妖精の復讐

作:灯台守



時刻は昼過ぎ。とある用事が終わり、帰宅する。

玄関の扉に手を掛けた時、ちらと横の窓を見る。

鍵をかけたはずなのに少し開いており、窓の桟にキラキラと光を反射する粉のようなものが付いている。

――フェアリーダストだ。

つまり、『また』妖精が家の中に入り込んでいるということだ



実家で暮らしていた時はほとんどなかったが、一人暮らしのためにこっちに引っ越してきてからは頻繁に妖精を見かけるようになった。

なんでも、近くの森に奴らの根城があるらしく、近所でも妖精のいたずらによる被害をよく耳にする。

実際、自分もつい先日被害にあったばかりだった。

後輩からおみやげでもらい、後で食べようと思っていた有名店の焼き菓子。

その日帰宅したときに何者かの気配を感じ、慌てて家の中を探ると、キッチンで妖精が焼き菓子を食べ散らかしている現場に鉢合わせてしまった。

妖精に手出しをしてはいけない。手を出したらひどい仕返しをされてしまう。そう親から聞かされてきたので、そのときは追い出すだけで済ましたが、後でお菓子の残骸を片付けている時にムラムラと怒りが湧いてきた。

そもそも先に手を出してきたのは向こうだ。それなら、こちらが仕返しするくらいいいじゃないいか。次に来た時にほんの少し痛い目を見せてやる。ただそれだけだ。

そう考え、妖精をひっかけるための罠を仕掛けたのだった。



妖精が侵入した痕跡を確認し、そろりと玄関の扉を開き家の中へと入る。

荷物を置き、罠を仕掛けた場所まで忍び寄る。

前と同じ、キッチンの戸棚。焼き菓子を入れていたところに今回も同じようなお菓子を購入して設置しておいた。

もちろんそれは妖精を釣るための餌で、戸棚を開くと背後からトリモチの付いた板がゆっくり迫り出す仕組みになっており、お菓子に見とれてるうちに気が付けば捕らえられている、という単純な罠が仕掛けてある。

