『ある夏休みの出来事』
               
闇との接触、闇へと堕ちて……
                作:teru


青空が広がり、秋風が爽やかな朝。
中学校の門を入り、校舎に向かって歩いていると背後から先生が声を掛けてくる。
「加藤。どうだ、転校してきてから一ヶ月ほど経つがこの学校にはもう慣れたか?」
僕は立ち止まり、後ろを振り返って返事を返す。
「はい、先生。皆よくしてくれますし、友人も出来ましたから」
話していると今度はグラウンドの方から来た鈴木が声を掛けてくる。
「おぉ、加藤。サッカー部に入らないか?一緒にサッカーやろうぜ」
鈴木はサッカー部で今日も朝から朝練をやっていたのかジャージ姿だ。
僕はそんな鈴木に笑顔で応えた。
                 *
僕にこんな日が来るとは思っていなかった。 そう、あの夏の日、僕の運命を決定的に変えたあの夜……

               * * *

夏休みに入ったばかりのある夜……
ハッ、ハッ、ハッ……
僕は光る闇の中を突っ走っていた。
 
背後からは何者かが追いすがって来る息づかいが途絶える事がない。
眩い月光が降り注ぐ雑木林の間を必死に逃げ惑う。
「あれは多分、吸血鬼だ。 捕まったら殺される」
数分前に見た光景が脳裏に甦る。
              *
人気がないような森の奥にあった小さな二階建ての煉瓦作りの洋館。
森で迷っていた僕は、その扉の前に立っていた。
人が居るとは思えない洋館の扉のノブに手を掛けるとそれは意に反して軽く回り、扉が小さな軋み音と共に
開いていく。 
「あれ?鍵が掛かっていない?不用心だなぁ。泥棒に入られたらどうするんだ」
薄暗闇の中を慎重に進んで行き、奥にキッチンを見つけ、冷蔵庫を開けると中には食材が入っていた。
夜になるまで森の中を彷徨っていた僕は腹が減っていた事もあり、悪いと思いつつ中からハムやチーズを取
りだし、そのままかぶりついた。
「冷蔵庫に食材が入っていると言う事は住人がいるって事だよな?」
腹がある程度満たされ、人心地が付いた僕はその事に気づいた。
「しかし、屋敷の中は暗かった。 出掛けているのかな?」
その時、二階から幽かな話し声が聞こえてきたような気がした。
「不味いな。人が居たのか。しかも話し声という事は最低でも二人は居るということだ」
僕は忍び足で階段を上がっていった。 この時、妙な好奇心を起こさずに素直に足を外に向けていれば運命
は変わっていただろう……
その声は二階の一室から漏れていた。
僕はそっとドアに近寄り、扉を少しだけ開けて中を窺う。
そこでは大きな窓から差し込む月光の下で男女がベッドシーンを行っていた。
「早く、早く、ねぇ……」
「ふふ、そう焦らないでくれよ。まずは食事からだろ?」
ベッドの上で銀髪ストレートヘアの若い女性が甘えるような声で金髪の男にしな垂れかかり、男が余裕の顔
で女性の顎を持ち上げる。
うわっ、僕は状況を忘れて思わず目を見開いてベッドの上の男女見つめてしまう。 ネットでモザイクの掛
かったアダルト動画を見た事はあったが実際にソレを見るのは初めてだった。 しかも洋物!
「だったら、すぐに……」
何かを求めるように物欲しそうな眼で女性が男に腕を伸ばす。
「わかったよ」
そういうと男が突然、赤い眼を光らせて女性の首に牙を突き立てる。 赤い眼?牙!?
え?え?どういうことだ!?ウソだろ?
僕の眼がさらに大きく見開かれる。
「あぁぁ、あふぅん……」
男は女性の首筋に噛みつき、そこから血を吸っている!女性は恍惚の表情で顔を蕩けさせている。
「きゅ、吸血鬼…… マジかよ?ほ、本当にいるのか?」
その光景から目を反らせないまま、震える声で呟く。 
そんなものが実在してるのか?映画かTVの撮影……じゃない事は明らかだ。
キィ。その時、幽かに僕が寄りかかるようにして隠れていたドアが鳴った。
そして顔を上げた男の赤い眼とそれを覗き込んでいる僕の目があった。
「誰だ!」
見られた!殺される!僕は思わず飛ぶように階段を駆け下り、玄関の扉を蹴り破るような勢いで飛び出す。
「どうしたの?」
「侵入者だ!見られた、追え!」
遠く背後でそんな声が聞こえた。
一目散に林の小径を走る。 背中には後ろから誰かが追い掛けてくる足音が付いてくる。
いくら逃げても逃げても追ってくる気配が消える事がない。
月が叢雲に隠され、明るかった夜道が隠されれ、数多に輝く幽かな星明かりだけが光源になる。
そう言えば吸血鬼は川を越えられないと聞いた気がする。
川!そうだ!近くに清美川が流れている。 それなりの水量がある大きな川だが、入っていけないほどじゃ
ない。
土手の堤が見えてきた、あそこを越えれば……
「つ~かまえた」
背後から誰かの手が僕の肩に伸びたかと思うと若い女の妖艶な声が聞こえた。女の甘い匂いが鼻腔をくすぐ
る。 その匂いを嗅いただけでわけのわからない感情が呼び覚まされる。
その恐怖に足が震え、腰が抜ける。
「う、うわぁ、放せぇ!」
僕は両腕を振り回して肩に伸びた女の手を無我夢中で振り払う。
ガツッ!
