(はぁ、まったく…何が悲しくて放課後まで居残って、
生徒の面倒まで見なくっちゃいけないのよ)

生徒指導室でアタシは生徒の向かいの壁に
寄りかかったまま小さくため息をついた。

いくら教員が足りないからって人使いが荒いにも程がある。
とは言え、新任の教師がそんな不満を言えるはずも無く
アタシは泣く泣くサービス残業って奴をするハメになったのだった。





(生徒指導室)
作 あさぎり





この生徒…確か2,3日前にこの学校に転入してきたんだっけ?
まぁ、大した興味も無かったからよく憶えてないけど…。

(ここには訳ありの転校って書いてあるけど、この子がねぇ…ふーん。
で、理由が女教師との姦淫!?しかも女性の方から誘ってるなんて)

暇つぶしに職員室で手渡されたレポートを
照らし合わせながら生徒の顔をマジマジと見つめる。

端正と言うより特徴の無い顔立ち、
それに見た目もこれと言って不良っぽい感じなど微塵もない。
どちらかと言うと普通の子いや、いじめられっこタイプよね、こりゃ。
…この子のどこがいいんだろう?アタシだったら絶対NGのタイプだけど。

(プッ、よっぽど男に飢えていたのね…その女教師って)
あまりにレポートと見た目のギャップに思わず笑みが込み上げてくる。
それにしても不自然な転校。おまけにほとんどが女性絡み
と言うのも確かにおかしい気がするけど…。

(…………あら?)
ふとレポートから目を離すと生徒はイスに深く寄りかかり、
大きくいびきを立てながら眠りに入っていた。しかも問題用紙は真っ白のまま。
コイツ、アタシが見てないと思ってずい分舐めたマネしてくれるじゃない…。

「ちっ、ちょっとキミ!起きなさいっ!!」
アタシは男子生徒の目の前に立つと両腕で彼の肩を掴んで揺り起こす。
しかしいくら揺すっても一向に目覚める気配は無い。

それどころか生気のない表情に力の抜けた体躯は、
まるで糸の切れた人形の様にも見える。

(これってもしかして…何か異常事態!?)
言いようの無い不安に駆られたアタシは他の先生方に連絡する為に
生徒指導室を出ようとドアに手をかけたその時…

「えっ…ああっ!!!」
まるで何かが目の前を吹き抜ける感じがしたかと思うと
今度は体から意識が弾き飛ばされた様なショックにそのまま気を失った。



(ってあれ、………えええええっ!!?)

ほんの数秒後だろうか、
再び気が付いたアタシが見たのは信じられない光景だった。

先ほどとは違う、空中から見下ろした視線。
その先にいたのは紛れも無い『アタシ自身』だったのだ。

(えっ、こっ…これって一体どう言う事なの!?)
訳も分からないまま、その様子を傍観する事しか出来ずにいると
もう一人のアタシはドアから手を離すと含み笑いを浮かべる。

そして何かを確かめる様に手を握ったり開いたりを何度か繰り返すと
今度はその手を胸元に添え、おもむろに揉み始めたのだった。

「んっ、んっ…んんっ…」
吐息混じりに漏れるアタシ自身の声。指先で刻まれるジャケットの深い皺。
そして少しだけ赤く染まった頬にうっすらと額に浮かぶ汗。

自分自身のあられもない姿に思わずアタシは両手で眼を覆う。
──するとある事に気づいたのだった。

(アタシの手、いや体が……透けてる!?)

そう、改めて目の前にかざした手のひらは半透明だったのだ。
手のひらだけじゃない。腕も…足も…体全部が透けた様になっていて、
おまけにフワフワと宙を浮いているのだ。

「えぇっ!?これって一体…!?」
思いがけない自分の体の変化にアタシは息を呑む。
と同時に目の前、正確には眼下で起こった事が理解できずにいた。

しかしそんな事などお構い無しに、もう一人のアタシは
一通リ胸元の感触を楽しんだのか満足げな表情を浮かべると
ブラウスのボタンを上から順に外し始める。

そして小さな声でこう呟いたのだった。


「フフッ…今回もうまくいったな」


……えっ!?
……『今回も』!?
……まさかこの状況って!?