そんなものに嵌まるわけが無さそうだが、基本的に妖精は頭があまり良くない。

目の前に甘いモノがあればそれに飛びついてまわりのことなど気にすることもないだろう、と考えたのだ。

そしてその考えは正しかったようで、キッチンからは何か甲高い声で喚く声が聞こえてきていた。

……しめた。キッチンを覗き込むと、そこには予想通りトリモチに引っ付いて、なんとか体を引き剥がそうともがく妖精がいた。

あまりにも予想通りに上手く事が進んでいるのを見て、思わず笑ってしまった。

やはり妖精。大した事などない。

罠に近付きそっとトリモチと妖精のついた板を外す。

「………!……っ…!!」

妖精はこちらに向かって何か喚いているが早口なので何を言っているか聞き取れない。

それにしても、こんな真近くで妖精を見るのは初めてかも知れない。

改めてまじまじと見ると、幼い体つきにフリフリとした衣装。体長は手のひらいっぱいぐらい。鮮やかな桃色の髪をリボンで左右で結びツインテールにしている。

案外可愛い見た目をしているものだ。

……もっとも今はトリモチでべたべたな上に、涙で濡れた顔でこちらに向かって喚いているのであまり見れたものではないが。

そう思いながら、妖精付きの板を玄関まで持っていく。そして玄関横に晒し者のように立てかけておいた。

わざわざ捕まえたのは、こうして見せしめにすることで二度と妖精達にいたずらされないようにするためだった。この家に侵入すると同じ目に遭うぞ、と。

とにかく、これで妖精に悩まされることもないだろう。

見せしめの妖精は、一人で脱出するか、仲間に助けてもらうか、そうでなければ少し時間が経ったら逃がしてやろう。



夕方、妖精の様子を確認しに行ったら、自力で抜けだしたのか、既に姿はなかった。



--------------------------------------------



夕飯を済ませ、風呂に入る。

今日は妖精を撃退したのでなんとなく気分が良く、鼻歌をふかしながら体を洗う。

そのとき横から何かごそごそと物音が聞こえたので顔を向けてみる。

脱衣所の方からだろうか、だが特に変わった様子はない。気のせいだったか、虫でも入り込んでいたのだろう。

すぐにそんなことも忘れて、上機嫌で湯船に浸かり、風呂から上がって脱衣所に出たときだった。

ずぷ、と踏み出した足が沈み込んだ気がした。

いや、気がしただけではなく実際に足は床に沈み込んでいた。

突然の出来事だったので対応できず、もう片方の足も床についてしまい、同様にずぷぷと呑み込まれていく。

両足が呑まれると一気に腰のあたりまで体が床に引きずり込まれた。

なんとか手を付くことができたが、既に下半身は全て呑み込まれてしまっていた。

床が抜けた?いや、そんな感触や音はしなかった。

抜けた床のまわりをよく見ると、キラキラと輝いている。

……フェアリーダスト。つまりこれは妖精の仕業だ。

なんとまあ、懲りずに仕返しに来たというのだろうか。それにしても室内に落とし穴だとは考えもしなかった。

穴に嵌った下半身は何か柔らかいものにすっぽり包まれ締め付けられている。落とし穴の蓋の素材が何なのかわからないが恐らくそれが伸びて下半身に絡みついているようだ。

それにしても腰まで嵌った状態で足が付かないとは結構深い落とし穴を掘ってくれたものだ。後始末をするのはこっちだというのに。

ともあれ、風呂あがりだしこのままだと湯冷めしてしまうので、さっさと抜けだしてしまおう。

そう思って付いた腕に力を込めて体を持ち上げようとした。

……のだが、下半身を包んだ何かが、ぐいぐいと下に引っ張るようにそれを妨げる。

どうやら腕の力だけでは抜け出せないらいしい。

それならば足を穴の壁に掛けて持ち上げればと足を動かしてみるが、底はおろか、穴の壁にさえ足先が触れない。

なんとか何かに引っ掛けようと足をバタつかせていると、次第にその振動でずぶぶ、と体が穴にしずみこんでしまう。

……この穴、どれだけ広いんだ?

もしかすると底がないのではないかという一種の薄ら寒さを覚え、再び腕の力で体を抜こうとするが、既に胸下まで包み込んだ柔らかい『何か』の吸引力は先程の比ではなく、力を込めても段々と沈み込んでいくようになってしまっていた。

慌てて何か掴まるものはないかと辺りを見回そうとした時、必死で沈み込む体を抑えていた手がつるっと滑ってしまった。

抑えるものが無くなった途端、タガが外れたように胸、肩、腕、そして頭全身がとものすごい勢いで穴へと吸い込まれてしまった。

頭が穴の縁を通過する瞬間、ぱちん、という音と共に頭の先まで柔らかい『何か』が貼り付いて来るのを感じ、同時に体がふわりと浮遊感に包まれる。

未だに足は底に付いていない。つまり、落ちる……。


頭がひっくり返りそうになりながら、遠ざかる脱衣所の明かりと穴の縁が見えた。

深すぎる。と思った矢先にぺちゃっという音と、体に衝撃が走る。

痛みを予感したが、落ちた高さの感覚とは裏腹に痛みはなく、怪我もないようだった。

慌てて起き上がり、辺りを見回すも薄暗い穴の底ではあまり良く見えず、湿った感触とねばりけのある液体が溜まっていることぐらいしかわからない。

なんだか、甘ったるい匂いが充満している。この液体の匂いだろうか。

見上げると自力では登っていけないような高さに、円形に切り取られた脱衣所の天井が見えている。

と、ここで違和感に気付く。

なんで穴があんなに大きいんだ?

