絶望を孕むのは
  作・挿絵: 小生


「エリーゼ!!!」



あの日、俺が手を掴めれば。
俺がもっと早く魔王軍を退けていれば…。
満月の夜、城に攻めてきた魔王軍によって姫が攫われた。
夜中の奇襲で城の兵士達もまともに動けずに魔王軍相手に奮闘するも、姫を攫われてしまう1番の失態を犯してしまった。
国は「希望」の象徴を失い、国民たちは誰もが姫を失ったことを嘆き、悲しんだ。

「エリーゼ…すまない…俺がいながら…」

俺とエリーゼは同じ城で育った。
魔王軍に親を殺された俺を城の騎士団長は養子として向かい入れ、我が子当然のように可愛がってくれた。
だが、ただ養子として向かいれてくれた訳ではない。
俺は小さい頃から騎士団長直々の剣術の指導を受けていた。
今でこそ剣は好きだが、小さい頃は剣術なんて大嫌いだった。
練習から逃げ出してた俺はよく、エリーゼの部屋に逃げ込んでいた。

「全く…ルドはまた騎士団長さんから逃げてきたの?」

「だって…親父は剣が振れないのは男じゃないって…!俺だって剣士になるために男になったんじゃねぇよ…」

「はぁ…贅沢な悩みね…私なんて剣に触ろうとしたら危ないからダメ!って…本当に失礼しちゃうわ」

「なんだよ…贅沢って…俺だって選べるならお姫様に生まれたかったよ…」

「ふふ…ルドはそんなことばかり言うんだから…。
ルドは私を守ってくれる剣士になってくれんでしょ?
私のためにも強くなってよね!私の『剣士様』」

「あ、当たり前だよ!エリーゼは俺の剣で守るから!!絶対に!!」

「うふふ!約束だからね!私に何があっても助けに来てね!破ったら許さないから!」

あれから俺は剣の鍛錬を積み、エリーゼを守る剣になるために魔王討伐軍に入った。
戦いが激化して親父は最前線に行って戦っていたが
親父が敵幹部と刺し合い死んだと聞いた時、俺は声を殺して久しぶりに泣いた。
親父を奪い、エリーゼを攫った魔王を許さない。
その一心だけで俺は一人、魔王城へと来ていた。
魔王軍は王国との戦いで疲弊し、名だたる幹部達は戦いの中で死んでいる。
つまり、魔王軍も王国軍もお互いに均等してる状態なのである。
王国は兵の準備が整うまで魔王軍の様子を見ると言ったが
エリーゼを攫われて、そんな悠長な事は言ってられない。
たとえ、魔王と刺し違えようともエリーゼを救う。
俺は高まる心臓を押さえつけ、魔王城の中を進んでいく。
俺はどこから来るかと警戒するが、恐ろしいぐらいに敵の姿が見えない、それどころか気配すらない。

「(魔王軍は本拠地をもぬけの殻にして何をしてるんだ?)」

俺たちが魔王城だと思っていたモノは実はとっくに捨てられた城なのかもしれない。
俺は拍子抜けしつつ、おそらく玉座のあろう部屋まで来た。
すっかりと警戒を忘れて緩んでいた俺の心臓が再び鼓動を始める。
この先に親父を殺して、エリーゼを攫った本人がいる。
俺の中に溢れる様々な感情を押し殺し、扉を開ける。