「痛っ!」
僕の腕が女の顔に当たったようだ。
女の手が僕の肩から離れ、腕が当たった口元に当てられる。
チャンスだ。僕は再び逃げようと膝立ちになり前に向き直る。
しかし、そこにはすでに吸血鬼の男が立ちはだかっていた。
「ははは、逃げてもらうのは心外だな。 しかし、泥棒にしては小さいな、中学生くらいか?」
長身の男は笑って僕を見下ろす。
「中学生で悪いか。目撃者の僕を殺すのか?」
前後を塞がれた形になり、逃げ場を失った僕は吸血鬼に震える声で尋ねる。
「やはり、見ていたか。 でも、殺したりはしないから安心していいよ。ただ、すこしばかり記憶を失って
もらうけどね」
「記憶を……?」
「あまり、この辺で身元不明者を出したくないし、死体が発見されて注目されるのもイヤだからな。 不審
な出来事はハンターの目を引くことになりかねない。 だから、この魔眼で屋敷に入る前くらいからの記憶
を失ってもらう。 その後は勝手にしたらいいさ」
そういって赤い目で僕の目を覗き込む。
「ちょっと待て、ブラムス」
僕に魔眼を向けようとした吸血鬼に最初に追って来た女性が声を掛ける。
「なんだい、トーカ?」
吸血鬼は女性を見て尋ねる。
女性は僕の腕を掴んで持ち上げる。
「噛んじまった」
「え?」
吸血鬼がポカンとした目を僕の腕に向ける。
「こいつが振り回した手が俺の口に当たったんだ」
そう言って持ち上げられた僕の腕には血が滲んでいた。 
どうやら僕の振り回した腕が女性の歯に当たってしまったようだ。
「………… これはアウトか?」
月が未だに叢雲に隠されている夜空を見上げて吸血鬼がつぶやく。
「わからないが、ヤバイと思うぞ」
吸血鬼と女性が顔を見合わせてる。
えっと、まて?僕って吸血鬼に噛まれたって事か?
「え?え?え?僕、ひょっとして吸血鬼になっちまうのか?」
「おいおい、吸血鬼の吸血行為と下僕化は別物だぞ?吸血鬼が意識しなければ下僕になったりしないから」
呆れたような目で僕を見る吸血鬼。
その言葉に僕はほっとする。
「ただなぁ、こいつは吸血鬼じゃないんだよ」
そう言って彼女を指さす。
「え?それはどういう……」
「とりあえず、君をこの場で解放するわけにはいかなくなった。 ちょっとウチまで来てもらおうか」
そう言って僕の腕を取る吸血鬼、もう片方の腕を女性が掴む。
両脇を二人の強い力に固められて、僕は抵抗も許されずに否応もなくあの屋敷へと引きずられるように連れ
去られていった。
               *
「さてと。まずは君の素性を聞いておこうかね?」
僕は洋館の二人が痴態を演じていたあの寝室に連れ込まれた。カーテンが閉められており、小さなシャンデ
リアの明かりが部屋を満たしている。
当然、ここに来るまでに逃走の隙を窺っていたのだが、逃げるチャンスは全くないまま吸血鬼を挟んで小さ
な木製のアンティークテーブルの対面に座らされている。
「加藤四郎、地元の中学二年生です……」
「その加藤君がなんで夜の我が家に忍び込んでいたのかな?」
吸血鬼が僕を尋問している間に片方の女性が紅茶を僕の前に置いてくれると吸血鬼の隣に座る。
「えっと、ちょっと森の中で夏休みの小遣い稼ぎに虫捕りをしていたら、奥に入り込みすぎて迷って……」
「ここにたどり着いたわけか。家の人間は心配してないのか?」
「二人とも共稼ぎで夜が遅くって。だから割りと放任主義なので、たまに連絡無しに友達に家に外泊する事
もあるから……」
「………… そうか。それはそれで都合がいいか」
テーブルの上で指を組んで吸血鬼が口を開く。
「あの?それで僕は見逃してもらえるのか……いや、もらえるんですか?」
僕は吸血鬼を少し上目遣いで見て尋ねる。
「残念ながらただで見逃すわけにはいかなくなった」
「それは僕がその人に噛まれたから?」
僕は吸血鬼の隣で僕を黙って睨んでいる女性を見て尋ねる。
「そうだ」
「でも!噛まれても吸血鬼になったりしないって!」
僕は声を上げて抗議する。
「吸血鬼に噛まれてもな。残念ながらこいつは吸血鬼じゃない」
「……吸血鬼じゃない?」