嵌った時は直径が肩幅くらいしかなかったはずなのに、今はまるでドームの天井かと見紛うほど広くなっている。

そもそも、穴の底もこの広さなら家の下がまるまる落とし穴の空間になっているレベルだ。

そしてそれだけじゃない。穴に落ちた時からずっと感じていた下半身の包み込まれた締付け感。それが今も続いており、爪先から頭の上まで全身がぴったりと何かに吸着されているような、全身を余すことなく強く抱きしめられているかのような感覚になっている。

特に股間の辺りがきゅうきゅうと締め付けられ、また顔も口や鼻の奥まで何かが張り付いているような感触がある。

何かを着せられたのかと嫌な予感がしながら、恐る恐る体を見下ろす。

しかし、予想とは裏腹に、そこにあったのは裸の体だった。

薄暗い中でも、その肢体ははっきりと見えた。

ゆるやかに、それでもはっきりとふくらんだ胸と、その頂点を彩る桜色のぷっくりとした乳首。

その左右にはぷにぷにと柔らかそうな触り心地のありそうな小さな手と短い指。

更に下に目を向けると全く毛の生えていない少しぷっくりと膨らんだ股に、その中心を通るように刻まれた一本の溝。

明らかに男の自分の体ではない……女の、それも幼い少女の体が、間違いなく自分の体のあるべき場所に存在していた。

一体何が起こったのか?自分の体ではないとはいえ、裸なのに感じるこの全身の圧迫感は何なんだ?

腕を動かしてみると思った通りに少女の体は動く。それと同時に体の強く締め付ける箇所が若干変わる。

まるで……まるでこの少女の体の中に自分の本来の体が存在するかのように。

「あはは、引っ掛かった引っ掛かった!」

呆然と体を見つめていると、突然上から声がしてハッとそちらを見る。

そこには3人の少女がふわりと浮かんでいた。

こちらを指差してころころと笑っている桃色の髪の少女と、その両脇に青髪と金髪の少女がくすくすと笑いながらこちらを見下している。

真ん中の少女は見たことがある……というか、昼に捕まえた妖精じゃないか。

だけどなんで妖精がこんなに大きいんだ。

お前ら、俺に何をした。そう聞こうとしたが、その時出た自分の声に驚き思わず喉に手をやる。

自分の声、と言ったが喉から出てきたのは聞き慣れた声ではなく、高い女の子の声だったからだ。

「あれぇ、まだ自分がどうなってるのか理解できてないの?これだから人間はバカで困るよねぇ」

ふふんと鼻を鳴らしながらこちらを馬鹿にしてくる桃髪の妖精。

「あなたが戸棚に変なモノを取り付けたせいで、お菓子は食べられなかったし、ベタベタがくっついてお気に入りの服は台無しになっちゃったし、おまけに羽根はぼろぼろになっちゃったしで大変だったんだからね」

それはお前が勝手に不法侵入してきたせいだろうと言い返したかったが、妖精は続けて話し始める。

「だから、ぼろぼろになっちゃった羽根を一新するついでにあなたに復讐しようと思ったの。それがこの妖精式人間捕獲トラップ」

青髪の妖精がさっと手をかざすと、眼前に光が長方形に集まってくる。

光が収まるとそこには人間大の鏡が現れていた。初めて見たが、これが妖精の魔法というものだろうか。

しかし、そんなことよりも問題は反射面がこちらを向いている鏡に映っている自分の姿だった。

男がいなければならないはずのそこには、先程自分の目で確認した女の子の体があり、首から上も桃色の髪にリボンで結ばれたツインテールにくりくりとした瞳、そして背中からはぼろぼろになった透き通った羽根が映っていたのだから。

それは紛れも無く、昼間にトリモチでもがいていた妖精の姿だった。

つまり、目の前の妖精たちが大きいのではない。どういうわけか自分自身が妖精サイズに縮んでしまっているということを示していた。

「ふふ、やっと理解できた?自分が今は妖精とおんなじ大きさに、それどころか妖精そのものになっちゃってるって」

鏡の後ろから桃髪妖精がひょっこり顔を出してくる。

「魔法で脱皮した私の皮を、穴の蓋に広げて設置しておいたの。あなたは見事トラップに引っかかって私の皮に包み込まれて縮小されながら穴の底に落ちたってわけ」

妖精の説明によりやっと穴が大きくなってしまっていることと、この全身に感じる締付け感の正体が判明した。つまり本当に自分の体はこの妖精の皮の中に押し込められてしまっているということだ。

