魂の檻 作: メス牡蠣 放課後にD教室に来てください、見せたいものがあります そう書かれた紙切れを片手に、私は1人廊下を歩いていた。 手紙の差出人…広田くんが待っているはずのD教室は人気があまり無い旧館の中にある。 少し不安な気持ちもあるが、私も彼と話がしたかったため行くことにしたのだった。 事の始まりは担任の先生からの言葉だった。 「石川、悪いんだけど広田のことを少し気にかけてやってくれないか?」 「広田くん…ですか?」 「そうそう、あいつあんまりクラスに馴染めてないみたいだからさ。頼むよ、学級委員の仕事だと思ってさ」 広田くんは私のクラスメイトだ。 特に会話をしたこともなかったためあまり気にしてはいなかったが、思い返せば確かに教室でいつも1人でいるような気がしないでもない。 「仕事って……片山くんにやってもらうんじゃダメなんですか?女子の私よりも男子の彼の方が向いてると思うんですが……」 「いやあ、ほら、あいつバスケ部のレギュラーだろ?本当はあいつにやってもらおうと思ってたんだが、部活の方が忙しいだろうからちょっとな」 先生はそう言いながら片眉を上げる。本人以外は知っている、彼が嘘をつく時の癖だ。 おおかた強気な片山くんに頼んで断られたかそもそも頼めなかったから、私が的になったんだろう。 「それとなしに話しかけてやったりするくらいでいいから、な、頼むよ」 「……わかりました」 去年同じ学区内でいじめが原因の騒動が起きて以来、どうも教師陣はこういったことに敏感になっているらしい。 もし断って内申点を下げられたりしても困るし、話しかけるくらいなら負担にもならないだろう。 渋々ではあったが頼みを受け、次の日から先生が見ている前では広田くんに関わるようにしていった。 といっても本当にただの挨拶とか、テストの話とかの他愛のない雑談くらいで。 まさかその程度の関係しかない相手に好意を持たれてしまうとは、その時は想像すらしていなかった。 「電気がついてる……もう中にいるのかな」 D教室の、土埃でうっすらと汚れたドアに手を掛ける。 教室内では予想通り、広田くんが机に腰を掛けて待ち構えていた。 2週間前…私への告白を断ってから学校に来なくなって以来久々に見る彼の姿。 元々肥満体で不健康そうな装いをしていたが今日はそれに加えて目の隈が酷く、どこか危うささえ感じる。 「ひ、久しぶりだね、広田くん。元気だった?」 「ああ、石川さん、来てくれたんだね」 「うん、私からもちょっと、こないだのことについてちゃんと話がしたかったから……」 断る際、彼が私のタイプではないと正直に伝えてしまっていた。 彼が学校に来なくなってしまったのはそのせいかと思っていたため、弁解がしたかった。 もちろん彼と付き合うつもりなんてさらさらないが、私のせいで彼が不登校になったとでも噂されれば私の評判に傷がついてしまう。 何とか穏便に事を済ませるため、今日私はこの場に顔を出したのだ。 「そ、そんなことより、ねえ。ちょっとこれを見てくれないかな」 「……何それ、辞書か何か?」 彼はバッグを漁ると、薄汚れた1冊の本を取り出した。 タイトルの書かれていない分厚いその本は、表紙のところに何やら紫色の小さいガラス玉のようなものが埋め込まれている。 すると、その玉がたちどころに強い光を放った。 あまりに眩しい光に思わず目をつむった瞬間、ふわあっ、と全身から力が抜けるような感覚を覚える。 「ちょっと広田くん、一体何を……!?」 言いかけたところで思わず絶句する。目の前にいた彼の姿が2つになったからだ。 一瞬目の錯覚かと思ったが違う。よく見てみると手前にいる彼の姿はうっすらと透けていて、奥にいる方は形こそはっきりしているものの、まるで魂が抜けてしまったかのような生気の失った表情で棒立ちになっている。 「あ…あはは、びっくりしたぁ。どうしたのそれ、手品かなにか?もしかして私にそれを見せたくてわざわざ呼び出したの?」 「ふ、ふふふ……状況がよくわかってないみたいだね。