レディス・マンション物語
作:よしおか



俺の名は、門馬六郎。通称ロック。そう、知る人ぞ、知る、手塚治虫の「バンパイア」の影の主役のあだ名だ。
俺は小学生の時、親戚の兄ちゃんからこのことを教わり、ロックの変装シーンを見て、彼に陶酔した。それからというものは、「バンパイア」は、俺のバイブルとなり、変装技術に磨きをかけたが、ロックのように特定の人に化けることは出来なかった。そんな時、俺は、もう一つの愛読書となる本を見つけた。それは、江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」。人の裏側をみる楽しみ。それに、俺は引かれた。
それから、8年が経ち、俺を可愛がってくれていたじーさんとばーさんがなくなって、俺に、町の中心の土地と、かなりの財産が転がり込んできた。親は、それを生活に困らないように使えというので、俺はマンションを建てることにした。それも、俺の望みどおりのマンションを・・・
 昨年マンションは完成し、俺は、マンションのオーナーになった。それと同時に俺は、海外へと留学した。親元に居たくなかったからだ。それは、一人っ子の俺を何かとかまう親元から離れ、俺は、以前から計画していたプランを実行するためだ。その計画は、このマンションを若い女性専用にすること、管理人は、俺の指定した中年女性にすること、そして、便利もよくほかのところより少し安いという事で、若い女性の入居者を募集する事。ところが、予想以上に、応募者が集まった。そこで、俺は、住居希望者を選考して、十代から二十代後半までの美女ばかりを集め、入居させた。彼女たちはこれからどんなことが待っているのかも知らずに・・・・
 満室になると俺は、海外留学した。ということになっているが、こんなおいしい果実を見逃せるか。俺は、こっそりと日本に帰ると、俺は、俺が雇った管理人に成りすますと、マンションの一階、玄関近くの管理人室に住んだ。
 何とか、中年女性には化けることが出来るようになっていたからだ。これからは、秘密なのだが、この部屋には隠しエレベーターがあって、地下駐車場の下の俺の隠れ家に通じていた。そこには、各ブロックごとに隠しエレベーターがあり、これで、どの部屋にも、こっそりと気づかれる事なく忍び込む事が出来た。それに、各部屋の至るところに、隠しカメラと盗聴器が仕掛けてあり、催眠ガスの噴射口も仕掛けてあった。後は、俺の変装テクニックが完璧になれば、ロックのように特定の人間に化けて、その人間の生活を楽しめるのに、そんな、思いで日々を暮らしていると、面白いものがモニターに映った。
それは、あるアパレル会社に勤める美人姉妹の部屋でのことだ。それは、妹が、自分の部屋にあるパソコンで、会社のコンピュータに入るところだった。パソコンの画面には、極秘の文字が浮かび、その後に、パスワードの入力を求めてきた。俺は、興味をそそられ、カメラを調節して、そのパスワードを録画した。パスワードがとおり、画面が変わると、ウィンドウが現れた。表題は、「バイオ・スキンプロジェクト」。俺は、その言葉に惹かれ、録画しつづけた。それは、人の皮膚そっくりのバイオ・スキンを作り、別人への変身を可能にする美容業界の存亡を握る発明品だった。        それも、フリーサイズで、どんな体型のものも、お好みの姿になれるというのだ。老若男女自由自在に変身できる。これは、すごい発明だ。まだ実用化はされていないようだが、俺は、このデータを盗むことにした。そして、2人が留守のとき、隠しエレベーターで、彼女たちの部屋に忍び込むと、パソコンを操り、このデータを、そっくり、CD-ROMに写し取った。
 俺がただ持っていても宝の持ち腐れなので、俺と同じ趣味を持つ男を仲間に引き込んだ。奴は、天才的な頭脳を持っているのだが、自分の趣味以外には使おうとしないので、就職先もなく、ぶらぶらしていた。その彼を俺が化けた管理人の妹と言うことで、このマンションに引っ張り込み、将来、何かに使うだろうと思って作っておいたさらに下の地下室に、必要な機材を持ち込んで、彼に、このスキンを完成させた。
そして、俺たちは、これを使って、このマンションの女たちからおもちゃにすることにした。このどんな人間にも化けられるスキンを使って・・・