人間が妖精サイズまで小さくなるなんて無理なような気がするが、そこは魔法の力なのだろう。

なんにせよ、この状況から脱出する術は一つ。縮んでいるのが妖精の皮のせいならその皮を脱いでしまえばいいだけだ。

そう考え、体が入っていったであろう皮の裂け目を探す。

と、そんな自分をにやにやと妖精たちが見つめていることに気がついた。

「脱ごうとしたって無駄だよ。なんて言ったって中身と外身の大きさが違いすぎて、ものすごい力で吸着してるから、妖精の力じゃ裂け目を開いたり手足を皮から抜いたりすることはできないからね。もちろん、妖精サイズになっちゃったあなたにも、ね」

こちらの希望を潰すように妖精たちは言った。

「その皮から抜けだそうと思ったら誰か他の人間に頼んで引っ張りだしてもらわないといけないんじゃないかなぁ?」

妖精たちの言葉を聞き、絶望する。

この皮が脱げないのだとしたら、今の状況から自力で逃れる方法がないということだ。

「さて、自分が置かれてる状況はわかったかな? でも、お仕置きはこれからが本番なんだよねぇ」

けたけたと笑いながら桃髪妖精は言う。

「この穴の底に溜まってるのは媚薬スライムって言って、触ってるとどんどん感覚が敏感になっていっちゃう代物だからね。あなたはそこに浸かったまま助けも呼べずに放置されちゃうの。そしたらどうなるのかなぁ?……私をひどい目に合わせたんだかざまーみろってやつよね」

この甘ったるい匂いは媚薬スライムのものだったのか。そうなるとまずい。

慌ててスライムに触れている面積を減らそうと立ち上がろうとするが、既に大分回っていたのか、手をついた振動だけでじんじんと全身に快感が走り、また、スライムのぬめりけから上手く体を起こせない。

そういえばさっきからなんだか体が熱い気がする。特に、下腹部の辺りが。

そう意識してしまうと、本来の男のモノが皮の締め付けの内側でぐっと膨らむのを感じ、またそれとは別に本来無いはずの下腹部の器官がきゅんと収縮するような感覚が頭に届く。

このままではまずい。そう思ってもじわじわと忍び寄る性感に息が荒くなっていく。

「その皮の裂け目は背中にあるの。そこからもスライムは入り込んでいって、あなたの体は内からも外からも媚薬漬けになっちゃうでしょうね。……ま、しばらくしたら上まで引っ張り上げるくらいはしてあげてもいいかもね」

