替え受験

かえだま じゅけん

    

作 あさぎり

 

「遅くまで聞いてくれてみんなサンキュ〜。そんじゃまた来週〜☆」

ラジオから深夜放送が流れている。ふと時計を見ると、すでに午前二時を回っていた。

なぜこんな時間まで起きているかと言うと私は中学三年生。

つまり受験生って訳。

「あ〜っ、もうっ!何で受験勉強なんてあるのよっ!面倒くさいっ!・・・でもやらないと親にまた怒られちゃうし、それに田原先輩のいる高校に行く為にはここでがんばらなくっちゃ!」

(先輩とは部活の先輩とマネージャーと言う関係で去年からつき合いだしたのだが今は私の受験勉強の為、交際も自粛中なのだ。そのため私は何が何でも先輩のいる高校に絶対合格して、楽しい高校生活を満喫してやるんだっ!)

そう考えて自分に気合いを入れ直すが、熱帯夜のせいか今ひとつ身が入らない。

 イスに浅く腰を掛け、両腕をショートカットにした頭の後ろで組みながらボーっと窓の外の景色を眺めていた。

「あ〜あ、代わりに誰か受験勉強してくれないかなぁ・・・何てね。さてと、今日はもう遅いし寝よっと」

私は課題のテキストを開きっぱなしのままベットに潜り込むと眠りに就いた。

翌朝・・・

「淳子〜っ、もう起きなさい、遅刻するわよ!。いつもいつもアンタはもお・・・」

私は母親の声を布団の中で聞きながら目覚めた。

(そう言えば昨日のテキスト、途中で止めて寝ちゃったんだっけ。まずいなー朝っぱらからお小言が始まっちゃうよ。長いんだよね、お母さんの小言は・・・)

私はベットの中でドキドキしながら寝たフリをしていると、

「あら?・・・昨日はちゃんと勉強していたのね。良かったわ、アンタもやっと受験生として自覚がでてきたのかしらね」

「エッ?」私はベットから飛び起きると机の上のテキストを手に取った。

出来てる・・・!?。

確か昨日は途中で諦めて寝ちゃったはずなのに・・・

(何でだろ・・・もしかして寝てる間に小人さんが代わりに・・・何てね)

そんな事を考えながら一人ほくそ笑んでいると、

背中越しにお母さんが一言。

「淳子、徹夜もいいけど、早く準備しないと学校遅刻するわよ。今日で一学期終わりなんでしょ?」

そう言い残すと部屋を出ていった。

私はあわてて洗顔、朝シャン、歯磨きを済ませると、鏡の前で髪を整える。

(私ってもしかして夢遊病の気でもあるのかしら?)

制服に着替えながら私はそんな事を考えていた。

 

あれから一月後・・・・

夏休みも終わり暑かった夏が過ぎると、季節は秋に変わる。

あの日の出来事も忘れかけてた二学期のある日、連日、深夜までの勉強の疲れからか、昼食を終えた私は、あまりの日差しの気持ちよさに私はついウトウトとしてしまい、午後の授業中だと言うのに熟睡していまった。

「・・・・大久保」

「・・・・大久保淳子」

「聞こえんのかっ!!大久保っ!!」

耳元の大声にびっくりして目を覚ますとそこには学校一怖い世界史の教師高木先生が立っていた。

あわてて教科書を開いて取り繕おうとしている私に、

「よ〜しっ・・・じゃ質問だ。イギリスがインドの植民地化の為に起こした、プラッシーの戦いは何年だ?回りに聞くんじゃないぞぉ〜」

そう言いながら高木先生は私の様子を見ながらニヤニヤしている。

(も〜っそんな性格だから40すぎても彼女できないのよ!・・・でもど〜しよ、全然わかんないよぉ〜!)

質問に答えられずに立ちつくしていた

その時、頭の中から「声」が聞こえた。

《・・・1757 》

頭の中で声が聞こえた。

「 えっ!? 」

《 1757年だよ。プラッシーの戦いは・・・》

私は藁にもすがる思いでその声に従い、答えた。

「はい 1757年です。合ってますか、先生?」

「!!」高木先生はビックリした表情で私の顔を見つめている。

丁度その時、授業終了のチャイムが鳴った。

「これで授業は終わる各自、予習しておくように!以上っ!」

そう言うと先生はバツが悪そうに教室を出ていった。

先生が廊下に出たのを確認すると5、6人の生徒が集まってきた。

「スッゴ〜イ  淳子やるじゃん」

「見た? 高木のあの顔〜 チョ〜笑えるよ!!」

「ホント ホント アハハハハハハッ!」

「そんな事よぉ〜偶然だって。♪」

そんな事を言いながら、私は正直得意満面だった。

それにしても先刻の「声」って一体・・・?

