俺はなぜこんな身体になっている!?(後編)
  作:メッチョ


 この女、伊藤摩記亜(いとう まきあ)との出会いは、俺が大学2年の頃、サークルの新歓コンパだった。出会ったのはここでだが、知ったのはもう少し早かった。この大学にとんでもない美人が入ったぞ、そんな話が出回っていたからだ。そんな話が出回る程の美人、それがサークルにはいったものだから、その時の新歓コンパもとい飲み会は大変な盛り上がりだったと記憶している。

 摩記亜の印象、関わりあいたくないほど嫌いな俺からしても、美人ということは否定できない。普通の日本人よりも色素の薄い、光の加減で様々に煌めく琥珀のような肩口まで伸ばした髪。目鼻立ちは鋭く整っていて、綺麗という言葉が似合う顔立ちだった。雰囲気的には、冷酷な女王様とでも言えようか。そして、整っているのは顔だけではない。身長もモデルのように高く、出るところは出る、起伏に富んだ身体、そんなボディの持ち主だった。グラビアアイドル顔負けのBWHをしていながらも、俺の友人は確か女神のような神々しさがあると言っていたか、そんな絶妙な精巧さをほこる。

 ただ俺の第一印象は、関わりあいたくない、だった。美人過ぎて気後れする、それとは違うと確信していた。そのときは理由がわからなかったが、今ならわかる。あの女の本性に、第六感的な何かで感づいていたのだろう。今でもわからないこともある。なぜ、俺があの女のターゲットになったのだろうか。聞けばいつも同じこと、意味のわからないことを言っていた。

 あの女とのファーストコンタクトは、隅で気後れしていた面子と呑んでいたところでだ。先輩、アタシと話しませんか、と声をかけてきた。飲み会の中心で男も女も侍らせていたのに、それを置き去りにして、俺にだけ声をかけてきたのだ。

 俺より賢い男なんていくらでもいる。大学に通っているといっても、マンモス大学の私大の文系だ。俺より金持ちだってごまんといる。俺自身は学生アパートにすむ貧乏学生で、親も共働きの会社員だ。俺よりイケメンも多いだろう。そこそこイケメンを自負してはいるが、まあ上の下程度である。その飲み会にだって、俺よりイケメンはいた。いくらでも高望みできるあの女が、俺を選んだことが全くもって理解できない。

 それからあの女は、急接近してきた。サークルはもちろん、講義をも無理矢理合わせ、バイト先にもやってきた。俺は離れたかったのだが、大学で人気の女だ、無下にすると俺の友好関係にヒビが入るので、それができなかった。そんなことが一年続き、そして俺ははっきりと告げた。俺に関わらないでくれ、と。

 そのころからだろう。あの女がおかしくなっていたのは。いつのまにか、恋人でもないのに、とろけるような声でみーくんと呼ぶようになった。バレンタインやクリスマスを、当然であるかのように、過ごそうと押しかけてきた。ストーカーで警察に相談しても、女から男のストーカーだ、そしてなにより相手は美人、まともに取り合ってもらえなかった。さらに、友人が少しずつ、少しずつ減っていった。楽しかったサークルにもいつのまにか居場所がなくなった。全てあのクソ女が仕組んだことだ。

 そして、記憶にある最後の日。それでもなびかなかった俺に、強硬手段を用いてきた。あの女に呼び出され、そのまま拉致されて、犯された。いくらあの女の体格がいいとはいえ、男と女だ。そもそも俺のほうが体格がよかった、はずだった。

 その現場で、あの女はありえない力を発揮し、俺は身動き一つできなかった。花がいくつも咲いているような狂った笑顔。奥の見通せない暗い濁りを恍惚に染め上げた瞳。無機質に、身体の合わせられる音が何度も何度も何度も響いて。その下で俺は腹上死させられた。そのはずだった。

