服もブレザーも、甲乙つけ難い魅力を放っている。変に着崩したりはせずに、きちんと着こなしているのが一番だ。
 おっさんぽいってか? 悪いが、俺自身現役の高校生だよ。
 現役の学生が、同年代の女の子たちを眺めて楽しんだり、妄想したりしてるんだ。普通のことだろう?

 ……けれど、このままだと、そのうち俺は「ずっと年下の少女たちの制服姿を見てハアハアしている変態」って見なされるようになっちまうのかもしれない。
 自分で言うのもなんだけれど、俺は顔も平凡だし、たいした特技もないし、当然のごとくモテない。気になる娘もいるにはいるけど、告白する勇気もない。
 このままずーっと彼女が出来ないままだと、俺は制服少女たちに囲まれた折角の学校生活を、視覚的な愉しみしか得られないままに終えちまうことになる。
 そして、大学を卒業し、社会人になって、もう容易には手の届かなくなった制服少女たちを遠くから眺めながら、視線に気付かれて「うわっ、何あのキモいおっさん」とか思われないといいなあなんて願う日々を過ごす――
 そんな不安が頭をよぎってしまう。

 だからといって、即物的な欲求を満たすために即座に行動するなど出来るはずもなく。
 いつもの通りに、色んな高校の女生徒たちの制服姿を目に焼き付けながら、学校からの帰路についていた。
 まっすぐ帰るのもつまらないので、半ば習慣となっている、商店街の小さな本屋に寄っていくことにする。
「……ん? あれ、こんな店あったっけ?」
 何故今まで気付かなかったのだろう。いつも寄っている本屋のすぐ隣、隙間のような土地に、やけに黒っぽい外装の店が建っている。
 外から見た限りでは、何を扱っている店なのかはわからない。だが、何故だか妙に惹き付けられる気がして、扉をくぐってみることにした。
「っと、店ん中も暗いんだな。なんなんだ、この店は?」
 カーテンが閉め切られているのか、日の光が完全に遮断された店内には、ランプのような外観の照明器具がわずかに設置されているだけだ。小さな店だろうに、奥の方は闇に包まれていてよく見えない。
 加えて、棚に置かれた商品には統一性が感じられなかった。懐中時計。ナイフ。モデルガンらしきもの(まさか実銃ではないだろう)。眼鏡。精巧な人形。六つセットでケースに入れられた指輪。
 どんな客層を狙っているのか、まともに商売をする気があるのか、激しく疑問だ。
 ……だが、一番疑問なのは、自分がある棚の前で立ち止まってしまったことだ。

 そこに置かれていたのは、古ぼけた煙管。
 普通のタバコですら吸う習慣がないのに、どうして、こんなものから目が離せなくなってしまったんだろう。

「その煙管が気に入った?」
 突然聞こえてきた女の声に振り向くと、何時の間にか、カウンターの向こうにローブを羽織った人間が座っている。声からすると若い女のようだが、フードを目深に被っていて、顔まではよく見えない。
 ……というか、さっきまで人の気配なんてあったっけ。
「何も疑問に思う必要はないわ。さあ、手に取りなさい。それは必ず貴方の役に立つモノよ」
 女の声は、溶けるように脳に染み込んでくる。
 そっか……何も考えず、手に取ってみれば……。

 煙管を手に取ったその一瞬に、決意が固まってしまった。
 息をする間もなく脳に刻まれた知識。それは、この煙管が尋常のモノではなく、かつ俺の欲望を満たしてくれる道具であることを示していた。
 これは「魂写しの煙管」。
 吸うべきものは煙草ではなく、この煙管に充分に詰まった霊物質。
 その霊物質を吸い込み、吐き出すことによって、魂の複製体を作り出すことができる。
 当然のことながら、魂の複製体は本人と同じ意思・欲望を持ち、それに従って行動する。
 素体となった霊物質の力ゆえに、魂の複製体には、他の人間に憑依してその肉体を操る力がある。
 ただし、魂の複製体は、本体と意識が繋がっているわけではない。あくまで自立して行動する。
 再度、魂の複製体を体内に取り込めば、その記憶を補完することもできる。