後ろを見てごらんよ」 「後ろ……?きゃっ」 促されるままに振り向くと、眼前に人の顔が現れたため思わず後ずさる。 気が付かないうちに誰か教室に入ってきたのだろうかと思ったが、よく見てみるとその顔はよく知った人物のものだった。 腰まで伸びている艶やかな長い黒髪。整った鼻筋。パチリとした大きな瞳。そして何より、コンプレックスでもある目元の泣きボクロ。 毎朝鏡で見ている私の顔が、私の身体が先程の広田くん同様虚ろな表情を浮かべて目の前に立っていた。 「ちょ、ちょっと何これ!どうなってるの!?」 「あの本の力で僕たちの魂を身体から追い出したんだよ。幽体離脱ってやつさ」 「ゆ、幽体離脱?」 透けている全身は姿形こそ元の身体と同じではあるが、まるで体重が無くなっているかのような浮遊感を感じられる。 幽体離脱なんて…とても信じられるような現象ではないが、実際に起きてしまっては信じるしかない。 「ねえ、これって大丈夫なの?元に戻れるよね」 「もちろん、死んでるわけじゃないから魂を身体に重ねれば元に戻れるよ。でも、ただ戻るだけじゃあ面白くないだろう?」 いつの間にか目の前に来ていた広田くんにガシリと肩を掴まれる。 「な、なに?」 「ちょっと我慢しててね…」 「何を言って……ひっ!?」 広田くんがそう言った瞬間、彼の手が私の肩にズブズブと沈み始める。 手だけではない。密着していた腹、足、そして顔までもが。体内に異物が入り込む奇妙な感覚と共に、彼の巨体が私の中に一気に入り込んでいった。 「う、嘘でしょ?私の中に広田くんが……う、うぷっ。気持ち悪い……」 彼の魂が私の中に入り切った後も、その奇妙な感覚は続いた。 体内をうねうねと何かが這い回っているような、それと共に私の中の何かが、触れられてはいけないはずの何かが抜け落ちていき、そこに空いてしまった穴に別の何かが詰め込まれているような。 これまで感じたことのないような不快感に耐え続けていると、今度は強烈な吐き気が襲い思わず顔をしかめる。 腹の奥底からせり上がってくるそれをこらえることができずにいると、ずりゅっ、と勢いよく私の全身から人影が前方へと抜けていった。 恐らく先程入り込んできた広田くんが私の中から吐き出されたのだろう。いつの間にか先程感じていた不快感はすっかり消えていた。 「早く戻らなきゃ……」 彼が何をしたかったのかは分からないが、このままではまた私の中に入り込まれてしまうだろう。 体内を乱雑にまさぐられているような気持ちの悪いあの感覚……二度とごめんだ。 先程彼が言ったように、目の前で棒立ちになっている私の身体に沈み込ませるように自身を重ね合わせる。 バチッ 「え?」 予想に反して、私は目の前の私から弾かれてしまった。 やり方が悪かったのかと今度はゆっくりと試してみたが、目の前の私の身体がそれを拒絶するかのように、私はその度に弾かれてしまう。 「な、なんで?」 「なんでって、その巨体でそんな華奢な身体に入るのは流石に無理があるんじゃないかな?」 背後から不意に女性の声がしたため、思わず振り向いた。 以前戯れにスマホで録音して聞いたことのある、自分で思っていたものとは少し違っていたその声。どこか意地の悪い表情でクスクスと笑う、見慣れたその姿。 後ろで棒立ちになっている私の身体でも、鏡でもない。うっすらと透けている私自身が、何故か私の目の前で笑みを浮かべていた。 「あなた……私?え、私が2人?どうして?私がここにいるのに……」 「心配しなくても君は、石川さんは1人しかいないよ。ま、見ての通り僕がその1人なんだけどね」 「で、でも私だって……」 「まだ状況が分かってないのかな。落ち着いて、今の自分の姿を確かめてみたらどうだい?」 促されるままに視線を降ろすと、白いワイシャツに包まれた大きな塊がまず視界に入った。 見慣れた胸の双丘ではない、それより下に位置している山のような白い物体。 思わずそれに触ろうと動かした手はパンパンに膨らんでいて、そこから伸びる腕には浅黒い毛が肌を覆っている。 