ボクとお姉さんの秘密の時間 作: 井澄ミスト 「じゃあなー!」 仲丸侑真(なかまる ゆうま)と一緒に下校していたクラスメイトはそう言うと、侑真の家とは違う方向に歩いていった。 「はあ……」 侑真は短髪の頭を掻きながらため息をついた。 5年生になった彼は仲の良かった友人と違うクラスになってしまい、クラスで話すような友人はいなかった。クラス替えが終わってすでに何週間も経っているのに、一緒に下校したクラスメイトともまだちゃんと馴染めていない。 (ボクは一人でも大丈夫だし……) 教室にいるときには、女子の誰々が好きだとか、女子と仲良くしてるなんて、というクラスメイトたちの声が聞こえてくるが、そんな会話にも入れずにいる。 侑真は残りの帰り道で考え事をしながら歩いていた。 (今日は宿題が少ないから、終わったら何しようかな) 侑真の両親は仕事から帰ってくるのが夜遅いため、やることをやっても時間がある。 (今度のテストで満点取ればお父さんとお母さんも褒めてくれるかな、なんて) 両親の喜ぶ顔を想像しながら、家の前までたどり着くと、侑真の家の近くで長身の女性が侑真を見つめて立っていた。 (なんだろう?) 疑問に思っていると、女性のほうから近づいてきて声を掛けてきた。 「こんにちは~、侑真くん」 「……こんにちは」 物腰が柔らかいその女性は、長い黒髪をふわりとなびかせ、大きな胸を揺らして屈みながら、侑真の名前を呼んで挨拶した。 侑真は女性が近くに住んでいる優しそうなお姉さんだということは知っていて、何度か挨拶されたこともあったが、名前までは知らなかった。名前を呼ばれた侑真は少しドキッとした。 「あ、ごめんね。怪しくないからね~」 「……」 自分で自分のことを怪しくないと言う人は怪しいだろう、と侑真は思った。 「ねえ、侑真くん。突然なんだけど、これから私の家に来れない?」 「……あやしい人についていっちゃいけないと思う」 「だから怪しくないってば~。そういうのは女の子が知らないおじさんについていっちゃいけないってことだよ。それに私、知らない人じゃないでしょ?」 「でも……」 いいのかな、と不安に思ったが、女性は引き下がらなかった。 「どうしても侑真くんにお願いしたいことがあって~。侑真くんが手伝ってくれると嬉しいし、お姉さんのこと助けると思って。ね?」 両手を合わせて懇願する女性に侑真は根負けした。 「……うん、わかったよ。ちょっとだけだよ」 「ありがと~。それじゃ早速、こっちだよ~」 女性は侑真を手招きして呼んだ。侑真は女性のあとについていった。 「おじゃまします」 侑真が女性の家に入ると、ふわっと匂いが香ってきた。 (とってもいい匂いがする。ボクの家とは違う、お姉さんの匂いだ) 侑真は家を見回すついでにくんくんと匂いを嗅いでいた。 「どうしたの? 入っていいよ~」 「あ、うん」 匂いを気にしていたことを女性に気づかれると恥ずかしいと感じた侑真は、さっと靴を脱いで女性の家に上がった。 「ちゃんと靴揃えてるのえらいね~」 「そんなことないよ」 靴を揃えただけで褒められるとは思っていなかった侑真だったが、それでも嬉しいと感じた。 案内された部屋で侑真がくつろいでいると、飲み物を持って女性がやってきた。 「侑真くん、ジュースでいい?」 「うん」 侑真はジュースを、女性はブラックのコーヒーを飲んだ。 (コーヒーに砂糖もミルクも入れないなんて。大人だ) 甘くしてもコーヒーを飲めない侑真は女性がコーヒーを飲む様子をしげしげと見つめた。 「? どうしたの?」 「あ、ううん。お姉さんってひとりで住んでるの?」 「そうだよ~」 「じゃあこの広い部屋もひとりじめなんだ」 侑真は女性に対して、さみしくないのかな、と思った。 「そういえば、まだちゃんと名乗ってなかったね。名前は秋永雪菜(あきなが ゆきな)。