「さあ!!魔王よ!来たぞ!!今ここでこの戦いに終止符を付けてやる!!!」

俺が勢いよく扉を開けると大きな部屋に俺の心臓の鼓動と小さな拍手が鳴り響く。

「馬鹿にしてるのか…!いいから早く姿を見せろ!!」

まるでようこそ、勇者よと言わんばかりに拍手し、俺を嘲笑う魔王に俺は腹のワタが煮え返りそうになる。
魔王は拍手を止めたと思うと小さい声で笑い、俺の前に姿を表す。

「いやいや…すまない…あまりに臭いセリフを言って入って来るもんだからついつい僕も乗ってしまったよ…」

魔王が俺の前に姿を表した、 


はずだった。
今、俺の前で喋っているのエリーゼだ。
声も、姿も、全部、エリーゼだ。

「おい…お前…俺を本気で馬鹿にしてるのか…!エリーゼの…エリーゼの姿で何をしてやがる!!」

俺が刹那で相手の間合いに入り込み、魔王の首を掴むと魔王はエリーゼの顔で俺の顔を覗き込んでくる。

「やめてよ…ルド…私は攫われてずっと寂しかったんだよ…?」

俺は思わず、手を離し後退りしてしまう。
それ見た魔王はさらに話を続ける。

「魔王に攫われてからは本当に大変だったの…とても綺麗な部屋に押し込まれて、お前は大切な身体だからって言われて、魔王軍に色々してもらったわ」

何を言ってるんだ…?
俺が理解するよりも早く、魔王は話を続ける。

「そしてとうとう『あの日』が来たの。私は牢から出されて、この玉座に来たわ。そしたら魔王が言うの、
『やっと魔王の子を産むに相応しい器が来た』って。
私は何がなんだかわからないまま伝承に伝わる禁断の秘術を受けることになったわ…」

そこまで聞くと嫌でも俺の頭の中はありもしない一つの答えに辿り着く。

「伝承に伝わる禁断の秘術…まさか…魂転移の術…!?」

俺が昔読んだ昔話に出てくる秘術だ。
自分の醜く、子供を作れない体を恨んだ魔王は姫を攫い、その魔法で姫の体を奪い数えきれない厄災を産んだと…。

「やっぱり覚えてたか、一緒に読んだもんね。」

俺はその一言で全てを理解する。
今、目の前にいるのは紛れもなく魔王であり、エリーゼの身体である。

「ふざけるな!そんな魔法は嘘に決まってる!!幻術か何かでエリーゼの姿を真似してるだけだろ!!」

俺は最後の抵抗を図る。
これは幻術で、本物のエリーゼはどこか別の場所に居るんだ。
俺に溢れている「絶望」を押し殺し、魔王に言うが魔王は嘲笑うように服の中に手を入れてある物を見せる。

「この身体は紛れもなく、姫のモノだよ…。このペンダント…君の愛してるエリーゼ以外に持ってる人間はいるかね…?」

魔王がもつペンダントには初めて歯が抜けてアホな顔をしてる俺とそれを見て笑っているエリーゼが写っている。
あぁ、間違いない。この身体はエリーゼのモノだ。
俺の中に溢れようとしていた絶望は形となって目の前に現れてしまった。

「そんな…そんな…エリーゼは…?エリーゼはどこだ!?」

俺は絶望に打ちひしがれながらも一途の希望に縋る。
入れ替えられたエリーゼはきっとどこかで生きてる。
そんな淡い期待を打ち砕くかのように魔王はニタニタしながら話を始める。

「あぁ…あの姫ならとっくに死んだよ…お前の親父と刺しあってな…あひゃひゃひゃ!!!!!!」

魔王の口から告げれた言葉はあまりにも現実味がなく、異常な鼓動で頭がおかしくなりそうになる。
姫は死んだ…?しかも親父と刺しあって…?
俺が理解できずにいると魔王は笑いながら説明を続ける。

「とても面白かったな…僕の体になった姫は抵抗して暴れるもんだから僕の洗脳魔法で僕の忠実な僕にしてやったさ…!最後まで『助けて…ルド…助けて…』てさ…まあ洗脳した後は王国軍の強そうな人に特攻させたんだけどね!あひゃひゃ!!君のお父さんもまさか特攻してきた化け物が姫様なんて思わないだろうしね〜!」

魔王の語った言葉はただ俺を馬鹿にして、
ただ事実を述べたに過ぎない事が分かった。

「なんだよ…エリーゼも死んで、親父も無駄死って言うことかよ…」

俺は膝をついてしまった。
ここに来るまでにあった様々な想いや力も何もかもがなくなって俺はただただ絶望の底へと沈んだ。

「大丈夫…ルド…?ルドが悲しい時はエリーゼが助けてあげる、だからエリーゼが悲しい時はルドが助けてくれる…でしょ?あひゃひゃ!!」

魔王がエリーゼの口調を真似して俺に揺さぶりをかける。

「てめぇ…なんでその約束を…エリーゼ以外知らないはず…」



魔王はそれを聞くとニタァ…と笑い、

「この術は身体だけじゃない…人生まで入れ替えるのさ…
この姫が今日まで生きてきた事、思っていた事、全部、全部がさも元から僕の中にあったかのように分かるのさ!!」

と言いきると突然後ろを向いて静かに語りだす。

「だから分かるの…きっと『私』は最後までルドが助けに来てくれる事を信じていた…。ルドはいつでも『私』がピンチの時は助けてくれるたもの…」

その声は優しいエリーゼの声だった。
俺がずっと聞きたいと思っていたエリーゼの。

「でも、ルドはあの日私の所には来てくれなかった。
それからもずっと牢の中で待っていたのにルドは姿も見せてくれなかった。」

俺の中にある自責の念を見透かしたように魔王は俺を責める。

「『私』が奪われてしまった後もルドなら気付いてくれると思った。でも…私は消えて、騎士団長さんと戦うことになった…。
痛いよ…辛いよ…なんで来てくれないのルド…ウッウッ…うひひ…あひゃひゃひゃ!」