「う、嘘……これって……」 そう呟く声も、普段の私のそれとは違う、くぐもった低い音として発せられている。 「これでわかったろ?君は僕、広田宗助になったんだよ。君の魂と僕の魂を入れ替えたんだ。その身体に入れないのも当然なんだよ、だって君はもうその身体の持ち主じゃないんだから」 そう言いながら私…広田くんは棒立ちになっている私の身体に近づくと、こちらを振り返ってニヤリと笑った。 「ありがとう石川さん。君の身体、もらうね」 「ま、待って…!」 彼が私の身体に身を重ねると、先程まで私を拒絶していたことがまるで嘘だったかのように、スゥーっと彼の魂を受け入れていく。 呆然とする私をよそに、新しい魂を宿した私の身体がゆっくりと瞼を開く。 「ふふ…ははは!すごいね!やっぱり僕の身体とは重さが全然違うよ!」 私の身体に入った広田くんは嬉々とした様子で、まるで動作確認をするかのように私の身体を動かし始めた。 パンツが見えていることを気にも留めず教室をぴょんぴょんと跳ね回るその姿に、思わず赤面してしまう。 「そんな……私の身体が……」 「……っと、忘れるところだった。これは僕が持ってないとね」 何かに気づいた彼は広田くんの身体に近づくと、その手に持っていた本を奪い取る。 その様子を眺めていると、不意に広田くんが口を開いた。 「そうそう、言い忘れてたんだけど魂のまま時間が経つと本当に死んじゃうから気を付けた方がいいよ。君も早く僕みたいに戻った方がいいんじゃないかな、『自分の身体』にさ♡」 「し、死ぬって……冗談でしょ!?」 そうは言いながらも、なんとなく彼が嘘を言っていないということは分かっていた。 今の私の、広田くんの姿になってしまっている私の魂。 先程までは透けていながらもある程度の造形が把握できていたそれは少しずつ色を失い、心なしか私自身の意識も少しずつおぼろげになってきていた。 「うぅ……」 眼前の男の身体、広田くんの抜け殻を目にする。 魂を、肉体を操る主を失った抜け殻。元の私の身体の倍以上はあるであろうその巨体。 この身体の持ち主として生きていくことなどもちろんごめんだが、既に私に選択肢は残されていない。 今の私、目の前の身体と同じ姿をした魂をゆっくりと抜け殻へと重ねていく。 私の姿をした広田くんは、その様子をニヤニヤとしながら見つめていた。 意識の覚醒と共に、強い重力が私の全身にのしかかる。 まるで暖房をつけているかのように感じる暑さと全身から吹き出す汗。 目を開けずとも、今の私がどうなってしまっているのかを否応なしに実感させられた。 「おはよ、広田くん♡気分はどうかな?」 「……ふざけないで、広田くんはあなたでしょ!元に戻して!私の身体を返してよ!」 「何を言ってるんだ?戻すわけないじゃないか。この身体はもう僕のものだよ」 「この……!あぐっ!」 私の身体を好き勝手に撫でまわす彼に掴みかかろうとするが、慣れない身体を動かしているせいかバランスを崩してその場に倒れ込む。 今の私の巨体を起こそうとするだけで自然と私の息は荒くなり、目の前の私がそんな私の姿を愉快そうに見下ろす。 「どうして、どうしてこんなことを……」 「どうしてって、分からないの?君と一緒になるためだよ」 「え?」 「あんなに僕に優しくしてくれたじゃないか。それなのに僕の告白を断るなんてやっぱりおかしいんだよね」 私の姿をした広田くんが、ゆっくりと私に近づいてくる。 目と鼻の先まで近づいた彼の…元の私の顔と目が合った。 「そ、それはあなたが私のタイプじゃないからって、はっきり言ったじゃない」 「そうだったね、うん。あれはずいぶん傷ついたよ。でもそのおかげで考えることができたんだ、どうすれば君と付き合えるのかって。そんな時に家の倉庫でこの本を見つけたんだ」 彼がそう言うとともに、手に持っていた本が不気味な光りに覆われていく。その光と共に、彼の瞳にも淡い紫色の光が灯った。 妖しい輝きを放つその綺麗な瞳に目が奪われる。その瞳の中に吸い込まれるように。