大学生だよ」 「あきながお姉さん、大学生って何歳?」 「20歳だよ。あ、私はいいけど女性に年齢は聞いちゃダメだよ~。それと雪菜でいいからね」 「うん、わかった。ゆきなお姉さん。大人だね」 侑真は雪菜が自分より9歳も年上であることにも、大人だな、と感じていた。 「ふふ、ありがと~。あとごめんね、侑真くん。家にゲームが無くて」 「別にゲームをやりにきたんじゃないよ。ゆきなお姉さんを助けたくて来たんだから」 「わ~、カッコいい」 「ふふん」 「それにかわいい」 「かわいくないよ!」 「私、背がでかいだけの女だから、侑真くんぐらいの大きさだとかわいいな~って思うんだよね」 雪菜の身長が174cmであるのに対して、侑真の身長は138cmであるため、2人の身長差は30cm以上ある。 「だからかわいくないってば! それより、お姉さんのお願いって何?」 「そうだったね。それじゃ侑真くん、こっち向いて目をつぶって」 「え、なんで?」 「いいからいいから~」 侑真はよくわかっていないが、言われるがまま目をつぶった。少しだけ薄目を開けて。 (ゆきなお姉さんの顔が、近い。あ、いい匂い) 雪菜は侑真に顔を近づけていた。 「お、お姉さん……」 「あ~、目開けてたでしょ。ちゃんとつぶってね」 雪菜に優しく怒られた侑真は、今度はしっかりと目をつぶった。すると侑真の頭の上に雪菜の右手がそっと置かれた。 (なんだろう、何をするんだろう。あれ? なんだか急に眠たく……) ****************************** ――そう思ってたらすぐに眠くなくなってた。気のせいだったのかな。でも、なんか変だ。さっきまでゆきなお姉さんの手が頭に置かれてたのに今は無くて、ボクが手を置いてる。どこに置いてるんだろう。 それに髪の毛が変だ。耳に髪の毛がかかってる。首に髪の毛が触っていてくすぐったい。肩に髪の毛が乗ってる。どうしてだろう。 それとずっと気になってたけど、胸がすごく変だ。なんでこんなに重いんだろう。 「目開けていいよ~」 不思議だなって思ってたら前から男子の声が聞こえてきた。ゆっくりと目を開けるとそこにはボクがいた。ボクがボクの頭に手を乗せてる。……って、ボク!? 「え、なんで……、えっ!?」 びっくりして声を出したらもっとびっくりした。だってボクの声が女の人みたいな声だったから。 「どう? 侑真くん、私の身体は?」 目の前のボクがボクに話しかけてくる。でもボクの格好をしてるけどボクじゃないみたいだ。それにボクがボクに向かって「侑真くん」って言っててなんかおかしい。 「ねえ、君、誰?」 目の前のボクに話しかけるとにっこりと笑った。 「私だよ。雪菜」 「ゆきなお姉さん……?」 目の前のボクはゆきなお姉さんだって言う。じゃあボクは……、どうなってるの??? 「不思議そうな顔してるね。そこに鏡があるから見てみなよ」 ゆきなお姉さん(?)が指を差した先を見ると鏡があった。身体が変だし、声も変だし、お姉さんの言うとおり鏡を見てみよう。 「よいしょ……、ってうわあ!?」 普通に立ち上がろうとしたら身体がグラッとして尻もちをついた。 「大丈夫?」 「いてて……」 やっぱり身体が変だ。手がボクの手じゃないし、脚が長いし、いつの間にか胸がふくらんでる。それに服がひらひらしてて、スカートをはいてる? なんだかボクの身体じゃないみたいだ。 「侑真くん、ゆっくり立ち上がってみて」 もう一度、今度はゆっくりと立ってみた。それでも身体が前とか後ろに倒れそうだったけど、なんとか立ち上がった。 「ふぅ……、って高っ!?」 立ち上がれたって思ったら、背が高くなったみたいだ。ボクがボクを、ゆきなお姉さんを見下ろしてる。目の前にいるボクが小さい。それともボクが大きくなった? 「やっぱりでかいよね~、私。