そう言い放つと、桃髪妖精は羽根を羽ばたかせその場を去ろうとする。

だめだ。彼女らが去ってしまったら、ここで自分は妖精の体のまま媚薬漬けにされてしまう。

そう思って引き止めようとした時、徐ろに金髪妖精が口を開いた。


「……ねえ、こいつ今ここで犯してかない?」

突然の提案に、桃髪は飛び立つのを止める。

「どうしたの急に?」

「いやあ、さっきからさ、媚薬スライムの匂い嗅いでたらさあ、なんかちょっと興奮してきちゃって」

そう言う金髪妖精は確かに顔が若干紅潮している。

「あ〜……それ私もかも」

青髪もそれに続く。

「それにほら、あいつもなんか目がトロンとしてきてるし、準備万端って感じだしさ」

こちらを目で指しながら青髪が桃髪に言う。

「はあ、もうあなたたちが言うなら仕方ないなぁ」

ついさっきまでその場を去ろうとしていた桃髪も、なぜかその意見に肯定し始める。

それは、このまま放置されることはないということと同時に、恐ろしい事がこれから始まるということだった。

目の前で、妖精たちが着ている服を脱ぎ始める。

逃げ出そうと思っても少し動いただけで皮と体が擦れて快感が走り、力が抜けてしまう。

そもそもこの穴から出られないので、逃げる場所など存在しないのだ。

そうしている内に彼女らは裸になっており、金髪妖精がずし、と腹の上にのしかかってきた。

「んふふ、おまたせ。じゃあ気持よくなろっか」

そう言って彼女は腹に乗っかったままその手を今は膨らんでいる少女の胸に伸ばした。

そして止める間もなく乳首をつねられる。

ぴりっとした感覚に、少し遅れて強い快感が胸の両方から広がる。

その感覚は媚薬スライムの効果により増幅され全身へと伝達される。

今まで受けたことのない、乳首からの快感に声が出るのを抑えられない。

「じゃあわたしはこっち〜」

金髪の向こうから声がする。

すると閉じていた脚をガバリと開かれる。

「しっかり媚薬スライムを塗りこんであげるからね〜」

その言葉の後、ぬめりと秘部に――男の象徴はない、少女の割れ目にしなやかな指が這う。

スライムが粘膜に触れるとじんじんとした感覚がより強くなる。指が秘部の上部の突起に触れると全身がビクリと震え、それに呼応し皮がぎゅっと全身を締め付ける。

「じゃあわたしはお口を頂こうっと。……自分と同じ体を犯すってなんかちょっと興奮するかも」

もうやめてくれ。そう声をあげようとした口を横から現れた最後の一人の桃髪の妖精が塞ぐ。

じゅる、じゅると口内を吸われ、舌で舐め回される。

上顎を舌で撫でられるとまるで口が性器になったかのように快感が溢れる。

腹では金髪がその小さな手を使って周りからかき集めたスライムを塗りたくりつつ乳首を弄くっている。

股では青髪が今度は指ではなく口を使って舐め回しているようだ。

もうだめだ。少女のような体を、媚薬で強制的に感覚を引き上げられ、妖精に体中を弄くられ、そしてその内側で皮の締め付けによって本来の体を犯される。

もう体のどこから溢れてくる快感なのかわからないまま、意にそぐわない絶頂を迎える。

ビクビクと痙攣し、弓なりに反りかえろうとする体を妖精たちに押さえつけられ、それでも跳ねる体を抑えられない。

イッてしまったのは外側の妖精の体だけのようで、内側では男の象徴がこれまでないほど漲って、皮による股間の圧迫がより強まっていた。

だがそんな様子は外側からはわからない。

イッたことを確認した妖精たちはポジションを変え再び攻め始める。

彼女たちも全身に媚薬スライムがへばりつき、その顔は興奮して紅潮している。

そんな快楽に狂った妖精たちに、口をしゃぶられ、胸同士を擦り合わされ、貝を合わせるように股間を擦り合わされ、腕や、腹、脚さえも彼女たちの性のはけ口にされる。

その状況に、自分は何もできずただ絶頂を繰り返すだけだった。

彼女たちが満足するまで、何度も、何度も、何度も……



--------------------------------------------



気がついた時、そこは薄暗く、甘ったるい匂いの漂う穴の底ではなかった。

高い木の内部に作られた、妖精たちの住処。

調度品なども揃っており意外なほどに人間に近い生活を送っているそのひとつに連れてこられていた。

もちろん、妖精として仲間に迎え入れるため……などではない。

あの乱交の時に、たっぷりと内にも外にも媚薬が塗り込まれたこの体は、交わるだけで気持よくなれるという妖精たちの都合のいい性奴隷として扱われていた。

別に縛られたり、拘束されたり自由を奪われているわけではない。

しかし高い木の上にあるここからは妖精のように飛べなければ出ることができない。

この体は妖精の皮を着せられているが、決して飛べるようになるわけではない。最も飛べたとしてもトリモチでぼろぼろになった羽根では飛ぶことは出来なかっただろう。

木を伝って降りようにも、快感で力が入らずまともに動けない体では落ちてしまうだろう。

それにこの皮を脱ぐためには人に頼まなくてはならない。だけどこんな状態で人前に出たら一体何をされるかわからない。最悪、どこかに売り飛ばされたり、人間の性奴隷にされてしまうかもしれないと考えると、とてもじゃないが出て行く勇気がなかった。

そうして精神的にも、身体的にもここから逃げ出せないまま、妖精たちの気の向いた時に相手をさせられる毎日を送ることになってしまった。

妖精に手を出してはいけない。

その言葉の意味を噛み締めながら、ただただ後悔するだけだった。









inserted by FC2 system