深く、深く。 それと共に、私の鼓動が徐々に早くなってくる。こちらを見て微笑む彼女の表情に思わず見惚れてしまう。 呆けたままでいると、近づいてきた彼女の唇が私の唇と重なった。 私の口をこじ開けるように侵入してきたその舌に応じ、目を閉じてゆっくりと私の舌を絡ませる。 (ああ……石川さんが私とこん…な……あ、あれ?私何を……!?) 「ッ……!」 広田くんの肩を掴み、組み合っていた私の身体から引きはがした。 「ぷは……もう少し楽しみたかったんだけどな」 「わ、私に何をしたの!?」 「何って、君を君らしくしてあげただけだよ。広田宗助らしく、ね」 そう言いながら指先で口元を拭う姿に思わずドキッとしてしまう。 「僕はこんなにも君のことが好きなのに君は僕が嫌いだなんて、そんなの哀しいじゃないか。だから僕が君になって、君には僕になってもらうことにしたんだ。僕、石川沙織のことが大好きな男にね。そうすれば君も僕と付き合ってくれるだろう?」 「何を言って……私があなたになるわけないじゃない、そもそもあなたと付き合うだなんて……」 「ふーん?それならどうして股間をそんなに大きくしてるのかな?」 「え……?ちょ、な、何を!」 広田くんは私の足元に膝をつくと、カチャカチャと私のベルトを外し始めた。 ズボンと下着がが降ろされて股間が露わになった瞬間、股間に解放感が訪れる。 先程までは突き出たお腹で足元の視界が塞がれていたため気づかなかったが、ズボンから解放された、今の私の股間に存在する男性器は私からも見えるほど大きく、天井に伸びるようにそそり立っていた。 「や、やだ……私にこんなものが……」 「ふふ、僕とのキスでそんなに興奮してくれてたなんて嬉しいよ。せっかくだし僕が鎮めてあげようか?」 「な、何を……ひゃっ!」 広田くんの言葉と共に男性器の先っぽから温かい何かに包まれている感触が伝わり、思わず身を震わせる。 私になった彼が、私のものだった口で今の私の男性器を口に咥えていた。 「くっ……あ、あぁっ…んっ……」 小さな口を大きく開き、グロテスクな肉棒を口いっぱいに含んでねぶりつくように顔を前後させ、その小さな手で私の肉棒をしきりに刺激していく。 その動き一つ一つに私から生えている男性器は反応し、脳髄に震えるような快感が入り込んでくる。 彼のその行為を、止めようと思えば止めることはできただろう。 しかし、嫌なはずの行為。嫌でなければいけないはずのその行為を、ずっと味わっていたいとすら思ってしまう。 「だ、だめっ……でちゃう、やだ、でるっ……!うっ…!」 男性器の中を何かが通り抜けていくような感覚と共に、一際大きい快感が全身に走る。 その瞬間、肉棒を咥えていた彼女の口から白濁とした液体が溢れていった。 「ぐっ……ぺっぺっ!んん……あはは、ずいぶんたくさん出してくれたね、広田くん♡」 「はぁっ…はぁっ……だ、だから広田くんはあなただって……」 「本当に思ってる?僕が『広田』だって」 「あ、当たり前じゃない」 「本当に?この顔も、身体も、なんなら魂に至るまで僕は『石川沙織』そのものなんだよ。それに引き換え君は『広田宗助』としてのそれら全てを持ってる上に……」 いつの間にか再び大きくなっていた私の肉棒に、彼女の手がそっと触れる。 「あっ」 「僕に、いや、私に興奮してこんなにおち〇ちんを大きくしちゃってるんだよ?」 「で、でも。それでも私が……」 「ああ、じゃあこうしよっか。あなたが私のことを『石川沙織』だって認めてくれたら、あなたと付き合ってあげる」 ドクドクと、心音がうるさく鳴り響いてる。 馬鹿げた提案だ。私が私自身と付き合うだなんて、どうかしている。 顔中が熱くなって、頭がぼーっとする。 なんとかして身体を返してもらうように説得しないと…… 「い、いいの?それだけで?」 意に反して、予想外の言葉が口をついて出る。 「そう、ただ私を『石川沙織』だって認めてくれるだけ。そうしたら今だけじゃなくて、これからもずーっと私と一緒に居て、私のことを好きにしていいんだよ?」 