魔王は俺を責めるのが楽しいらしく、俺の心を折りにきている。
俺は最後の一心で止まっているが正直、口答えするだけの元気も何も残ってない。俺は全てを失ったんだ。
俺が何も言えずに黙っていると魔王はこの時を待っていたかのように語り出す。

「まあ、王国を滅ぼしてでもお前を見つける予定だったが
お前一人でここにきてくれたのは正直好都合だったぞ…ふっふっ…」

魔王が俺を探している…?
何故だ…?俺は弱々しい声で魔王に聞く。

「何故だ…何故、俺を探していた…?」

掠れた俺の声を聞いた魔王は俺の前に座り込み優しく言う。

「お前と子供を作るためだよ…世界を支配する魔王の子供をな…」

子供を作る…?俺が…?
ここに入ってから目の前で起きることが全て素っ頓狂であまりにも現実離れでしているせいで俺は夢の中にいる気分だった。
そんな俺を無視するように魔王は語り続ける。

「強い魔王の子を産むには二つの条件がある。
一つ、人間の王族の娘の身体であること。
二つ、その娘が愛してる人間の男が相手であること。
魔族が人間の身体を奪うことで人間の聖の力を魔族の闇の力へと変換するということだ…全く、人間にしかない聖の力が闇の力を一番生み出しやすいとはとんだ皮肉だな…。」

色々と気になる所があったが何より、魔王の話が本当なら、エリーゼの愛してるのは俺と言うことになる。
あぁ…エリーゼ…俺もお前が一番好きだ…。
何故もっと早く…エリーゼがいなくなる前に言っておけば…。
俺の中あった後悔の念がよりいっそう強くなる。
しかし、後悔だけではない、もう一つ、あることに気づく。
この魔王の目的が子作りで、愛してる人間もしか出来ないなら相手との合意がなければ子作りなど出来ない。
それに気づいた俺はただ一つ、こいつの思惑通りだけにはならないという気持ちだけでその場から逃げ出した。
例え、卑怯者と言われて殺されても構わない。
こいつが子供を作れないならそれだけでいい。
俺の様子を見る魔王の隙を狙って、その場から逃げ出した。

「エリーゼ…親父…頭の悪い男ですまねえ…今すぐに墓を建てるからよ…」

俺がそう言って部屋から逃げようとすると突然体にとてもない違和感が走る。
表現することが難しい嫌悪感、まるで身体の中の水分を全部抜かれるような感覚。
上も下も右も左も分からなくなり、その場に倒れると上からエリーゼの顔が覗き込む。

「僕って楽しい事をするのが一番好きなんだ…だから、もっとタノシクしようよ…あひゃひゃ…」

奴の高笑いを最後に俺の意識は闇へと溶けていく…


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俺が目を覚ますととても柔らかいベッドで目を覚ました。

「ここは一体どこだ…?」

全く覚えない部屋で目を覚ました俺はゆっくりと深呼吸してさっき起きた事を思い出す。
悪夢としか言えないような状況、俺はその中で倒れてどうしたんだ?
俺が思い返していると徐々に目覚めていく体に違和感を感じる。
さっきまで来ていた鎧はどこだ?いま着てる服からは鎧のような重さを感じない。
むしろ、さっきから来てるこの服はなんだ…?
やけに軽いし、さっきからスースーするし何より、

「(なんだ…この胸にかかる重みは…?)」

俺が下を見ると黒いドレスに包まれた豊満な胸が見えた。
俺もそこまで鈍感ではない、直感的に理解する。
この黒いドレスに豊満な胸はエリーゼのものだ。
俺はベットから降りて、置いてある鏡に近づく。
ベッドから降りた時にも分かった、胸や太ももが揺れる感覚。
改めて鏡を見るとそこにはエリーゼが立っていた。
紛れもない、エリーゼだ。