こんなに違うんだね~」 ゆきなお姉さんがそんなことを言ってて、ボクはまだよくわかってないけど、まずは鏡を見ようと思った。ゆっくりと、ふらふらとしながら鏡に向かって歩いた。 「……えっ。ゆきなお姉さん……?」 鏡に映っていたのはゆきなお姉さんだった。ボクが鏡の前に立ってるのに、鏡にはゆきなお姉さんが映ってる。なんで? 「ほら、私と侑真くんが入れ替わってるでしょ?」 入れ替わってる。確かに。ボクがゆきなお姉さんで、ゆきなお姉さんがボクで。 「何が起きてるの……?」 「そんなことよりさ、もっとじっくり鏡で自分の姿を見てみてよ~」 ボクになったゆきなお姉さんに聞いてみたけど、また鏡を見てって言われた。 鏡ではゆきなお姉さんが不思議そうな顔でこっちを見てる。ゆきなお姉さんはずっと優しい顔でボクを見てたけど、今は違う。なんだろう、どうしたんだろうって顔をしてる。 ボクはかわいいとかきれいとか、そういうのはよくわかってないけど、ゆきなお姉さんはきれい、だと思う。ボクが顔を変えようとするとゆきなお姉さんの顔も変わる。ボクが驚いたらゆきなお姉さんも驚く。ボクが笑ったらゆきなお姉さんも笑顔になる。変な顔をすることもできると思うけど、あんまりそんなゆきなお姉さんは見たくない、って思った。 今はゆきなお姉さんになってるから、着てる服もゆきなお姉さんの服だ。ひらひらした服に長いスカート。ボクが女の人の服を着てるなんて。それにゆきなお姉さんの服を着てるんだというだけでも恥ずかしい。 それから、少し動いてみると服がひらひらするのと一緒に、ずっと気になってた髪の毛もふわふわと動く。ボクの短い髪の毛とは全然違って、ゆきなお姉さんの髪の毛は長い。目を閉じてたときに感じたとおり、耳にもかかってるし、肩にも乗ってる。ボクと感触が違ってて当たり前だ。髪の毛を触ってみるとさらさらしてる。ボクの硬い髪の毛とは違う。 そして、これは……。ゆきなお姉さんには悪いけど……、重い。女の人って、お、おっぱい、重くて大変じゃないのかな。それに足元が見えない。下から持ってみるとずっしりと重みがある。 「うーん……」 「あれ~? 侑真くん、私のおっぱいに興味があるのかな~?」 「え、あ、これは、ち、違うよ! ちょっと重いなあって」 「ひど~い! でもそうだね。おっぱいだけでたぶん1キロ以上あるからね~」 ゆきなお姉さんがいじわるなことを言ってきた。 「ボクだってやっちゃいけないことぐらいわかるよ。もう5年生なんだから」 「そっか~。ねえ、侑真くんってさ、精通まだだよね?」 「せいつう……?」 「ううん、なんでもない」 せいつうって精通のことかな。前に学校で少し習ったけどよくわかってない。なんでそんな質問をされたかもわからないけど。 そのあともしばらく鏡でゆきなお姉さんを観察してたけど、急に身体がぶるっと震えた。 「あの、ゆきなお姉さん……」 「なあに?」 「え、えっと、その……、ト、トイレに行きたい……です」 そう、おしっこに行きたくなった。ゆきなお姉さんの身体でおしっこするなんてって思ったけど、我慢できそうにない。 「トイレに行きたいんだね! こっちだよ。案内するね」 ゆきなお姉さんはボクの声で嬉しそうに言った。なんでそんなに嬉しそうなんだろう。 ゆきなお姉さんについていったけど、お姉さんの身体に慣れてないのでまだうまく歩けない。おしっこを我慢してるから余計にふらふらする。 「んっ、んうっ、お、お姉さん……」 「頑張って、侑真くん!」 ゆきなお姉さんに励まされ、なんとかトイレにたどり着いたので、ドアを開けて便器の前に立った。もうすぐ出ちゃいそう。で、えっと、どうすれば。スカートとパンツを脱いで……、どうやって脱ぐのかな。こう、こんな感じで……、うん、なんとか脱げた。それで、えっと。 「あっ、ちん○んが無いっ……!」 おっぱいが邪魔でちゃんと見えないんだけど、ちん○んをつかもうとしたら何もつかめなかった。