入れ替わり風俗 作: はんげしょう 風俗界に新たな風を吹かせたのは、特殊なマシンを使用したものだった。 それは風俗嬢と客の身体を入れ替えたプレイをすることができるというかなり変わったモノ。漫画やアニメだけのものであった男女の入れ替わりを実際に体験できるというプレイは、瞬く間に口コミで広まり、開始一週間でかなりの知名度を獲得した。 予約は半年先まで埋まり、かなりの人々がそれを待ちわびていた。 客層は様々。単に「入れ替わり」という新鮮な体験を求める者から、女性になってみたいという願望を持つ者まで。異性の身体を味わうことが出来るこのプレイは『入れ替わりプレイ』と、そのまんまの名前で呼ばれ、もう少しちゃんとした呼び方はないのかという声も上がる中、わかりやすくていいとの声もある。 そしてその入れ替わりプレイを業界で初めて行ったのは『味噌館』といういかにも味噌臭いような名前の風俗店。この店ではもともと一般的な風俗を行っていた。一般的な風俗店と同様に本番や身体を傷つける行為は禁止されており、いたって普通。業界の中でもそれほど知名度が高いわけでもなかったのだが、この入れ替わりプレイのサービスを開始してからは大繁盛、知名度も鰻登りである。 この店は、ただの風俗店だったが、特殊なマシンをどこかから導入してきて、このようなサービスを突然始めたのだ。事の経緯は明らかにされていないが、行政の許可を取り、店舗内だけの入れ替わりに限り許可されているのだ。 このマシンだが、見た目は血圧を測る装置に似たような形状をしている。血圧測定器二台が反対向きに横に並んだようなもので、このマシンの前で入れ替わりたい二人が向かい合って座り、右腕をマシンの中に通すのである。そうして、マシンによる締め付け・固定が行われた後、特殊な波長を流すことで入れ替わりが完成するというものだった。意外と簡単に入れ替わることができることから、機械の知識に乏しい風俗店のスタッフでもわかりやすい操作方法。身体の身長や体重、性別を入力し、ボタンを押すだけなので、いたって簡単なのである。 だれが何のためにこのようなマシンを作ったのかはわからないが、恐らく様々な事情が絡み合っているのだろう。 ……という感じで、この風俗店は今では有名だ。 俺はしがないサラリーマン。名前は田中悠馬、27歳の老け顔男だ。 生まれついてからの老け顔から、年齢の10つ上に見られることも多い。中学生の時に酒を買うこともできるくらい、おっさんに見られやすいのだ。そして歳を重ねるごとにその老け顔が与える印象はすさまじく、今では40歳ほどに間違われることも。 髭と体毛の量が多く、そして濃い。この老け顔のせいで、若くても『おっさん』扱いされ、同年代の女子にも避けられる。だが、風俗嬢だけは違う。こちらが金払っていることもあり、俺のことをきちんと27歳として扱ってくれる。向こうは内心俺のことをおっさんだと思ったり気持ち悪いと思っているのかもしれない。だが俺は客だ。 それと、俺は女性とまったくもって縁がなかった。それで、一度自分が女になった方が早いんじゃないかとも思ったが、このおっさんのような見た目からは女装をしても似合わないのが明白だった。俺は女性になってみたいという欲望があった。恋愛対象が別に男に向いているわけでもない、ただただ今の見た目に対してコンプレックスを抱いているのもあってか、それと相反する見た目を有した可憐な女性になってみたいという欲望が強いのだ。 男性が女性になるということに対して性的興奮を覚えるのである。それも、可憐な女子の身体を男が動かすというシチュエーションに対して萌えるのだ。そしてそれを疑似的に体験するために「ストーリープレイ」という風俗店のサービスを利用したプレイを俺は行きつけの風俗店で行っていた。 月に数回ほどの頻度で、風俗嬢と体を入れ替わったようなプレイをし、自身の身体を慰めていたのだ。そして、その行きつけの店というのが『味噌館』だったのだ。 何の因果かは知らないが、その味噌館に業界初の入れ替わりプレイが導入されたのである。この情報は常連だった俺の耳にはいち早く入ってきて、その情報を知った俺は半信半疑になりつつ興奮した。