黒猫ラジオ 作・挿絵: きりんりき 5月の下旬、野球部に所属する高校2年の俺ことたけしは朝練を理由に家を早く出ていた。 とは言ってもうちの野球部は甲子園を目指してみんなで切磋琢磨しようという考えをもつ者はほとんどおらず、朝練を口実にみんなで部室でだべったりするだけであった。 入部した直後の俺は打倒〇〇と、甲子園常連の高校相手に戦ってみたいとも思っていた。 しかしながら、現実というのは思い通りにいかないもので同じような志をもつ者はほとんどおらず、俺を含む一部の熱心な部員は1年の秋大会で強豪校にボコボコにされてしまうのであった。 その時を機に野球部のやる気は衰退の一途をたどるのであった。 そして、現在我が野球部は練習こそするものの各々好き放題やっているといった次第である。 ある者は軽く運動した後、部室で籠もって遊んでおり、そしてある者は早々に着替えてゲーセンに寄っている。 (俺は前者にあたる)顧問も元々やる気のある方でもなく、練習メニューにも口出ししてこないため楽なものである。 家から歩いて5分くらいの交差点に着いたところで信号に引っかかってしまう。 ここの信号はなかなか変わるのが遅いため、到着がギリギリになってしまうのだが、開始時間の決まりなんてあってないようなものである。 ゆえに、このときの俺は焦ることなく平常心を保っていた。 まもなく信号が赤から青に移ろうとする直前、1匹の黒猫が道路に飛び出した。 右目には縦傷が入っており、それゆえやって来るトラックに気づかなかったのであろう。トラックの運転手は信号手前でようやくその存在に気づいたようで慌ててブレーキをかける。 しかし、直前のブレーキが間に合うわけもなく猫はそのまま引かれてしまう。そうなるはずだった。 少しして、交差点より少し進んだところからトラックの運転手が現場に駆け寄る。 「怪我はなかったかい!!」 そこには、なんとか引かれずに済んだ例の猫とそいつを抱き抱える俺がいたのであった。 あのとき、いち早く猫に気づいた俺は運転手が気付くより先に動き出していた。 それが幸と転じて、なんとかこいつの命を救うことができたのだ。 その後、運転手から万が一のことがあればと連絡先を受け取り、彼はお礼を言うと急いで去っていった。 朝からとんだ出来事と遭遇したが、猫が無事で何よりなどと考えていると、猫はぺこりと頭を下げて何処かに行ってしまった。 その様子が俺には何故かお礼をしているように思えたのであった。 しばらくして学校に到着すると、練習はすでに始まっていた。 かと言ってストレッチや適当なジョギングだけで終わることがほとんどのため、遅れてやってきても特に問題もない。 普段からつるんでいる連中らと合流する。 「ようたけし、寝坊でもしたか?」 「ちげーよ、なんか轢かれそうな猫いたから助けてたら遅くなった」 「なんだよそれ。それより聞いたか?今日の午後からしばらくの間は業者の点検かなんかでグラウンド使えないんだってさ」 「へー、そうなんだな」 そんなこんなでこの日もいつもと変わらないイージーメニューで朝練は終了するのであった。 我が校のグラウンドは校舎とは離れに位置していた。 部員たちはギリギリまで部室でだべるため、教室へ向かう際は各々がダッシュするのが基本であった。 この日、俺も同じように全力で校門で向かう。 その速度は朝練でのジョギングのペースとは比べ物にならないほどであった。 そして、校門を通過しようとした時ふと声がかかる。 「おーい、たけしくん!そこで止まりなさい!」 声のする方に振り返ると、顔見知りが腰に手を当てて堂々と立っていた。 肩までかかるくらいの黒髪そして腕には”風紀”と書かれた腕章を身に付けていた。 まさに風紀委員の鏡といった存在は顔を膨らまして近づいてくる。 「服はちゃんとインする!それと制服もなんか汚れてるしダメでしょ!あれ…?猫なんて飼ってたっけ?」 言われて確認してみて初めて気づく。 朝の件のせいか服は猫の毛まみれになっていた。 「あ、ほんとだ。朝いろいろあってさ、たぶんそれで」 彼女は『はあ』っと軽いため息をした後、何度もアニメで見たセリフを言い放つ。 「今回だけは見逃すから。でも、次はないと思ってね!」 「あいよー」 それだけ言い残すと、俺は教室へと走り出した。 後ろから”こらー”と怒鳴り声のような声が聞こえるがそんなことは気にせずに向かった。 結局、教室に着いたのは着席時間の10分前とそこそこ余裕があったようだった。 席にカバンを置くと、俺の悪友ともいえるやつがやってくる。 こいつは容姿はそこそこ良く、情報通なため友人も多い。 「おはよう、たけし。今度は何をやらかしたんだ?」 「別にたいしたことじゃねーよ」 「おいおい。今日もれいかとお熱い痴話喧嘩を繰り広げていたじゃないか。」 「あいつとはそんなんじゃねーよ」 2人で話していると予鈴のチャイムが朝のHR開始を告げる。 HRでは、今朝の部活でも聞いたようにグラウンドがしばらく使えないことが連絡された。 野球部もそれに合わせて部活はなくなるそうだ。 水曜日は5限までということもあってあっけなく終わった。 そして放課後、突然予定がなくなったことで手持ち無沙汰なところにドンッと机に手が置かれた。 「なんだ、お前か」 一体誰かとそちらを向くとそこには今朝も見た風紀委員のれいかがいた。 机に置かれた手と反対の手は腰に当てており、頬を膨らませむすっとしていた。 「お前じゃないでしょ。れいかです!」 そのまま腰に当てた手で俺の頭に軽いチョップが炸裂する。 まあ全く痛くいはないが。 「それでれいかさんよ、どうかなさったの?」 「いや、別に大きな用はないけど。ただいつ猫飼ったのかなって思っただけ」 こいつは家がとなりで親同士も交流があるため、昔から遊んだりすることが多かった。 そのため我が家のことについても多少詳しいのだった。 「いや、行きに野良猫が車に轢かれかけてたからそのときにちょっとな」 「なるほどね。そういうところは昔から変わらないわよね」 「そうか?」 「うん。変に正義感の強いところだったりするところはね。でも、どうして普段のやる気はイマイチなのかな…」 そう言ってれいかは今朝と同じようにため息をつく。こいつはなんやかんや俺に甘いところがある。 以前の俺は色んなことに対して、チャレンジ精神があったが野球部での例の件があってからはオフモード気味になっている。 それを察してか強くは言わないようにしてくれているのだろう。 「きっかけさえあれば、俺ももうちょっと頑張ろうかなって思ってるよ」 「何そのYDKみたいな考え方」 「そうそう。よくわかってるじゃん。Y(やばい)D(できれば)K(帰りたい)のことだろ?」 「たけしくん…?喧嘩売ってるの…?」 「ごめんなさい!ジョークです!!」 口より先に手が出かねないれいかに高速で謝り、なんとか一命を取り留める。 「まあたけしくんが本気で変わりたいって時は言ってよ。力にならないこともないかもだし。」 「おう、ありがとうな」 俺がお礼を言うと彼女は笑顔で頷く。 「それじゃあ私は部活あるから、寄り道せずに帰ること!」 「お前は俺のおかんかなんかか?」 冗談混じりに少しからかってみると、 「ぜ…全然ちがうから!」 顔をカバンで隠しながら逃げるように教室から出いってしまった。 「そんなに変なこと言ったか?」 誰もいなくなった教室で独り言を呟くが、返答があるわけでもないし、思い当たる節もないのでそのまま教室を後にした。 帰り道にはいつもと違うルートを通ることにした。 どうせ家に帰ってもすることもないし、たまには別の景色を見るのもいいかもと思ったからだ。 うちの高校は坂の上に位置し、そこを下りたところで商店街と交差する。 昔ほど勢いがあるわけではないが、シャッター通りというわけでもないため多少は人で賑わっている。 普段はここを通り過ぎてしまうため、何かおもしろいものもあるだろうと通りを歩く。 この辺ではあまり見かけない葛を使った老舗の和菓子屋,店の前には着物やドレスが飾られている写真館,そしてマイナーB級映画のポスターが並んだ小さめの映画館など、見渡すところにはそこらそこらで見るようなショッピング街とは大きく異なっていた。 「お、ガチャガチャ専門店なんかもできてるんだ」 新しくできたお店などに関心を寄せていると、道ともいえない細い隙間からひょこりと出てくる黒い影があった。 目を凝らしてみると、そのシルエットの正体は黒猫であった。 しかもそいつは右目には縦傷があり、記憶にある今朝のやつと一致するのであった。 「どうしたタイショー?また迷子か?」 俺はこいつを勝手にタイショーと呼ぶことにした。だって、独眼でかっこいいし。 そんなことはさておき、タイショーはさっきから俺について来いとばかりに背をこっちに向けながら俺の方を見てくる。 「そっちに何かあるのか?」 そう問いかけてみると、タイショーはてくてくと歩き出した。 付いていくこと5分、辺りには空き地や空き屋広がっていた。 こっちにはほとんど建物という建物はなかったはずだし当然である。 来た道を見れば商店街を覆うアーチからは10mほど離れていた。 「おい、まだ歩くのか?こっちは何もないぞ?」 俺が素直にと、タイショーはそこでぴたりと止まる。 そして、俺にそっちを見ろと目線を移す。不思議と先程は気づかなかったが、そこには洋風の骨董屋があったのだ。 「こんなとこに店なんかあったか?」 疑念を抱きながら店に近づくと、猫の肉球を模した看板にはアンティークショップcatと記されている。 