僕と吸血鬼は女性に目をやる。
「俺は狼男だ」
女性が僕から目を放さずにポツリと口を開く。
「狼男?」
僕は女性を見つめる。
「吸血鬼も狼男も呪われた生き物だが、呪いの形態が違う。その差が判るか?」
女性が僕に問いかける。
「その差?」
「吸血鬼は人が神を恨んで自ら呪われた者だ。 その呪いは本人の意思によって伝播するが、狼男の呪いは
狂犬病と同じで病害だ。 本人の意思に拘わらずその呪いは伝染する」
「へ?あ。 え?え?え?でも噛まれた?僕、あなたに噛まれた!?」
思わず自分の腕を見る。 そこは彼女の歯が当たり血が滲んだ跡がある。
「ちょ、ちょっと待って!僕、狼になるの?狼に変身してしまうようになるの!」
「落ち着け」
言葉少なに彼女が僕に声を掛ける。
「え?あれ?そう言えば月が出てたのに変身してなかった?狼男になっても変身しないでいられるとか?」
「…………」
「…………」
気の毒そうな目で僕を見る二人。
「えっと?」
「狼男は月の魔力に逆らえないよ。それはこいつだって例外ではない。今も変身してる」
吸血鬼が彼女を指さして微笑む。
「書き換えられたんだ」
女性が悔しそうにつぶやく。
「書き換えられた?」
「私達は絶えず魔物専門のハンターに追われる。吸血鬼の弱点は十字架と白木の杭、狼男には銀製の武器。
それがよく知られた定番だろ。だけど、この国のハンター野郎は!」
怒りの籠もった声で叫ぶ女性。
「ハンターじゃなくって退魔師だったか?わけのわからない術を使う魔術師のようなヤツ。言葉をひねくり
回して呪いを書き換えたり、無効化させて戦うんだよ。 この国に来て、その妙なやつに散々に追い回され
た挙げ句に私は獣の呪いを書き換えられた」
そう言ってドンとテーブルに拳をぶつける女性。
「獣の呪いを書き換えた?」
「俺の暴力性を無効化する為に、野獣の衝動を無害な女の衝動に書き換えたんだ!くそっ!あの野郎」
「つまり、それって?」
「論より証拠。それに確認の意味でも試してみようか?」
そう言って吸血鬼が立ち上がると閉ざされていたカーテンを一気に明ける。
途端に月光が室内を満たす。
視線を上げた先に煌々と輝く月があった。
月光が僕の眼を射る。
「うわぁ!」
ドクン!と心臓が跳ね上がる。
身長が伸び、俺の頭に何かが覆い被さっていく、髪が伸びているのか……
胸が盛り上がるように厚みをもっていき、腰が締め付けられ、尻が重くなり……、股間が熱くなる。
「な、なんだ、これは!」
自分の身体の異変に理解がついていかない。 まるで身体が粘土をこねくり回すように作り替えられていく
感覚が俺を襲う。 立っていられなくなり、身体が床に付く。
「やはり罹患していたか」
「ちっ、面倒だな」
僕のそんな様子を二人が冷静に観察しながら、強引にサイズが合わなくなっていく衣服を二人掛かりで僕の
身体から剥ぎ取り始める。 Tシャツを頭から引き抜き、ジーパンのベルトを弛めると下着ごと、強引に一気
に引き抜かれる。
やがて僕の身体が落ち着いてくると、女性がクローゼットを開けてそこに備え付けられている鏡を指さす。
それを見ろと言う事だろう。 素っ裸にされた僕は立ち上がって恐る恐る鏡に近づく。
「誰だよ、これ?」
鏡の中には全裸の綺麗な美女がいた。
ロングの黒髪に豊満なオッパイ。 括れた腰に張った尻、股間には淡い恥毛、そこには僕の男の象徴がなく
なっていた。 週刊誌のグラビアアイドル顔負けの肢体を持ち、恥ずかしさで顔真っ赤にした女性が中腰で
股間と胸をそれぞれの腕で隠して鏡の中から僕を見つめている。
「正真正銘の君だよ。 君は狼男ならぬ娘男になってしまったんだ」
「娘男ってなんだよ!」
僕は鏡に映った自分自身を見つめながら叫ぶ。
「トーカの説明を聞いてなかったのか? 退魔師によって"狼"の"獣"を"女"に書き換える事で"娘"に変身す
るモンスターに君はなったんだよ」
吸血鬼が淡々と説明する。
「なんなんだよ、巫山戯てるのか!なんで僕がこんなイヤらしい身体になるんだよ!」
腕を組んでも隠しきれないオッパイを抱え、股間を隠そうと内股になった僕は真っ赤な顔で二人に訴える。