 きっと俺は、凄絶な笑みを浮かべていたことだろう。
 これだ。これさえあれば、俺の欲望を叶えることなんて、実に簡単じゃないか。
「気に入ったようね。お代は、今貴方の懐にあるすべてよ」
 こんな時に限って、財布には決して少なくない金が入っていた。だが、惜しくなんかない。この機会を逃すなんて選択肢は考えられないじゃないか。
 財布の中身すべてと引き換えに煙管を手に入れると、俺は人前でニヤケ顔を晒さないようにと必死に我慢しながら家へ帰った。


 逸る気を抑えるのは大変だったが、決行は、やはりターゲットが眠りについてからが良いだろうという結論になった。
 時計が午前零時を回るのを待ち、煙管を口に咥える。
 息を吸ってみると、味や匂いこそ感じないものの、明らかに「何か」が体の中に入り込んでくるのがわかった。それは急激な寒気をともなう感覚だったが、この道具の知識がある俺に、怖れる理由はない。
 落ち着いた気持ちで息を吐き出すと、白い煙のような塊が口から出てきた。これが魂の複製体であり、俺にしか見えないモノらしい。

 さて、吐き出したのは良いけど、意思の疎通ができないというのは、どうしても少し不安になってしまうもんだな。コレは自分自身のようなものなんだし、事前に練っておいたとおりに行動してくれるはずだけど……。
 そんなことを思いながら複製魂を見つめていると、不意にそれが動き出し、空中に八の字を描いた。
 こちらの気持ちを察して、合図を送ったつもりだろうか。試しに頷くと、複製魂は一度上下に揺れた後、壁をすり抜けて外へと飛び出していった。
 これで、後は明日を待つだけか。やれやれ、本体である俺は、これからの時間こそが辛いんじゃないのか?


 
 気が付くと、不安げな表情の俺が、俺のことを見上げていた。
 どうやら、今こうやって思考している俺は、たった今作られた魂の複製体というやつらしい。煙管を吸うまでの俺――山崎淳司の記憶はあるから、俺には、俺が俺の複製であることに疑問はない。
 だが意識が繋がっていない以上、俺の本体が不安に思うのも当然だろう。合図を決めておけば良かったなと思いつつ、取り合えず空中で八の字を描いてみる。
 こちらの意図は伝わったらしく、俺の本体が頷いた。
 さあて待ってろよ俺。楽しい思い出を用意してやるからな。

 宙を飛んで目指すのは、クラスメイトの女子の家だ。
 瀬川霧絵。可愛いのは当然として、それ以上に印象的な長い黒髪。そして充分なサイズの胸と、豊満な尻。そのどれもに、いつか触れたいと思っていたのさ。あの煙管を手に入れて、真っ先にこいつの顔が浮かんだもんな。以前、家の場所を知る機会があったのは幸運だった。
 狙いどおりに、瀬川の家の明りはすべて消えていた。本人も家族も皆寝ているようだ。
 二階の窓をすり抜けて家の中に入ると、そこがちょうど瀬川の部屋だった。ベッドで寝息を立てている。
 ほんっと可愛い顔してやがるよな。それに、こんな無防備な姿を見ることができるなんて。このまま襲い掛かってやりたくなる……が、そうもいかないか。
 まあ、これからやることはレイプなんかよりよっぽど凄いことだしな。
 内心で笑みを浮かべながら瀬川の口元に近づき、僅かに開いたその隙間から彼女の中に侵入する。一瞬、視界が真っ暗になり――

「ん……どう、だ? 上手く、いったのかな……」
 重力から解き放たれていたさっきまでと違って、体の重みを感じる。体に被さった布団の重さも。それに、胸のあたりに慣れない圧迫感が。
「この感じ。それに、この高い声……よ、よし、間違いなく女の子の体だ」
 ガバっと起き上がると、少し遅れて胸の肉が揺れ、引っ張られる感覚。
「うっ?! 結構、存在感あるなあ……」
 首を巡らせて周りを見ると、瀬川の中に入る前に見た部屋にいることがすぐにわかる。けれど、今は一刻も早く現状をきちんと把握したくて、急いで明りを点ける。
 明るくなった部屋で、俺が動いたタイミングどおりに姿身の中に現れたのは――間違いなく、パジャマを着たクラスメイトの少女。瀬川霧絵だった。