そうだよ、今はゆきなお姉さんの身体だから、ちん○んが無いんだった。それと触ってみたらちん○んは無いけど毛が生えてる。……って、今はそれどころじゃない。もう出ちゃう。どうしよう、どうやってすれば……。 「侑真くん、落ち着いて、ね」 「お姉さん、もうボクおしっこ出ちゃ……あっあっ」 チョロロロ――。 ボクは立ったまま、ゆきなお姉さんの身体でおしっこをしちゃった。うまくおしっこが出なくて、前には飛ばないで、トイレの床に出しちゃった。これじゃあゆきなお姉さんがおもらししちゃったみたいだ。 おしっこがなかなか止まらなくて、やっと止まったって思ったら力が抜けて、おしっこの上に座っちゃった。気持ち悪いし、おしっこが臭うけど、動けない。 「侑真くん、大丈夫だから。落ち着いて」 「ごめんね、ゆきなお姉さん……。ボク、お姉さんの身体で、ちゃんと、トイレ、できなかったよ……。ぐすっ」 「大丈夫だから、ね。よしよ~し。ふふっ」 ボクになったゆきなお姉さんが、ゆきなお姉さんになったボクの頭をなでてなぐさめてくれてる。とってもおかしなことだけど、こんなことになっても怒らないなんて、お姉さんはすごく優しい。 「すんっ……。本当にごめんね、お姉さん……」 「……そそるわぁ~。じゅるっ」 ゆきなお姉さんがボクの頭をなでながらなんか言ってたけど、意味はわからなかった。 ゆきなお姉さんはトイレットペーパーとぞうきんでトイレの床をふいた。それからまたトイレットペーパーを取って、ボクをふき始めた。 「お姉さん、ボク自分でやるよ……」 「じっとしてて大丈夫だから、私に任せて」 「お姉さ、んんぅ!?」 ゆきなお姉さんがボクをふくと、ビリッと変な感じがした。くすぐったいっていうか、なんだろう、この感じ……。 「ほら、じっとしてて」 「お姉さん、なんだかムズムズするよ……」 「んふふふっ。もうちょっとだけ我慢してね~」 ゆきなお姉さんがボクをふくたびにムズムズする。変な声が出ちゃいそうだけど我慢してる。 「……っ。ふっ……、んんぅ……」 なんだろうこの気持ち。おもらしして気持ち悪かったのにいつの間にか気持ち悪さが無くなってる。 「ここはね、おま○こって言うんだよ~」 「お、おま○こ……」 ボクの耳元でゆきなお姉さんがささやいた。ちん○んじゃなくておま○こ……。 「はい、終わり~。侑真くん立てる?」 「はぁはぁ、う、うん……」 ゆきなお姉さんがボクをふき終わったので、ボクは壁に手をつきながらゆっくり立ち上がった。 「それじゃ侑真くん。お風呂に入ろっか」 「お風呂?」 「そ、お風呂。身体をきれいにしないとね」 「でも今、ボク、ゆきなお姉さんの身体なんだけど……」 なんでボクとゆきなお姉さんが入れ替わってるのかわからないけど、元に戻ってからのほうがいいんじゃないのかな。 「私の身体汚れたままでいいの? ひど~い」 「違うよ! そんなことないけど、でも、恥ずかしいよ……。お姉さんは恥ずかしくないの?」 「侑真くんなら全然恥ずかしくないよ。ほら、行こ?」 「うん……」 ゆきなお姉さんはボクのことなんて気にせず、お風呂に誘ってきた。お姉さんがいいならいいんだけど、でも本当にいいのかな。 ボクたちはお風呂場の前までやってきた。脱いだスカートとパンツはゆきなお姉さんが持ってきて洗濯機に入れた。 「う~ん、侑真くんの身体だと大変だね。洗濯機回すのは後にしよっと」 ふぅと息を吐くゆきなお姉さん。 ボクはというと、スカートとパンツは脱いだままなので、今は何もはいてない。それだけでも恥ずかしいのに、お風呂に入るから全部脱がないといけない。 ゆきなお姉さんのほうを見ると、もう服を全部脱いでた。 「お姉さん、脱ぐの早いよっ!? 恥ずかしいからあんまり見ないでよ」 「ほらっ、侑真くんも早く脱いで~」 恥ずかしいけど、ゆきなお姉さんにせかされて、お姉さんが着てた服を脱いでいった。