クラスの女子達なんかまったく問題にならないくらいのオッパイとお尻を持ち、スッキリとした股間に恥毛
が生えているエロい身体が自分自身で有る事が凄く恥ずかしい。 ちなみに変身前の僕の股間に毛は生えて
なかったのに……
「君は私達の話を聞いてなかったのかね?」
「聞いてたよ、聞いてたけど、まさかこんな巫山戯た状況は想定外だよ!」
「いままで殺されるのどうの騒いでたヤツが命が助かった途端に威勢がいいな」
女性が腕を組んで抗議する僕を睨みつける。
「いや、でもこんなの…… 元に戻るにはどうしたらいいんですか?」
女性の眼光にタジタジと気押されながらも僕は抵抗する。
「戻せるものならとっくに俺が戻ってる。諦めろ」
「じゃ、僕は一生、この身体のまま……」
「ん?あぁ、そういう意味か? 強制的に変身するのは満月の夜だけだ。朝になれば元に戻る」
「あ、そうなんだ?」
「ただし、次の満月になるとまた変身してしまうがな」
「月に一度の女の子の日だね」
「人の不幸を女子のアノ日みたいに言うなぁ!」
僕は思わず吸血鬼の軽口に突っ込んでしまった。
どうも慣れてくると最初のホラーな恐怖が段々と薄らいでいってる気がする。
吸血鬼や狼男(娘男)ってこんなに軽いのか?
「まぁ、あながちアノ日って表現は間違ってるとも言えないな」
吸血鬼が僕を見て苦笑気味にそう言う。
「はぁ?どういう事ですか?」
「さっき、言っただろ? 野獣の衝動を無害な女の衝動に書き換えられたって」
そう言って屈み気味で内股になって隠している僕の股間を指さす。
「え?」
そう言われて、見下ろした僕の手の平で隠されている股間は……、濡れていた。
「え?え?オシッコ?」
思わず太腿に垂れている液体を凝視する。それは僕にできた女の子の割れ目から滴り落ちていた。
「君、セックスの経験は?」
「中二の僕にそんなものがあるわけないでしょ」
僕は滴る液体から目を放さずに吸血鬼の質問に応える。
「女の子の身体についてどれだけ知ってる?性的な意味で?」
「オッパイがあって、チンチンがなくて…… 割れ目がある?あ、月に一度生理になる?」
「セックスってどうやるか知ってる?」
「え?その…… 裸になって抱き合うんでしょ? えっと確か、チンチンを女の子の孔に入れるとか…… 
って。 なんてそんな事を聞くんですか!」
僕は自分が口にした行為に恥ずかしくなる。 股間が熱い……
「その孔って、どこにあるか知ってる?その時、孔がどういう状態になるか」
「え?お尻?お尻の穴に入れるのかな? 状態?状態って何?」
「あぁ、漠然とした知識はあるけど詳しくは知らないんだ?」
「中学生ならまだそんなものか?」
娘男がため息と共に残念そうに吸血鬼と会話する僕を見る。
「まぁ、お尻の穴を使う特殊な性癖の人も居なくはないけど、一般的ではないね」
「だから、何がいいたいんですか! それと裸のままってのもそろそろ辛くなってきてるので、何か隠す物
が欲しいんですけど? その前にトイレでこれを拭いてきていいですか!」
僕は太腿を指さして要求する。
「だから、言っただろ?"野獣の衝動"を"無害な女の衝動"に書き換えたって。 狼男の破壊衝動が娘の性的
な要求に変換されてるんだ。 お前のソレは男を欲しがって、股間に出来たメス穴がペニスを受け容れよう
としてんだよ。 だから、いくら綺麗にしても後からどんどん溢れてくるぞ?」
「……えっと? え?……はい?」
娘男さんの言葉が理解出来ない……
「女性の性教育から始めないと、今、加藤君に起こってる状況が理解出来ないみたいだね」
吸血鬼が面白そうにそう言って説明を始める。 えっと、だからその前に僕に着る物をください。
               *
「はぁ? つまり僕の股間にはチンチンを入れる穴があって、そこにチンチンを受け容れる為の準備として
濡れてくると? いや、僕は男のチンチンを挿入れる気なんて全くないですよ!」
思わず、愛液が垂れて続けている股間を覗き込む。ここに……? しかし、流石に割れ目を広げてまで見る
勇気はない。