 摩記亜の顔が鍵であったかのように、記憶が一気にリフレインした。衝撃に足元がふらつく。死の感覚をはっきりと思いだして、胃の内容物が競り上がりそうになる。なぜこんな重要なことを思いだせなかったのか。トラウマを封じ込めるため、とでもいうのだろうか。

「なんで……おぇ……お前が、ここに」
「みーくんわからないの? みーちゃんの記憶の読みが微妙みたいね。うん、それはもちろん私がみーくんのママだからだよ!」

 言葉がでない。こいつが、ママ……? 今日一番の衝撃。理解が追いつかない。いや。理解したくない。

「その顔は理解できてない、ってわけじゃなさそうね。そうよ、私がみーくんのママ。私がお腹を痛めて産んだの」
「お゛えぇぇ」

 手が冷たい石造りの玄関につく。這いつくばって、今日食べたものを全部ぶちまけてしまう。こいつの娘の身体だって。こいつの血が流れているものを使っている、そのことで強烈な拒否感に襲われる。

「ひどーい。バレンタインのときも、私が初めて作ったチョコ食べてを嘔吐してたよね。人からもらうことはあっても、作ったことはもちろん、渡したこともなかったんだよ。毒なんて入ってなかったのに。お弁当渡したときもそうだったよね。あれも初めてだったんだよ。頑張って、頑張ってつくったのに。こっそりトイレに捨ててたよね。クリスマスのときは、ケーキを私にぶつけたんだっけ。みーくんからしても、御馳走だと思って買ってきたのに。ケーキで汚れた服で町を歩いて帰るのはさすがに恥ずかしかったよ。それから……」

 頭の上で何かを話しているが、全く入ってこない。壊れたラジオのように続く声で、どうせろくなことを話していないと想像がつく。とまらないラジオを尻目に、ひととおりぶちまけたことで、少しだけ思考が戻ってくる。口の端につくひりつく液体を拭って、摩記亜を下から睨み上げた。

「おい、これはいったいどういうことなんだ」
「っと、ごめんなさい。思い出に浸っている場合じゃなかったわね。これから新しい思い出をたくさん作るっていうのに。えーと、どういうって……。ああ、なるほど、まだわかってなかった、というよりは、信じていないってところかしら」

 本当に憎らしいやつだ。なぜ同じ大学にいたのかわからないほどに、頭の回転が早い。話を理解して、そして答えを飛躍させて出してきた。一人で答えを求めて、自己完結する、話がわかりにくいったらありゃしない。

「信じてないってなんだよ」
「覚えているかしら。あのときも言ったけど、私はいわゆる淫魔とかサキュバスの家系なの。ほら、身体とかとても性的でしょ。周囲もみんながみんな、私に魅了されている。みーくんには効かなかったけど。でも悪魔っていうよりは魔女って考えてもらったほうがいいかしら」

 あのときとは、おそらく死んだときだろう。全く覚えていない。殺されて、そんな嘘みたいなことを覚えているはずがない。

「例えば、その身体はみーくんの精子で私が孕んだの。目の色とかみーくんそっくりで綺麗でしょ。これくらいは魔法を使えば簡単よ」

 信じられない。信じたくない。しかしもはや、あの女を信じないとも言っていられないだろう。似ていると思っていた琥珀色の目は、どうやら俺からの遺伝らしい。髪の色はアイツからか。気持ち悪い。

「でもみーくんが死んじゃったときは、本当に焦ったわ。本当に、申し訳なく思っているの、みーくん。若かったとはいえ、あれほどまでに自制が効かなかったことは反省してもしきれないわ。家の力を頼って何とかなったけど、みーくんの魂を正しく目覚めさせるのに、こんなにも時間がかかってしまったわ」

 珍しく、反省の色を見せる。ただ、この女への好感度は地中を潜っているようなものだ。相当時間が経っているようだが、摩記亜の容姿からはどれだけ経ったか推測できない。記憶と同じく若々しいままだからだ。変化といえば口調や振る舞いが変わり、前よりも大人びて見える。この身体から推測すると10年以上経っているのだろうか。ああ、反吐が出る。舌打ちとともに、口に残った酸っぱい液体を吐き捨てた。