タイショーが店に向かって、『にゃー』と鳴き声をあげると、カランコロンと開いたドアからはダンディな片眼鏡をつけた初老の男性が姿を現した。 「いらっしゃいませ。こいつに連れられてきたんですね?」 彼は黒猫タイショーの方に目線を向ける。 「はぁ…おそらくは」 タイショーがここに連れてきたという発言に少々違和感を覚えるが、威厳感ある男性を目の前にして曖昧な回答をするしかできなかった。 そのまま彼に案内され、店の奥にはあるテーブルに案内される。 その途中にステレオや懐中時計,よくわからない壺などさまざまな骨董品を目にしたが、どれも自分の雀の涙ほどの貯金では手が届かないほどの一品であった。 席に着くと高そうなティーカップが用意される。 「君は紅茶は飲めるか?」 「はい、大丈夫です」 紅茶は昔から朝食に飲んでいたため、ためらうことなくいただくことにした。 注がれる香りからしてこれはアールグレイであろう。 そんなことを思いながらカップに手をつけていると、男性の方から声がかけられる。 「ご挨拶が遅れました。私はこのアンティークショップcatの店主マツダです。この度はこちらの猫がお世話になりました」 「はじめまして、山城武です。いえいえ、とんでもないです。自分はたまたま通りかかっただけですので。それより…」 そう、ずっと気になっていたことがあった。 先ほどから何故マツダは話もしていない今朝の出来事を知っているかという点だ。 問いかけようとしたところで逆にマツダから応答があった。 「ええ、なぜこの老人がなぜその黒猫に起こった出来事を知っているかという点ですよね?」 思っていたことを見透かされ、多少驚きはあったが誰もが思い当たりそうなことなので、そのまま『はい』とだけ返事をした。 「変に思われるかもしれませんが、私は猫の声が聞けるのです。この店に武くんがやってきた時に、そこの黒猫に車に轢かれそうなところを助けてもらったと聞いたのですよ。」 胡散臭い話だと思っていたが、見事に出来事を当てられてしまったので信じる他なかった。 まあマツダが現場にいた可能性が0ではないが、自身の記憶では他に人はいなかったように思える。 そもそも楽観的な性格であるため、信じてみたい,信じた方が面白いという気持ちの方が先行したのだ。 「信じますよ。そっちの方が面白そうですからね」 少し失礼な言い方をしたかもしれないと思ったが、マツダといえばそんなこと気にもしない様子でむしろその顔に似合わず笑っていた。 「面白いですか…。いやはや、こういう形で信用してもらうのは初めてなもので思わず顔に出てしまいました。ところで骨董品に興味はありますか?」 「えっ…」 ここまで来てひょっとして押し売りされる新手の詐欺なのかみたいなことを一瞬頭によぎったが、その考えはマツダから訂正される。 「というのもですね。私にとって猫は仲間いえ家族のような存在なのです。ですから、その恩人の武くんにはぜひともお礼をしたいわけですよ」 その言葉を聞いて少し考える。ここの骨董品を見る限りおそらくそれらは値が張るものがほとんどであるように思える。 しかしながら、受け取らないということは彼の恩義に答えないということになってしまうのではないか? そんな考えが頭によぎるのであった。 「そうですね。ここには多くの骨董品がありますが、その中でもあなたにぴったりなものをこちらで用意しましょう。もし、気にいらなかった場合は売ったらそこそこの値打ちはするでしょうし、処分してもらっても構いません。何せ、ここにあるほとんどが誰にも見つけられず眠ってしまっているものですから。」 「わかりました。それでは、ぜひいただきます!」 受け取ると返事をすると、マツダは店の奥にある従業員専用扉みたいなところに入っていってしまった。 その間に残った紅茶を飲み干してまもなく、マツダが何かを持って戻ってきた。 彼が両手で持ってきたのは、全体がピンクで塗装された直方体であった。 「マツダさんそれはなんですか?」 「気になるでしょう?こちらはアメリカから輸入された品です。そこそこ昔に作られたものだとは思われるのですが、この形態でこのカラーというのはあまり見ない組み合わせなんですよね。そのため、骨董品としてこの店で保存していたものなんですよ」 「なるほど、でも何故これを自分に?」 「実はこれおもしろい機能が付いてまして。武くんのような若い子にぜひ使ってもらいたいと思いましてね」 若い子におすすめの機能と聞いて、思いつくものなどなかった。 その後、簡単にそれの使い方を聞く。 しかし、彼も詳しい使用法は知らず説明はアバウトであった。 帰りはどこも寄らずにそのまま家に帰宅することにした。 早くこの妙な骨董品を試してみたくなったからだ。 「ただいまー」 帰宅したが、家にはまだ誰も帰っておらず時計は16時を指していた。 両親は共働きのため、帰ってくるのは18時くらいであった。 1つ下の妹がいるが、あいつは部活のためまだ帰っていないのであろう。 荷物の片付けを済ますと、階段を上り自室に入る。 白い壁紙には好きなロックバンドのポスターが貼られており、他は至って特徴のない普通の部屋である。 机に骨董品を置き、マツダに教わった操作の確認をする。 まず、もらったこの品が何か、それはラジオである。 俺自身が一般的なラジオがどのようなものなのか全く知らないが、目の前のピンク色の機器には透明な丸いガラスの中に青と赤の針が1本ずつ入っている。 ガラスの両端にはそれを挟むような形で同じようなダイヤルが取り付けられている。 マツダの説明では、左のダイヤルはいわば周波数を設定するようなものであり、チャンネルが見つかったらガラス内の針が動き出すそうだ。 そして、右のダイヤルは音量の調節の際に使用するらしい。 説明はこれだけしか受けておらず後の楽しみ方は自分で見つけて欲しいとのことだ。 動力源についてはコンセントらしきものが見当たらないため、電池か何かで動くのであろう。 裏側にあった電源らしきスイッチを倒し、早速ラジオを使用する。 初期音量は0となっているようなので、少しずつ上げてみる。 すると、一度も聞いたことのない海外の民謡のような音楽が流れてくる。 明るい曲調で始まり軽快な音楽が流れる。 しかし、終盤では暗い曲調に変わりそのまま音楽は終わってしまう。 「正直あんまり感じのいい音楽ってわけではないな」 そんなことを思いながら、チャンネルを変えようと左のダイヤルを回す。 しかし、左のダイヤルを回しているのにも関わらず流れている音楽は変化せず、先ほどまでは止まっていた青い針が回り出した。 その後も左ダイヤルを回すが、青い針が回るばかりで音楽も変わることなく時間が過ぎていくだけであった。 「これはガラクタ摑まされた感じか?」 時計を見ると、時刻は17時を指していた。 疲れたので、少し仮眠をしようとしたところで1階のインターホンが鳴る。 急いで階段を下り、ドアを開けるとよく見た顔がそこにはあった。 「あっつー、ほんと気温どうなってんの。鍵なかったから助かったわ」 短パンとシャツで帰ってきた彼女は妹のさくらである。 体には汗をかき、少しでも涼もうと手で風を送りながら立っていた。 「おかえり。当然だけどまだ父さんも母さんも帰ってきてないぞ」 「そりゃそうでしょ。兄貴は今日部活ないんだっけ?」 話しながら玄関で荷物をまとめるさくらに答える。 「そうそう、グラウンド使えないからな」 「へー、兄貴運動神経いいんだし今からでも別の部活に入ればいいのに。私みたいにバスケ部とかどう?」 無神経な妹に少し腹が立ってしまうが、少し言い返すくらいで堪える。 「別にいいだろ。楽だしそれでいいんだよ」 「まあ、それもそっか。私疲れたから寝てくる〜」 「おい、汗かいてるんだし風呂くらい・・・」 と言ったところでさくらは2階に向かい、『あとではいるー』とだけ残して俺のとなりの部屋にある彼女の自室に行ってしまった。 俺も1階ですることもなかったので、部屋に戻ることにした。部屋では先ほどかけていた音楽がそのまま流れっぱなしになっていた。 うるさいからそれを止めようとラジオを見ると、ガラスに包まれた針は前に見たときと異なる反応を示したていた。赤い針がわずかに動いているのだ。 青い針はそのまま動いていることから、何か変化があったのだろうがこれといって心当たりはない。興味本位に針に関する方である左ダイヤルを回してやると、赤い針が青い針ほどではないがゆっくりと回り出した。 しかし、幾ら左のダイヤルをいじってやってもその速度は変わらないため、手詰まり状態かと思い、睡眠用bgmにでもしようと少し右ダイヤルで音量を上げてやり、そのまま床に寝転び目を瞑って睡眠態勢に入った。 1分くらい経っただろうか?急に音楽が止まった気がする。 それに先ほどから感じていた床の堅さが感じられない。それとは正反対のやわらかな感触が俺を包んでいる。 俺は別の世界に飛ばされてしまったのだろうか?いや、そんなこと現実的に考えてありえない。 しかし、他にもおかしな点がある。 変に体温が高く汗をかいている。 俺は今日特に何もすることもなく帰ったのにどうしてだろうか。 それに、部屋の温度少し寒くないか?そして、何より不可解なのは胸のあたりに少し重みを感じることだ。 さすがにこれはどう考えてもおかしい。俺は思い切って目を開けてみることにした。 視界にあったのは馴染みのない天井だ。自分の知っている白いのとは違う、ピンクのが広がっている。 「俺はどこかに飛ばされたのか・・・」 声を出して気づく、聞こえた俺の声はいつもの低いものではない。