入れ替わりマッチングアプリ『イレカリ』 試験編
  作: 憑五郎


今、密かに人気を集めるアプリがあった。入れ替わりマッチングアプリ『イレカリ』だ。その名の通り、登録ユーザー同士で同意すれば身体を入れ替えることができる。主婦の暇潰しから学生の小遣い稼ぎまで、様々な用途で使われていた。

このイレカリが人気を集めた背景の一つに、入れ替わり中でもどちらかが解除ボタンを押せば、ボタン1つで入れ替わりを解除できることがある。これにより男女間の入れ替わりでありがちな、女性になった男性が暴走して好き勝手するリスクが大幅に軽減され、女性でも安心して使える点が大きい。また事前にタイマーをセットし、○○分後に自動的に入れ替わりを解除するといったこともできる。


使うにはまずユーザー登録する必要がある。これには運転免許証などの身分証明書が必須だ。虚偽の情報で登録しても、入れ替わった直後にすぐにバレて入れ替わりを解除され、運営に通報されて垢BANを食らうだけなので無意味だ。名前、年齢、性別なども入力する。これらは基本情報と呼ばれ、入れ替わりを行いたいユーザー二人のみに公開される。また、入れ替わってる最中に相手になりすますためにも必要な情報でもある。

ユーザー登録が終われば、あとは自分ができる案件を探すか、自分で募集を掛けるかの二択だ。例えば「自分の代わりに試験を受けてください!(報酬:3000円)」「私の代わりにデートをしてくれる女性募集!(報酬:5000円 成功報酬:10000円)」など様々な案件が転がっている。これらは代行案件と言われ、初心者が数をこなして評価を稼ぐには持ってこいだ。評価とは、案件が終わるとお互いに評価を付け合うことだ。評価が悪いユーザーや悪質なユーザーはすぐに垢BANされる。評価や実績により、ユーザーはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの各ランクに振り分けられる。いわゆる高額案件やエロ案件は良い評価が50以上、ゴールドランク以上にならないと受けたり募集したりすることができない。


おっと、自己紹介が遅れたが、僕の名前は入枝 昌行。35歳、独身。エロ目的でイレカリを始めたが、ランクシステムを知らず、愕然とした。とにかく良い評価を稼ぐためにコツコツと案件をこなし、ついに良い評価数が49に達した!あと1件成功させれば、ゴールドランクに昇格し、念願のエロ案件が可能になる!!

今までこなしてきた案件はすべて募集に対して受けたものだ。そもそもこちらから募集掛けても、金払ってまで35歳のおっさんと入れ替わりたい人間なんてほとんどいないだろう。自分の身体に価値が無いならば、自分の頭で価値を作り出すしかない。というわけで、僕は書店に行き、高校生向けの参考書を買いまくり、試験代行の案件をこなしまくった。正直、仕事終わってから高校の勉強をやるのはしんどかったが、それもあと1件で終わりだ!

僕は早速、イレカリの募集一欄をチェックした。お、あった。

『女子高生です。今度数学で赤点を取ったらお小遣い減らされるので、私の代わりにお願いします(>_<) 報酬:500円』

いや…報酬低過ぎないか?案の定、募集開始から2時間経ってるのに誰も受けてない。普通はJK案件なら報酬低くても受け手がつくのに…。ま、いっか。僕が欲しいのはお金でなく、評価だから。とりあえずDMを送ってみる。

『当方、35歳男ですが、よろしいですか?』

既読になったがすぐに返事は来ない。おそらくこれまでの僕の評価一覧を見て、僕が信頼おける人物かどうか品定めしているのだろう。だが、実績は心配ない。今までほとんど試験代行を成功させてきたからな。お、返事が来た。

『ありがとうございます、よろしくお願いします(>_<)』

と同時に運営から相手の基本情報が送られてきた。相手が承諾ボタンを押したということだ。

『名前:河野 娃嶺(かわの あいね) 年齢:17歳 性別:女』

あいねちゃんか。難しい漢字だなぁ。テスト用紙に書くから覚えないといけない。17歳ということは高校2年生ぐらいか。それからDMであいねちゃんと詳細を詰めた。



入れ替わり日当日。僕はネットカフェの個人ブースにいた。試験開始は10時10分。あと5分だ。僕はスマホでイレカリのアプリを開いて、時計をじっと眺めていた。そういや、今気づいたが、この案件タイマーがセットされてる。時間は50分。おそらく試験開始から終了までの時間だろう。50分経てば自動で入れ替わりが解除されるということだ。おそらく変なことされないように念のため保険を掛けたんだろう。まぁ、問題ない。試験開始2分前になり、あいねちゃんからDMが届いた。

『それではよろしくお願いします!』

心臓の鼓動が高まる。やはりいくら数をこなしてるとはいえ、赤の他人になるというのは緊張する。あいねちゃんには僕になってる間、ネットカフェで自由に過ごしていいと伝えてある。最後の確認、あいねちゃんの名前の漢字を頭に叩き込む。そしてついにその時が来た。アプリの画面の中央にある入れ替わりボタンが白から赤の点滅に変わる。僕はすぐにそれを押した。