私はその疑問を確かめる為、放課後、友達とのカラオケの誘いを断ると急いで自宅に帰る事にした。

自分の部屋にはいると鍵を閉め、恐る恐る鏡に向かって話しかけた。

「貴方何で、私の頭にいるの?一体貴方何者なの?妖精?、超能力者!?もしかして幽霊とか・・・」

《・・・・・・・・・・・》

「ねぇ、お願い。いるんなら答えて頂戴!」

私はすがる様に鏡に向かって叫んだ。

《ああ・・・・》

突然、頭の中から声が聞こえた。

それは確かに先程聞いた「声」だった。

まだ声変わりの済んでいない少年の様な「声」に、私は自分でも驚くらい冷静に話しかけた。

それから「彼」とは頭の中で会話が出来る様になった。

どうやら「彼」は去年交通事故で死んだ受験生で高校受験出来なかった事に相当未練があるらしく、こう話し始めた。

《あんなに勉強して、絶対の自信があったのに試験会場に向かう途中に車にはねられて、死んでしまうなんて・・・。それでお願いなんだけど、君の身体をしばらく貸しておいてほしいんだ。受けることの出来なかった高校の試験を受けてみたいんだよ。これじゃ、死んでも死にきれないよ》

ちょっと怖かったけど、それ以上に「彼」の願いは私にとって都合が良かった。

「彼」が私の代わりに試験勉強を全てやってくれれば私は何もしなくても、4月には高校生になれる。

これはすごく魅力的な事だった。

「受けるだけよ。私は先輩と同じ高校に行きたいんだから・・・」

私は志望校の絶対合格を条件に高校受験までの間、「彼」の申し出をOKした。

確かに「彼」の実力は素晴らしく、季節が秋から冬になる頃には、私の成績はトップの常連になるまでになっていた。

そして二月の末には志望校全ての高校の試験を受けた。

もちろん結果は全て合格。

私の考えたシナリオは思い通りに進んでいた。

その後、無事卒業を迎え、後は高校の入学式を待つだけとなった春休みのある日。

私は両親の外出を確認すると、先輩を自宅に招待した。

そして二人だけの合格祝いの後、私の部屋で私達はお互いの身体を初めて交わした。

「うっ・・・くっ・・はぁ・・はぁ」

「あっ・・・・・・あんっ!」

「ゴメンっ大丈夫、痛かったかい?」

「大丈夫っ、つ・・続けて下さい・・はぁ・・はぁ」

部屋の中ではベットのきしむ音と微かな吐息だけがしている。

私は股間の痛みを必死で耐えながら、先輩を一生懸命受け入れた。

体中がビリビリして気が付くとシーツを力一杯握りしめていた。

 「ああっ・・・!!」

 「はああっ!!」

二人とも天井を見つめている。不意に私の目から涙がこぼれた。

その様子に気づいた先輩が心配そうに私を見つめる。

「もしかして後悔してるのか?」

「ううん、違うの・・・うれしくて」

「淳子・・・」

そう言うと先輩は私を抱きしめ優しく頭をなでてくれた。

「幸せ」・・・私は先輩の腕の中でそんな気持ちを噛みしめていた。

それから私達は親が親が帰って来る前にシャワーを済ませると、服を着込んだ。

玄関で先輩は靴を履きながら私を見つめてこう言った。

「淳子、おめでとう。春からは一緒の学校に行けるんだよな、俺達」

「ありがとう、そうだよ。ずっと一緒だよ、私達」

私は思わず顔が真っ赤になりながら答えた。

しばらくの沈黙の後、先輩がドアに手を掛けながら背中越しに呟く。

「それじゃ、俺帰るわ」

「うん・・・」

照れくさそうにそう言うと先輩は、足早に私の家を後にした。

私は先輩の姿が見えなくなるまで見送った。

全てが順調だった。まさに幸せ街道爆進中だった・・・。

私は先輩との行為の余韻と今までの開放感からか、自分の部屋に戻るとそのまま寝入ってしまい「彼」のつぶやきを聞き逃してしまった。

《女の子の身体って気持ちいいんだなぁ。俺も欲しくなったよ・・・》

翌朝、私はいつもより早めに目が覚めた。股間に軽い痛みが走る。

(痛たたっ!でも、夢じゃなかったんだ。・・・うふふ先輩♪)