「なんで…俺がエリーゼに…」

確かに聞こえる、紛れもなくエリーゼの声だ。
そして、首には二人の思い出のペンダントがしてるある。
さっきまで魔王が使っていたはずのエリーゼの身体を次は俺が使っている。
足は程よくついた肉を黒いストッキングが締め付け、よく見るとベットの下にはハイヒールがある。
元々エリーゼは白いドレスを着ていたが、魔王の好みでこのような露出の激しいドレスを着ているのか。
「ゴクリ」と生唾を飲む。もしこのドレスのスカートをめくったら、一体どんな下着を履いているんだろう。
男の性欲とは逞しいものでさっきまで絶望的な状況にあっても、一瞬の性欲による興奮には勝てない。

「エリーゼのパンツなんて何年か前に見たのが最後だな…
今はどんなパンツを履いてるんだ…?」

エリーゼの体でつい独り言を言いながら、俺は深呼吸をしてエリーゼのパンツを見た。

「下着まで真っ黒かよ…魔王の奴、完全に趣味じゃねぇか…」

決して自分からは捲らないはずのスカートを今のエリーゼを動かしている男によって捲られてしまう。
パンツは股に吸い付くようにくっついており、男の性器のようなモノはない。


「分かってはいたがツルツルだな…自分のブツがついてないってこんなに違和感あるんだな…」

何回も自分の股間を触り、男の性器がないことを確認するエリーゼを見て、ふと我に帰る。
こんなことをしてる場合じゃない、一刻も早くこの場所から離れなければ。
いつまでもエリーゼの体を観察してるわけにはいけないと鏡から反対にある扉に行こうとするとよくと聞いた声の男が入ってくる。

「どうだい、愛してる彼女の体は楽しんでるかい…ルド…いや、エリーゼ姫…」

この体になっていると言うことは分かっていたが俺の身体は魔王に奪われてしまったようだ。

「おい、わざわざ俺と入れ替わって何をしようと言うんだ!俺は例え相手が自分でも容赦しないぜ!むしろ、エリーゼじゃない分本気を出せる!」

たとえ身体が変わっても、目的は変わらない。
魔王に子供さえ作らせなければ俺の勝ちに変わりはない。
魔王になった俺を見つめると魔王はふっ…と一息つくと命令を出す。

「残念だが、お前は僕から逃げるることは出来ない。
さあ、ペットに戻れ『エリーゼ』」

「やめろよ!俺がそんなんで…」

俺は魔王に反論する前に体が勝手にベッドに戻り動けなくなってしまう。

「おい!どう言うことだ!身体が言うことを聞かないぞ!」

俺が動けない身体で必死に声で抵抗していると魔王は動けない俺の顔の顎を持ってゲス顔で言う。

「お前は僕との服従の契りを交わしているのさ…お前は僕には逆らえないだよ…あひゃひゃ」

そんな契りを交わした覚えはない。

「何をデタラメを…」

「そんなに疑うなら腹のあたりを見てみな」

魔王の真剣な顔に俺は恐る恐る腹を見ると服従の契りを交わされていた。
本来は政府が犯罪者に向けて行い、再犯時に鎮圧するためにつけるものだが、なぜ今俺のお腹に?
俺がそんなことを考えていると、おもむろに魔王は服を脱ぎだす。

「さあ…今こそ魔王の子を孕む時…俺を向かい入れる準備をしろエリーゼ…」

俺の身体は魔王の命令に従うように服を脱ぎ、元自分のブツを向かい入れる準備をした。

「やめろ!!こんなことをしても俺は魔王の子など孕まないぞ!」

俺は体では服従しようとも魂までは服従しない。
たとえ、元自分でも服従が解けようものなら剣を奪って刺してやろうとする。

「今、お前が僕の剣を奪っても僕は倒せなんよ…そんなか弱い女の体ではな」

心を見透かされてような言葉で心臓が止まりそうになる。
確かにそうだ、さっきも動いたから分かったがエリーゼの体では素早く動けないし、男の魔王と戦っても勝てる訳がない。
私が抵抗する言葉に詰まり、悩んでいると魔王は一気に距離を詰め、俺にキスをした。
自分からキスされるなんとも驚きの状況だ。