もし本当に女性の身体になれるとしたら、俺は嬉しすぎて卒倒してしまうかもしれない。このサービスが始まる一週間前にこの情報を入手した俺は、早速このサービスを利用するために開始初日に予約をした。 入れ替わりプレイの初日、俺は普段とは違う高揚感を抱きながら仕事終わりに店へと向かった。仕事中は入れ替わりプレイのことがずっと頭にあったため、集中しきれずうまくやれなかったのだが、就業時間が終われば、この日は楽しい。 楽しみすぎて、仕事仲間にニヤニヤしていると指摘されるほどだ。 そして仕事が終わり、真っ先に味噌館に向かった。 いつものように受付で会員証を提示し、事前に指名した娘が出迎えてくれる。 吉田雫ちゃん。彼女は俺の一つ下で、ここで働いている娘だ。 普段から後ろで綺麗な黒髪を一つ結びをしている彼女は今日も綺麗。 そして彼女は俺のお気に入りでもある。彼女のために数十万もするブランド物の財布や時計などをいくつも貢いできた。俺が着飾るよりも彼女が着飾った方がやっぱり何でも似合う。 雫ちゃんは、きりっとした目で、いかにも真面目そうな印象の顔立ち。衣装を変えればこんな娘が風俗で働いているとは思えなくなってくる。だが胸は大きい。Eカップほどだろうか。でも雰囲気とそのたたずまいから夜の町にいそうな女性とは無縁そうな……そんな感じの容姿が俺は好きで、なんというか俺の理想の女性像なのだ。そんな彼女には今まで疑似的に入れ替わったふりをするプレイを奉仕してもらい大変お世話になってきたのだ。 「いらっしゃい田中さん。今日は……入れ替わりプレイをご所望ですね?」 「今日はよろしく、雫ちゃん、ふふふ、今日は本当に雫ちゃんになれちゃうんだ」 「そうですね、私も田中さんとが初めての入れ替わりプレイです。初めてですけど……田中さんなら大丈夫だと思います」 「まぁねー。ふふふ、雫ちゃんになったら、何しよっかな!」 「まずこちらの部屋で身体を入れ替えてから、プレイルームに案内いたしますので」 雫ちゃんに案内されたのはついこの間まで改装中になっていたワンルーム。 その扉を開いて中に入ると、6台ほどの、血圧計二台分ワンセットになったようなマシンが並んでおり、先人がまさに他の娘と入れ替わろうとしているところだった。 「芳美ちゃん、これ大丈夫?」 「大丈夫ですよー!血圧計みたいに腕を通すだけだから!」 「身体を入れ替えるなんて聞いたことないけど……芳美ちゃんはいいの?」 「いいのいいの!どうせプレイの時間中だけだから。それにセキュリティとかもちゃんとしてるって店長が言ってたし」 先人の男と、芳美ちゃんというこの店の新人の娘が機械を使用しているのが見えた。 彼らが機械に腕を通し、機械による腕の締め付けが行われた後、二人の瞼が重く沈んでいく。そして、一秒もしないうちに目をパッチリ開いたと思えば、芳美ちゃんの方が突然慌てたような声を出した。 「うわぁぁっ!!!本当に入れ替わって!俺が芳美ちゃんになってる!」 「ね、すごいでしょ?」 一方の男の方は落ち着いた声で自慢げに話している。先ほどとは違い、話し方がぎくしゃくしている。まるで中身が入れ替わったように。 その光景を見た俺は固唾をのんだ。俺も、これから雫ちゃんと入れ替われるのか……! すごくドキドキしてきた。 「田中さん、こっちですよ」 「あ、ごめんごめん」 雫ちゃんの声で我に返り、雫ちゃんがスタンバイしている機械の前に移動する。 しかし、その雫ちゃんの声が、もうすぐ俺が発する声になるんだよな……それだけで俺は胸の高鳴りが抑えきれなくなってくる。 「この機械に腕を通してください」 「あ、うん。……あれ、雫ちゃん。今日はいつもより緊張してる?」 俺はいつもより俺との間に距離を開けてくる雫ちゃんのことが気になった。 なんだろう、敬語口調なのは変わらないけど、少し言動に距離を感じるのだ。 「えぇ……まぁ。この機械使うの初めてで、ちょっと怖いなって気持ちはあります」 「そっかそっか」 「田中さんは大丈夫なんですか?」 「雫ちゃんと入れ替われるなら俺なんだってするよ!」 「田中さんはすごいですね……では入れ替わりの方始めさせていただきますね。