レディス・マンション 403号室 立花麗香

「ええ、じゃあ。明日の午後3時、いつもの場所でね。」
そういうと、彼女は受話器を置いた。親元を離れ、大学に入って、初めてのデートだった。麗香のうちは地方の旧家で躾が厳しく、高校までは、全寮制の女子高で、異性交流はご法度だった。そんな彼女が、一流大学に合格したのを幸いに、彼女に甘い祖父を説き伏せて、やっと一人暮らしをはじめたのだった。そして、明日は生まれてはじめてのデート。胸が、ときめいた。そわそわ、わくわくして何も手につかなかった。
 
 そんな彼女を、モニターで見ながら、俺は思った。
『このマンションの女はすべて俺のものだ。それを、ほかの奴がちょっかいを出すなんて許せねえ。どうしてやろう。それに、相手の男は名うてのプレイボーイだ。くそ~。』
 俺は、モニターを見ながら、子犬のようにはしゃぐ麗香の姿に腹が立ってきた。と、そのとき、俺に妙案が浮かんだ。
『そうだ。この手があった。よし、みていろよ。人の女に手を出すとどうなるかを。』
 俺は、可笑しくなり、つい大声で笑った。俺の笑い声は、地下モニター室いっぱいに響いた。
「テゥルルル。テゥルルルル。」
電話のベルが鳴っていた。麗香は、明日のことを考えて落ち着かないでいたが、電話のベルに気づくと、彼からかもしれないと思い、受話器を取った。
「はい、立花です。」
 こころなしか声が弾んでいた。
「あっ、麗香ちゃん。こっちにこない。紹介したい人がいるの。」
 それは、一階したの306号室の長谷川真紀からの電話だった。真紀は、麗香より、2歳年上で、今年短大を卒業して、証券会社に勤めていた。引越しした日がいっしょの日で、入り口でかち合って以来、何かと麗香をかわいがってくれた。一人っ子だった麗香にとってお姉さんのような存在だった。その真紀のお呼びだ。麗香は、真紀の部屋にいってみることにした。
 玄関の横のインターホーンを押すと、真紀が、少し、くぐもった声で返事した。
「開いているからどうぞ中に入って、リビングにいるから。」
 麗香は誘われるままに中へと入った。
 リビングへ行くと、真紀は、ポータブルのエステマシーンのスチームをあてていた。その横にはピンクがかったユニフォームを着た見知らぬ女性がいた。その女性は、こぼれんばかりの笑みを浮かべて、あいさつした。
「はじめまして、わたしは、この地区担当のポール・レディの渡辺文子です。真紀ちゃんとは、お母さんからの付き合いなのよ。」
「そう、うちの母が、お世話になっているビューティアドバイザーなの。今度この地区担当になったので、挨拶にこられて、ついでにお手入れしてもらっているの。麗香もしてもらいなよ。」
「いえ、わたしは、いいです。」
「そんなこといわないの。明日デートでしょ。」
「えっ、なぜそれを・・・」
「あれだけ、声の落差があれば誰でも気づくわよ。彼からの電話じゃないとわかると、急に暗くなるんだもの。」
「まあ、それじゃなおさらきれいにならなくちゃね。」
「でも、わたし、化粧品のことは何にもわからないし、お金も・・・」
「あらそんなこと心配していたの。大丈夫よ。今日は、販売じゃないからわたしも商品の持ち合わせはないし、それに、あなたは、お手入れをしていないみたいだから、お手入れだけでも見違えるほどに変わるわよ。元がいいからやりがいがあるわ。」
「どうせ、わたしは、元が悪いですよ。」
「あら、そんなことないわよ。真紀ちゃんは花にたとえると、黄色いバラね。けっして派手じゃないけれどゴージャスよ。それに比べて、麗香ちゃんは、そうね、白百合かしら。物静かで可憐よ。」
 どことなく、母のやさしさを思わせる文子の笑顔と人柄に麗香は安心しきっていた。この人に任せれば、もっときれいになれる。そんな思いが、麗香を覆った。
麗香は、真紀がお手入れを受けているあいだじゅう、ジーっと、文子の動きを見ていた。文子も麗香の視線には気づいていたので、真紀のお手入れをしながら、麗香に話し掛けていた。30分後。真紀の手入れがすみ、今度は麗香の番になった。顔に、クリームを塗られ、エステマシーンのこことよいスチームをあてられると、麗香は安らぎを覚えた。文子の、ピアニストのような細い指が、麗香の顔をやさしくタッピングマサージをしていくと麗香は眠気さえ覚えた。
「眠くなったら、眠ってもいいのよ。エステには安らかな気持ちになることが大切なんですから。」
 そういわれても、お手入れの間に眠るなんて失礼なことはできないと自分に言い聞かせていても、麗香は襲い来る睡魔に勝てずにいつのまにか眠ってしまった。そして、2時間が過ぎた。
 真紀と麗香は、真紀の部屋の玄関前に立っていた。文子はすでに帰ったのか、その姿はなかった。そして、部屋の中も静かだった。
「明日のデートがんばってね。報告楽しみにしているから。」
「ちらかしたままでごめんなさい。でも、明日のことは任しといて。」
 麗香は、微笑を浮かべ自分の部屋へと帰っていった。
 そして、外はいつのまにか日が落ち、黄昏時になっていた。