 鏡の前で手を上げると、鏡の中の瀬川も手を上げ、にっこり笑ってみると、鏡の中の瀬川も微笑む。
 あの煙管から流れ込んできた知識で理解してはいたけど……これでもう、疑いようもない。俺が瀬川の体を乗っ取って、思い通りに動かしてるんだ。
 学年でも屈指の美少女の体が俺のものになってるなんて、想像してた以上に、興奮するものがあるな。
 頬がだらしなく緩むと同時にゾクゾクっと震えが走り、思わず両腕で体を掻き抱く。
 すると、腕には柔らかい感触が、胸からは何かに押された感触が返ってきて、ついパッと腕を広げてしまう。
「そ、そうか、瀬川の体だもんな……。こんな簡単に……はは、当たっちゃうんだ」
 今までは触りたくても触れないどころか、下手に凝視することだって出来なかったていうのに。今は、その胸の膨らみが、瀬川のおっぱいが、俺のものになってるんだもんな。
 ふと魔が差して、前屈みになって鏡を覗いてみる。
「お。おお〜。こりゃいい眺めだ……」
 鏡に映った瀬川のパジャマの襟の奥で、二つのふくらみがふるんっと揺れる。
 頭の悪い格好に見えるかもしれないけれど、これはちょっと、男どもに見せ付けてやりたくなる光景かもしれない。
 ふるんふるんっと体を揺らして、布地の隙間で揺れる肌色の塊を見つめる。
 いかん、これはちょっと、我慢出来そうにない。
 思わず、胸のふくらみを両腕で掬い上げてしまう。
「そ、そうだよ。こんなことが出来ればいいなって、ずっと思ってたんだ。ま、まさか触られる感触まで一緒に味わうなんて思ってもみなかったけどさ」
 それでも心地良い。両の掌から返ってくる、麻薬的な吸引力をもつ肉の感触。弾力。
 そして胸元から流れ込んでくる、幾らかの快感。
「ん……ふぅ……んぅっ……」
 意識して艶っぽい声を出してみる。
 ちょっと恥ずかしいかな、とも思ったが聞こえてくるのは女の子の可愛い声なのだ。自分で喋っているとはいえ、なかなかに悪くない。
「んふっ、あんっ……んっ、んっ……ふぅんっ……ふっ、くくっ」
 俺の思い通りに色っぽい声を漏らす瀬川。だんだん興がのってきて、胸だけでなく、二の腕やお尻など、体中をパジャマの上から撫で回す。こんなことをされても、鏡の中の瀬川はいやらしく笑っているだけだ。
「本当に……何やっても良いんだな。ふっ、ふふっ。そうだ、瀬川のすべては俺のものだ。何をやったって……」
 心拍数が上がり、体が熱を持っていくのがわかる。
 衝動に従い、パジャマのズボンをすとんと床に落とすと、白く眩しい太腿が露わになる。上着の裾で隠れてパンツまでは見えないが、その滑らかな肌だけでも扇情的だ。
「はぁ……はぁ……つ、次は」
 上着のボタンを、ひとつひとつゆっくり外していく。次第に広がっていく隙間から見えてくる、肌の色と胸の谷間。
 あとは手を差し入れるだけで、今まで妄想するしかなかった同級生女子の柔肌を堪能できる。誰にも責められることはないし、警察沙汰になることもない。
 そして、今わずかに感じている女の体の快感。ちょっと興味の出てきたそれを、本格的に味わうことができる。