もっと可愛らしいものだ。 「あー、あーやっぱり声も変だ。一体どうなってんだ・・・」 寝転んだまま手を広げる。 俺本来の手と異なり、小さく指も少し細い。 起き上がって視点を下に下ろしていく。 背中を包んでいたやわらかな感触はどうやらベッドに寝転んでいたからのようだ。 そのままさらに真下を向く。 そこには、男の俺にはあるはずのないものがあった。 それは、男子たるもの誰もがみな憧れを抱いているであろうお◯ぱいであった。 それは、黒いTシャツに包まれている。 本当に自分のものであるのか確かめようと、両手で軽く揉んでみる。 「はっ、んぅ、あぅん…」 お◯ぱいを揉んだ俺はそのまま甘い声で感じてしまった。 正直夢だと思っていたのだが、もしかしてこれは現なのだろうか? とりあえず今、俺は女になっているようだ。 まだ夢の可能性があると思い、胸を揉みつつ乳首をつねってみる。 「はぁぁ…はぁぁ…ああっっ!?」 少し前まで、まだ眠かった俺の意識はそこで覚醒した。 これは夢なんかじゃない間違いなく現実だ。 そう確信できるほどに。服を脱いで確認してみる。 推定Bカップくらいであろうか?それくらいのお○ぱいが顔を出した。 「はぁ…これやっぱ本物じゃん…」 まだ呼吸が落ち着かない。 それだけ気持ち良くてこの身体は興奮しているのだろうか? そんなことを考えていると、股の部分がどうも落ち着かないというか気持ち悪い。 女になっていることから、俺の相棒はそこにはいないのだろう。 それを調べるべく俺は履いている短パンを脱ぐことにした。 脱いだ先に現れたのは黒の下着。裏返そうとするが、軽くしか力を加えてなかったので思い通りにいかない。 ぴったりと張り付いた下着を無理やり引き剥がすと、そこには割れ目があった。 初めて見るそれはぐしょぐしょになっており、その原因はきっと俺のさきほどまでの行為のせいであろう。 俺はその匂いがどんなものであるか気になり、そのまま顔を近づける。 普段の俺の身体なら硬くて近づけることすら叶わないが、柔軟性のあるこの身体なら簡単にそれができてしまう。 「うっ…」 なんとも言えないその香りに絶句してしまう。 さておきもう少しこの身体を楽しもうと、割れ目に手を近づけたところで声が響く。 「ただいまー」 俺は突然の声に慌てるが、どうやら母さんの声だ。 「せっかくいいところだったのに…」 悔しいながらも夕食の準備を手伝おうと、何も考えずに部屋を出ていく。 「母さんおかえりー」 そう言って、階段で母と顔を合わせてようやく気づく。そういえば、俺は今女の身体になっていて、そんな中母親と遭遇してしまえば、きっと不審者扱いであろう。俺は顔をひきつりながら、なんとか説得の言葉を考えていると先に母がよくわからないことを言うのであった。 「さくら…あんた何そのだらしない格好はちゃんと服くらい着てから来なさいよ…」 「へ…?」 突然挙げられた妹の名前に戸惑う。 後ろを振り返っても妹がおらず、これは俺自身にかけられた言葉だと気づく。 母は挙動不審な俺に不思議そうな目で見つめてくるが、最後にはため息をついてリビングに入っていってしまう。 姿見を探そうと、洗面所に入る。鏡の前にいたのは、情けない姿で驚いた顔をしている俺の妹さくらである。 動きやすいように髪をポニーテールにくくっている彼女はここ最近大人っぽくなってきている。 しかしそんな彼女と裏腹に、現在身につけている衣類はパンツだけであり、これなら確かに変な目で見られるのも当然である。 何せさくらは普段から家族の男連中(俺と父)に裸を見られるのを嫌っているからである。ようやくこの身体の正体に気づいて違和感のあったところがすべて合致する。 一応クラスでもそこそこ人気のあるらしい彼女俺はふと気になって、洗濯機を覗く。 中身をかきわけていくと、俺が探していたものが出てくる。 さくらのブラジャーだ。シャツを脱いだときになかったのは部活後のさくらが汗だくで帰ってきたからだと理解する。 俺はネットに入った妹の汗のしみついた下着を取り出し、それを妹の体で嗅ぐとどんな匂いがするかが気になり嗅いでみる。 「くさっ」 わかりきったことだ。汗まみれのものに男子と女子の差はあってないようなものだ。その声にリビングにいた母が気づいたのかリビングから声をかけてくる。 「さくら、遊んでないで夕食の準備手伝いなさい」 「は、はーい!」 『すまん妹よ・・・』と心の中で謝りながら、リビングに入るが、まだ服を着ていなかったので母はさらにお怒りであった。お前は裸族かと。 今度さくらには何か埋め合わせをしなければいけないなと思い、2階に上がろうとしたところで母親が声をかける。 「さくら、2階に行くんだったらたけしも一緒に連れてきて」 「・・・わかったー!」 そうだ。あまりの出来事に気を取られていて気づけなかったが本来の俺の体はどうなってしまったのだろうか? 俺がさくらになる前は寝ていたから、そろそろ目を覚ましている頃合いだろう。 その肉体にはさくらが入っているのだろうか? それとも俺がさくらになってしまったことで気絶している状態なのだろうか? 考えてもキリがないので、俺は自室の扉を開ける。 そこには、この姿になる前の体勢から少し崩れて眠っている俺がいた。 その肉体の精神が一体どうなっているかはわからないが、起こしてしまっては面倒だ。 このままさくらの姿でいるのもなくはないが、さすがにこれ以上は申しわけないと思い、おそらくこの元凶であるラジオのダイヤルをいじくり回す。 この謎の音楽を止めるためにとりあえず、右のダイヤルで音量を0にし、左のダイヤルを使いチャンネルをいじる。 すると、さきほどまで回っていた赤と青の2本の針は逆向きに回転してやがてぴたりと止まる。 針が止まると同時くらいに、俺はふらりと目眩を感じそのまま膝をついてしまう。 次に目を開けたとき、そこにあったのはいつもの白い天井だ。 俺が知っているピンクでたしかぬいぐるみとかが置いてある妹の部屋とは違う。 身体を確認するが、制服を着ており、上はないし下はある。 要はいつも通りの馴染みのある俺の身体であった。 立ち上がって、机の上のラジオを確認するも特に変化はなかった。 「まさかラジオにこんな機能があるとはなあ…」 マツダの言うおもしろい機能とはどうやらこのことであったようだ。 まだまだ使い方についてはわからないところがほとんどだが、自分の体に戻ることは可能なようで安心した。そんな気の抜けたところに、 「さくらー、早くしなさーい」 母親のそんな声が響く。 後ろを振り返ると、下だけを身につけてあとは全身裸の妹が母の声で目覚めてしまったのだ。 「ふあぁ…なんか寝てたのに体がやけに疲れたんだけど」 「おはよう、さくら」 事もあろうか俺は挨拶をしてしまった。だって、言い訳なんて思いつかないんだから。 「ん…おはよ…兄貴.........ってなんでいんの!?」 さくらははじめに俺がいることに驚き、そのまま衣類をほぼ身につけていないことに気づく。 赤面したさくらは俺の顔面に盛大にビンタを喰らわせた後、自室に駆け込むのであった。 「最低ッ!!」と言い残して。 ひょっとして、寝ている間に強引に連れられ襲われたと勘違いしているのではないか? そんな考えが頭によぎったので、起きていた妹の動向を知っている母により誤解が解けることを祈るばかりであった。 どちらにしてもあいつには悪いが・・・。 父が帰宅し、夕食や風呂を済ませた後、リビングでアイスを食べているさくらとかち合った。あの後、妹は母にあったことを色々指摘され、俺の部屋にいたのは母が呼ぶように言ったからということで納得した。しかし、全身裸であることの謎は解けていないようで未だに俺を疑ってくる。まあこれに関しては無理もないか。そのためかいつもと違った軽蔑の視線を向けてくる。 「ほんとに寝ている間に、何かしたわけじゃないのよね?」 「知らないって、暑くて服脱ぎ散らかしただけじゃないのか?」 「まあそうかもだけど…でも、下着の中はどう…」 ゴニョゴニョと小声で言った部分に心当たりがありすぎて、騙しているようで申し訳なくなった。 「そういえば、寝ている間なんだけど変な夢を見たのよね」 「変ってどんな?」 俺がそう確認すると、不快そうな顔で話を続ける。 「なんかね。起きたら兄貴の部屋にいてさ、そのまま部屋にある鏡を見たら兄貴の身体になってたって感じ。もうほんと最悪よ…」 「へ…へぇ、その後どうしたんだ?」 「その後は、眠かったしどうせ夢だと思って寝ちゃったはず。まあ夢の話だし、あんまり鮮明には覚えてないんだけどね」 「そっか・・・」 危なかった。そのままさくらが起きて、俺の部屋に来ようものなら大惨事になっていたはずだ。 きっと、彼女が言うそれは夢ではなく現実であるからだ。 とにかく、このラジオの機能についてわかったことが1つ増えた。 ラジオを使用した際、どうやら使用者は身体が近くの者?と入れ替わるのだ。 詳しい条件などはまだまだ追って調べる必要があるが、おそらくこういうものなのであろう。 自らが奇怪な行動をしていたことに恥じらいを感じている妹には悪いが、そのまま『おやすみ』と言ってリビングを後にした。 その後、不思議な能力を持ったラジオを調査し始める。 まず、俺は前回と同様に目を瞑って睡眠状態に入ろうとすることを決して欠かさなかった。 おそらく、1回目のパターンを見るに、入れ替わり後の俺の身体は睡眠状態にある。 これは、入れ替わり直前に俺が睡眠状態に移ろうとしており、その動作が継続的になったからであろう。 