 翌日は、朝から天気もよく。絶好のデート日和だった。
 麗香の彼・磯田啓司は、時価数千万のスポーツ・カーをマンションの前に止めた。彼の実家は地方の資産家で、両親とも仕事が忙しく、彼の相手をする代わりに何でも買い与え、親の義務を果していると思い込んでいた。彼のほうもヘタに干渉されない分その方がラクではあった。そして、彼が起こした問題のほとんどは、その金によって解決されていた。
 そして、それを自分の力と勘違いした彼は、好き勝手をやり始めた。清楚な美少女の処女狩り。彼の周りに金の力で集まる女たちは、外見は清楚な格好をしていてもすぐにメッキのはがれる奴らばかりだった。だから、彼は本当に清楚で世間知らずの少女達を狙いだした。一見無謀に見えるがそれは意外と簡単な事だった。そういう少女達は彼のような男になびいてしまうからだ。自分にないものを求める心理がそうさせるのか。スラッとしたモデルタイプの好青年の外見がそうさせるのか。彼の手にかかった少女は数知れなかった。そして、一度抱くと後は彼の取り巻きに払い下げ、少女達は落ちるところまで落ちる事となるのだ。今まさに麗香は、そんな彼女達と同じ道を歩もうとしていた。
『まったく、女はなんでいつも仕度が遅いんだ。時間は決めていただろうが・・・まったく』
車の中で啓司はいらつきながらタバコを咥えていた。だが、タバコがダメな麗香のために吸うことは出来ず、そのタバコには火がついていなかった。
「お待たせしました」
「ああ・・・」
啓司は助手席の窓からマンションを出てきた麗香の姿を見て、声を失った。車の窓から覗き込む麗香の服装はいつもと同じ白のブラウスに、白のカーディガン、それに長い黒髪と頭には白のカチューシャ。そして、細く長い白の手袋に白の小さなポーチ。いつもの彼女の外出時の服装なのだが、今日の彼女はいつもの雰囲気とどこか違っていた。啓司は、黙ったまま車から降りると、助手席のドアの前に立ち、ウイングドアを開けると、その場に立ち竦んでしまった。
「ありがとう」
麗香は微笑むと静かに助手席に座った。その笑顔に啓司は背中がゾクッとした。それがなんなのかは啓司にもわからなかった。
そのままそこに立ち尽くしていた啓司に、麗香が車の中から声をかけた。
「あの、そろそろまいりません?」
その言葉に啓司は我に帰った。
「あ、ああ。失礼」
そういうと啓司は車の助手席側のドアを閉め、運転席に慌てて戻った。そして、ドライバーシートに座ると、ドアを閉め、エンジンをかけた。
「それでは行こうか」
「あの、安全ベルトがまだ・・・」
「え?あ、ああ」
助手席を見ると麗香はしっかりとベルトをしていた。啓司はいつもなら決してベルトなどしないのだが、まるで傀儡子に操られる人形のようにギクシャクしながらベルトを留めると車を走らせた。
啓司はある選択に迫られていた。今日考えていたデート・コースはいつもの子供っぽい麗香に合わせたものだった。だが、今日の彼女はいつもの彼女とは違っていた。予定したコースでは彼女に愛想をつかれそうだった。     そこで、瞬時に啓司はデート・コースの予定を変更した。
「どこに行くのですか?」
「今日は僕に任せてくれないか?絶対君を退屈させないよ」
「ウフッ」
いつもと同じ笑顔なのだが、今日の麗香の笑顔には妖しい雰囲気が合った。啓司はその笑顔に背筋をゾクッとさせながらも惹かれていった。