「…………」
 けど、ちょっと待てよ。
 この先に進めば、俺は多分、徹底的に瀬川の肉体を貪ることになるだろう。いくところまでいってしまうはずだ。
 それはいい。今更良心の言うことなんか聞く気はない。
 ただ、少しばかり不安が頭をよぎったのだ。
「……途中で体から弾き出されて終わりとかは、御免だよな」
 あの煙管が尋常なシロモノじゃないのは確かだし、頭に流れ込んできた知識もある。けれど、本当にすべての知識が与えられたとは限らない。不具合が隠されている可能性もある。
 この幸運が再び訪れるとは限らないんだ。なら、一番やりたかったことを最初にやらないとな。
「ならやっぱ、制服だよな」
 ハンガーにかけられた黒の冬用セーラー服を手に取る。じっくりと眺め、手触りを確かめた後、ついつい、ばふっと顔を埋めてしまう。思いっきり息を吸い込む。
「すぅ〜っ、はぁ〜っ。女子の制服に触るどころか、こんなに密着できるなんて……。へへっ、でもこれだと、瀬川が変態みたいだよな。まあ、これからもっと変態になってもらうんだけど」
 鏡の中には、半裸になって自分のセーラー服に顔を埋めながら、その匂いを嗅いでだらしなく表情を崩している瀬川の姿。この様子を映像に残しておいて後で見せたりしたら、卒倒されてしまうかもしれない。
 そういう趣向も面白いかもしれないけど、また機会に恵まれたらその時に試そう。まずは着替えだ。
「こうやって被ればいいんだよな……っと、よい、しょっ。で、胸当ても留めるんだっけ」
 パジャマの上着を脱ぎ捨てると、すぐさまセーラー服を頭から被り、袖を通して、脇のファスナーを下ろす。奇妙な構造の服だなとは思うけど、さほど手間取ることもなかった。ただ、乳首がちょっと布地で擦れた時にはビクっとなってしまった。
 セーラー服の上とパンツのみという扇情的な格好に、思わず鏡に目を奪われてしまったりしたけど、頭を振ってなんとか意識を逸らし、プリーツスカートに足を通した。
 ウエストを調整して裾を整え、タイをなんとか結んで、捲れていたセーラーカラーを直す。
 ひと通り終わって改めて鏡を覗くと、そこには、いつも学校で目にしているままの瀬川霧絵がいた。

「瀬川……ああっ、やっぱ凄え似合ってるよ制服っ! 俺がこいつになってるなんて……くう〜〜っ!」
 両腕を抱きしめて身悶えしてしまう。
 やっぱり普段どおりの格好が一番だ。毎日さんざん、ただしこっそり見つめて目に焼き付けて、でも決して触れなかった瀬川霧絵ってのは「これ」なんだよ。
 半裸もそりゃあ興奮するけど、それ以上に、自分がよく知ってる瀬川を手に入れたって喜びの方が大きい。
 白い肌と黒いセーラー服のコントラストにドキドキする。毎日思っていることだけど、清楚な印象を与える膝丈のスカートも良い。セーラー服にミニスカートというのも最近は増えてきたけど、あれはいただけない。そういう露骨なアピールはブレザーの連中に任せておけと思う。
 くるりと回ってみると、プリーツスカートがふわりと翻る。体の動きに合わせて揺れるひだに心がときめく。今の瀬川は、俺が願った分だけどんな姿でも見せてくれるんだ。
 ふと思い出したことがあって、鏡の方にお尻を突き出す姿勢をとって、顔だけ振り向いてみる。
「うお〜、やっぱいい尻してるなあ……」
 突き出された臀部の豊かな肉付きが、一層強調されて見える。以前、教室で机に両手をついて立っているのを後ろから見た時に、ちょっと目を奪われてしまったのだ。でかい尻をそんなに見せつけてると襲っちまうぞ、と言いたかったもんだ。
「それに、大きいといったらこっちもだよな」
 普段はちらちらとしか見られない瀬川の胸を、間近で凝視する。ノーブラだってのに形も崩れてないみたいだし。制服の生地がふくらみに合わせてまあるく盛り上がっている、そのラインが実に魅惑的だ。ごくりと唾を飲み込んでしまう。
 そうだ、折角だし、ちょっと試してみようかな。
 長い髪の毛に指を掛けると、両側からひと房ずつ体の前に持ってくる。
「おおっ、これだよこれっ。おっぱいに髪の毛が乗ってるよ〜」
 ……アホなツボだと笑わば笑え。
 俺はな、おっきな胸の上にリボンやらタイやら髪の毛やらが乗っかっちゃって、普通とは違う角度に曲がってるのを見るとドキドキするんだよ。
 だって、「タイや髪の毛が素直に下に落ちないほど、立派な障害物がここにあります」って感じじゃん。胸の大きさが際立つと思うんだよね。
 あと、生地が胸に思いっきり押し上げられている部分は当然として、そこからウエストに向けて服が絞られる、ナナメのラインも見逃せない。上で持ち上げられてる分、布地が浮いてんだよな〜。
「ほんっと、立派な胸してやがるぜ……。じゃ、揉ませていただきますかね」
 さっきもしっかり揉んでるんだが、制服姿となるとまた気分が違う。なんだか学校でいやらしいことをさせてもらってるような気になるんだ。
「……や、山崎くん、どうかわたしのノーブラおっぱいをモミモミしてください――なんてな。……んっ……くふっ……」
 やろうと思えばもっと卑猥な言葉だって言わせ放題なんだけど、恥ずかしくてこれが限界だった。
 それに、これだけで充分にスイッチが入ってしまった。胸を揉む手が止まらない。
「はぁ……はぁ……んっ……! はぁっ……」
 布地が厚いこともあって、正直なところ、パジャマの上から揉んだ時ほど気持ち良いわけじゃない。
 けれども、いつ頭の中で描いていた、制服姿の瀬川にエロいことをする妄想。それを実現できているという事実が心に火をつける。
 鏡に映る、顔を赤く染めて一心不乱に自分の胸を揉みつづける瀬川の痴態も、俺を一層燃え上がらせた。
「ダメだ。もう布越しじゃ我慢できない……! ね、ねえ、直接触ってぇ」
 甘い声でおねだりの言葉を言わせると、脇のファスナーを開け、裾の隙間から両手を差し入れる。
 セーラー服の裾は魅惑の隙間だ。ああ、一度でいいからここから手を入れて、体を触ってやりたいって思ってたんだ。
「ん、はあぁ……柔らかくって……掌に吸い付いて……んぅっ、気持イイ……」
 感触とともに、視覚も俺を愉しませてくれる。両手を差し込んだ制服が盛り上がって蠢き、その動きに合わせて瀬川が顔を切なそうに歪め、吐息を漏らす。
 たとえ肌が見えなくても、その布の下で形を歪める乳房が見えなくても、鏡越しに見えるその様子は充分すぎるほど淫靡だった。