この痛みが昨日の出来事が夢じゃ無い事の証拠だと思うと、何だか愛おしい。思わず口元がゆるんでしまう。

ベットの中で喜びを噛みしめながらしばらくしているうちに、私はある事に気づいた。

目は覚めているに、身体が全く動かない。

自分自身の身体なのに指一本動かす事が出来ないのだ。

冷や汗が体中をつたい落ちる。

「くくく、おはよう淳子ちゃん。目は覚めたかい?」

私の口から出てきたその言葉は「彼」の物であった。

確か受験を終えたら、私の身体から出ていく約束のはずなのに。

それに何で「彼」がしゃべれるの?

《約束が違うじゃない!早く私の身体から出て行ってよ!!》

私は必死で「彼」に訴えかけるが、「彼」はただ一言。

「・・・気が変わったんだよ」

そう言うとベットから起きあがるなり、着ていたパジャマを脱ぎ捨て下着だけの姿になるとおもむろに胸を揉み始めた。

「あっ、ああっ!・・・何て気持ちいいんだこの感触は・・・」

指先に乳房と乳首を揉みし抱く感覚と同時に両胸を揉まれている感覚が伝わる。

それでいて自分の意志では何もできない。

まるで操り人形にでもなった感じだ。

《やめてよっ!私の身体でなにしてんのよっ!!》

叫んだつもりだったが、私の口から出るのは快楽に打ち震える喘ぎ声だった。

そして「彼」は鏡の前に立つと、更に乱暴に私の身体を弄び続ける。

鏡に写る自分の姿に思わず私は言葉を失った。

まるで発情期の獣の様な卑わいな顔つき。

クチュクチュといやらしい音を立てながら、

パンティーの中をまさぐる指先。

その指先をとりだし口にくわえて舐める仕草。

鏡に写るその姿は私がこれまで一度もした事の無い淫らな表情・・・。

全てが私には耐えられない屈辱だった。

《いやぁぁぁぁぁー!!やめてぇぇぇ!!》

私は必死に抵抗したがどうやら身体は「彼」の支配下にあるらしく、どうする事も出来なかった。

感覚だけが共有出来る為か、私は半ば犯される感覚に襲われた。

「はぁ、はぁ・・・黙ってくれよ・今いい所なん・・・はんっ、あああああっ!!!」

私の身体がビクンッと大きくのけぞったかと思うと、そのままの姿勢で床にへたりこんだ。

床には私の股間からしみでた液体が一面を濡らしていた。

「彼」は私の身体で失禁しながら絶頂を迎えていたのだ。

その後、「彼」は床にこぼれた液体を雑巾で丁寧にふき取ると、次に浴槽に向かい汗まみれの私の身体をシャワーで洗い始めた。

しばらくしてシャワーを終えた「彼」はバスタオルで髪と身体を拭きながら、        洗面所に備え付けの鏡に向かって一言呟いた。

「悪いけどこの身体、俺がもらうぜ・・・。」

そして身体を完全に乗っ取った「彼」は私の部屋に戻るとハンガーに掛けてある私の服を身につけ、何喰わぬ顔で居間の方へ向かう。

段々と薄れる意識に中で私は、今までの事を後悔していた。

《これ以上、もう何も考えられない・・・こんな事ならどんなに苦しくても自分の力で受験勉強すれば良かった》

《先輩・・・ごめんなさい》

そして4月・・・・・

入学式を終え、桜の舞い散る高校の校内を真新しい制服で、颯爽と歩く私の身体は、既に私のものでは無かった。

「くくく・・・楽しい高校生生活になりそうだな♪」

そう一言つぶやくと少女は肩まで伸びた髪をかき上げると、校舎の中に消えていった。

      

                            

                                    



 

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