もし、誰かと入れ替わったとしても俺の身体が睡眠状態なのであれば、リスクは最小限で済む。 設定は1回目と同じ条件のもと行った。 青は初めから回っているので、左のダイヤルを回し、赤が軽く回るようにする。 回転が弱いため、右ダイヤルを回すことで回転の速度を上げる。 1回目から、ダイアルを戻して、針が逆回転して止まるまでおよそ2、3分かかるということがわかっている。 つまり、この時間の際に入れ替わった相手の身体を元の位置に戻しておけば良い。 準備ができたので、そのまま睡眠態勢に入る。 だんだん音楽は小さくなり、その代わりテレビの音が聞こえてくる。先ほどまでのベッドの感触ではなく何かにもたれかかったようであった。目を開け状況を確認すると、そこは家のリビングで右手には食べかけのアイスクリームが握られていた。周りに家族がいないことを確認し、声を出してみる。 「あーあー、この身体はさくらで間違えなさそうだな」 様々な状況から察するに間違い無いだろう。今度は裸ではなく、黄色いスウェットを身につけていた。さすがに何度も身体をいじるのは悪いと思っていたので、俺は手に持っていた溶けかけのアイスをぺろりと平らげた。そして、アイスの棒を持ったまま2階に上がり俺の部屋に入る。予想通り、俺の身体はベッドの上で眠っていた。そこにさくらが入っているのだろう。ラジオの右ダイヤル・左ダイヤルを共に元の位置に戻すと、針は逆回転し始める。1回目の二の舞にならぬよう、1階に降りてリビングに戻る。その後、元の席に座りしっかりアイスの棒を握っておく。しばらくしたところで目眩を感じ、そのまま目を開く。身体は元に戻っており、ラジオの針は静止していた。さくらの様子を見に行こうと、リビングに入ると目を覚ましたさくらが声をあげている。 「ねー、兄貴!聞いてよ!」 「ん?どうした?」 おそらく、アイスがなくなっていることでショックを受けているのであろう。そう思っていたのだが、その割には元気そうだ。 「あのね、なんか一瞬目眩がして、目を開けたら食べかけのはずのアイスがなくなってたの」 「おう、それで?」 「でね、その棒見たら当たってるの!すごくない?」 「おー、やったじゃん」 意外と能天気な妹に適当に話を合わせつつ、そのままリビングを後にする。 とりあえず、俺が睡眠状態に入ることはトラブルを避けるためにも有効な手段であることがわかった。 問題は入れ替わりの対象である。今回も1回目と同じように妹のさくらと入れ替わったのだ。 では、なぜ彼女と入れ替わるのか。 おそらく、これを調べるにはマツダの説明にあった左ダイヤルでのチャンネル調整?の機能が手掛かりになってくるのではないかと仮説を立てる。 そこで2回目までと同様に左ダイヤルを回してみる。 同じように青い針は始めから回転しており、左ダイヤルの1/4くらい進んだ位置で赤い針が回転し始める。俺はここで、ダイヤルをさらに奥まで回してみる。 すると、赤い針は一旦は勢いを弱めたと思えば、再びある地点で同じくらいのスピードで回転を始める。 回転の確認後、音量設定?と説明のあった右ダイヤルを以前と同じように回す。 しかし、2回目までのときとは異なり入れ替わりが発生していた高速の回転に至るためには、さらに右ダイヤルを回す必要があるようだ。 右ダイヤルを回すと、入れ替わり発生時の高速の回転を始める。 こうして、右ダイヤルを回すことで気づいたが、厳密には右ダイヤル=音量調整というわけでもないようだ。 さきほど回した時と比べると、たしかに変わった気がするがその程度はほんのわずかなものだ。 今回の入れ替わりで解決に至るかもしれないと思い、準備の整った俺はベッドの上で目を瞑るのである。 次に感じたのは、全身を覆う熱さであった。 目を開けると、あたりには湯気が広がっており、自分が湯船に浸かっていることに気づく。 その身体はさくらのものと比べると全体的に衰えを感じる。 バスルームの構造からしてもこの身体が誰のものであるかは俺にとっては一目瞭然だが、はっきりさせるためシャワーの隣に備え付けられている鏡で確認した。 「やっぱり母さんの身体か」 さすがに母親の身体を使って何かをするというのは俺にはできなかったので、さっと風呂を出てバスタオルで身体をまとっている水分をある程度取り除き自室へ向かう。 幸いにも家族の誰とも出会すことなく部屋に到着し、ベッドの上には眠っている俺がいた。 ダイヤルを操作し元の身体に戻る準備を全て整えると、白い天井が視界に広がり自分の身体に戻ってきたことを合図する。 風呂場にいる母の様子を確認するのも、面倒なので少し考察をまとめるとしよう。 ラジオには左ダイヤルと右ダイヤルが存在する。 今回の実験で左ダイヤルの効果は入れ替わりの対象の選別であるのではないかと考える。 また、対象を変更する際には右ダイヤルをより回さないと入れ替わりは発生しなかった。 マツダの音量の調節という言葉から、右ダイヤルは回すほど強く、もしくは大きくなる何かが関係しているのではないかと予想する。 最後にこのガラスに入っている赤と青の2つの矢印針だ。 おそらく使用者の俺が男であるため、青の針ははじめより強く反応を示していた。 1回目、左ダイヤルを回していたことで女のさくらが帰宅したタイミングで赤いは反応したのだろう。 そして、2本の針が回転を始めることで入れ替わりが発生する。 戻る際にはそれらは逆回転し、2,3分で停止しその瞬間元の身体に戻る。 これらの状況より、全て憶測ではあるが俺は1つの仮説が浮かんだ。 このラジオは左ダイヤルを回すことで距離に依存して対象を決定することができる。 これは、さくらの帰宅前に反応しなかったことや直近2回の入れ替わりで対象が変化したことから導き出される。 妹→母の順で入れ替わったのは家の構造的にその順になったのだと考えられる。 そして、距離が変化したことで右ダイヤルを回す必要が出てきた。 これも憶測だが、右ダイヤルでは入れ替わりにおけるなんならかのパワーの値を設定しているのでは無いかと考える。 また、青い針は常時回っていることから使用者が男の俺である限り、女性との入れ替わりが確定する。 考察は以上である。 色々なことを考えているうちに時刻は22時頃となっていた。 もう寝てしまってもいいが、せっかくこんな面白いものを手に入れたのだからもう少し遊んでみたいと思い、俺は考察を元にある名案を思いついた。 その準備として、玄関の鍵を開けておく。 うちの家は早めに家族全員が寝るため、夜間に起きていることはほとんどない。俺は部屋に戻り、ラジオをいじり始める。 左ダイヤルを少し回したところで赤い針が反応を示すが、それをスルー。さらに回し二度目の反応を確認するが、それも無視する。 そして、左ダイヤルを回せるギリギリの部分くらいで赤い針は三度目の反応を示した。 狙い通りにいった俺は右ダイヤルを回す。 すると、2本の針は回転し始めたので、俺はそのままベッドに寝転び睡眠態勢に入る。 一瞬の目眩を感じると、先ほどとあまり変わらないベッドの感触を感じる。 もしかしたら今回は失敗したのかもしれない。 そう思っていたが、よくよく考えてみるとたしか布団をかけずにラジオは起動していたので、それがかけられている状態はおかしい。 俺の勘違いでなければ入れ替わりは成功しているはず、そう思い目を開いて確認してみることにした。 広がる真っ白な天井、これはいつもと変わらない。 しかし、あたりを見渡すとそこはきちんと整頓されており、全体的に白で統一されている部屋であった。 壁に貼られているカレンダーにはこまめに予定が書かれており、この身体の持ち主の性格が窺える。 そして、目線を下におろすと紺色と白のボーダー柄のパジャマに包まれたお◯ぱいのふくらみがあった。 「とりあえず実験成功かな?」 そう言いながらパジャマのボタンを外し、胸を揉んだり身体をいじる。 お○ぱいは妹のさくらのものを触ったときより大きい。そのまま乳首を触ろうと、彼女の細い指でつねってみる。 「あっ……!あ、んっ…あん……..!!」 口からは彼女の艶かしい声が漏れる。あまりにも気持ち良すぎたので、そのまま堪能して5分ほど経った頃だ。 この身体はどうも、さくらと比べても感じやすいようだ。 そのまま下の方もと思ったところで、コンコンとノックが2回鳴りドアが開けられる。 「お姉ちゃん、なんか声がするけど大丈夫?」 ドアの開いた先には見覚えのある顔があった。 そうか俺はあいつになっているのか。 冷静にそんなことを考えていたが、今の状況まずくないか? 姉が心配で様子を確認しにきた小学生くらいの男の子が、色っぽい声で胸を揉む姉の姿を目撃しているのだ。 さすがによくないと思い俺はとっさの言い訳をすることにした。 「ちょっと、胸のあたりが痛かったの。心配させてごめんね…」 男の子は『そっか、明日ボクがお母さんになおしかた聞いておくよ!』と言って、そのまま去っていってしまった。 これは果たして大丈夫なのだろうか? ともかく、事を大きくしないようになるべく注意しよう。俺の計画はこうだ。 まだ、男の子が起きていたため0時すぎくらいまではこの身体で部屋を物色する。 その後、外に出てすぐそばにあるはずの俺の家に帰還。家の鍵はあらかじめ開けておいたので、侵入の準備はできている。 その後、ラジオで元の身体に戻りこの身体を元あるべき場所に帰す。 さっそく、時間を潰すために部屋を物色し始める。 机の上に手鏡があったので、まずは容姿を確認する。鏡に映った俺はやはりよく見知った人物であった。 