「今日は楽しかったです」
「それはよかった」
ある高級ホテルの最上階にある展望ラウンジで二人は向かい合って座りながら食事をとっていた。やがて食事を終え、同じフロアにあるバーのカウンターに座って今日のデートの余韻を楽しんでいた。
「さて、どうだい?カクテルでも」
「え?でも、わたしは、お酒は・・・」
「あはは・・そんなに強くはないよ。カクテルってさ」
「でもお酒でしょう?わたし、お酒を飲むと眠くなってしまうので・・・」
「大丈夫。アルコールが入っていないカクテルもあるんだよ」
「え?そうなんですか」
「ああ、彼女にはアレを。ボクには水割りを」
バーテンは無言で頷くと、啓司には水割りを、麗香にはカクテルを作ると静かに差し出した。麗香は恐る恐るカクテルグラスに手を伸ばした。手に持ったカクテルはバーのライトに照らし出されて、きらきらと輝いてきれいだった。彼女はそのカクテルグラスに可愛い唇を近づけて、そのカクテルを少し飲んでみた。
「甘くておいしい」
そう呟くと彼女は唇をカクテルグラスにつけて、静かにグラスを傾けた。そして、彼女は何度もグラスを傾けて初めてのカクテルを楽しんだ。

「さて、お姫様。そろそろ参りましょうか」
「う、う~ん」
「さあ、行こうか」
「う、う~~ん」
「困ったなぁ。起きてくれそうもないなぁ」
啓司は困ったような顔をしてバーテンを見た。だが、その目は笑っていた。
「さあ、お姫様参りましょう」
グタ~としてカウンターに臥せっていた麗香の身体を支えながらバーを出て行った。
「こうまで酔っていては家には帰れないなぁ。少し酔いを覚ましていくか」
 啓司は誰に言うとでもなく小さな声で呟いた。啓司に抱きかかえられた麗香は首もくた~と後ろにそらせて、啓司の言葉に頷くかのように麗香の頭がかくかくと動いた。
 「さあ着きましたよお姫様。といっても眠れる森の姫だから無駄か。フッ」
 啓司は麗香を抱いたまま、あらかじめ予約していたスイートルームに入っていった。そして、きれいにベッドメイキングされたダブルベッドの上に麗香を寝かせた。そして、寝息を立てている麗香の服を起さないように気をつけながら脱がすと、今度は下着に手を掛けた。
「こんなもので締め付けていたら息苦しいだろう。取ってあげようね」
 着やせするのか、服を脱がした麗香の胸はその身体に似合わずに大きかった。
「胸だけでなく腰も・・・ククク」
 啓司はまるっきり意識のなくなった女を襲うスケベ親父だった。いや、気を失ったご主人様のお嬢様を人目のつかないところに連れ去って、思いを遂げようとしている下男と言う方が近いかもしれない。
「さあその清楚な仮面を剥がしてやるぞ。目覚めたらお前は淫乱な本性を現すんだ」
 まだ目覚めない麗香にそうささやきながら、啓司は、なにも身を包むものもなく、生まれたままの姿になった麗香の身体に覆いかぶさった。そして、そのふくよかな胸のきれいな乳首をいやらしく吸いだした。
「んま、んま、んま」
 啓司は、右の胸を吸いながら左の胸を揉みあげた。まだ目覚めない麗香だったが、身悶えだした。
「フフフ、感じているみたいだな。お楽しみはこれからだよ」
 啓司はさらに続けた。と、首筋に一瞬痛みが走った。乳首を嘗め回していて、筋をおかしくしたのだろう。だが、すぐに痛みは消えて、啓司は何事もなかったように愛撫を続けた。
「なかなか感度はいいみたいだな」
 眼を閉じたまま、麗香が声を出し始めた。
「あ、あ、あ~~ん」
「クヒヒ・・・これからもっとよくなるぞ」
 啓司は胸にかぶりついていた顔を上げて、麗香の顔を見つめた。麗香の清楚な顔は快感をあらわにしていた。
「んぐんぐんぐ・・ん?」
 麗香が目を覚まし、ムクムクと起きだした。
「な、なんだ?」
「ん?ア~アァ、お前があんまり下手なんで、退屈してさ」
「お、おまえ・・」
「おいおい、もう少しうまくやれよ。感じないじゃねえか」
「な、なに?お前は誰だ?」
「だれだって、お前のがぁ~るふれんどの麗香だよ」
「イヤ、麗香じゃない。彼女はそんな言葉遣いはしないぞ」
「いつもはおとなしくしているのだけど、お前があんまりヘタだからな」
 啓司はいつもと違う麗香の態度に目を見張った。麗香はちらっと啓司の顔を見て馬鹿にしたような笑みを浮かべた。
「ほんとヘタね。そんなのでは女は感じなくてよ。わたしが教えてあげるわ。女の扱い方」
「なにを言っているんだ。お前は」
「そうそう、男のままじゃダメね。女にならないと」
「な、なに?」
 麗香は啓司の股間に手を伸ばすと彼のペニスを掴んだ。そして、力を入れて握るとそれを引っ張った。
「ポン」