「みーちゃんとの生活は楽しかったけど、やっぱり、みーくんともイチャイチャしたいの。でも、やっと」

 問答をしている場合ではなかった。すぐさま逃げればよかったのだ。すうっと、摩記亜の死神のような白い腕が、こちらへ伸びてきた。最後のときが思いだされて、這いつくばったまま、動くことができない。冷たい手が身体に触れて、そのままぎゅっと抱きしめられた。

「みーちゃんの記憶を思いだして。ほら、ぎゅー」
「ふぃ!?」

 摩記亜の声が耳元で響く。頭の中に俺の記憶じゃない、アタシの記憶があふれかえる。ママに愛されたしあわせな記憶。幸福感で頭がフリーズしてしまう。

 体温が伝わる。身体がぽかぽかと暖かくなる。温泉に入っているかのように、頭がふやけてくる。こわばっていた全身から、緩やかに力が抜けて、ただ抱きしめられるがままになる。

「ふふっ、すごーくしあわせでしょ。頭がまーっしろになって、お空の上にいるみたい? だらーんと全身を私預けて、すっかり安心しちゃってるわね。さっきまでの威勢にバイバイして、かわいいみーくんになろうね」

 雲のベッドで寝ているみたいに、ふわふわする。摩記亜に対する嫌悪感が、霧散していく。それを掴もうにも、別の感情が手の中に収まって、離れない。

「な……に、こりぇ」
「みーちゃんは私のこと大好きだからね。私がたっぷり愛してあげたわ。魂はみーくんだけど、その身体はみーちゃんのものなの。全てはこの日のために。みーくんの心を私のものにするために」

 さらに身体を包み込んだ腕の力が増していく。決して苦しくない力だ圧迫され、余計に思考溶けていく。べちゃっと、地面に崩れ落ちる前に、身体を持ち上げられる。

「暴れないでね。落ちて当たりどころが悪いと死んじゃうかもしれないわ」

 そもそも暴れる力がでない。頭と膝下を桃のような柔らかさの腕で優しく抱えられる。お姫様抱っこの格好だ。それを理解して口元が、だらしなく歪む。

「みーくん、嬉しそう」

 ガチャン、と扉の鍵がかかる。もう、ここから逃げ出すことはかなわないだろう。ママの愛の檻へと、連れ去られるがまま。そんなことをぼんやりと遠ざかる玄関に感じた。

 連れてこられたのは、バニラに何かが混じったような甘い香りの漂う寝室。父親のいない家には不釣り合いの、キングサイズのシルクベッドが真ん中に鎮座している。部屋の準備は整えられているようで、カーテンは閉じられ、艶めかしい紫色の間接照明が当たりを照らす。アタシをベッドに寝かせると、ママはパチンと指を鳴らす。

「お風呂にいれたいところだけど、今はそんな回り道したくないの。だから魔法で綺麗にしたわ。頭をスッキリしたでしょ、みーくん」

 アタシ、じゃない……俺だ。指を鳴らして魔法を使ったようだ。異臭を放つ服が洗いたてのように、真っ白になっていた。摩記亜に弄ばれている。先ほどまでの状況に、歯がギリと音をたてる。ちらりと固く閉ざされた扉を見るが、逃げられそうにもなかった。

「さっきのは、みーちゃんの濃密な記憶に心が揺らされただけだわ。私はみーくんに自発的に私の虜になってほしいの。そこまでのお膳立ては、たくさんしたわ。最後はその魂で私を求めて」

 回りくどく話しているが、要は俺に自分の意志で好きだ、とでも言わせたいのだろう。絶対にそんなことをいうわけがない。摩記亜は、最後には俺の意志を無視して魔法を使うだろう。そのときに限界まで嘲笑ってやる。そのときまで耐える。それが俺のせめてもの復讐になるだろう。