それではまず機械に腕を通してください」 雫ちゃんの説明に従い、俺は機械に腕を通す。そしてタッチパネル部分に自分の身長と体重を入力し終え、ボタンを押すと、機械が締め付けを始めた。一方の雫ちゃんの方も入力を終え腕の締め付けを開始する。 「ではいきますね。準備はよろしいでしょうか?」 「お願い」 俺がそう言うと、左手の方で雫ちゃんがボタンを押した。 その瞬間、締め付けられた腕の部分にマッサージ電流のようなものが流れ始める。次第に心地よくなってきてだんだん眠くなってくるのだ。 まさか機械で眠らされるとは……いや、今から入れ替わるんだったそっちの方がすごいよな。 とか考えているうちに、俺は……。 目が覚めると目の前に俺がいた。 腕がしびれるような感覚がする。機械による締め付けが効いているようだ。 「う、おおっ!!!あ、あーあーあ」 お、俺から、女の、雫ちゃんの声が出ている! そして視界を下にやると雫ちゃんのおっぱいが存在している。 服装も露出が多めの心もとない布(ネグリジェのような感じのワンピース)を身にまとい、手入れされた彼女の素肌が顔をのぞかせる。 今までは客観的に美しいと思っていた彼女の姿を主観的に捉えることができる。 そして自分が呼吸するたびに、彼女の双丘が前後運動しているのである。 俺は左手を自分の口元に当てようとすると、俺の口から出る彼女の吐息が手を優しく撫で、鼻に手が触れた瞬間にぺとりと化粧のラメが指に張り付く。 左手についたラメを眺めた後、そのまま左手を自分の胸に当てると、男にはないふっくらとした曲線が存在し、布越しに撫でていると乳首に当たってしまい変な声が出そうになった。 「入れ替わりましたね、……ではお部屋に案内します」 おっと、夢中になっていた俺になった雫ちゃんのことを忘れていた。 彼女は俺の身体を動かし、部屋へと案内してくれた。 勝手に動いている自分の姿を見るのは新鮮な気分だ、それにこの視点から見る俺の背中姿は、少し大きく思える。 それよりも気になるのが歩くと視界にちらつく長い髪の毛。後ろで一つ結びにしている髪の毛が背中にふわっと当たる感触がする。そしてその髪からはシャンプーの良い香りが。 味噌館の通路には鏡のように反射する金属フレームが等間隔で並んでおり、そこに映りこむ自分の姿を見ると、その姿は雫ちゃんなのである。等間隔を歩くごとに、胸や顔、喉などを押さえてみると、鏡の中の雫ちゃんも同じようにそれらを押さえている。 心もとないドレスは風通しが良く、通路を吹き抜ける空調の風がお尻や股の間を含め全身を撫でていく。全身の触覚を以て俺は雫ちゃんのボディラインを体感していた。 「こちらですね、今日はよろしくお願いします」 雫ちゃんと俺が入ったのはベッドやシャワー室、トイレのある一般的な個室。 いつもシャワーを浴びた後、雫ちゃんにエッチなことをしてもらうのである。 店の規約上本番まではやってはいけないことになっているので、お互いに気持ちいい部分を触りあうまでしか出来ないのだが。 「ではシャワーをどうぞ。私はここで待っています」 「ういー」 俺は胸を躍らせながらシャワールームへと向かった。文字通り、巨乳になった俺はスキップ気味に上下に胸を揺らし躍らせているのだ。 脱衣所で雑にドレスを脱ぎ捨て、開放的な姿を鏡に晒す。胸を拘束していたドレスがなくなったことで胸は重力に従い下に落ちていく。その感覚が自分の方に負担をかける。 「これは肩こりそうだな、だけど、ぼいんぼいんだ。おっぱいが、おっジャンプしたらめっちゃ揺れる!」 入れ替わり風俗の挿絵 その場でジャンプすると、鏡に映っている自分のおっぱいが上下にぷるんと揺れ、その重みが全身で感じられる。そして彼女の生乳が露になったことで俺の胸が刻む鼓動がさらに勢いを増していた。 「し、下も……お、おお……っ」 自分が履いていたショーツを脱ぎ捨てると、彼女のデリケートゾーンが姿を現す。 早速だがその割れ目に向けて手を滑らせていく。 「んくっ……今のがたぶんクリ……、えっと、……あっ中に、入っ……た!」 