「言っただろ?呪いと。 そこにお前の意思は関係ないんだよ。勝手に身体が男を欲しがるんだ」
「でも、トーカさんは平気ですよね?」
「平気じゃねぇよ! これからって時にどこかの出歯亀野郎が現れたせいでずっとお預け状態なんだよ!」
えっと、あれ?さっきから時々不機嫌そうに僕を睨んでたのって欲求不満……
「ブラムス! とにかく一度、俺の身体を落ち着けさせろ!実施で見せればこいつも納得するだろ!」
そう言って立ち上がると吸血鬼のブラムスさんの腕を取って、強引にベッドに引っ張って行く。

「こらこらこら、話の途中だし、子供には刺激が強すぎるだろ?」
「うるさい。どうせ避けて通れない道なんだからいいんだよ! 加藤、よく見ておけよ」
そう言うと服のボタンを外すとブラウスを脱ぎ捨てる。 大きな乳がプルンと揺れる。 あ、ブラってして
ないんだ?
ブラムスさんの開襟のシャツのボタンを同じように外して胸をはだけさせるとむしゃぶりつくようにそこに
顔を埋める。
「あぁ、ブラムス、ブラムスゥ……」
両腕を背中に回して愛おしそうにブラムスの身体を嘗め回すように愛撫していく。 
ブラムスさんはトーカさんの痴態をいつものような顔で微笑みながら受け容れている。
やがて、二人とも全裸になって絡みつくように(トーカさんが一方的に見えるが)痴態を繰り返す。
僕はその光景から目を放す事が出来ない。
股間が熱く、愛液がぬるぬると粘性を持ち出してきている。 乳首が痒いように疼き、先端が尖りだしてき
ている。 なんなんだ、これは?見ているだけで恥ずかしくなる光景なのに眼が外せない。
いつの間にか僕は椅子からずり落ち、女の子座りで絨毯の床に座り込んでいた、
手が自然と股間に伸びる。 無意識に指が僕の股間の割れ目を撫でつける。 あいかわらず、眼は二人から
外す事ができない。
やがて、ブラムスさんの上に乗って身体中を愛撫していたトーカさんが上半身を起こすとイヤらしそうな顔
で舌なめずりをして、身体を下半身の方に膝行らせる。
「ふふふ……」
トーカさんがブラムスさんの巨大な逸物を優しく掴んだかと思うと自身の股間にあてがい……
え?え?え?そこってオシッコをする所? 挿入ってく!ズブズブと…… 
ブラムスさんの巨大なチン〇がトーカさんの股間に飲み込まれていく。その光景を目を丸くして見つめる。
トーカさんの股間からは液体が今の僕と同じようにテラテラと濡れ滴っている。
思わず、撫でていただけの僕の股間に指がめり込む。
「はうっ」
そうか。ここにチ〇コが入る穴があるんだ? オシッコの穴じゃない、別の穴が…… 
僕の指を受け容れた穴から脳天に突き上げるような衝撃が走る。
 
嬌声を上げながらトーカがブラムスの上で腰を振る。 
ブラムスさんはニヤニヤと面白そうに笑いながらそんなトーカさんを見上げている。
僕はそれを見ながら指をあそこに出し入れする。 
ブラムスさんのソレが僕の中に入っている妄想をかき立てながら…… 
きつい……、僕の穴が人差し指をキュウキュウ締め付け、それでも愛液が指の出し入れを滑らかにする。
アハハハ……  トーカさんが快感を貪り、
くくく……   余裕を持って微笑むブラムスさん。
ダメ、アァ…… 僕は流されるままに喘ぎ続けた。
肉欲の狂宴が繰り広げられる。
「アァァァ!イ、イイ!イク、イクイクイクゥ!」
どれだけ時間が経ったのだろうか。 やがて、トーカさんが叫びながらブラムスさんの胸に倒れ込む。
「あ、あぁぁぁぁ!」
僕は身体の中からほとばしり出る何かに、ビクンビクンと腰を踊らせ痙攣する。
「はぁ、はぁ、はぁ、うん、よかったぞ。 次にお前もやってみるか?」
トーカさんが身体を起こして僕に声を掛ける。 
しかし、すでに指だけでイッてしまっていた僕は首を振る。
「ははは、まぁ、お子様にはハードルが高いか?しかし、呪いには抗えないからすぐにコレを求めるように
なるから欲しくなったらいつでも貸してやるぞ」
欲求を解消して満足したのかそう言って明るく笑うトーカさん…… 
僕は初めての未知の体験にそのまま気を失ってしまった。