「い、一体…私に何をした…」

「いひひ…お前にはエリーゼの人格が少し溶け合うようにした…」

私は意味が分からずにいると魔王さらに続ける。

「今から行う子作りはお前が生み出した多くの絶望と人間の聖の力を闇の力に変えることで成功する…覚悟はいいな?」

私の身体が動かないことを知っていながら聞いてくるんだからタチが悪い。
服を脱ぎ、全裸になった魔王は優しく私の秘部を撫でる。

「あっあっ…ううぅ…♡」

男の体では味わったことのないような感覚に襲われて、変な声が漏れる。

「さあ…この子作りが終わる頃には『ルド』は消えて、完璧な我が妻の『エリーゼ』が生まれる…!」

この男は私を消そうとしている…あれ、私って…俺はルド…,

「おやおや、もう昔の自分を思い出せないようにもっと人格を体と一緒に混ぜてあげなきゃな」

私の思考を溶かすような甘くて、深いキスをする魔王。
魔王とキスをするたびに私の中にある感情や記憶が書き換えられていく。
魔王への憎しみは愛へと、ルドとしての記憶がどんどんエリーゼのものに置き換わっていく。

「や、やめて…私はこんなことで屈指はしない…」

魔王の濃厚なキスで私の頭はどんどんと溶かされていく。
私から家族を奪い、大切な人を奪った…大切な人を…、
私が奪われたのは誰だ?
私の中の大切なものが一つ、また一つと失われていく。
それなのにその大切なものがなにだったのかを思い出せない。

「どうだ…?自分を愛してくれた者の体で憎い男に愛撫されるのは…?」

「ぜ、絶対に殺して…」

私が抵抗するのも束の間、身体全体から熱い何かが下腹部に溢れ出す。
魔王に優しく撫でられた私の秘部からは泣くように愛液が溢れる。
私はエリーゼの身体でイかされてしまった。
身体はイった後も火照り、未だ余韻で震えている。

「さあ、準備はそろそろいいだろ…魔王の子を孕んでもらうぞ」

嫌だ。エリーゼを殺して、親父も殺して、私の人生から全てを奪った魔王の子供なんて…なによりエリーゼが魔王の子を孕むなんて…。

「まだ抵抗するか…仕方ない、小さい頃のお前の記憶を少し弄って思い出させてやる…」

そういうと魔王は私に手をかざし、何か呪文のようなモノを唱える。
次の瞬間、私の中に覚えのない記憶たちが入ってくる。
俺はルド、騎士をやってるけど本当は女の子になりたかった弱虫。
昔からエリーゼのドレスを勝手に着てよく怒られていた。
今はドレスを着てもおかしくない身体になった。
目の前にいるのは俺が…いや、私が女として大好きな人。

「あぅ…な、なんだこれ…」

「ふっふっ…元エリーゼにも使った洗脳さ…お前は元々女の子だったんだ…もう自分の性別から逃げなくていい…お前は元々ドレスが似合う素敵な女性だったんだ…」

魔王の言葉を聞いていると何故か安心して、落ち着いてきた身体がまた心音を高鳴らせ、目の前の男に抱かれたいと思ってしまう。

「ふっふっ…これは洗脳だけじゃない、エリーゼの身体がお前の人格を引っ張って、ルドの身体を使っている俺に引き寄せられてるのさ」

あぁそうか、『俺』が好きだったエリーゼはもういなくて
『私』が今エリーゼなんだ。
それを理解するとこれまで私を縛っていた鎖が解けるように身体が楽になる。
私は騎士でもなんでもない、1人の女の子なんだ。
エリーゼは死んでない、だって私がエリーゼだもん。
お父さんが国で待っている、だけどもう帰るわけにはいかない。
だって目の前に私が愛してる『ルド』がいるだもん…♡

「ずっと悪い夢を見てたみたい…なんで私、自分の事を『ルド』だと思ってたんだろ…助けてくれてありがとう、『ルド』」

私の心は雲が晴れるように穏やかで、そして、ルドの子供が欲しいと子宮が疼いているの感じた。

「(ふっふっ…僕の使う秘術は身体を入れ替えるだけではなく、そのものの人生まで入れ替える…ちゃんと自我を持たなければ自我は消え、身体そのものの人格に支配される。
今この男は頭の中に溢れる『ルド』への愛で完全に自分をエリーゼだと思い込んでいる…。
ふっふっ…さあ…最後の仕上げた…お前がその精神に蓄えた絶望…我が子の糧にさせてもらうぞ…)」