私を誘惑するかのように、彼女は履いていたショーツをスルリと脱ぎ捨てると、スカートをめくりあげて露わになった股間を私に見せつけるように足を広げる。 憧れの人のあられもない姿を前に、生唾をゴクリと飲み込んだ。 「あ、あなたが『石川さん』だって認める、認めるから……だから、私と……」 「やっと素直になってくれたね。いいよ、来て……あっ♡」 言うやいなや、彼女を床に押し倒し足を大きく開かせると、我慢の限界を迎えた自らの肉棒をむき出しになった秘所へと思い切り差し込んだ。 「痛ッ!」 「あ、ご、ごめん。大丈夫?」 「だ、大丈夫だから、もっと、奥までぇ……♡」 言われるがままに、ゆっくりと腰を沈めていく。 それと共に切なげな声をあげる石川さんの顔を見て、ますます混乱は進んでいった。 私が石川さんだったはずなのに、気づけば目の前のこの私を石川さんとしか見れなくなっていて。 それどころか私であるはずの彼女の顔を、声を。どうしようもなく愛おしく感じてしまう。 「石川さん…石川さんッ……!あぁっ!」 「広田…くん…♡んっ♡」 自分のものだった彼女の名前を口に出す度に。彼のものだったその名前で呼ばれる度に。 頭の中が蕩けそうになるほどの快感で満たされていく。 股間を膣内に擦りつけるようにピストン運動を繰り返す度に、彼女の口から可愛らしい嬌声があがる。 僕のペニスで石川さんがこんなにも感じてくれている。憧れだった彼女とつながることができている。 その事実を実感するだけで、頭の中は幸せで満たされていった。 「石川さん、好きだっ…!石川さん……!!」 もはや何が何だか分からなくなりながらも、必死で腰を動かし続ける。 彼女の荒い息遣いと、僕の荒い息遣いが重なり合う。 まるで僕たちが溶けあい、混ざり合っているかのような行為も、いよいよ終わりが迎えようとしていた。 「あっ…!ご、ごめん、で、出ちゃいそうっ…!」 「い、いいよ、広田くんなら♡出してっ♡♡♡私の中に、あなたの全部っ♡♡♡♡♡」 「石川さん…!あ、で、出るっ!!あっ!!」 「わ、私もっ♡♡♡んぅぅっ♡♡あっ♡♡イッちゃう♡♡♡♡イクっっっっ♡♡♡♡♡♡」 石川さんとつながっているその先から、彼女の中へと熱い液体が勢いよく注がれていく。 2人だけの教室の中で、互いの鼓動と息遣いだけが静かに響いていた。 「沙織~、これからアキと一緒にカラオケ行くんだけど、一緒にどう?」 「うーん、私は……」 言いかけたところで、手にしていたスマホが震えた。今日も学校で、ということらしい。 「悪いけど先約があるんだ。また今度誘ってね」 「またぁ?最近付き合い悪くない?」 そう悪態をつく彼女を無視して教室を出る。 「……そろそろ切り時かな」 今まではなるべく元の『私』として振舞うようにしていたため友達付き合いは続けていたが、そのせいで彼との時間が無くなってしまっては元も子もない。 もう受験も近いし、顔を合わせなくなるクラスメイト達と無理に付き合う必要もないだろう。 いつもの教室のドアに手を掛ける。彼は既に来ていたようだ。 「お待たせ、宗助く……んむっ…!」 教室に足を踏み入れた瞬間、彼の唇が私の唇を塞ぐ。 この数ヶ月ですっかりと上達した彼のテクニックに、全身に淡い快感が滲んでいく。 「ぷはっ……もう、宗助くんってば、いきなりがっつかないでよ」 「待ちきれなくって……ご、ごめんね、沙織ちゃん」 私のことを『沙織ちゃん』と呼び、私の身体を求める彼にはもう元の私だった面影はない。 でも、知っている。私だけは知っているのだ。 私だった、石川沙織が彼の中にいるということを、私だけが。 「ふふっ」 「ど、どうしたの?沙織ちゃん」 「ううん、何でもないよ。それよりねえ、しよ?」 いつものように机の上に仰向けになり、彼を迎えるように両手を差し伸べる。 身体も、魂も。僕自身と成り果てた彼女の心も。今はすべて私だけのものだ。 ゆっくりと私の制服を脱がせていく、愛おしい彼の背中をそっと抱きしめた。 |