アタシはその言葉に耳を疑った。
まさか…そんな事がありえるなんて…でも。

フラッシュバックの様に頭の中で色々な事が思い浮かぶ。

転校理由が女教師との姦淫。
しかも全て女性の方から誘ってると言う状況。
意識を失ったまんまの男子生徒と勝手に動いているアタシの身体。
そして透けた身体で宙を浮いたままアタシ自身。

そこから導き出される答え…とても信じられるモノでは無かったけど、
現実として起こっている以上、信じるしかない。

(これってもしかして弾き飛ばされたアタシの身体の中に
あの生徒が入り込んで動かしているいるとでも言うの…!?)

自分でも驚く程この状況を冷静に分析している事に驚きながら
アタシは何とか元に戻れる様に自分の身体に向かって必死にもがく。

しかし両手は空しく空を切るばかり…。

その間にもアタシの身体は胸元を大きく開けたままの姿で、
意識の無い生徒の横に立つと机に手を添える。

そしてその角に自分の股間を押し当て始めたのだ。

「んっ、はぁ…んんっ…いい」
うっとりとした表情で身をよじるアタシの身体。
緩急をつけながら前後に、そして前後にピストン運動を続け、
時折、何かに耐える様につま先立ちのままプルプルと小刻みに震えている。

動くたびに少しずつ乱れていく髪。
次第に汗ばんでいく額(ひたい)と途切れ途切れの吐息。
そしてスカートから太腿(ふともも)を伝って滴り落ちる一筋の雫。

(オ○ニーの時のアタシの顔ってあんななんだ…)
自分ではどうしようも無い状況にも係わらず、
他人事の様にアタシはその様子に見入っていた。



「やっ、はっ…はあぁ、んはっ、あああぁぁ!!」
それから程なくして絶頂を迎えたのだろうかアタシの身体は
頭(こうべ)を垂れたまま、ハァハァと肩で息をしている。

「はあっ、はあっ…やっぱし…女の身体って……最高だよなぁ」

俯(うつむ)いたまま、アタシの口から出る男口調…。
間違いない、やっぱりあの生徒がアタシの身体を動かしているんだ。

言い様の無い恐怖と憤りが身体中を駆け巡る。
しかし傍観するしかないこの状況にアタシは臍(ほぞ)を噛むしか出来なかった。

「──でも、何か新鮮味と言うか刺激が足りないと言うか…そうだ!」
おもむろに机の上にあった消しゴムを手に取るとスカートの間から
そのままショーツの中に押し込んでいく。

「んんっ…んっ…はっ、入った…」
少しだけ眉間に皺(しわ)を寄せながら前かがみで立ち尽くし、
陶酔しきった表情を浮かべるアタシの身体。

股間の辺りには先程の行為の気持ち良さを表す様に染みが浮き出て、
引き抜いた指先にはネバついた液体が絡み付いてる。

「ふふっ、いやらしいなぁ…先生って…」
そんな指先を嬉しそうに眺めながらつぶやくと
今度はそのヌル付いた指でブラジャーに包まれた乳首を摘む。

そして再び机の角に股間を押し当て始めたのだった。



「んっ、んふっ!…んっ、んっんっ!
こっちの方が、んあっ…もっと、気持ちいいっ…や」

右手で左の乳房を揉みしだき、
左手で机をおさえながら激しく腰を振るアタシの身体。
時折、ビクビクッと身体を硬直させ、髪を震わせながら快楽を貪る──いやらしい顔。

(…………………。)

頬から首筋、そして鎖骨へと伝わる一筋の汗。
だらしなく開いた口元とそこから漏れる歓喜の声。
クチュクチュとスカートの布地が肌に張り付いたり、剥がれたりく音。
その全てが淫乱な娼婦を連想なさる行為に嫌悪感を抱(いだ)きながら
いつしかアタシの指先は股間に伸びていったのだった。

「ふっ、ふぁっ…ひぃ、ん…あぁっ!」
(んっ…ふぅ………んっ…)

「んあぁ…はぁ、ん…んぁっ!はぁあ」
(んんっ、あっ、やっ……ふぅ…ん)

アタシの身体が艶やかに淫らになればなる程、
答える様にアタシの指先は股間を淫らに弄(まさぐ)る。
それはまるで肉体が意識が引っ張られる様な奇妙な感覚だった。

「あっ!んぁ…はぁ、ん!…んぁっ!はぁあああ」
(んんっ、あっ、やっ……ふぅ…ん、んあっ!!)