突然電流が身体に走ったかと思えば、女性によっては敏感な部分であるクリトリスに触れていた。位置さえわかれば、と。そのまま指を移動させる。 指をナカにとぷっと沈み込ませ、自分の中にある知識に従いナカをかき回してみる。 壁に触れる度に、自分の身体が火照ってくるような感覚に襲われる。とても何かが愛おしくて仕方ない感じ。今、愛おしいのはこの身体だ。 「えへっ……あっ……雫ちゃんの身体っ……あっはぁっ……」 腰が抜けそうになりながら、辛うじて立っている状態をキープする。 足が震えており、太ももの肉が小刻みに揺れていた。そしてその太ももをするーっと垂れてくる一筋の線。 股の間から漏れ出た彼女の愛液が湿らせていた。そして火照ったからだから染み出てくる汗も相まってかムンムンとシャワー室全体が蒸されてあったかくなってきたような錯覚に陥る。 「……っ、すっげぇエロい顔してる」 鏡に映る雫ちゃんは、中身が俺なだけあってかいつもの凛とした表情を崩し、滅茶苦茶淫らな表情を浮かべていた。性欲、快感に溺れ、まるでメス堕ちしたかのような女の恍惚の顔。……それを俺がしているというだけでも十分興奮できる。やはり女の身体は最高だったのだ。今まで体験したことのない快感を経験し、俺はもう後には戻れそうになかった。 「はぁっ、はぁっ!!!」 膣の中をかき回す指の速度が胸の高鳴りと同期して無意識に勢いを増していく。 そして身体の奥から湧き出る衝動を抑えきれず大きな喘ぎ声を発してしまう。 「あぁっあぁぁんっ!!!はぁっ!!やぁぁぁぁんっ!!!」 腰が抜け、その場に尻もちをついてしまうが、一度動かした指は止まらない。 そのまま膣内をかき回し、最高潮に達した俺は。 「あああああぁぁぁあっ!!!!!」 その場でイってしまった。イった俺はというと、男のような事後の虚無感に襲われず、ペースは落ちたもののまだ膣内を指でかき回していた。 「あっ、はぁっ……!」 この快感を知ってしまったらもう男には戻れない。今あるものすべてが、愛おしい。 鏡に映る雫ちゃんの姿、これが理想の俺で今の俺自身。 俺にとって最高の時間だった。 ……シャワーがある。シャワーで股間部をよく洗い流し、愛液を掃除する。 少しかいてしまった汗も流し、すっきりした状態で軽くタオルでふいた後、シャワールームを出た。 「待たせてごめんね。色々楽しんじゃった」 「は、はい。……私もシャワー浴びた方が、いいですか」 「いや、いいよ。今日はこの身体堪能できればいいからさ」 俺が気持ちよくなった姿なんか見ても仕方がない。時間ももったいないし、雫ちゃんになった俺を気持ちよくしてもらうことにした。 「んっ……あぁっ……!そこ気持ちいいっ、乳首クリクリやっ……やばっ」 「……っ」 二人してベッドの上に乗り、裸の状態で横になっている俺を雫ちゃんが気持ちと思う場所をピンポイントで攻めてくる。 雫ちゃんは俺のおっぱいを鷲掴みにし、揉みしだいた後、乳首をつまんだかと思えばクリクリと攻め始めた。 ビンビンに立った俺の乳首から流れる快感はすさまじく、悶絶してしまいそうになるくらいだった。これが入れ替わりプレイによる相互理解、相手の気持ちいい部分を知ることができるというもの。俺は雫ちゃんの身体で感じまくり、甲高い喘ぎ声を発しまくっていた。 身体はビクビクと痙攣するまでプレイを続け、俺は度重なる絶頂と今までに体験したことがない快感に飲まれ、いつの間にか失神してしまった。 目が覚めるとベッドは愛液や汗でぐっしょりと湿っていた。 女の快感というものもすさまじかったが、理想の女性像になって、その身体で感じていたという状況が俺の幸せパワーに追い打ちをかけていたのだ。 「……そろそろ時間です。服を着て、戻りましょう。」 俺は雫ちゃんに服を着せてもらい、そのまま部屋の外へ、そしてまた例の機械の部屋へと戻ってきた。 「では戻りましょうか。先ほどのように腕を通してください。私の身長と体重は、これですのでこれを入力してください」 雫ちゃんにもらったメモを見て、その身長と体重を機械にに入力した。俺の方も身長と体重を彼女に伝え、元に戻る準備が完了した。 