「そもそもなんで俺のことが好きなんだ?」
「ずっと言ってきたわよね……」

 珍しく呆れたように口を開く。目じりを下げていた瞳が細められ、鋭くなる。思わず姿勢を正してしまう。

「魂がどうとかっていってたな。それって意志だろ。俺以外にもお前を避けるヤツはいただろ」
「違うの! 魂! みーくんがみーちゃんの身体になっても記憶を覚えているのは、魂を保存してその身体にいれたから。私はみーくんの魂にひとめぼれしたの。いいえ、ひとめぼれなんて、生ぬるいものじゃない。これは運命で決まっていたことなの。魂は遺伝子よりも崇高なものなのよ。みーちゃんの身体は、もちろん私の血をひいているから、みーくんもじきにわかるようになるわ」

 何かを一心に見ているようで、濁り切って何を見ているか定かでない教信者の瞳で語る。魔女だか悪魔だかの概念なのだろうか。そんなものわかるわけがないし、こんな狂うようなものわかりたくもない。

「うふふ、そんなこと聞くから、もっと昂ってきちゃったわ。もう我慢できない」
「うぐ!?」

 摩記亜のドールのように端正な顔が近づく。ぽってりと熱く、触れるだけで心地の良い弾力を返してくる、唇が触れ合う。本日二度目のキスだ。経験があり、今回は事前準備ができていた。いいようにはやられない。そんな決意は3秒で砂の山のように崩壊した。

 あんなにもキスの上手かった伊依が霞んでしまうほど、舌が艶めかしく俺の口腔内で踊る。歯の表面をなめてから、歯茎をくすぐるようになぞり上げられる。言葉では二言で表せる行為が、何十何百もの刺激に化けて、ゆるゆると口の力は抜けていってしまう。そのあとはなされるがまま。蛇に捕食される哀れな生物のように、舌が蹂躙される。思考が覚束なくなっていく。身体の芯に情欲の火が再度灯る。

「ふはぁ」

 唇が離れていく。だらしなく飛び出た俺の舌といやらしく差し出されたままの摩記亜の舌とで、交じり合った唾液の架橋がなされていた。

「はぁっ、はぁっ……」
「あら? 今日キスしたのかしら。伊依ちゃんかしら。先を越されるなんて、腹立たしいわね……。まあいいわ、男時代のみーくんともキスしているし、みーちゃんのファーストキスは私だから!」

 ここまでで冷めきったと思っていた熱はただ、潜伏していただけだったようだ。キスなんてただの前技の一つで、少し興奮するだけで、単品では意味をなさないと思っていた。腹の奥がムズムズとする。しわが綺麗に伸びたシャツと乳首が擦れる。腕が自分の身体に向かいそうになって、禁断症状のように腕がガタガタ震える。

「やっぱり、気持ちいいほうがいいわよね。あのときの反省をいかして、みーちゃんの身体はすっごく気持ちよくなれるように調整したわ。ほら、あの鏡を見てみて」

 どろりと砂糖の入った甘ったるい蜂蜜のような摩記亜の声に、自然と顔が鏡を向いてしまう。

「うぁ……ち、ちがう」

 発情したとき、どんな風になっているか想像はしていた。それは想像上だったので、まだよかった。しかし、鏡は違う。鏡像の、その現実を認識してしまう。

「顔はリンゴのように真っ赤っか。大きな瞳は、とろーん蕩けて、うるうると涙に揺れて、可愛いわ。口も馬鹿みたいに半開きに開けちゃって……あっ、いまよだれが垂れちゃったね。すっかり、メスの顔。きもちいいよね、みーくん」