「ンぅっ! んっ、はっ、ああっ! ンっ!」
 胸を弄んでいるうちに硬くなってきた乳首を摘むと、これまでにない声が漏れ、体に電流が流れた。
 慣れない箇所から駆け上ってくる快感に少し腰が引けながらも愛撫を続けていると、次第に股のあたりも疼いてきた。
「はぁ、はぁ……し、下も、弄ってほしいってのか? 淫乱だなあ、瀬川の体は」
 片手をセーラー服から抜き出すと、スカートを捲くったりはせず、こちらもファスナーだけを開けてその隙間から手を差し入れる。下着の中に手を潜り込ませ、茂みを掻き分けて割れ目へと到達する。
「ふぅッ……ん! こ、ここか……?」
 指に返ってくる、ぬめりを帯びた液体の感触。どうやらもう濡れているみたいだ。
「んッ……うっ……あっ、ああっ、はあぁっ……!」
 手探りで気持良いところを探して、優しく擦る。そこがどんな風になっているのか服の上からはわからないけれど、確かに伝わってくる快感と、快楽に喘ぐ瀬川の表情が、充分すぎるほどに俺を昂ぶらせる。
 そう、脱がす必要はない。制服姿の瀬川が乱れるさまをこそ、目に焼き付けておきたいんだ。この先、学校で瀬川を見る度に、この夜のことを思い出せるように。
「はァっ……んっ、ぅあっ……。っ……! ぅくうっ!」
 探り当てた穴の中に、指がつぷりと沈み込んだ。強い快感が伝わり、びくんと腰が跳ねる。
「あ、ここ……あはァっ! イイっ! んっ、んあぅっ!」
 声が大きくなる。気をつけないと、偶然起き出してきた瀬川の両親に痴態を見られるなんてことになるかもしれない。
 いや、何をやっているかに勘付いたとしても、流石に年頃の娘の部屋に踏み込んできたりはしないか。けれど、もしかしたら親父さんが廊下で股間を膨らませてたりしてな。
 ……なんなら、両親に目の前で、娘の恥ずかしい姿を見せつけてやることだってできるんだよな、今は。
 一瞬、黒い衝動が湧き上がったが慌てて振り払う。そんな無茶を望んでるわけじゃないんだ。
「んあっ! うっ、くぅッ! あっ、はァッ、ああぁンっ!」
 けれども、今の想像で一層カラダは燃え上がってしまったようだ。一気に気持ちが高まっていくのがわかる。
 指の動きは激しさを増し、ぢゅぷりぢゅぷりと、粘液を絡ませて何度も出し入れする音が聞こえる。胸を愛撫していた手も、乳首を強めに摘み上げて快感を引き出す。
「あッ、ああッ! こ、このままっ……! イけっ、イっ、イクッ、うっ、あっ、はあああっ!!!」
 強烈な快感の波が体中に何度も打ち寄せ、全身がビクビクと震える。頭がちかちかして、真っ白になっていく……。
 