「ではいきますね」 「……」 彼女がスイッチを押すと、腕がきつく締められる感覚がし、マッサージ電流が流れ始める。身体にたまった疲労感のせいかすぐに瞼が重くなり、すぐに気を失った。 すぐに目を覚ますと、目の前には頬を赤く染めた雫ちゃんがいた。 元の身体へと戻ってきたのだ。 「本日はありがとうございました」 店の受付まで雫ちゃんは見送りをしてくれた。 俺は、さっきの快感が忘れられなかった。 雫ちゃんの身体で感じた快感、そして雫ちゃんとして味噌館の廊下を歩いていた時の高揚感。 そのすべてが俺の胸に強く、これでもかというくらいに刻まれていた。 ふと自分の財布を見ると、かなりの金額を消費してしまっていたのがわかる。 そもそもこの入れ替わりプレイは最先端の技術を使用しているということで、料金設定も生易しいモノではない。 毎日のように通いたい気持ちはやまやまだが、そのような金はしがないサラリーマンには用意することはできない。 だが、どうしてもあの感覚がずっと欲しい。 あの身体が、ずっと俺のモノだったらいいのに。 俺は、家路に就きながら、よからぬ考えを巡らせた。 「入れ替わりプレイをご予約の山田さんですね」 俺はあれから一週間後に予約を取っていた。あの日家に帰った後、すぐに一週間後の予約をした。確実に雫ちゃんとのマッチが出来るように。 それに入れ替わりプレイは定員制の高額プランなので、あらかじめ予約を入れておくことが必須である。それに風俗界隈でもこの入れ替わりプレイについての情報が流れ始め、たくさんの予約が入ると感じ、出来るだけ早い段階で予約することが重要だと思ったのだ。 二回目ということで、雫ちゃんは既に入れ替わり装置の部屋で待機していた。 今日の雫ちゃんも一つ結びで、薄い生地のドレスを着ていた。 「山田さん、本日もよろしくお願いします」 「うん、よろしく」 俺はさっさと身長と体重を入力し、ボタンを押した。 早く雫ちゃんの身体に入り込みたいという気持ちが強いのだ。 雫ちゃんの方も入力を終えたようで、ボタンを押すと、あの時のように瞼が重くなり、入れ替わりが発動する。 目を開けると以前と同じように俺が目の前にいた。 「……はい、入れ替わりましたね」 「やった、雫ちゃんの身体だ」 俺は確認のために胸を一度もにゅっと揉む。きちんと揉まれた感覚と揉んだ感覚がすることを確認できた。 この間のように再び俺は雫ちゃんに部屋へと案内される。 廊下を二人して歩いていくのだが、その途中に……。 「うっ……!!!」 「ど、どうしましたか……?!」 俺が腹を押さえてうずくまると、雫ちゃんは心配そうに振り返り、うずくまった俺と目線を合わせるためにしゃがんできた。 「生理が……っ、うっ……!」 「そ、そんなはずは……今日はそういう日じゃないんですけど……」 「でも、滅茶苦茶痛い、いたたたたた!」 「で、では元に戻りましょう、急いで先ほどの部屋に……」 「いや、それはいいんだ、生理用の薬とか持ってない?」 「それなら私のロッカーの鞄に……で、でも……」 「ちょっとこの身体で取りに行ってきていいかな」 「えっ……でも……」 「すぐ戻ってくるからさ!ロッカーの鍵とか、ある?」 「パスワードなんですけど……ま、まぁ……いいのかな……532です。」 「ありがとう。俺の姿した雫ちゃんは怪しまれると思うからそこで待ってて」 「わかりました」 俺はそのまま従業員用のロッカールームにやってきた。 ここで風俗嬢たちは着替えや持ち物の保管を行う。雫ちゃんの名前が書かれたロッカーに先ほど聞いたパスワードにダイヤルを合わせると、施錠が解かれてロッカーの中を開けることに成功した。 「あれ、雫先輩じゃないですか~。今日もあのおっさんと入れ替わりプレイですよね~。大変ですね~!!」 俺に話しかけてきたのは雫ちゃんの後輩にあたる、ここで働く風俗嬢の芳美ちゃんだった。 芳美ちゃんとは一回だけプレイしたことがあるが、俺とはあまり馬が合わなかった。なんというか、俺が提案したプレイを飲んでくれず、芳美ちゃんのペースにあわさせられたのがキツかった。 その芳美ちゃんがニヤニヤしながら俺に話しかけてきた。正しくは雫ちゃんに話しかけようとしていたのだが。 