真っ黒な綺麗な黒髪は肩くらいまで伸びている。 その色白の肌は日頃から手入れを施している証拠なのであろう。 こうして近くで見る彼女はいつもよりも綺麗に見えた。 その正体は幼なじみでいつもうるさく注意してくる風紀委員のれいかであった。 鏡に映る彼女は、いつもの真面目でしっかり者とはかけ離れていた。 衣服は乱れ、ボタンが外れたパジャマからは胸が顔を出している。 そんないつもと違う彼女を見て、普段とのギャップに興奮し色々と妄想してみたが、少しだけにして今回は抑えることにした。 しかし、どうやられいかのやつ相当以上にスケベなようで、想像だけで股を濡らしていた。 先ほどの胸を揉みまくった行為も重なってか下着はぐちょぐちょになっていた。 まあ起きたら戻るため、そんなことは気にも止めようとはしないことにした。 軽く部屋を調べ、まもなく0時になるという頃だ。 股間のあたりがうずうずする感覚に襲われる。尿意だと察した俺は速やかに1階に降りてトイレに向かう。 トイレは廊下を歩いて少し先にあったため、便器に座ろうとする頃には限界が近かった。 急いでズボンをおろしてパンツを脱ごうとする。 しかしベトベトになっていたそれを脱ぐのに苦戦し、我慢できずに狙いがぶれぶれで放たれたおしっこはパンツと床をわずかに濡らしてしまった。 なんとか持ち直し、そのまま便器の中に狙いを定める。 「あぁ……」 初めて女性の身体で出すおしっこは気持ちのよいものであった。 いつも一緒にいたはずの相棒がおらず、操作は不慣れであったが、シャーっと勢いよく出たおしっこはそのまま便器の水たまりに落ち音をたてる。 「俺、れいかの身体でおしっこしてるんだな…」 そんなことを考えていると、股のあたりが再び湿り始める。れいかはよほどの変態なのであろう。 そんな身体を使うことが今は何より快感であり、今後もこの身体をもてあそびたいとまで思った。 やがて、おしっこは勢いを落としポトポトと音を立て止まるのであった。 「終わった後は、紙で拭いた方がよかったんだよな?」 俺は濡れた部分をトイレットペーパーで綺麗に拭き取る。 それと出す時に濡らしてしまった床とパンツをしっかりと紙で拭き取るのであった。 その後、ぐちょぐちょではあるが履くものもないため先ほどまで身につけていたパンツを纏う。 おしっこも混じっており少し気持ち悪いが仕方がない。 トイレを出るとようやく作戦を実行する。 通ってきた廊下を引き返し、鍵を開け玄関に出る。 深夜の住宅街は人こそいないが、少し怖さを感じる。 こんなところで今襲われてしまえば、れいかの身体である俺は力で敵わず負けてしまうであろう。 早足で、我が家の玄関に向かいドアをゆっくりと開ける。 家の誰かに見つかってしまえば、さすがにれいかに申し訳が立たないので隠密にけれども速やかに動くことにした。音を立てないように忍足で階段を上り、俺の部屋に向かう。 部屋の扉を開けると、例の民謡音楽が流れてくる。何度聞いてもこの上がり下がりの激しい曲調は慣れないものである。 俺の様子を確認するも、どうやらまだ眠っているらしい。 せっかくなら、戻る前に何かれいかに何かいたずらをしてやろう思った俺は面白いことを思いついた。 俺はれいかが履いているズボンを脱ぎ、そのままぐちゃぐちゃのパンツをはぎ取る。 それを手に取り顔の前で広げる。そのままくんくんと顔を近づき嗅ぐ。 「くっせえええええ』 それは妹の身体で嗅いだ汗まみれのブラジャーよりも臭かった。 部屋の鏡を見てみると、れいかは俺が見たことのないとんでもない顔をしている。 色々なものが混ざったそれが臭くないはずもなく、俺はその下着をあろうことか俺の姿で眠っているれいかの顔に乗せてやった。 少し見守ってやると、俺の身体は寝苦しそうにしている。 しかし、身体の方は正直で寝ているにも関わらず、俺の息子が反りを始めていた。 「お、さすが俺の身体だな」 そのままれいかの細くて綺麗な手を使って、寝ている俺に手◯キをしようとか思ったが、さすがにそれをすると目を覚ましかねないので、俺は急いでラジオのダイヤルを0の方に回し、この部屋を後にするのであった。家を出て外に出たところで、少し離れた電柱にいかにも怪しいおっさんがいたので、サービスにパンチラをお見舞いしてやった。 ところが、パンツは部屋に置いてきてしまったため、陰部が丸出しとなっていたのでおっさんは興奮しどこかに走り去ってしまった。 家に着き、そのままベッドに身体を委ねる。 どうやら身体の疲れもピークだったようで、俺はそのまま眠ってしまうのであった。 窓からぼんやりと刺す光で俺は目覚める。 昨日はだいぶ疲れていたのだろうか未だに身体に疲労を感じる。 今は一体何時だろうそんな疑問が脳裏をよぎったときに、俺はようやく置かれている事態の深刻さに気づくのであった。 目を開いた先は白い天井であった。 そのまま、横に転がったところで胸のあたりに重みを感じる。 視点を移すと、昨夜を共にしたお◯ぱいとそれを包むボーダーパジャマはまだそこにあったのだ。 「うそだろ…なんで戻ってないんだ…!?」 部屋を見渡すも部屋に飾られていたロックバンドのポスターも机の上に置かれていたラジオもない。 部屋にあるのは全体が統一された白、俺の身体はれいかのままで戻っていなかった。 慌てて立ち上がると、股間の部分がスースーする。昨日、俺の部屋にパンツを置いてきたためノーパンのままパジャマのズボンを履いているからである。 そんなことを気にしている場合ではない。 なぜ元の身体に戻ることができなかったのか。 今まで通りに行けば必ず身体は元に戻るはずであった。 しかし、目が覚めて動かしている身体といえばれいかのもの。 納得できない気持ちはいっぱいだが、今は早急に元の身体に戻る必要がある。 そう思った俺は部屋に置かれていた時計を確認する。時刻は5時半を指している。 今ならまだバレずに部屋に戻ることができると思った俺はラジオへと急ぐ。 たしかにラジオは止めたはずだと思いながら、それと同時に確認を怠ったことを思い出す。 そういえば、あのとき針が逆回転していたかまでは確認していなかった。 考えれば考えるほど不安が積もる。 さすがにバレたらまずい・・・。 いっぱいいっぱいの状態でようやく部屋に到着し、俺は自室のドアを開くのであった。 ドアを開けた瞬間、ラジオから流れる民謡は聞こえてこなかった。 ベッドにいる俺の身体に入ったれいかを見る。彼女はまだ目を覚ましていないようだが、眠りから覚めるのも時間の問題であろう。 俺は大急ぎでラジオの状態を確認する。 やはりダイヤルは共に0に設定されている。 気づいていないだけで戻る時の操作にミスがあったかもしれない。 そう思い、とりあえず左ダイヤルに手をかけようとしたところで、となりから聞こえる寝言に中断されるのであった。 「むにゃ、むにゃ」 声が聞こえた方を見ると、ベッドで寝ていたはずの俺の身体は寝言をあげていた。 入れ替わりまでには、時間がかかり、それまでにさすがにパンツを被せたことがバレてしまうのはまずいと感じ、ラジオのことはさておきそちらの回収を優先することにした。 寝苦しかったのかパンツは顔からベッドの奥の方に流されていた。回収しようと、俺は思いっきり手を伸ばす。 後少しのところで届かないため、俺の身体のれいかを起こさないようにしながらベットに体重を預ける。 そして、ようやく届いたそれに触れる。 中はカピカピになっており、昨日の面影はなかった。 そのまま引き上げようとしたところで、なんと体勢を崩してしまう。 そのときに当たってしまったのが原因か俺の身体に入ったれいかは初めてちゃんとした声を出し、目を覚ますのであった。 「ふぁあ…よく寝た~」 俺は慌ててパンツをパジャマのポケットに突っ込む。 こんな状態ではあるが、自分が目の前で喋っているのはなんとも違和感のあるものである。 目の前の俺は、そのまま上体を起こし部屋を見渡す。 まだぼんやりとしているようで、眠そうな顔はかっこよさの欠片もない。 あきらめムードの俺は急いで今のこの顔で笑顔を作り、こう言ってやり彼女の目を覚ましてやった。 「たけしくんおはよ!」 「へ…?」 目の前で自分のそっくりさんが笑顔を作っていることに驚きを隠せない様子だ。 「ちょっと…あなたいったい誰よ…!?」 「私はれいかよ。たけしくん寝ぼけちゃってるの?」 「何言ってるのよ!私がれいかよ!!」 彼女がそう言い返したところでようやく気づく、その口から発せられる声が自分のものと異なることや身体に違和感があることに。 そして、彼女は部屋に置かれた鏡を見て状況を把握したらしい。 「うそ…私たけしくんになってる」 膝をついた彼女はしばらく何かを考えてこちらには目も向けない。 しばらくすると、落ち着きを取り戻したようでようやく話始める。 「あなた、いやそこの私。たけしくんじゃないの?」 俺の姿をした彼女は疑いの目を向けてくる。 さすがにこれ以上からかうのも彼女に悪いと思い、俺は素直に認めるのであった。 「なるほど…ラジオを触ってたらこうなっちゃったと…」 さすがに彼女の身体をいじりまくったことや実験していたことなどは話さなかったが、ラジオのせいでこうなったということは伝えることにした。 巻き込まれてしまい俺の身体で怒っているれいかは彼女には申し訳ないが、見ていて気持ち悪かった。 今は戻る必要があるが、もう時期家族が起きてくる時間であることから一旦お互いの身体の家に戻ることになった。 まあ少し強引ではあったが、状況が追いついていないれいかはしぶしぶ提案を認めるのであった。 