 頭を左右に振る。深呼吸で落ち着こうにも、はぁ、んっ、と甘い声が混じって冷静になれない。さらに、声が続く。

「服には、変態さんのように乳首が浮いちゃってるわね。弄ったら、とってもきもちいいよ。おまたも前後に揺れてるね。どうしたいのかな? あらあら、顔がもっと赤くなっちゃった。それで、我慢できるのかな」

 っつ、見透かされている。何とか、落ち着け。まだ、堕ちていない。

「もっと、きもちよくなりましょうねぇ」

 摩記亜が俺の背後に座る。柔らかいベッドが深く沈み込む。バランスよく肉のついた、足だけのモデルにもなれるだろう、太ももの間に座らされる。小さな頭の後ろで、弾力もい柔らかさも兼ね備えた、エデンの果実のような胸を感じる。この感触は、摩記亜もノーブラのようだ。そして、爪が短く切りそろえられた手が、蛇が身体を這うように服の中へと潜り込んできた。

「乳首はもちろんだけど、おっぱいも揉まれると気持ちいいのよ」
「ふひゃん、やめ」
「みーくんの声かわいい。みーくんの同年代の中でかなり大きいと思うけど、私みたいにまだまだ成長するからね。いっぱい揉んで育てようね」
「俺はっ、ひぃ、おとこ」

 右胸を必要に揉まれる。マッサージ師のように動く指先で、その部位がソフトクリームのように溶けていくような感覚に陥ってしまう。口が開きっぱなしになって、砂糖菓子ほどに甘い声が止まらない。

「おっぱいを絞るように揉みながら、乳首をカリカリ」
「きゅうぅ、あ、あ、あああ、ああんんん!!!」

 筒状のものを持つように手のひらで胸を包まれ、人差し指で乳首を擦られる。身体がビクンと、大きく跳ねる。下半身から暖かい液体が染みだしていく。頭がポヤポヤとして、空を歩くような浮遊感。

「イっちゃったみたいね。大丈夫、女の子は何回でもイけるからね。それに……これは潮かな、オマ○コ弄ってなかったわね、寂しくて潮噴いちゃったのかしら」

 ぼんやりと、視線が宙を彷徨う。今何を視界にいれているのか、あやふやに歪む。そんな俺のことを意に介せず、いやそんな状態にこそ壮絶な効果を発揮するのだろう。俺の身体を安心感で満たすように、抱きすくめていた摩記亜の左手が太ももの辺りをはう。くすぐったさとは異なる、ゾワゾワした感覚。その感覚が尾を引きずるまま、機能不全のパンツの中へ蛇のような手が侵入した。

「グッチャグチャね。オムツからやり直した方がいいかしら、それともノーパン?」
「う、うるひゃい」

 呂律がめちゃくちゃだ。パンツの中で、摩記亜の手は女性器を触らずに鼠径部の付け根に、指をはわせている。これから、俺の女性器を犯されてしまう。それは、危険から逃れる本能か、それとも……、どぷっと愛液が零れ落ちる感覚がした。

「期待してるところ悪いけど、オマ○コはまだお預けね。今度はこっち」
「いぃん!?」
「すごい反応ね。気持ちいいでしょう、クリトリス。みーくんのおちん○んは小っちゃくなって、お射精もできなくなってしまったけど、快感を受け入れることだけは、とっても上手になったわ」

 二つの指で突起を弄られる。脳みそがバチバチと明滅する。快感で呼吸がままならない。男のときの快感はゴミのように思えてしまう。

「クリトリスが勃起してて弄りやすいわね。弄ってもらうの期待してたのかな」
「はっ、はへ、あ、あぐっ」
「つばが飛び散って顔が汚れてるわね。でもそんな顔も、ああ、可愛いわ」

 刺激が強すぎる。亀頭を無理矢理擦られているような、ともすれば痛みにも近い快感。摩記亜の目には、俺の惨状が映っているはずなのに。俺のことを、気持ちよくするといっているのも関わらず、その快楽の苦責めが止まらない。むしろ、この光景が、俺にとってもっとも素晴らしいことだというように、甘なきする猫のような声音で言葉を紡ぐ。