グイッ!と頭をつかまれ、前に引き寄せられるような感覚がし、意識が飛んだ。気が付くと僕は教室にいた。あれ?教室にいる生徒は全員女子だ。もしかして女子校…?これはうれしい誤算だ。みんな白いシャツに赤い紐リボン、それにチェック柄の青いプリーツスカートを履いている。…って僕もか。自分の身体を見下ろすと、周りの女子達と同じ制服を着ていた。自分からいい匂いがする。机の上にはテスト用紙がある。

「始め!」

教壇にいる僕より若い男性教師の号令で試験が始まった。カリカリカリ…と鉛筆が動く音が一斉に鳴る。僕も早速テスト用紙の名前欄に「河野 娃嶺」と書いた。鉛筆を動かすたびに胸元の紐リボンが揺れる。それにブラジャーをしている感触。スカートと椅子が触れて、その上に自分のショーツに包まれたおしりの感触もする。後ろ髪が重い。おそらくポニーテールか何かだろう。自分の顔が見れないのが残念だが、今はそれどころじゃない。

早速、僕は問題を解き始めた。何問かわからない問題はあったが、順調に終わった。最低でも70点は固いだろう。間違いなく赤点は免れるはず。見直しをし、時計を見ると、あと10分あった。自信の無い問題をもう一回解いてみてもいいが…あまり点数が高くなり過ぎるとかえって怪しまれるだろう。そ~っと顔を上げ、首を振らずに周りを見渡す。

教壇にいる男性教師は何か書き物をしているみたいで、あまり教室を見ていない。他の生徒達はまだ一生懸命問題を解いてる子もいれば、終わったのか諦めてるのか動きが止まってる子もいる。みんなかわいいなぁ。ふと、前の席の生徒の背中からブラの線がうっすら見えてドキッ!とした。もちろん心臓の鼓動が高まっただけで、物理的に何かが勃ったわけじゃない。


それにしても、本当は僕は男なのに女子校にいるなんて…。問題を解き終わり、周りの雰囲気にも慣れて冷静になると、男の欲望がこうべを垂れてきた。自分の胸を見下ろす。当然のようにシャツを盛り上げている二つの膨らみが。女子高生としては平均サイズだろうか。シャツの第一ボタンを外せば胸の谷間を見下ろせそうだが、紐リボンが邪魔だし、変な行動に見られてカンニングを疑われても困る。代わりにう~んと背筋を伸ばしてしてみると、ブラの締め付けを感じた。も、揉みたい…だが、今はテスト中だ…。

イスを引いて姿勢を正すフリをしながら、おしりの感触を確かめる。木製のイスのひんやりとした表面にプリーツスカートが掛かり、その中に僕のショーツに包まれたおしりが乗っかっている。おしりを動かすと、ショーツの締め付けられてる部分がプリーツに擦りあわされ、なんとも言えない心地良さを生み出していた。さりげなく手を股に当てて、サッと離す。もちろんそこには突起物は付いてなかった。あぁ、僕は本当に今、女子なんだ…。夢心地の中、僕は意識が遠ざかるのを感じた。入れ替わり解除の時間が来たのだ……


気が付くと、僕はネットカフェに戻っていた。目の前には飲みかけのジュースと少女漫画があった。すぐにスマホが鳴り、見てみるとあいねちゃんからだった。

『ありがとうございます!残りの試験もがんばります(๑•̀ㅂ•́)و✧』

どうやら向こうも無事に元に戻ったようだ。僕は尿意を感じ、ジュースと少女漫画を片付けてトイレに入った。立ちションをしながら、ほんの数分前までここに何も付いてなかったんだよなぁ、と実感する。さっきまで女子校の制服を着て教室にいたのに、今は重くてブラブラしたものをつけながらネットカフェにいる…。それから荷物をまとめてネットカフェを出た。ネットカフェの料金を払うと、報酬もらっても赤字なんだが、しょうがない。

5日後、ようやくあいねちゃんから評価が届いた。

『おかげで赤点を免れました。名前の漢字がちょっと間違えてましたが、大丈夫だったです(´∇`*)』

あ、漢字間違えちゃったか…。評価は…良い!よし、これでついに念願のゴールドランク昇格だ!!天にも昇る気持ちというのはよく比喩で聞くが、まさに今の僕の気持ちはそうとしか表せなかった。早速、イレカリを開く。「おぉ!」今まで表示されなかった高額案件やエロ案件が出てる!!

『【若い女のコ限定】俺と入れ替わってヤらない?30分で5万!』

『旦那の夜の相手に疲れました…(報酬:応相談)』

すごい!すごい!どんどん出てくる!!子供の頃、ゲームで隠しダンジョンを見つけた時のように僕は時間を忘れて案件を調べた。だが、なかなか惜しいのはあるが、自分にピンポイントの案件は無い。これはもう自分で募集を掛けるしかないか…













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