俺がロッカーにいるこの状況を他の人に見られるのは少しまずい状況だった。一応この店の入れ替わりプレイの規則上では、部屋の外ではあまり目だった行為をしないような記載もあった。俺が入れ替わった状態でここにいるという状況は基本的にあってはならないことなのだ。 「あ、あはは……そうだよね、た、大変だよー」 「ん……?今日の雫先輩、ちょっと変ですよね?それに、なんでこんな時間にロッカーにいるんですか?」 芳美ちゃんは俺の方に詰め寄ってきて、俺の顔をじっと見つめてきた。俺は雫ちゃんと芳美ちゃんが普段どのように話しているのか知らないし、どういう風に話したらいいのかわからない。 「ちょっと……ね。そうだ、今日は早上がりするって店長に伝えてくれない?」 「え?どうして……?今から山田のおっさんの予約があるんじゃ……」 「急用を思い出しちゃって」 「これは違約金やばいっすよ先輩、でも任せてください!その様子だと訳ありなんですよね?」 「え、う、うん」 「なら私が適当にごまかしておきますよ!大丈夫!私に任せてください!」 「う、うん。じゃあ、よろしくね」 俺はロッカーの中に入っていた雫ちゃんの普段着へと着替え、彼女のカバンを持った。ロッカールームに芳美ちゃんを置いて、俺はその部屋を出た。そしてそのまま従業員用の裏口を通り、店の入り口の方へと出る。 「あれ、吉田さん……あれ?今からプレイ……あれ?山田さんはどうなさったんですか?」 受付嬢が俺に対して疑問の言葉を投げかけるが、俺は「芳美ちゃんに詳しいことは聞いて」と言い残し、そそくさと店を出た。 俺は店を出て、しばらく進んで店が見えなくなるところまで移動しきる。 感慨深くて、拳を握り締める。 入れ替わり風俗の挿絵 俺はやったんだ。 世紀の大泥棒になったんだ。 俺は……吉田雫の身体を、人生を奪ったのだ。 一週間前、この店で得たあの経験を忘れられず、ずっとどうすればいいのか考えてきたのだ。そして、雫ちゃんの身体を奪い、彼女として生きる。それが俺の今回の計画であり、俺の人生をすべて投げうつほどの価値のあるものなのだ。 俺はこの彼女の身体と駆け落ちをするのだ。日本の警察、行政、周りの目をすべて敵に回して。 身体を奪われた雫ちゃんはどんな顔をするのだろうか。きっと悲しむんだろうな。 だけど、すまないがこの身体は俺に譲ってくれ。俺はずっと君の姿にあこがれていたのだから。 いずれこの問題が発覚して俺はお尋ね者になるだろう。 吉田雫の見た目をした山田悠馬として、全国的に、顔写真も晒されるかもしれない。 この一秒一分すべてが勝負なのだ。とにかく問題が大きくなる前に、逃げて逃げて逃げまくる準備を一週間前から行っていた。 俺は味噌館から電車で一駅ほど離れたところに貸しロッカーを借りていた。 ここに今後の逃亡資金を詰め込んである。山田悠馬名義で借りた、闇金だ。 総額で1000万円が詰め込まれたこのキャリーバッグを、事前に決めていたパスワードを入力しとりだす。もう山田悠馬として生きる必要もないため、あちらの名義は使いつぶしてやることにした。 この金で事件の時効となるまでしばらくは生きながらえることになる。キャリーバッグを転がし、俺はさらに電車で数駅いったところにある古着店に立ち寄った。 ここで女性ものの服装を数点購入した。男の姿では入りにくいような女性ものの服ばかり扱っているような店でも、この姿でなら周りの目を気にせず入ることができる。……だが少し後ろめたさからか挙動不審に振舞ってしまっていたかもしれない。 古着店には過去に女性が身に着けていた中古のモノが売られるのである。それに袖を通すとなんだか女性に包まれているような気持ちがするため、新品よりも俺の性的趣向に合うのだ。……まぁ現に今の俺は女性そのものになっているのだが。 俺は古着店で買った服のうちの一着に着替え、さらに電車で別の駅に向かい、新幹線に乗り込んだ。新幹線でようやく一息をつき、座席に座る。 さすがに新幹線の中までは追手はいないだろう。俺は先ほどから少し我慢していた尿意を発散するため新幹線のトイレに入る。 「どうやってするんだっけか。