               *
「ん?ここは?」
気が付くと僕はベッドの上でバスタオルを掛けられた状態で寝ていたようだ。
身体を起こすと胸が揺れる。
「え?あ? ……そうだ。 僕はトーカさんに噛まれて女性に変身して……」
ブラムスさんのチン〇をアソコに挿入れて失神したんだ。
「気が付いたか?」
テーブルの椅子に座って紅茶を飲んでいたブラムスさんが僕に気づく。
対面ではシャワーを浴びて来たのか、バスローブを纏ったトーカさんが同じテーブルでステーキやチーズに
パンなどを並べた皿を前に遅い夕食で食欲を存分に満喫させている。
「起きたのならシャワーを浴びてくるがいい。そこの扉の向こうがバスルームになっている」
そう言って隣に続くドアを指し示す。
「あの……」
「匂うぞ。さっさとシャワーを浴びてこい」
ステーキに齧り付きながらトーカさんが僕の方も見ずに有無を言わさない調子で命令する。
僕はベッドから下りて立ち上がるとバスタオルがハラリと落ちる。
「ふひゃ!?」
「どうした?」
「は、はだか!お、おっぱい! アレがない!毛が生えてる!わ、割れ目が……」
自分の身体を見下ろして慌てふためく。
「なにを今更?」
「散々その身体で良い事をしたばかりだろ?」
「いや、さっきは無我夢中というか……」
改めて確認すると動揺する。 このイヤらしくスケベな女子の身体が僕自身……
「とにかく身体を洗ってこい!話はそれからだ!」
トーカさんが自身の身体に動揺する僕に怒鳴りつける。 僕は慌ててバスルームに飛び込んだ。

「あ、あぁ、胸が揺れるぅ!この柔らかさはなんなんだぁ?チン〇がないと頼りないぃ!ひゃ!割れ目が恥ずか
しいよぉ……」
「騒がしいヤツだな?」
「まぁ、思春期の少年には未知の体験だろうからね」
僕のバスルームからの未体験の叫びにトーカさんとブラムスさんが食後の紅茶を飲みながら落ち着いて話をして
いた事を僕は知らない……
               *
「あの~、なにか着る物はないですか?」
シャワーを浴び終わって中にあったバスローブを羽織って出てきた僕は寝室の二人に尋ねる。
歩く度にゆさゆさと揺れる胸が気になって仕方がない。頼りない股間に足下が覚束ない。
「ないね。女に変身するのは満月の夜だけだから、ヤる事をやり終わったらそのまま寝ちまうからな」
「どうしてもと言うなら、前に冗談でトーカに買ってやったスケスケのネグリジェならあるけど?」
「……要りません。じゃ、僕はこの後はどうしたら?」
「とりあえず、今日はここに泊まっていけよ。朝には元の姿に戻ってるから」
このままでは家に帰れないのは確かなので、僕は二人の言葉に甘える事にした。
「一応、聞いておくが家に連絡はしなくていいのかい?」
ブラムスさんが僕に尋ねる。
「ウチは割りと放任主義だし、兄が今年は高校受験でピリピリしてるからかえって僕が居ないほうが親は安心する
んですよ。 僕が今の声で電話しても、ブラムスさんが電話しても返って不審に思われるだけですから」
「まぁ、それもそうか」
「俺やこいつの妖しげな色気のある女声でやっても、お前のイントネーションに違和感が有る日本語でも、事案
扱いされかねないな」
トーカさんが苦笑する。
「そう言えば、なんであなた達はここに住んでるんですか?」
ふと、気になって尋ねてみる。
話を聞くと、彼らは凶悪なハンターの目を逃れてここに隠れ住んでいるらしい。
ブラムスさんはホラー小説家という職業を持っていて、トーカさんは昼間は地下室で眠っているブラムスさんの
代わりにこの洋館の管理をして暮らしているそうだ。
「ま、ある程度は売れているので金には困ってないしね」
「それにしては聞かない名前ですね?」
「私は主に向こうで書いてるからね。 いや、便利な世の中になったよね」
最近の吸血鬼はインターネットを活用しているらしい……
「それでなんで二人で暮らしてるんです?」
「共生」
「共生?」
「吸血鬼の食事ってなんだと思う?」
トーカさんの言葉に疑問を浮かべる僕にブラムスさんが尋ねてくる。
「血ですか?」