絶頂が近いのか更に激しく腰を振りながら身悶えるアタシの身体。
そしてそんな自分の姿を見ながら自分自身を慰めるアタシ。
自分では止める事の出来ない快感の濁流に身を任せ続ける…。

「んんっ…んああぁぁ!!!」

ひと際、大きな声を上げてヘナヘナとその場にしゃがみ込むアタシの身体。
--と同時に先程と同様に何かが目の前を吹き抜ける感じの後、
意識が吸い寄せられる様なショックを受けたのだった。

(えっ、ウソっ…ちょっと…まだ、アタシ…イッてないのに…)
薄れ行く意識の中でアタシは絶頂を迎える事の出来ない
物足りなさを感じながらそのまま気を失った。



「ううっ…うん?」
そして再び、意識を取り戻した時、最初に感じた違和感は股間からだった。
何かが入り込んでいる様な違和感とフトモモから膝(ひざ)にまで
涎(よだれ)の様に滴(したた)り落ちる液体。

その熱い雫が先程までの事が夢でない事を物語っていた。
やっぱり…この生徒が…アタシの身体で…こんな…いやらしい事を…。

怒り、恥かしさ、恐さ、屈辱…色々なモノが頭を駆け巡るが、
すでに何度も絶頂を迎えた肉体と未だ満たされないままの
アタシの心は導かれる様に男子生徒に近づいていく。

(ほしい…誰かこの火照りを止めてほしい…。)
肉体と精神が一つの欲望に従って忠実に動き出す。

そして気を失っている彼の前にひざまずき、
無我夢中でズボンのベルトに手をかけ、ジッパーを下ろすと
トランクスの上からそこに収まっている男性自身を刺激し始めたのだった。

シュッ、シュツ、シュツ、シュツ…。
静かな室内で聞える荒らんだ息遣いと布地をこする音。

「えいっ、早くっ…勃ちなさい…よ」
焦りの気持ちに反して、男子生徒のそれは以外な程が鈍い。
まるでお預けを喰らったまままま焦(じ)らされてる様な気分に
耐えながら指先を前後に動かす。

そうしている間にも身体の火照りは限界を迎えつつあった。
すでに理性のタガは外れ、目の前のモノ以外何も考えられなくない…。

(ええい、もぅ…)
トランクスに手をかけるとヒザの上まで引き摺り下ろした。
そして少しだけ膨らんだソレに顔を近づけると口に含んだのだった。

少しだけ粘ついた感触が口の中に広がる。

「んんっ、んっ…んんっ、んっ、んっ、んっ」
リズミカルに頭を動かしながら刺激するとそれに答える様に
口の中のモノが大きく反り返ってくるのが分かる…これでやっと…

そう思って更に深く喉の奥につかえるほど咥(くわ)え込む。
一瞬だけ見上げた彼の表情…
まるで罠に掛かった獲物を見る様な目線と緩んだ口元。

もしかして全て仕組まれていたと言うの!?
ううん、もうそんな事どうだっていい…

「んっ…つ、ぷはぁ!」
快楽を貪る様に身を捩(よじ)りながら完全にそそり立ったソレから
口を離すとヌルついたショーツを脱ぎ捨てた。

──と同時に股間から落ちた液体まみれの消しゴム。

そしてアタシはスカートをまくり上げると彼の首に手を絡め、
そのまま腰を下ろしてその熱くそそり立ったモノを受け入れようとした瞬間…。





「なっ…先生、何をやっているんですか!!!?」

遠くから聞えるヒステリックな大声と騒がしい音。
ほっといてよ…やっと、これで絶頂を迎えることが出来るんだから──



【END】








【本作品の著作権について】

◇本作品はフィクションであり、登場する人物団体等は全て架空の物です
◇本作品についてのあらゆる著作権は全て作者が有する物とします
よって本作品を無断で転載、公開する事はご遠慮願います。
◇よって、本作品を無断で転載、公開する事は御遠慮願います。

inserted by FC2 system