確か座って……」 俺はショーツを脱ぎ、スカートをたくし上げた状態で便座に腰を下ろし、尿を放出する。 男の時とは違う尿を出した時の脱力感がたまらなかった。ホースのようになっている男とは異なり、女は直接放尿するため、飛距離が出ずじょぼじょぼと股の間をも尿が濡らしてしまう。これをトイレットペーパーでふかないといけないのが女性の特有のトイレ方法だ。 ガラッ。 「えっ、あっ……!きゃああああーーーーー」 俺は突然トイレのドアが開いたことに一度驚いて何も言葉が出なかったが、その後作った叫び声をあげた。するとドアはすぐに閉められた。 俺としたことが、いつもの癖でドアの鍵を閉め忘れていた。 トイレに入ろうとしてきた人も驚いたことだろう。 とりあえずトイレットペーパーで拭き終え、外に出ると、先ほどの人が気まずそうに俺がトイレから出るのを待っていた。男だった。 ……ラッキーだったなお前。 ……かなり遠くにやってきた所で下車した。もう後戻りはできない。 適当に遠くを選んで降りたので追手はさすがにすぐには来れまい。 ここまで来ておいてなんだが、逃亡生活のプランなんてものは存在しない。 とにかく人目が付かないところに隠居してひっそり女性として生きていきたい。 そして悠馬や雫という名前も捨てて目立たないようにする。 堂々と吉田雫と名乗って暮らせる生活も魅力的だが、それは不可能だ。 新幹線から電車を乗り継ぎ、ひとまず夜遅いので一泊をすることにした。 俺はホテルのベッドに倒れこみ、天井を見上げる。 「へ、へへへっ……!へへへへへっ!!!」 笑いが止まらない。やってしまった自分に対する嘲笑と、夢をかなえた達成感による笑いが混ざり合った、薄汚い笑い。 俺はついに女になったんだ。それも、俺の好みの女性そのものになったのだ。 「あーあー、私は雫です。雫です。あは、似てるけど少し喋り方が違うな……同じ声のはずなんだけど」 やっぱり話す中身が違うと同じ声でも違った印象に聞こえてくる。 しゃっきりとしつつ大人しめなのが、雫ちゃんの声と思っていたが、俺がこの声を使って話すと少し性格の悪そうな女の声にも聞こえてくる。 「あー、雫です。よろしくおねがいします。雫です。……んー、ちょっと違うかな」 何度も何度も録音して練習してみた。確かに練習を重ねるにつれて彼女の声に似てきたが、本人とは少し違う感じもする。 とりあえず、今日は風呂に入って寝ようと思ったが、声以外にもやりたいことがあった。 今日古着屋に寄ったのは、服装から追手に特定をされないためのカモフラージュというだけでなく、一人でファッションショーをするためでもあったのだ。 ベージュのセーター、紺のフリルスカート、白の薄手のワンピース……様々な服に袖を通し鏡で確認をしてみる。男の時とは違って服を選んで切るのが滅茶苦茶楽しい。 これだから女はファッションを楽しむことができるのだと納得できる。 女はやはり着飾ることでより一層輝いて見えるものなのである。自分の顔面や体毛にコンプレックスを抱いていた俺からしてみるとこの雫ちゃんの身体は最高で、最愛。 髭一つない顔面を撫でまわすだけで笑みがこぼれてしまう。 鏡の前で色んなポーズをとってみる。セクシーなポーズやがに股のポーズなど。自分の思い通りにあの雫ちゃんがポーズをとっているのが最高なのだ。俺が中から雫ちゃんを操作している、俺が雫ちゃんの神経をすべて掌握し、俺が雫ちゃんなのだ。 ファッションショーを深夜遅くまで行った後、俺は服を脱ぎ、沸かしておいたホテルの部屋のバスタブのお湯に入った。 「ふぅ~」 全身が温まっていく。ここには俺しかいないので、彼女の裸をじっくりと観察できる。 最初に入れ替わった時に確認できなかった彼女の身体の部分をペタペタと触っていく。 やっぱり女性の手は細くてきれいだ。それに足もスラッとしていて自分で足を曲げたり伸ばしたりするだけで楽しくなってくる。 今日は疲れているためオナニーは控え、風呂を上がった後はタオルで身体を拭いてそのままベッドインして眠りについた。 「……んー。」 朝起きると、俺は女だった。 夢じゃない、朝起きると戻ってたりしたら大変なことになっていたが、そんなことはなくて安心した。