俺が部屋を出ようとしたとき、れいかが俺の方を上目遣いで見て告げる。 「あのさ、さっきからここが苦しいの」 彼女が指差す方を見ると、そこは俺の息子が位置するところであった。 寝る前に、パンツを乗っけていたことで身体が興奮した状態だったのだろうか? そのまま朝勃ちしている俺の息子は非常に元気だった。 「ほれ、貸してみろ」 俺は床で座っている彼女を立つように促し、そのままズボンとパンツを下げる。 「ちょっと、何するの!!」 「しんどいんだろ?直してやるからちょっと待ってろ」 対処が分からないのも無理はない。パンツから覗かせる俺の息子はビンビンに成長していた。 「こうやって見ると、結構気持ち悪いな…」 俺はれいかの細くて綺麗な手を俺の息子へと伸ばす。 れいかの顔を見ると、何か言いたそうだったが我慢しているようだった。肉厚なその棒を優しく握ると、『あんっ…』と目の前の俺が喘いでいる。そのまま手に力をこめていつも通りの上下のマッサージをしてやる。 目の前の俺はますます声を激しくし、我慢できない息子はグロテスクなものへと進化していた。 そのままドピュッと白い液体の絞り出してやると、俺の息子は落ち着きを取り戻すのであった。 「ほい、これで治ったな?」 「ハァ…ァン…….うん、ありがと…」 少し不服そうな顔をしていると思ったが、思った以上に満足そうな顔でイっていた俺の身体はそのままベッドに倒れ込んでいた。 俺といえば、普段は自分でこういったことはするが、女性の身体で握ったそれはいつものとは別の良さがあった。 大きくなったその棒はいつもより太く、むくむくと動くそれからは体温を肌で感じることができた。まあとにかくよかったのである。 「じゃあ、俺も戻るから。後から合流で」 ベッドで倒れているれいかを後にして、俺は彼女の家に戻る。俺の家族はまだ起きていなかったようで、どうにか気づかれずに済んだ。 しかし、彼女の家のドアを開けるとそこにはまだ起きたばかりであろう母親がいた。 「おはようれいか。朝からどこいってたの?」 「ちょっと、早く目が覚めたからちょっとそこで運動してたの」 なんとか思いついた言い訳をする。 一応朝の運動(意味深)を済ませたばかりなので間違ったことは言っていない。 「そう。朝ごはんにするから早く入りなさい」 れいかの母親の言葉に従い、俺はそのまま家に入る。 そこからはなんとかバレないようにふるまった。 ご飯の後は、汚れてしまったパンツやパジャマを洗濯機に入れ、制服に着替える。 「パンツは…まあこの水色のでいいか」 部屋のタンスに入っていたのを適当に取り出し身に着ける。 普段履いている男性のものとは違い、フィットする感じであまりゆとりがない。 そのままスカートを履き、上にはシャツを着る。少し胸が擦れる感じがあるが気にしたら負けだ。 一通り着替え終わったくらいで、インターホンが鳴りれいかの母親が玄関に出ていく。 「れいかー!たけしくんが来てるわよー!」 「そのまま部屋に通してー!」 「わかったわー!じゃあ私も仕事行ってくるから!」 ドアを開けて受け答えする。 れいかの母親は朝が早いため、そのまま出ていってしまう。 俺の身体のれいかと彼女の母親が少し話した後、俺の身体のれいかが部屋へとやってくる。 「はぁ…こうして人の身体で自分の母親と話すって少し複雑な気分ね…」 何を話したのかは知らないが、れいかはすでに少し疲れていた。彼女はすでに制服姿に着替えており、髪の毛もいつもの俺以上に整っていた。 そのまま視線を俺に移したれいかは『あっ…』と何かに気づいたように俺の身体いや今はれいかの身体に触れてくる。 「なんで下着つけてないの!しかも髪の毛ボサボサじゃない!!」 そうか、俺は今あの優等生で清楚な風紀委員のれいかになっているのだからその辺は気をつけなければいけない。 『ごめん、ごめん』と謝るが、『いいよ。私が自分でやるから』と言って俺の身体でタンスからブラジャーを探す。 そのまま俺は着せ替え人形のように衣服を着せられ、ドライヤーで髪の毛を整えられ、軽い化粧を施される。 俺はされるがままに呑気に質問してみる。 「なあ、自分の身体を整えてるのってどんな気分だ?」 「恥ずかしいに決まってるでしょ!!」 彼女は俺の身体で顔を赤らめながら叫ぶ。 まあ、そりゃそうかと思っているうちに準備は済まされていた。 俺たちがこうも余裕に彼女の家に滞在している理由は1つである。 現在この家には、俺、れいか、彼女の弟しかいないからである。 彼女の父親は現在単身赴任中であり、こうやってうるさくしていても問題がないのである。 「あと、これつけておいて」 俺は彼女に【風紀】と書いた腕章を渡される。 どうやら挨拶運動でつける必要があるようだ。 学校に行く準備を終えてあとはラジオの準備をするというところで、彼女の弟が起きてくる。 「おはよ…おねえちゃん」 「おはよう…あっ」 俺の身体で反射的に挨拶するれいかはさておき、俺も遅れて『おはよう』と返す。 「そういえば、昨日の痛いのはもう大丈夫?」 あっ…と思った俺はすぐに誤魔化しに入る。 「う…うん!もうお姉ちゃん元気になったよ!じゃあいってくるねー」 と強引にれいかを引っ張って家を出る。 れいかに『なんのこと?』と聞かれるが覚えがないとしらんぷりするのであった。 その後、俺はれいかにラジオを部屋から持ってくるように告げる。 「持ってきたよ。これのことであってる?」 そこにはには、昨日よりお世話になっているピンクのラジオがあった。 「そうそうそれのこと。だけど、問題はこれをどこで使うかだよな」 「そうね…」 現在の時間は7時。来るのが早い生徒であれば、このまま教室に着いた頃にはチラチラいる頃だろう。 一応人に見られないところでやりたいと思ったが、どうにも難しそうだ。 れいかの家でもよいが、小学生の弟はきっとラジオに興味津々になってかえってややこしいことになりそうだ。 適した場所があるか考えていると、1カ所だけ思い当たる場所があった。 「そうだ!今ならうちの部室が使えそうだ」 そう、野球部の部室であればしばらくグラウンドが使えないことでわざわざ朝に来る者もいない。 れいかからも『じゃあ、そこにしよう』と俺たちは部室に向かうことにした。 その道中、お互いの身体になっており無言というのも間がもたないため、俺から話をふることにした。 「男になってみてどうだ?」 「そうね…少し新鮮な気分かな」 「まあ確かにな。朝からここも元気そうだったしな!」 そう言って俺は彼女の身体で俺の息子にツンツンと触れる。 そうすると、彼女は顔を赤らめて言い返す。 「それはあなたの身体のせいでしょ!あとその言葉遣いも気をつけてよね!」 それはお互い様だと思いながらも口に出すのはやめておく。 俺が股間を触ったことで、彼女は股のあたりをまたモゾモゾさせている。 それを見て、ニヤニヤ笑っているとまた怒られてしまう。周りに生徒はいなかったからよかったものの、通りすがりの人たちは俺たちを不思議そうに見ている。 それはそうだ。女みたいな口ぶりで話す男と男みたいな口ぶりで話す女が並んで歩いているのだ。 それも、女の方が男の股間を刺激しているところを見れば唖然するのも当然であろう。 なかなか治らない息子を制御しようと、れいかは必死であった。 そうこうしているうちに学校に到着する。 時刻は7時20分と普段よりも5分ほど登校時間がかかっていた。 特段疲れていなかったのは、歩幅の狭い今の身体にれいかが合わせてくれていたのだろう。 こういうところはこいつのいいところだ。 こうして、俺らは部室にたどり着いた。 野球部の部室は、第2グラウンドの前と校門からは少し離れたところに位置していた。 そのため、人はあまり通りかからない。俺たちは一緒に部室に入るのを見られることなく済んだ。 「じゃあ、さっそくだけど戻りましょう」 真面目にれいかが切り出すが、今朝より余裕のある俺はそれだけじゃ面白くないのでれいかに1つ提案してみることにした。 「俺さ、野球部で頑張ろうとってするの諦めかけてたけど、もうちょっと頑張ろうかなって思ってるんだ」 「そっか。前も言ったけど、そういうことなら私もたけしくんを応援するよ」 「だからさ、俺がやる気を出すために一緒にやってほしいことがあるんだけどいいか?」 そう言うと、さすがにれいかも一歩引く。 「変なことじゃないよね?それならお断りだけど」 「いーや、全然そんなことない!あるゲームを一緒にやってほしいんだ!それをやったらちゃんと戻すし、俺もたぶん頑張れるからお願いします!」 俺はれいかの身体で膝をついて土下座する。 「ち、ちょっと私の身体でそんなことやめてよ…!」 そう言いながらも戸惑い悩んでいる彼女は本当にお人好しである。 「わかったわよ!やるからその体勢はやめて!」 「本当か!?これで俺絶対頑張れるわ!」 調子に乗った俺の言葉にはあとため息をつきながらもやれやれとれいかは聞き返す? 「で、そのゲームって?」 「ああ、それはな…」 俺が少し溜めてから答える。 「野球拳だ!!」 そう答えると、彼女は『へ?』という反応をしている。さすがにこれには彼女も怒ると思ったが、言質は取っているし、彼女なら断れないと確信していた。そんな中返ってきた彼女の返事は… 「野球拳って何?」 俺は思わずずっこけてしまう。 そして、そのままその下衆な遊びの説明を始めるのであった。 「野球拳ってのはな、音楽を流したり音頭をとりながらする特殊なじゃんけんのことだ。