頑張って脱いでいったんだけど、これは……、どうすれば。 「お姉さん、あの……」 「あ、ブラの外し方わからないよね。背中をこっちに向けてしゃがんで~」 「うん」 最後にブラジャーが残って困ってたら、ゆきなお姉さんが助けてくれた。背中で何かを外してて、それが外れるとおっぱいが急に重くなった。 「は~い、侑真くん。ばんざ~い」 ゆきなお姉さんに言われて両手を挙げた。お姉さんにブラジャーを外してもらうと、おっぱいがもっと重く感じるようになった。立ち上がると下から引っ張られてるように感じる。 「お、お姉さん……。やっぱり恥ずかしいよ……」 「さ、まずはシャワーを浴びようね~」 ゆきなお姉さんに背中を押されて歩くとおっぱいが揺れる。一歩一歩、ぷるんぷるんと。 お風呂場に入ると、お風呂はもうわいてた。いつわかしたんだろう、って思っているとお風呂場の鏡が目に入った。鏡を見ると裸のゆきなお姉さんが映った。 「……っ!?」 鏡に映るゆきなお姉さんが驚いてる。赤くなってる。でもそうだ、このゆきなお姉さんはボクなんだ。ボクがゆきなお姉さんの顔で、身体で、裸になって、恥ずかしがりながら鏡を見てる。こんなのおかしくなっちゃう。 「ほら、入口に立ってないで、中まで入って~」 鏡を見て動けないでいると、後ろからまた背中を押された。 中まで入って、また鏡を見た。鏡に映ってるのはやっぱりゆきなお姉さんだった。赤くなっているゆきなお姉さんの姿を見て、身体が熱くなってきた。さっきも部屋で鏡を見たけど、服を着てたさっきと違って、何も着てない今の姿は見ちゃいけないって思って目をそらした。 「ゆきなお姉さん、ボク……」 「侑真くんは座ってていいよ。全部私が洗ってあげるからね~」 ゆきなお姉さんがお風呂のイスを鏡の前に置いた。それだとボク、鏡を見ないといけないんだけど……。でもそんなこと、お姉さんに言えないし、仕方なくそこに座った。 最初は鏡を見ないように下を向いたんだけど、そしたら今度はおっぱいが目に入ってきちゃった。これも恥ずかしいしどうすれば。 「えっと……」 「は~い、それじゃ身体を洗っていきま~す」 ちらっとゆきなお姉さんを見ると、お姉さんはスポンジを手に取って、ボディーソープで泡立てた。そしてそのスポンジをボクに当てた。 「ふぁん!?」 ボクの全身に刺激が走った。身体がビクビクってしてる。 「我慢してね~」 ゆきなお姉さんの当てるスポンジが、ボクの背中をただ洗ってるだけなのに、動くたびにくすぐったい。 「な、なんで背中洗ってるの……? 汚したのここなのに」 「ついでに全身洗っておこうかな~って。自分じゃ見えないところは普段わからないし。あと侑真くん、『ここ』ってどこかなぁ~?」 「ここはここだよ……」 「ちゃんと言ってくれないとわからないなぁ~」 指を差して言ってるのに、ゆきなお姉さんはこっちを見ないでわざとわからないフリをしてた。やっぱり時々いじわるだ。 「……お、おま○こ、だよ……」 「は~い、よく言えました~。えらいえらい」 そうやって褒めると、またスポンジでボクを洗い始めた。背中を洗って、肩を洗って、首を洗って。目を閉じてくすぐったいのに耐えようとしたけど、何も見えないと余計に気になる。 後ろ側を洗い終えたみたいで、目を開けると、ゆきなお姉さんはボクの前に回りこんできた。ボクがボクの裸を見てもなんとも思わないけど、お姉さんにボクの裸を見られてるって思うと恥ずかしい。 「お姉さん、そこは、ひゃん!?」 ゆきなお姉さんは、今度はおっぱいを洗い始めた。背中とかをこすられていたときよりもっとくすぐったい。 「もう5年生だからちゃんと我慢できるよね~?」 「んっ、うんっ……。ひゃあん!?」 我慢してるのに変な声が出ちゃう。我慢できない。