ルドが静かにベッドから立つと遠くを見て語り出す。

「これまで色々あったがようやくエリーゼを助けることが出来た、そしてこれが終わったら言おうと思ってたんだ…
エリーゼ!俺と結婚してくれ!」

あまりにも突然の告白に驚いたが、『今の私』ならすんなりと受け入れることが出来る。

「ありがとう…ルド…私はずっとその言葉が聞きたかったの…」

私はエリーゼ…昔から弱くて、ルドに守られてばかりのか弱い女…。魔王に攫われたけど、ルドが助けに来てくれたんだ…。
私の頭はもうルドの事だけでいっぱいだった。
なにか大切な使命があったが、そんなことはどうでもいい。
今はただ、愛してるルドに抱かれるだけ。
ルドは私を強く抱きしめると私のGスポットを『知ってる』かのように強く触る。

「ルド…私たち…やっと結ばれるんだね…」

「あぁ…『俺』と『エリーゼ』がな…!」

一瞬怖い顔をしたように見えたけど、きっと気のせいだ。
私は身体を委ねると、ルドは自分の性器を私の性器へと押し付ける。
あぁ…今私はルドと初夜を迎えたんだ…まだ結婚はしてないけど…。

「エリーゼ…君から俺を行け入れてくれて嬉しいよ…」

ルドは優しく私に囁く、私の膣はそれに応えるようによりいっそうルドの性器を強く抱きしめる。
小さい頃からずっと好きだったルドの子供が欲しい。
私の頭はそんなことでいっぱいだった。

「お願い…ルドの子供が欲しいの…」

私は小さく返事をすると突然ルドはニヤッと笑い、勢いを早めて、乱暴に腰を振る。

「へへ…お前からその言葉を聞けただけでもう満足だ…さあ、夢の時間は終わりだ…なぁ…『元ルド』君よ…」

私はなにを言ってるか分からずにいると突然私の中眠っていたもうひとりの俺が目を覚ます。
俺はなにをやってるんだ…!魔王の最後の野望を阻止するために俺は逃げようとして…。
俺は言葉にならない戯言を言っていると満月の光に照らされた魔王はゲス顔で言う。

「お前は一時的に精神をエリーゼに乗っ取られて、俺をルドだと思い込む洗脳をしたんだよ…エリーゼになったお前をお前のフリをして抱くのは楽しかったぜ!アヒャヒャ!」

なんて事だ、もっとも阻止しなければいけなかったことを…俺とエリーゼの純愛を利用してこんなことにされてしまうなんて…。
俺の体は言うことを聞くのに不思議と魔王に逆らう気になれない、ただ突かれてるこの状況を俺は受け入れてしまったのか…。
俺の体は突かれるたびに全身に愛が溢れて、メスの本能が相手の子種を求めてしまう。
ダメだ、こんな奴の思い通りになっては…。
俺は必死に精神的には抵抗するが、エリーゼの身体のGスポットを完全に把握してるのか、突かれるたびに体は震え、膣を強く締めてしまう。

「や、やめろ…お前の…お前の子供なんて…」

「さっきは子供を懇願してたメス豚が今更世界の英雄気取りか?笑わせるな!!」

魔王の強くなっていくピストンに俺は声も出せない。
エリーゼの身体を魔王に汚されている、そのはずなのに…
俺の体を手に入れた魔王をエリーゼの体は喜んで迎え入れてしまう。

「感じるぞ…お前の中に溢れる負の感情…俺への憎しみ、エリーゼを失った悲しみ、親父を殺された無念、そして…
誰でもない最愛の女の体で無様にイかされる背徳感をな!!さあ!『元ルド』よ!お前は今から俺の子供を産む私の妻になってもらうぜ!その感情も思いも、全て我が子の贄とせよ!」

さっきよりも強く、荒々しく、そして確実に俺の子宮をついてくる魔王。
俺の中に逆巻くさまざまな感情はエリーゼの本能の中にある女の快感の前ではもはや意味を持たないようだ。 

「ごめん…みんな、もう俺は…」

俺が最後に残った理性で全てに懺悔したのも束の間、
魔王の子種は俺の中に注ぎ込まれ、俺の中の様々な感情は反応するようにその快感の中に溶けていく…。
   ルド
あぁ「俺」が消える…俺の頭の中には魔王への絶対の愛とエリーゼという愛した女の名だけを残して「俺」は消えた…。



これから先のことは覚えてない、とある国に来た報告書では、疫病が蔓延し、兵もまともに出せない王国を魔王軍に降った兵士と見たことのない多数の魔物が襲い、1人残らず殺されたと言う。
その後ろにはお腹を膨らませて、ペンダントをした姫の姿もあったと言う。
それからも魔王軍は世界各地に侵略し、ある国では『姫』が攫われたという…。


END














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