まるでそんな音がしたかのようだった。啓司のペニスは袋ごときれいに彼の股間から取れた。そして、麗香は、取れたペニスを自分の股間にくっつけた。すると、ふくよかだった麗香の胸はしぼみ、しなやかだった身体には筋肉がつき始め、見る見るうちに麗香の身体はたくましい男の身体に変わった。頭は女のときの麗香のままなのが倒錯的だった。
「ふう、男になれたな。今度はお前の番だな」
 その声も男らしく変わっていた。
「や、やめろ~」
 啓司は男になった麗香から逃れようとしたが、だがそのたくましい腕につかまれ、後から押さえつけられてしまった。
「こんな固い体じゃダメだな。さあ、感じてしなやかな身体に変わりな」
 啓司は、後ろから麗香の太い左腕で首を絞められ身動きが取れない身体を、たくましい右腕に触りまくられていた。少しでも逆らおうものなら首を締め上げられた。
「平たい胸だなぁ。もう少し胸がねえとな」
 麗香は平らな啓司の左胸を揉み上げだした。すると啓司は感じるのか声をあげた。
「あ、ああ~~ん」
 その声は、まだ野太いが、まるで女の悶える時の声のようだった。もまれるたびに啓司の左胸は膨れ上がっていった。
「左はまあまあだな。でも悶える時の声がこのままではいけないなぁ。これはやはり」
「や、やめてくれ」
 だが、麗香はやめる様子もなく啓司の首を掴み、締め上げた。啓司は息苦しくなり手足を振るわせた。すると麗香の手が緩んだ。
「安心しろ。殺しはしない。これくらいでいいだろう」
 そういうと、今度は右胸を揉みだした。
「い、いや。あ、ああ~ん」
 啓司の口から出た声はかわいらしく悶える女の声だった。
「え、こ、この声は・・・」
「お前の声だよ」
「ま、まさか。そんな・・・」
 声は啓司がしゃべるとおりに聞こえた。それは確かに啓司の声だった。
「声も、胸もまずまずだな。触ってみな」
 麗香の言葉に、啓司は恐る恐る自分の胸を見た。そこには女のように大きく膨らんだ胸があった。啓司は恐る恐る触ってみた。それはやわらかく触ると敏感に電気のようなものが胸から頭に走った。
「どうだ。いいだろう、胸があるって」
「い、いやだ。元に戻してくれ」
 啓司は一瞬でも膨らんだ胸を感じる自分が怖かった。このまま女になることを受け入れそうだったからだ。
「元に戻る?それはできないな。だって、お前は女になるんだから」
「いやだ」
「イヤだと言ってもだなぁ。そろそろ腕もだるくなってきたから、力を奪うとするか」
 そういうと、麗香は啓司を押し倒し、右腕をねじり上げた。ねじりあげた右腕を左手で固定すると、右手で右肩をもみだした。そして、肩から肘、指先へと揉みほぐすと啓司の右腕は女のような白くか細い腕に変わった。右腕が終わると今度は左腕を同じように変えた。
「うわ、うわぁ~~」
か細く白い女の腕に変わった自分の腕を見つめて啓司は叫んだ。
「元に、元に戻せ、すぐに戻せ」
「なにを言っているんだ。まだ戻れると思っているのか。これもないのによ」
 麗香は、ビンビンになったあそこを自慢するように啓司の顔の前に突き出して言った。
「これもないのに男に戻れるのかよ」
「か、返せ、これは俺のだ」
 啓司は細く小さくなった手で麗香のペニスを掴んだ。そして引っ張ったが、それはまるで元々麗香のものでもあったかのように取れることはなかった。
「イテテ、人が優しくしていればこのアマァ、なにしやがるんだ。これは俺のものだ」
 麗香はまだ懸命にペニスを掴んで引っ張る啓司の顔を張り倒した。啓司は張り飛ばされても、状況が飲み込めていないようなポカンとした顔で麗香を見た。
「これはおれんだよ。お前は女になったんだ。どうも、身体で覚えないとわからないみたいだな」
 麗香はあそこもたくましくいきり立てながら、殴られた顔を抑えながら麗香を見つめる啓司のそばに近寄って行った。
「お前は女。そして、俺は男なんだよ」
 啓司は麗香のペニスに目を奪われて、その表情には気づいてはいなかった。麗香は啓司の前に立つと、いきなり啓司の頭を掴み、その口の中にいきり立ったペニスを突っ込んだ。
「おら、おら、おら、舐めねぇか。バカヤロウ。歯を絶てんじゃねぇ。舌で優しく舐めるんだよ」
 啓司は頭をつかまれ、無理やりにしゃぶらせられながらも、男としての自我を保とうとしていたが、それは困難なことだった。啓司の男としての自我は意識の奥底へと押しやられた。
「おいおい、どうしたんだよ。しゃぶり方がうまくなったじゃないか」
 麗香は啓司の舌技に感じていた。その優しく艶かしいしゃぶり方。それは、さっきまでの啓司の舌の動きではなかった。おもわず麗香は出してしまった。それを啓司は当たり前のように飲み込んだ。微笑さえ浮かべながら。
「ぐふふふ・・・」
 麗香はそんな啓司を見て笑った。