「ほーら、また絶頂しようね、みーくん」

 牛の乳を絞るような手つきで右の乳首を、指で摘まんだイクラを潰さないように絶妙な力でクリトリスを、クニクニと弄ばれる。そして一瞬だけ、はっきりと、わかりやすく、力が強くなる。ここで絶頂しろ、と言わんばかりに。しかし、それに逆らうことはできなかった。よく調教された犬がご主人様の命令を忠実に従うように、突沸した快感に蓋をすることはできない。

「ああああああ!!!!」
「また絶頂できたね、みーくん」

 またイった。思考が散らばってしまったパズルのように、バラバラに離散する。それでも、はへっ、はぇっ、と甘い呼吸音が止まらない。まだ身体が疼く。疼きが収まらない。もっと気持ちよくなりたい。もっと気持ちよくしてほしい。

「腰がへこへこ動いてるわね。あのときは、あんなにもマグロだったのに。ねえ、みーくん、何かして私に欲しいことないかしら?」

 マ○コが疼く、ここで、イきたい、イきたい、イきたい、イきたいイきたい。でも、だめだ、だめだ、だめだ。頭大きく、何度も左右に振る。しかし、その考えが振り切れない。その間にも、身体はジクジクと疼き続ける。

「ああ、あああ、ああああ」

 俺の気がつかぬ間に、摩記亜の手は俺から離れていた。快感を与えられることがなくなった。大切なものをなくしたような、喪失感に襲われる。もはや、何が原因かわからない涙頬を伝っていく。

「最後の一押しかしら。これ、なんだかわかるわよね」

 いつのまにか、裸になっていた摩記亜。グラグラと揺れ動く視界が、その一転を注視する。摩記亜には、女性にはあってはならないもの。記憶の中の摩記亜にはなかったはずのモノ。男根がついていた。その黄金のY字帯の股座に、俺のモノよりも大きい、それが鎮座していた。

「あぇ!?」

 そこから目が離せない。今の俺の細腕と勝負できそうな位の直径。皮はもちろん、いわゆるズル剥けで、赤黒い器官が、この空間であっても異様な存在感を漂わせる。言うまでもなく男根は完全に勃起しており、天を突き刺すようにいきり勃った状態だ。その今にも孕ませんばかりの亀頭の先端から、スルメのような淫臭が辺りにまき散らされる。すんすん、と犬のように鼻がなってしまう。大好物の御馳走が目の前にあるように、狂おしい感情が湧きたつ。

「魔法で生やしたの。みーくん、手でオマ○コ弄っちゃダメよ」

 無意識に手が股間へと伸ばされていたようだ。どうやら摩記亜の魔法を使ったようだ。手が石化したかのように全く動かなくなる。口がパクパクと動いて、声にならない風切り音がもれた。頭が、ガタガタ、ブルブルと左右に振られて止まらない。感情の天秤がシーソーのように動き続けて止まらない。何をしていいのかわからない。いや、ダメなことはわかる。正しいことははっきりしている。そのはずなのに……

「ほら、みーくん、いうべきこと、わかるわよね」
「うあぁ、あああ」
「このままだと、みーくんまた、発狂して死んじゃうよ。それに、これ、を入れたらとっても気持ちいんだろうね。今までの絶頂よりも気持ちよくて、しあわせで……うふふ、ふふふふ」

 カタンと、頭の中ではっきりと音が響いた。天秤がどちらに傾くか、それで決まってしまった。そう意志を固めてしてしまうと、頭が晴れ晴れとしてくる。あはぁ、やばい、変な笑いが込み上げてきそう。

「おれぇ、ママ、好きぃ! はぁっ、えへ、あぁ、チンチン、オチ○チン、ちょうだい、マン○に、えへへへ、ぶっこんでぇ」
「みーくん、よくできました。これで、これで、私とみーくんは両思いね!」