それで負けた方はあることをするんだが、実際にやった方が早そうだな」 俺は持ってきたピンク色のラジオを床に置き、音楽を流し始める。 流れる曲のレパートリーは例の民謡1曲のみだ。 「なんかよくわからないけど、とりあえずじゃんけんすればいいのね」 「ああ、そういうことだ。よし、はじめよう」 俺が掛け声をあげ、じゃんけんを始める。『ポンッ』のタイミングでお互いの手が出される。 俺が出した手はグー、それに対してれいかの手はパーである。 「やった、勝ったわ!」 負けた方が何をするかは知らないれいかは喜んでいるので教えてやる。 「あぁ…負けてしまったかぁ…」 俺はそう言うと、身につけていた黒いソックスの片方を脱ぎ始める。 まだ長時間履いていないそれは汗で蒸れていなかったが、めくったときに白い肌が現れるというのにはエロさを感じる。 「よし、これでOKだ!」 「え、どういうこと?」 彼女はまだルールを理解していないようなので、じゃんけんで負けたらとりあえず靴下を脱げば良いと教えた。 そのまま3度じゃんけんをし、お互いが靴下を脱いだところに至る。 そして、俺の合図の『ポンッ』でお互いの手が出される。 俺がチョキ、れいかはグーだった。負けた俺は、次にどれを脱ぐか迷った挙句、シャツから脱ぐことにした。 まず、腕につけていた腕章を後ろにある棚に置く。 ボタンに手をかけようとしている俺に『何してるの!?』とようやくゲームの趣旨に気づいたれいかであったが、そんな言葉を無視してボタンを1つずつパチンパチンと外していく。 最後のボタンを外し、カッター服をめくった先には、今朝れいかが俺の身体で身につけたばかりのブラジャーが姿を現した。 そんな中、れいかといえば何か言ってやろうと必死になっているのだが、どうやら息子の方が2度寝から覚めたようで股をムズムズとさせていた。 しかも、ズボンからも勃っていることは明白であった。 「ちょっと、これまた大きくなってるんだけど!」 「ゲームが終わったら、手伝ってやるよ!」 「もう、終わりにして早く身体ごと戻してよ」 「やるって約束だろ?」 そう言うと、自分も認めたものだからなのか彼女はぐぬぬという表情で俺の顔を見てくる。 俺の顔でされてもなんも可愛くないが…そして、次のじゃんけんが始まる。 俺はグーで彼女がパーでまた負けてしまう。次に脱ぐ衣服に手をかける。 もちろんそれは制服のスカートである。 左にあるファスナーを開くと、スカートはそのままストンと足下に落ちる。 そこから現れるのは俺が朝適当に取り出したパンツである。 ブラジャーとセットのそれは爽やかでシンプルな水色であり、真面目で清楚な彼女を彷彿させる。 足元のスカートをよけ、そのまま飛んだり跳ねたりしてみる。 スカートは正直スースーして動きにくかったため、だいぶ身動きがとりやすくなった。 れいかの様子を気にすることなく、音頭をとりじゃんけんをする。 今度はれいかが負けたので彼女はシャツを脱ぎ始める。 自分の裸を見るのは新鮮で、思ったより筋肉がついていた。 れいかがぐちぐち言いながらもじゃんけんはテンポよく進み、俺は2連敗して残された下着を全て脱ぐことで纏う衣服は全てなくなった。 そのまま目線を下に下ろし、全身の肌色をその目に焼き付ける。 昨夜に1度見たものでもあるが、前回無断で裸になったのとはわけがちがい彼女との条件の元で成り立っている。 それも普段は真面目でクラスの模範となるれいかが野球拳に負けて裸になっている。 こんなありえないシュチュエーションが起こっていることへの興奮が隠せないのである。 調子に乗った俺は、胸についている2つの谷間を揉み始める。 「んっ、あっ、ぁぁ…はぁ、んんン…んッ」 感じやすいれいかだからか、その身体からはすぐに甘い声が漏れる。 そして同時に、股間が濡れる感覚が伝わる。 左手でそのまま胸を揉みつつも、右手で湿った部分を確認する。 触った手を開いてみるともうぐちょぐちょだ。 一方の俺の身体のれいかは、身体を貪る俺を注意することもなく俺のするがままの行為を見つめている。 いよいよ息子を制御できなくなったのか、ズボン越しに両手で抑えている。 しばらくして、れいかはようやく『ハッと』我に返り、諦めたようにこの時間の終わりを告げる。 「これでもう満足?」 「おう、俺はもう満足だよ。でも…」 俺は彼女の息子がまだ治っていないことを見逃さなかった。 そして、れいか自身もこの状況に興奮している。 そう確信した俺は正座して股間を抑えるれいかをそのまま押し倒す。 部室には『きゃあ』という男の声が響く。油断しきっていたのかそれとも息子の制御に意識を割いていたのか、ともかく女のれいかの力でも男のれいかを押し倒すのは容易であった。 「ちょっと…!何する気よ……」 「そりゃぁ…ナニするんだよ」 制服のズボンに手をかけ、勢いでチャックを開ける。 中から出てきたトランクスを強引に下げると、メキメキになった俺の息子は今朝ぶりに登場する。 しかし、そこにいたのは朝勃ちレベルのものではなくそれよりはるかに上位のモンスターであった。 「もう…こんなにおっきくしちゃって…自分の身体でイってしまうなんて。たけしくんのエッチ//」 「私の身体でそんな下品な真似しないでよ!というかゲームはこれで終わりのはずでしょ?」 口はよく動くれいかであったが、身体は無抵抗であった。 きっとそれは本能が求めているからであろう。 彼女は悪くないと言い聞かせてやるため、俺が楽にしてやろう。 「いや、ゲームはすでに終わってるよ。でもさ終わったら手伝ってやるとも言っただろ?」 「でも、それは…」 後に言葉を続けようとするれいかより先に言葉を切り出す。 「れいかもそろそろそこが限界だろ?それに男の身体でシてみるなんてこんな経験2度とできないぞ?」 その言葉を聞いたれいかがごくりと唾を飲み込む。それがゴングの合図だった。 俺ははじめにそのグロテスクな棒を豊満な胸の谷間に押し込んでやる。 パ○ズリを経験したことのない俺ではあったが、動画サイトの知識でそれとなく再現する。 「どうだ?自分の身体に身を委ねる感覚は」 擦り続けて暖かくなった肉棒からは熱いくらいの体温が伝わる。 れいかの方を見ると、彼女もうっとりとした声を放ち満足げな表情である。 しかし、息子はまだまだここからだと反応を留めている。 だから俺は胸にあったそいつを自らの口に移す。 いよいよ息子も初めての体験に我慢できなくなったのか、そこからは粘膜のある液体が反射される。 俺は口内にいっぱいになったそいつを飲み込む。 「うぇぇ…まっずぃ…」 男の身体では絶対に飲み込むことなどしなかった俺だが、初めて飲んだそれは生臭く美味しいとは限りなく離れていた。 そのまま満足した俺は床に倒れる。 「ふぅ…疲れた疲れた」 こんな満足げな体験をできたことで俺の身体には少々疲労が積もり始めていた。 れいかの身体であるからであろうか?その真意はよくわからない。 満足したので、起き上がろうとするが、うまく起き上がれない。 身体を起こそうとすると、肩の部分に力が入らず立ち上がれないのである。 その原因は非常に簡単だ。俺の目の前には、まだまだ満足しきっていない俺の姿をしたれいかがいた。 「まさか…これで終わりっていうんじゃないよね?」 「ひぃ......」 彼女は俺の身体に乗りあげ動きを封じる。 さきほどとは異なり、本気になった男の力には敵うはずもなく俺はなすすべもなかった。 彼女は未だに治まりきらないソレを構えると、両手で俺の股を強く開く。 「おい、やめろって…!さすがに俺もそこまではしようと思ってないって…!」 「へぇ…たけしくん逃げるんだ?あんなことしたんだから責任とってくれるよね?」 目の前で笑っている顔はかつてないほどに笑顔だった。 そして、構えた刀を鞘に仕舞うべくその動作は一瞬のうちにして行われた。 直前まで、必死に抵抗するもそれは叶うことはなかった。 「さすがに生はよくな…あ、あ….あっあっ……!」 俺の記憶はそこで途切れるのであった。 目を覚ました時には、全身裸の俺らはそのまま部室の床の上にいた。 もちろん身体は戻っているはずもなく、俺の胸には立派なお山がついていた。 時間を見ると、8時40分と遅刻確定で朝のHRもすでに終わっている時間であった。 あの後は、激しい攻防があったことだけは記憶しているが、それは一方的であったことしか覚えていない。 れいかの方を見ると、満足そうにまだうったりと眠っている。 彼女をゆすり起こし、俺は約束通りラジオを起動する。 「ふぁあ…おはよ…」 「ああ、おはよう。こんな朝から身体中疲れてるわでだるいけど、まあ約束は約束だからな」 「意外と素直なのね。まああんなにボコボコにされた後じゃ頭もあがらないか」 笑いながらのそのセリフは事実であることから返すことができない。 俺は黙々といつもの操作を始める。 左ダイヤルを0に回して、右ダイヤルも0に回す。 戻る操作はこれだけの単純なものだ。 そうすると、いつものように2本の針は逆回転して…. 「あれ、おかしい…」 2本の針を見るもそれらはダイヤルを0にしたにもかかわらず、回転方向はそのままである。 やはり今朝のあれはミスではなかったのだ。 ラジオからはあの奇妙な民謡音楽が流れるばかりであった。 しばらく時間をおいて、それらを確認するも変わらないままである。 焦った俺を見てれいかも察したのか、彼女もだんだん不安を隠せなくなる。 「私たち…本当に戻れるのよね?」 「と、当然だろ?昨日まではこれで戻れてたんだからきっと時間が経てば…」 しかし、いくら経っても俺たちの身体は戻ることはなかった。 