「そう。私は血を欲する。しかも生き血が好きだ、オマケに乙女の生き血であれば言う事が無い!」
腕を上げて少し興奮気味に主張する吸血鬼。
「しかし、そう何度も生き血を求めて街に出ると噂になり、ハンターの目に止まってしまう。 しかし、ここに
無尽蔵に乙女の生き血を提供してくれる希有な存在が居る!」
そう言ってトーカさんを指さすブラムスさん。 対してトーカさんはイヤな顔をする。
「無尽蔵じゃねぇよ、いくら俺でも死んじまうだろ」
「わかるかね?トーカは娘に変身すると身体がリセットされるんだ?どんなビッチな行為をしようと男に戻って
再び娘の姿に変身すると極上の処女の血が身体に巡るんだ」
「ビッチじゃねぇよ!呪いで仕方なく身体が求めるからヤってるんだ! 好きで処女をやってんじゃねぇよ!」
トーカさんが不満を爆発させる。
「つまり、ブラムスさんはトーカさんの生き血を飲む為?トーカさんは?」
「こいつに衣食住の全てを頼ってるかわりに、昼間のこの屋敷を管理してる。不審者が入り込んだりしないよう
にな。 一応、金を持ってるから肉も贅沢に食える」
そう言って僕を睨みつけるトーカさん。 うん、まさか月一の儀式中に僕に入り込まれたのは想定外だったよう
だ。
「あぁ、だから共生ですか。持ちつ、持たれつというヤツですね」
その後も僕は色々な事を聞いた。 娘男が強制的に変身するのは満月に依るものだけど、月齢と精神的な物次第
で変身する事が可能だとか、元が狼男なので体力の向上はそれなりにあるとか……
そして夜も深まると僕はトーカさんと一緒のベッドで寝る事になった。
「あの女の人と寝るのは流石に……」
「ガキが何言ってんだか。 それに今はお前も女だろう?」
そう言って僕はバスローブのままキングサイズのベッドに強制的に連れ込まれてしまった。
ちなみにブラムスさんはこれからが仕事だそうで、自分の書斎に行ってしまった。
「あの……」
僕はベッドの中でトーカさんに背中を向けながら声を掛ける。
「ん、なんだ?」
眠そうにトーカさんが声を返してくる。
「胸が邪魔で眠れないんですけど、これ…… どうしたら?」
僕は胸に出来た巨大な脂肪の塊を持て余しながら尋ねた。
「知るか! 慣れだ、慣れ。慣れろ!」
そう言ってさっさと寝てしまうトーカさん。
慣れようがないんですけど…… 世の女性はどうやって寝てるんだ、こんな邪魔な物をくっつけて……
僕は黙ってギュッと目を瞑り、古典的に頭の中で飛び跳ねる羊を数え続けた……
               *
「ん?朝か?」
僕は外からの陽の明るさと鳥のさえずりで目を覚ました。
「…………」
やたらとでかいベッドに寝てるのに気づき、夕べの事を思い出す。
そして……、下半身に懐かしい欲求が。
思わず、身体に掛かっていたタオルケットをはね除け、バスローブをはだけるとそこには……
「あはは、戻ってる、戻ってる!」
僕の股間には小さな暴れん坊が天に向かって自己主張していた。
僕はベッドから降りるとバスローブを引きずりながらトイレに駆け込む。
オチン〇ンから元気に飛び出るオシッコの開放感!それを見下ろして感動する。
「あはは、出てる出てる!」
夕べもトイレは利用したが、座って股間から垂れ出るような放尿感と終わった後に紙で拭き取る行為になんとも
言えない羞恥と情けなさを感じた。 あぁ、男っていいなぁ!
感動に浸ってオチ〇チンをいつものように振って終わらせていると外から男性の声が掛けられる。
「変態的な事を叫んでないで用を足したら、さっさと出てこい。朝飯を用意してやったぞ」
「え?」
僕はその声にバスローブをかき合わせて出ていく。 そう言えば、素っ裸の上に大人用のバスローブを引っかけ
ただけというのは変態っぽいよな?
ドアを開けて出ていくとテーブルの上に朝食を用意している銀髪の細マッチョなイケメンがいた。
「えっと…… トーカさん?」
「俺以外に誰が居るんだ?ほら、朝飯を食ったら服を着替えてさっさと帰れ」
そう言って口角を少し上げて僕を促すトーカ。 えっと、言葉の内容の割りには嫌われているわけではなさそう
だな?