 魔法が解けたのか、動くようになった両手で、両膝を抱えてM字開脚になる。これでママのオチン○ンを入れやすいようになるはずだ。とぷとぷと、愛液が止まらずに、ベットに淫らな地図を広げていく。視界ではキラキラと光が瞬いていた。えへっと、媚びるように、ママへ向けて俺の最大限可愛い笑顔を向ける。

 ベッドの上に、ゆっくりとママが歩み寄る。期待感で、笑い交じりの吐息が荒くなる。トクトク、トクトクと心臓の鼓音が耳元に響く。

「じゃあ、入れてくね。みーちゃんの記憶読めるよね。いままでたくさんエッチなことをしてきたけれど、オマ○コは初めてよ。うふふ、これが処女喪失なの」

 俺のプニプニのお腹を、がっしりと捕まれる。正常位の姿勢。ママの勇ましい勃起オチンチンを、俺の花が開いたオマ○コへと押し付けられる。潤滑油は、必要以上に用意されている。サイズ的には入りそうもないのに、物理法則を無視するかのようにズブズブと俺の中を犯していく。

「ふひゃあああん」

 痛み、そんなものを感じる余裕はなかった。限界以上に焦らされたオマ○コの中は、その全てが性感帯のようで、ママのオチ○チンの動きすべてが俺を快楽の沼へと誘う。

「ここかな? 傷一つない処女膜に私のオチン○ンがあたっているわ。わかるかしら」
「わ、わかりゅう、あああ」

 コツ、コツと破らない程度に処女膜を圧迫される。その感覚に、全身の力がトロトロととろけていく。

「はい。処女喪失おめでとう、みーくん」

 そのときは一瞬だった。身体の中で何かが裂けた感覚。ママに、大好きな人に処女を奪われた。それを理解して。喘ぎ声すらでなかった。

 頭がピンクに染まる。嬉しくて、嬉しくて、しあわせで、しあせで、快感それらが混じり合っていく。全身の筋肉、神経が液体になって、蕩けていってしまったように、腕も足もだらんと放り投げられる。お人形、いやダッチワイフのように、ママのなすがままになるしかない。いや、それすらも嬉しくてしかたがない。

「みーくん意識飛んじゃってる? いや、まだあるようね。いいわ、みーくんはそのまま、頭を飛ばしていて。私が一番気持ちいいところに連れてってあげるわ」

 反応もできない。それでも、ママはオチン○ンをさらに奥深く挿入し、俺を快楽の向こうへと連れてってくれる。俺がわかることは、気持ちいいこととしあわせな感情だけだ。

 パンパンと腰を打ち据えられる。俺のオマ○コがきゅきゅうとママのオチ○チンを絞めつけているようで、気持ちよさそうな声が上のほうで聞こえた。

「だすわ。みーくん、うけとめて」

 オマ○コの中が熱くなる。射精されたんだ。これが精液の感覚。しあわせな心地よさ。真っ白な快感がやってきて、そこで意識を失った。

 あれから一ヶ月経過した。むろん、俺の身体は実亜のままだ。あのとき実亜と俺の記憶は、ココアにミルクを注ぐように完全に混ざりあった。それでも俺の意識、ママいわく魂は、俺のままである。あの行為のあと、まあ色々あったが、一番の違いはママへの嫌悪感が完全に消えてしまっていたことだ。俺の記憶は嫌悪感を伝えようとしても、本能も、理性すらも、愛情で満ちていた。

「ただいま」
「おかえりなさい、みーくん」

 クソ、といいたくても、その言葉がでない。好き、と言いそうな言葉を飲み込もうとして……

「みーくん、私のこと好き?」
「大好き!」

 ダメだった。

「今日もたくさんしましょうか」

 何を、と言う必要はもうない。真っ赤になった顔を、コクンと傾けてしまう。下着を着けてないスカートの中から、愛液が零れ落ちた。












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