「真紀さ~ン」
 あの日から数日後、麗香が泣きながら真紀の部屋にやって来た。
「どうしたの?」
「かれが、かれが・・」
「彼がどうしたの?」
「うわ~~~ん」
 麗香は真紀の胸に顔をうずめて泣きじゃくった。
「落ち着いて麗香ちゃん。訳を話してくれる?」
「はい」
 ひとしきり泣いて落ち着いたのか。麗香はポツリポツリと話し出した。
「あの、デートの約束をした日の朝、突然キャンセルの電話が来て、風邪を引いて、熱が出たと言うから心配していたの。そして、ずっと大学を休んでいて、今日久しぶりに大学に出てきたかと思ったら・・・エッ、、エッ、、エッ、、、」
 また麗香は嗚咽しながら泣き出した。
「麗香ちゃん」
「ごめんなさい。今日出てきた彼は変わっていたの」
「変わっていた?」
「ええ、女の人になっていたの」
「それはどういうこと?」
「わからないわ。今日大学に行くと、ちょっと背が高いきれいな女の人がわたしに近寄ってきて『あなたのおかげで生まれ変われたわ』て、言うの。それが」
「彼だったの」
 麗香は小さく頷き、また泣き出した。

「女になったか」
 マンションの地下にある隠れ家のモニターを見ながら俺はつぶやいた。あれだけの体験をしたらそうなるのも仕方がないだろう。俺はふと女になった啓司を見てみたい気がした。
「ま、麗香のフォローは、ヤツに任せるか」
 真紀は俺たちの隠れ蓑だった。管理人のおばさんでは彼女達と親しくなるとしても一線が引かれる。でも、同年代だと安心して深く入り込めるのだ。そのため、俺と相棒は交代で真紀になっていた。
「だが、アイツも凄いものを作ったなぁ。形状記憶ボディスーツだなんて」
 そう、俺があの日、麗香のボディスーツとこの新しいスーツを重ね着していたのだ。俺が着ていたのはペニスをくっつけるとマッチョな男に変わるスーツ。そして、俺の身体を貪る事に夢中だった啓司の首のツボを刺し、奴の思考を停止させて外皮に着た奴の体温がかかれば女性体に変わる男性スーツを着せた。もちろんあそこは簡単に抜けるようになっている。自分の体温で姿が変わるスーツで、女の身体に変わった。それをヤツは、自分が本当に女に変わったと思い込み、この異常事態から逃避する為に男の意識を自ら消し去ってしまった。まあこれで、麗香を狙うやつはいなくなった。
 
「さて、今度はどの子になるかな」
 俺は壁一面のモニターをニヤつきながら見つめた。







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