だってくすぐったいんだから。 「ねえ、侑真くん。気持ちいい?」 「えっ」 「気持ちいいって感じたら、男の子でも我慢しないで気持ちいいって言っていいんだよ~」 「でも……」 気持ちいいかって聞かれたら……、うん。でも、それを言ったらなんだかダメな気がする。 「ほら、気持ちいい、でしょ?」 「あんっ!? んんっ……!」 「ねえ、鏡見てみなよ」 「か、鏡……?」 鏡は見ないようにしてた。だって恥ずかしいから。でもゆきなお姉さんに言われて鏡を見た。見てしまった。 そこに映っていたのは真っ赤になって気持ちよさそうな顔をしたゆきなお姉さん、だった。ボクだけどボクじゃない。ボクじゃないけどボク。 「ねえ、どう?」 「うん……、気持ちいい、よ。お姉さん」 言っちゃった。もう後戻りできない。そう思ったけど、でもこんなのもう我慢できない。 「やっと言ってくれたね~」 「気持ちいい、気持ちいいよぉ……! ゆきなお姉さん、もっとボクを気持ちよくしてほしい……!」 「んんんっ! そうそうそう! その表情、いいわぁ~」 ゆきなお姉さんが変な笑い方をして、なんか変なことを言ってるけど、もうボクは耐えられない。 「お願い、ゆきなお姉さん……! ボク、もっと気持ちよくなりたい!」 「ふふふふふ、じゃあも~っと洗っていくからね」 ゆきなお姉さんはまたボクのおっぱいにスポンジを当てた。 「あんっ」 お姉さんが下から上へとおっぱいをなでた。 「どう? おっぱい気持ちいいでしょ」 「うんっ、おっぱい、気持ちいい……!」 「それから特にここが弱くて~」 「ひゃん!?」 今度は直接手でおっぱいを触ってきた。 「そして、ここがぁ~」 「きゃっ!?」 お姉さんがおっぱいの先っぽに軽く触れただけで、女の子みたいに叫んじゃった。まるでボク、心まで女の子になったみたいだ。 「ふふふっ、侑真くんかわいい~」 「ボク、かわいい……?」 かわいいと言われてもイヤだと感じなくなった。鏡に映るゆきなお姉さんはとってもきれいだった。大人の女の人って感じ。 そしてスポンジはおっぱいから下のほうに。そういえば、そもそもボクが汚しちゃったところを洗うんだった。ちん○んが無くて、毛が生えてる、おま○こっていう名前のところ。 「最後にここ、お・ま・○・こ、洗ってあげるね~」 「うん、お願いひああっ!?」 スポンジがボクのおま○こに少し触れただけで変な声が出ちゃった。えっ、何!? 「いい声だね~、侑真くん」 「でも、この声はっ、ゆきなお姉さんの、声でっ」 「でもそんなえっちな声を出してるのは侑真くんなんだよ~?」 ゆきなお姉さんにえっちって言われたけど、なんだか嬉しかった。ボクがえっちな声を出してるのに。そう思ってる間にもお姉さんはボクの身体を洗っていく。 「あんっ、あん、ひっ、くっ、ああっ、きゃん!?」 いくらでも声が出ちゃう。上げても上げ足りないぐらい、ゆきなお姉さんが身体を洗うたびに気持ちよかった。 「それから~、こ・こ♪」 「――っ!?」 何が起きたのかわからなかった。ゆきなお姉さんが指を軽く弾いたらボクに雷が落ちたような。 「ふふっ、ここと、このナカは、また今度ね♡」 はぁはぁ、と息が苦しくて、口からはよだれが流れた。またゆきなお姉さんを汚しちゃうって思って、急いで唇をぬぐった。お姉さんの言う「ここ」と「このなか」が何を指してるのかわからないけど、これ以上は本当にボクがおかしくなっちゃいそう。 そのままゆきなお姉さんは足の先まで洗い終えると、シャワーで泡を洗い流して、ボクの身体をきれいにした。シャワーも気持ちよかったけど、さっきまでの気持ちよさでもうよくわからなかった。 シャワーが終わるとお風呂にも入った。ボクの身体になったゆきなお姉さんと一緒に。 