 ――いや、真っ白に、じゃない。
 頭の中に、快感とは違う、別の何かが大量に流れ込んでくるのを感じる。まるで、あの煙管を手に取った時のように。
「な、なんだ……これ?!」



 いつものように、自宅のベッドで目を覚ます。
 自分の記憶に、なんら新しい変化は見られない。
 複製魂とやらは、結局昨晩のうちに戻ってこなかったのだろうか? ひと通り楽しんだら一旦は俺の体に戻ろう、と決めてから煙管を使ったのだし、アレが俺と同じように思考するというのなら、予定どおりに動いてくれるはずなんだけど。
 もしかして、何かトラブルでもあったのだろうか。それとも、瀬川の体のままで寝落ちしてしまったのだろうか。どちらも充分あり得る。だが確認する術がない。
 頭を抱えていると、携帯にメールの着信があった。
 見慣れないアドレス。だが、タイトルには「瀬川霧絵より」と書かれている。
「っ……! 瀬川っ!?」
 本文には、「朝7時半に、4階の空き教室で待っています」とのみ。
「なんで……丁寧語なんだ?」
 あっちの俺が瀬川を操って打ったんじゃないのか? もしかして、何か不具合があって、瀬川にコトがバレたのだろうか。だとしたら最悪だ。
 勿論俺自身の悪戯という可能性もあるが……どちらにせよ、呼び出しを無視するわけにはいかない。俺は早々に朝食をかき込むと、学校へと走り出した。