9時になって、さすがにこのままというのもいけないので登校しようという案はれいかから告げられた。 動転する俺とは異なり、彼女はまだ冷静さでいようといたのだ。 きっと真面目な彼女の立場というのもそこにはあるのであろう。 とにかく俺らは急いで準備をして、教室に向かうのであった。 そこからは色々ありすぎてほとんど覚えていない。 俺がいっぱいいっぱいというのもあったし、そんな中でれいかとして振る舞わなければいけないからだ。 登校した時、教室では保健の授業が行われていた。 二人揃っての遅刻であったため、周りからはざわざわと声が響く。 保険の授業中ということもあり、俺の友人からは『おっ、とうとうヤったか〜?』などとガヤが飛ぶが、それに付き合う余裕はなかった。 ガヤを無視して席に座るが、当然のようにお互いの席を間違える。 ガヤは大きくなるが、教師の一言で鎮まりちゃんと身体の方の席に着席する。 授業が終わると、れいかの友人が心配そうに話しかけてくる。 『んでたけしくんとはどういう関係なの〜!!』とかでキャーキャー盛り上がっているが、適当に笑いながらごまかすのであった。 数学の時間には、普段のれいかなら解けそうな問題を当てられるが俺にはわからず先生が驚く。 たまたま当てられた俺の身体のれいかが見事正解し、クラスからはまた違った驚きから称賛の声が飛び交った。 放課後には先生から呼び出しをくらい風紀委員の朝の挨拶に行けていなかったことを注意される。 それも終わり教室に戻ってくると、疲れ切った俺の前には俺の姿のれいかが一人席で待っていた。 「おつかれさま。私の代わりに怒られることになっちゃってごめんね」 本当に申し訳そうにしているれいかに、むしろこっちが謝らなければと口を開く。 「いや、俺の方が悪いんだ。俺の遊びにれいかを巻き込んだせいで…」 そこまで言うとなぜだろう、不思議と目元には水滴が流れる。 それは口の方まで流れ、しょっぱい味が感じられた。 俺はれいかの身体で泣いていた。 そこにはいろんなものが詰まっていた。 普段れいかがこんな頑張っているということへの気づき、戻れないことへの申し訳なさ、自分と言う存在の情けなさ、そして何よりこんな素敵な彼女の人生を奪ったことへの責任感。 それらが一気に流れ込んできた。 重い涙は修まるまでなかなかに時間がかかるのであった。 『大丈夫?』そう言って彼女は俺の身体で強く抱きしめた。 胸の中でいっぱいの涙を流し、そんな彼女の優しさに俺はしばらく甘えてしまうのであった。 涙がようやく落ち着いた頃、俺は彼女にラジオを入手した経緯など黙っていたこと全て話した。 『なるほど…』とひとことだけ呟くと彼女は話を続ける。 「元に戻らないことに覚えはないの?」 彼女の質問内容については、授業中にも考えていた。 あまり思い当たる節はないが、セ◯クスしたら入れ替われないとかそういうのくらいか? と思ったがさすがにそんなことを今の状況で口に出せるはずもなかった。 「ごめん…思い当たる節がないんだ…」 「そう…とりあえずラジオをくれた人のところに行ってみましょう」 彼女の言葉で俺たちはラジオを譲ったマツダのところに向かうことにした。 その前にと部室に置いていたラジオを確認するも、反応は依然として変わらなかった。 俺の案内を元に帰り道から逸れたその場所に向かう。 商店街に着いた俺たちが目的地の方に向かっている矢先、以前にも通りかかった細い隙間より黒猫が横切る。 「もしかして、タイショーか!」 しかし、そいつは振り返ることもなくそのまま俺たちが目指そうとする方に駆けていく。 「たけしくん、あっちの方向なの?」 「あぁ、おそらく前に俺を連れていった猫と同じ奴だ」 俺たちは駆け足でやつを追いかける。 商店街のアーチを抜け、以前同様そこには空き地や空き家が広がっていた。 「くっそ、逃げられたか…」 慣れない身体で走ったためか追いつくことはできなかった。 しかも今まで履くことのなかったローファーで走っていたため、足の指に痛みを感じる。 堪えながらも前にあった店を探す。 しかし、いくら探しても洋風のお店もcatと書かれた看板も見つからなかった。 1度聞き込みをしてみようというれいかの提案により、商店街の店員や客に声をかけてみたが、そんなお店はしらないと言われる一方であった。 時間も遅くなりこれで最後にしようと、昔から占いの館を経営する老婆がいるとのことで聞くことにした。 「「すみません!」」 店のシャッターを下ろそうとしている老婆に俺たちは声をかける。 老婆は俺たちを見て何かを感じ取ったのか『入りな』とそのまま店へと案内される。 そのまま席に案内され、さっそく机に置かれた青い水晶玉で彼女は占い始める。 「別に俺らうらないにきたわけじゃ…」 「だまっちょれい!」 喝を入れられ、再び彼女は占い始める。 「お主らは混じりあってるように見える。それもお互いの器が逆になっている」 「どうしてわかるんですか!!」 俺の姿をしたれいかが反応する。 「いや、ワシにわかるのはそこまでじゃ」 れいかが一瞬見せた表情はその言葉で崩れる。 俺たちは老婆に入れ替わった原因を話すことにした。 それを聞いた彼女は、『ふむ…そうか』と言いながら話を始める。 「これはワシが祖母がこの店をやっていた頃の話じゃが、あそこにある空き地では魔法使いを名乗る商人が海外での輸入雑貨などを取り扱っていたらしい。まあいわくつきの品ばかりで店はそう長くはなかったらしい。彼は極度の猫好きだったそうで2匹の黒猫を飼っていたのだと。わしが知ってるのはこれだけじゃ。」 その話を聞くと、俺たちはお礼を言って店を後にした。 それからもう一度さきほどの空き地に向かってみる。 もちろん老婆の話を聞いたことで、店が出現しているなんてことはなかったが、中の方まで見てみることにした。 「これは・・・」 俺が空き地の奥に捨てられたガラクタのカタマリを見る。 そこには、わずかしか覚えていないがあの店にあった骨董品に似たものが多く廃棄されていた。 しかし、それらはあのとき見たものよりずいぶん劣化しているように思える。 一体あのとき俺は何を見ていたのだろうか 「たけしくん!」 れいかの声に振り返ると、彼女の指差す先にはほこりを被って読み取れない看板があった。 それを手で払うと、見覚えある文字が書かれている。 そして、文字の下には小さな文字が一部はかすれているがその意味の指すことを俺らは簡単に理解できた。 【アンティークショップ cat ◯品の返△は致×××××】 その看板を見つけ全てを悟った。 俺らは永遠にこの身体のままなのだと。 さっきまでよかったはずの天気はその面影がなかった。 一面の雲色からはポツポツと滴がこぼれ落ちる。 それらはやがてザーザーと激しくなり、俺たちはずぶ濡れになる。 俺はなんだか一連の流れがあの民謡音楽に似ていると思った。 れいかの方を見る。 今まで我慢していたのだろう。 彼女は雨と一緒に声をあげ涙を流していた。 今はれいかとなってしまった俺の胸に彼女は顔を埋めた。 これからは俺がれいかとしての人生を辿らなければならない。 俺はこんな情けない形で頑張ることを決意せざるを得なくなった。 ずぶ濡れになった2人を見つめる2つの影があった。 それらは片方は右目に傷が、もう片方は左目に片眼鏡を。 その小さな影はそのままどこかに消えていくのであった。 れいかとして、真面目に生きていくことを決意した俺だが2年生の2学期の途中で高校を中退した。 理由はこの大きくなったお腹であった。 あのときの出来事で俺は妊娠してしまった。 れいかの両親にもすごい怒られてしまったが、最終的に判断を下したのは俺の身体になったれいか本人であった。 学校でも隠しきれなくなり、俺と彼女で相談した結果こういった道を辿ることにした。 そしてもう1つ。最近目線を感じることが多かった。 1度だけ目が合ったそいつは、れいかとなった日に魅了してしまったやつだと一瞬で悟った。 誰もいない日に襲われかけたが、俺の身体のれいかがすぐさま助けに来たため俺は犯されることもなかった。 まあその後にこっぴどく怒られたが・・・ とにかくそいつは警察に捕まったそうなので安心だ。 それから1年経ったある日のことだ。 「よしよし、美味しいかい?」 俺は生まれた新しい命に母乳をあげる。 その様子を見たれいかも一緒になって子守をする。 「あれから色々あったよね」 れいかがそう呟く。 「うん、あんなことがあったけど今はちゃんと幸せって思えるよ」 あのラジオは俺たちに変化をもたらした。 それがよいものかよくないものかはわからないが、今はお互いに幸せなことは間違いない。 ラジオをしばらく触った後、戻れる気配がなかったのであの場所に置いておくことにした。 「ちょっとお手洗いに行ってくる」 そう言って俺は席を外す。 れいかの家に住んでいる俺は廊下を進んだところにあるお手洗いに行く。 そういえば、あのときもこうしてトイレに入ったなあなどと懐かしみつつ便器に座る。 そんなことを考えていると、俺は今更にして元に戻らなかった理由に気づいたのである。 あのときのダイヤル、俺の部屋とこのトイレの距離…いやもう考えるのはよそう。 俺は野暮だと思い、理由をれいかに教えることはなかった。 だって、今のこの関係が幸せなのだから。 ある日、1人の男がとある空き地にやってきた。 「なんだこれは…?」 彼はラジオを使いその効果を知る。 「女になれるラジオ…?あぁ…これはいい…」 「待っててねれいかちゃん…今俺が迎えに行くから」 |