素っ裸のまま洗面所の鏡の前に行く。髪の毛がぼさぼさになっていた。 ドライヤーなどで乾かして寝るのを忘れていた故にこうなってしまった。髪の長い女は大変だ。女というだけで周囲に気を利かせた容姿を求められがちである。そのために時間を使わなくてはならないのだが、そうして得られるものは非常に大きいと俺は思っている。 とりあえず櫛で髪をとかし、何とか寝癖を抑えることができた。 そうしてホテルを発った俺は、バスに乗ってさらに遠くを目指した。 山の中をずいずいと進んでいくバスには、他の乗客はおらず、俺一人きりだった。 「お嬢さん、こんな田舎に何の用で?」 バスの運転手が俺に話しかけてきた。『お嬢さん』と呼ばれたことに、少し興奮してしまったが気を落ち着かせて俺は返事をする。 「新しい風に当たりたくって」 「……新しい風、ねぇ。こんなど田舎に何があるのやら」 俺の目的地は、別にこの町である必要はない。ただ、田舎で隠れて生活しやすいだろうから選んだに過ぎない。この身体さえあれば。 さらにそこからバスを乗り継いで海の見える集落にやってきた。かなりのど田舎と呼ばれる土地で、ここは都会と違って空気がきれいだ。 潮風を肺いっぱいに吸い込む。彼女の肺が磯の匂いで満たされていく。 それを俺は彼女の身体を通じて感じ取る。 「俺は海女になるぞーーーーーー!!!!!!!」 海に向かって、そう叫んだ。この町では海女業が盛んなのだ。 だから女性という点を活かし、俺は海女として生きるのだ! 「お姉ちゃんなんで『俺』って言ってるの?」 「じぇじぇじぇ!??」 どこからか現れた小学生くらいの男の子が俺に突っ込みを入れてきた。 「じぇじぇじぇ?????」 「そ、そっか、今どきの小学生は知らないんだ……」 なんだか自分がおっさんと言われていた理由が何となくこういう所にもあったのかもしれないと今になって自覚した。 「お姉さん、海女になりたいの?」 「うん。お姉さん海女になりに来たの」 「そっか。すごいね。うちのばあちゃんも海女なんだ」 「良かったら、私を君のおばあちゃんに会わせてくれないかな……?」 「いいよ」 こうして私(-静海-)の海女としての生活が始まったのだ。 私はロッカールームで山田のおっさんが入った雫先輩の身体が早上がりするのを見逃し、ちょっと細工を済ませた後、ロッカールームを出て廊下の方へと歩いて行った。 今日山田のおっさんと雫先輩が使う予定の部屋に行こうと思ったのだが、途中の廊下でバッタリと山田の姿を発見する。 恐らくあれには雫先輩が入っているのだろう。 「あら?山田さんってば、こんな廊下で何を突っ立ってるんですか?」 私は笑いを必死にこらえながら真顔で話しかけた。 「え、えっと……芳美ちゃん、し、雫ちゃんを見なかった?」 「あぁ、見ました見ましたー。ロッカールームで服を着て、今日は早退していきましたよ♪」 「えっ、嘘っ……わ、私、雫なのっ。山田さんどこいったかわかる?」 「え?何言ってるんですか山田さん?今日は ふ つ う の プ レ イ のご予定でしたよね?」 「ち、違う、芳美ちゃん。よく聞いて。私は吉田雫。あなたの先輩。山田さんと身体を入れ替えて……」 「そんなはずないですよ。ほら見てください、今日の予定表。ちゃんと山田さんは普通のプレイのご予定でした。それで、雫先輩は逃げちゃったので私が代わりに担当いたしますね♪」 私が改ざんした予定表を先輩に見せつけると、先輩は両眼から涙を流し、絶句していた。 ニヤニヤが止まらない。これで、雫先輩を消すことができる。 目障りだった。この先輩がいる限り私は上には行けない。だから消す必要があったんだ。 そして、本当に偶然、今日絶好のチャンスが到来したのだ。 まさか身体の持ち逃げが行われるとは思わなかったが、これでこの女はおしまいだ。 一生そのおっさんの姿で過ごしたらいい。 でもせっかくだし、最後に先輩にはいい思いをさせてあげる♡ 「じゃ、お部屋に行きましょっか。山田さん♡」 私はおっさんになった雫先輩の手を引いて部屋へと入った。 今日はとことんいじめてやるんだから……! |