ゆきなお姉さんの身体だから手が長いとか、脚が長いとか、おっぱいがお湯に浮かんでるとか、触るとやわらかいとか、いろんな発見と驚きがあったけど、それでもシャワーまでの出来事が忘れられなくて、ほとんどボーッとしていた。 身体が温まってお風呂から出て、ゆきなお姉さんが準備してくれたバスタオルで身体をふいてもらったけど、それも大変だった。特におっぱいをふいてもらってるときにまたおかしくなりそうだったので、何も考えないようにした。あと、……おま○こも。 それから服の着方がわからなかったので、ゆきなお姉さんに教えてもらった。ブラジャーの付け方を覚えることがあるなんて思わなかった。新しく出してもらったパンツとスカートをはいて、ちゃんと着られたか自信がなかったけど、お姉さんは「いいよ~」って言ってくれた。 お風呂を出て、ゆきなお姉さんと一緒に部屋に戻ってきた。さっきは身体ばっかり気にしてたからいまさらだけど、お姉さんの匂いがする。するんだけど、ボクの身体で嗅いだ匂いとは違うように感じる。いい匂いのはずなのに、お姉さんの身体だとなんだか少し匂いが弱く感じる。 「どうしたの? 何か臭う?」 「えっ!? ううん、なんでもないよ!」 くんくんと匂いを嗅いでたらお姉さんに変に思われたのでとっさになんでもないとごまかした。 「それじゃ侑真くん。元に戻ろっか」 「えっ、戻れるの?」 「あれれ~? 戻りたくないのかな~?」 「ち、違うよ! 戻りたいよ!」 「そっか、お姉さんの身体そんなに嫌だったんだ……」 「違う! そうじゃなくて! 元に戻れるって思ってなくて」 「な~んちゃって。わかってるよ~」 やっぱりゆきなお姉さんはいじわるだ。 「ひどいよ……」 「ごめんごめん。元に戻るためにはね~、侑真くん。またしゃがんで目をつぶって」 「うん」 ボクはしゃがんでボクの身体になったゆきなお姉さんと同じ目線になった。お姉さんはボクの頭に手を置いた。ボクと入れ替わったときのように。目をつぶるとまた急に眠くなってきた――。 ****************************** 侑真が目を開けると、目の前に雪菜がいることに気づいた。 「お姉さんがいる、ということは」 声も元に戻っていることがわかった侑真はすぐに鏡に向かった。そこに映っていたのは侑真の姿だった。 「これで元通りだね」 「元に、戻った」 侑真は元に戻れてホッとした。だがそれと同時に何か物足りなさを感じていた。先ほどまで雪菜の身体だったことを思い出した侑真は、身体が熱いと感じた。 「ん? どうしたのかな~?」 雪菜の顔を見た侑真は、自分が雪菜だったときとはやっぱり違うと感じていた。 「な、なんでもないよ! そんなことより、ゆきなお姉さん。なんでこんなことできるの?」 「それはね~、ヒ・ミ・ツ♪ もちろん誰にも言っちゃダメだよ~」 「えー」 雪菜は不思議な力のことは何も説明しないまま、しゃがみ込んで侑真の耳元に手を添えてささやいた。 「侑真くん、男の子の身体より女の身体のことを先に知っちゃったねぇ~。一気に大人になっちゃったね♡」 「……っ!」 侑真は成長期もこれからの少年だというのに、それを何段も飛ばして、いや、知るはずのないことまで知ってしまった。何も知らなかった侑真にはもう戻れない。 「侑真くん、まだ時間あるかな?」 「えっ、それって……」 「ちゃんと元に戻れるってわかってもらうために戻したけど、私も侑真くんの身体を楽しみたいし~」 そう言った雪菜は、続けてまた侑真の耳元でささやいた。 「これから私がた~っぷり女の身体のこと、教えてあげるからね♡」 侑真はゴクリとつばを飲み込んで、改めて雪菜を見た。 (ボクがまた、ゆきなお姉さんになれる……?) 心臓の音がドキドキと大きく聞こえてくる。 (ボクはもうゆきなお姉さんから離れられないかもしれない……) 雪菜の優しくて、でも何かを秘めている表情を見た侑真は、これから先のことに興奮が抑えられなかった。 |