 果たして、指定された教室には普段と変わらない様子の瀬川がいた。
「あ、おはよう山崎くん。良かった、ちゃんと来てくれたんだ」
 邪気のない笑顔で微笑む。これは……どういうことなんだ?
「お、おはよ……。えと、なんで、俺を、ここに……?」
「山崎くんに大事な話があるんだけど……聞いてくれるかな」
 雰囲気や話し方は、いつも教室で見ている瀬川そのものだ。「俺」が俺をからかうための演技、というのもあり得ないわけじゃないけど……自慢じゃないが、俺はアドリブに弱い。自分自身をからかうだけならまだしも、瀬川の家族に怪しまれずに朝をやり過ごす自信はない。登校中に知り合いに会う可能性だってあるんだし、俺ならそのへんのリスクは回避するだろう。
 となると、こいつは中身も瀬川本人なのか?
「実はね、わたし、昨日の夜……」
 背中を冷や汗が伝う。
「昨日の夜……から、山崎くんに操られてるの!」
 一転、にやりと意地の悪そうな笑みを浮かべる瀬川。
「…………は?」
「へへっ、どうだよ驚いたか? 瀬川にバレたんじゃないか、とか心配になっただろっ」
「あっ……たりまえだっ! な、なんだってこんなことっ。予定じゃあ……いや、予定以前に」
「どうやって周囲の目を誤魔化して登校したのか、だろ?」
「……ああ」
 やっぱり俺の考えそうなことはわかるのか。けれど、俺の複製という話なのに、微妙に上から見ているような態度で少しイラつくな。
「実はな……瀬川の記憶が読めるようになったんだよ」
「記憶がっ?! けど、そんな話は」
「ああ、最初は無理だったんだけどな……一度イッたら、一気にわかるようになった」
「い、イッたら記憶が読めるようになるのか……」
 ごくりと唾を飲み込む。そんな条件が……というか、やっぱ思いっきりエロいことやってやがったんだなあ。
「じゃ、じゃあさ、早く俺の中に戻ってこいよ。俺だって見たいし。いや、瀬川の記憶まで持ってこれるわけじゃないのかな。まあいいや、、とにかく早く昨夜の追体験がしたいんだよ」
「……あー、そのこと、なんだけどな。……戻るの、やっぱナシにしたいんだよね」
「はっ? いや、そ、そりゃないだろう。だいたい、これからどうする気だよ」
「だからさあ、もう瀬川のことはなんでもわかる、というか俺が瀬川みたいなもんだから、瀬川霧絵として生きてっちゃえって。なんか、記憶が全部流れ込んできたらそんな気分になっちゃってさ。魂が融合したみたいな気分で、このカラダ、手放したくないんだよね〜」
「お、おいおい……だからって、そんな!」
 お前は昨晩もお楽しみで、これからも楽しみ放題かもしれないけど、お前が戻ってこなかったら、俺はそれを経験できないままじゃないか!
 一晩どれほど悶々として過ごしてたと思ってんだよっ。
「まあまあ、落ち着けよ。煙管はまだ何度でも使えるだろう? また他の娘で試せばいいじゃないか」
「いや、そりゃあそうだけど……」
「それに……代わりに、このカラダでしっかり楽しませてやるからさ」
 ずいっと体を寄せてくる瀬川。触れるほど間近に顔を寄せられて硬直してしまう。髪の毛から漂ってくるいい香りにどきどきする。
「た、楽しませるって、お前……」
「くふっ。「俺」がどれだけ楽しみにしてたかぐらいわかってるって。ちょっと予定とは違うけど……ほら、好きに触っていいのよ、山崎くん」
 手を取られて、胸元へと導かれる。制服の上からでも、ふよんという柔らかい感触が返ってきた。
「んっ……さっきブラを脱いでおいたから、制服越しでも柔らかいでしょう? ほら、遠慮なく揉んで。勿論、お尻を触ったっていいのよ。大好きなプリーツスカートに包まれたお尻、思う存分味わって。それとも、スカートの中に顔を突っ込みたい?」
「な、あ……せ、瀬川……」
 瀬川の唇から紡がれる誘惑の言葉と、そのカラダの柔らかな感触が、脳髄を溶かしていく。
「勿論、触るだけじゃなくてその先も。好きにしていいのよ……山崎、じゅ・ん・じ、くん♪」


 ふふっ、ガッチガチに固まってやがるな。比喩でなく、股間もそうなってるだろう。
 この様子なら満足させられそうだ。いや、俺のことは知り尽くしてんだし、このカラダを使って満足させられないわけがないだろう。
 それにまあ、さっきも言ったように、煙管はまだまだ使えるはずだしな。俺が瀬川のままでも問題ないだろうさ。
 ……我ながら、この心変わりには驚いたけどな。
 別に女になりたかったわけでもないのに、急にこの体を離れたくなくなっちまったもんな〜。「俺」にはああ説明したけど、実のところ、自分にもよくわかっていない。
 ははっ、もしかしたら、「俺」が煙管を使って憑依する度に、その体から離れなくなっちまったりしてな。
 そうしたらまた「俺」は別の娘に煙管を使うだろう。「俺」を楽しませてくれる女の子がどんどん増えてくんだから、悪い気はしないんじゃないか?
 そして、この学校の好みの娘にあらかた複製魂を憑依させちまったら……その後は、どうなるんだろうな。
 考える必要はないか。
 気持良いことだけを求めていれば、それでいい。また誰かの体を奪ったら、その時は教えてもらって、一緒に愉しむとしようかね。




★あとがき★
 
 ごきげんよう、nekomeです。
 う〜ん、1シーン削ったのになんで22KBも書いてるんだろう……(^^;
 あ、ちなみに最近はセーラー服とミニスカートの組み合わせもアリだと思うようになりました。
 昔より露骨なエロさにも反応してしまうようになったんでしょうか。
 ……ミニスカートから伸びる綺麗な太腿、見せつけてみたいなあ。

 それでは、最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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