「何で私にこんなものが・・」 私は絶句した。当たり前である。朝起きたら股間にアレが生えていたのだ。 モノクローム~欲望の果てに~ 原作:亞璃菜 改作:いるこ 朝起きる。ご飯を食べる。身支度を済ませ高校へ向かう。 バスでは今日も若い男が黒いヘッドホンから騒音を漏らしていた。漏れていることに気づいていないのだろうか? バスが停車し、同じくらいの年齢の子たちが乗ってくる。肌を黒く焼いた子たちは、誰がつきあっただの別れただの、あの子はどこまでヤっただのくだらない話をしている。私だってそういうことに興味がないわけじゃない。でも「その話」をするのは私が苦手とする集団であることからどこかしら忌避感を覚えていた。 学校近くのバス停に着くころにはバスは少し混み合っていた。始業時刻よりもだいぶ早く着くように来ているのにこれなのだから、ギリギリの時間は私と同じ学校の生徒や通勤中の会社員で満員なのだろう。私は何故だか隙間の詰まった黒いスーツの男たちの間をかき分けてバスを降りる。 これが私のいつもの朝。 しかし、今朝の私はいつもと大きく違ったのだ。 なぜこんなことになったのだろう?ベッドの上でいくら考えてもわからない。ただ現実に私の股間にはアレが生えているのだ。 私のパンツの中で窮屈そうにしているアレ。私がパンツをおろすと、生き生きとしたアレが姿を現した。今まで見たことがないわけではないが、こんなに大きいものだったのだろうか?子どもの頃父親の垂れ下がっている物しか見たことのない私にとって、これほど大きくなっているのを見るのは初めてのことであった。 「これは偽物じゃないのよね?」 太い血管を力強く浮き立たせ、黒光りしながら生き生きとした姿を示すアレはどう見ても本物であった。 鼓動が速い。心臓の音が外に漏れているのではないかと思うほど大きく聞こえる。そしてアレもまたそれに呼応するように脈を打っているように感じた。 息を飲む。 私はアレから目を逸らすことができなかった。 知識としては知っている。 アレが大きく、そして硬くなることを。 だがいざその現実を目にしたとき、私は胸の下を圧迫されるような苦しさと感情の高ぶりを感じていた。 私はアレに恐る恐る手を伸ばす。 触ることが汚らわしいことだと訴える理性に、本物であるかたしかめるためだと言い聞かせ、そっと手で包み込んでみる。 「・・っん」 一瞬何かが背筋を駆け抜けた。 そのまま少しずつ力をこめていくとしっかりと握られた感覚があった。 「やっぱり本物なんだ。」 そう・・・。 そんなことはわかっていた。本物か確かめるために触ったんじゃない。触らずにはいられなかったのだ。私の心の奥で何か囁いていたのだ。 その訴えに従いゆっくりと手を動かす。アレを通じてゾクゾクした感覚がのぼってくる。 落ち着かないと。 わかっている。 わかっている。 そう訴える理性。 だか、その一方で私に対して囁く声が聞こえる。 知りたい。この感覚の先が知りたい。もっと先が知りたい。 囁きは大きな声となり、やがて訴える声をかき消していく。 徐々に手の動きが速くなる。 こうなるともう止められない。 「っはぁ・・はぁ・・ん・・だめ・・」 自然と漏れる喘ぎ声。 私はどうにか声を口の中だけでとどめようと口しっかり閉じる。 鼻から激しく息とともに音が漏れ出る。 私はアレを更に強く握る。 隙間をなくし、手の動きが直接アレに伝わるように。 気持ちいい。 すでに快楽の虜・・。 アレを強く握り、一心不乱に手を動かす。 体が熱い。 息が苦しい。 頭がくらくらする。 もう少し、きっともう少し。その先まで。 叫んでいる。 手の動きが速くなる。 来る、何かが来る。わかる。何かが来る。上がって来る。 来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て、来て!!!! ドピュ 突然身体の芯から突き上げられるような感覚におそわれ、同時にアレから何かが吹き出した。 脱力感が体を覆っていく。 私はベッドに倒れた。 まだ息づかいが荒い。 息を整える。 体が急速に冷える。 熱を帯びた汗が流れる。 私は天井を見つめたまま気を失った。 「起きてる?学校遅れるわよ」 ドアの向こうから聞こえる母の声。 どれくらい時間がたっただろう?きっと5分も経っていない。 夢だったのだろうか? 汗ばんだ私の体・・。 私は額から流れ落ちる汗を手で拭った。 その瞬間額にべたべたしたナニカがついた。 「何これ?」 キモチワルイ・・ 私はその瞬間すべてのことが夢でないことに気づいた。私の手にはアレからでてきた液体が付着したままだった。 キモチワルイ・・・ 私はなんてことをしてしまったのだろう? 今考えるとなぜそんなことをしてしまったのだろう。 けどあのときは何も考えることができなかったのだ。 キモチワルイ・・・ 後悔してもしきれない。すでに過ぎ去ったこと。 先程まであったはずのアレはすっかりその姿を消していた。しかし私はそれに安堵する気持ちはなく、自分自身を嫌悪する気持ちに覆われていた。 キモチワルイ・・・ 額から汗が流れ落ち、シーツを黒く染めた。 |