テーブルの上にはパンとバター、ベーコンエッグにサラダ、オレンジジュースが乗せられていた。
「トーカさんは?」
「俺はもう食った」
そう言って自分の前のコーヒーカップにコーヒーを注いで口に運ぶ。
僕はパンにバターを塗ると口に運びながら尋ねる。
「ブラムスさんは?」
「吸血鬼が陽が昇ってから起きてるわけがないだろ? どこで寝てるかは聞くなよ?弱点になるような事をホイ
ホイというわけが無い事ぐらい判るだろ?」
そう言ってニヤリと笑う。
               *
朝食が終わると、夕べ着ていた服に着替えて洋館から送りだされる。
「困った事があれば、また来てもいいが。 くれぐれも変身中に人に噛みつく事だけは絶対にするなよ?」
玄関先でトーカさんに注意される。
「狼男が増えれば確実にハンターが殲滅に来る。 一人や二人なら撃退も可能だが、向こうは抵抗が強いとなる
と手段を選ばなくなってくるからな」
「手段を選ばなく?」
「個人のハンターから組織的なものになってくると規模次第ではとんでもない手段を取るからな、向こうは」
そう言って苦笑するトーカ。
「どういうことです?」
「狼男パンデミックというのは公に出来ない感染病なんだよ?バタリアンって言う映画を観た事あるか?」
「いえ、知りませんけど」
「そうか。ま、いいや。最悪、この地域一帯が封鎖されて闇に葬られると思っていいよ」
トーカの話はとんでもない気がするけど、話が大きくてどこまでが真実味のある話かが判らない。
実感が今一つわかないけど、満月の夜に年頃の娘に変身する体質になった事は否定のしようがない事実だ。
僕は洋館のある森を出て自宅に戻った。
               *
「あれ?四郎?どこかに行ってたのか?」
家に帰ると開口一番。上の兄、三郎にそう言われた。
「ちょっと、北山の方に虫捕りに行って遅くなったから、知り合いの家に泊まってた」
「北山?随分と遠くまで足を伸ばしたな?」
「オオクワガタを狙おうと思うとあそこじゃないといないんだよ」
「そうか、夕べのメシの時に何か静かだと思ってたらお前が居なかったのか」
そう言うと今年が高校受験の三郎が自室に戻っていく。
「これだよ。 まぁ、男兄弟が多過ぎるせいではあるけど……」
僕はため息を付いて台所に入ると、冷蔵庫を開けてコップに麦茶を入れて飲んだ。
僕は五人兄弟の四番目で、大学生の長男、一郎は家を出て下宿している。次男の二郎は高校二年で野球部の部活に打ち込んでいる。三男の三郎は今年受験でエリート校を目指している。弟の五郎は小学五年で朝から遊び歩いているのだろう。
自分の部屋に帰るとベッドに横になる。
部屋は四畳半だが、こういう時は子供にちゃんと部屋を与えてくれているのは有りがたいな。
と言っても、ここは物置に使っていた部屋だし、弟の部屋は長男が使っていた部屋だが。
そんな事をぼぉっと上を向いて腕を頭の下に組んで考える。
「あぁ、なんだか疲れたな」
夕べは自分の身体が気になって遅くまで悶々として眠れなかったからな……
頭から抜いた手を自分の平べったい胸にやる。
夕べはここに巨大な胸が……
思い出すと顔が赤くなる。 グラビアアイドル顔負けの胸に、恥ずかしくなるほど大きなお尻。
髪がさらさらと頬をくすぐり、歩く度に胸が上下に揺れて、お尻が左右に振られる。

……
………
女の子になった僕が歩くと皆の目が僕に集中する。男のギラギラする眼が僕に集中する。
狼な筈の僕が狼に狙われている。そんな狼の中に何故か僕自身もいて、僕を狙っている。
僕を押し倒して、裸に剥いて僕のそこにオチン〇ンを入れたら気持ちいいだろうなぁ……
「う、うわっ!」
いつの間にか眠っていたらしい。 僕は僕を襲いそうになる夢を見て飛び起きた。
「ゆ、夢か…… あ、あれ?」
下着の中がなにか気持ち悪い? え?何かベトベトしてる?これって……
その日、僕は生まれて初めて夢精というものを経験してしまった。
「なにか…… 夕べからロクでもない目に逢ってない気がする……」
僕は洗面所で人目を気にしながら情けない気分で下着を洗った。
「あれ?兄貴、何やってんだ?」
外から帰ってきた弟の五郎が洗面所から出て来た僕と鉢合わせする。
「べつに。暑かったから顔を洗ってただけだよ」
僕は咄嗟にパンツを後ろに隠して答える。
「ふ~ん」
そう言うと何も疑問に思わずにそのまま台所に入って行く、僕はそれを見送って自分の部屋に帰った。
やがて、夕方になり二郎と両親達が帰って来て夕食が済むと、僕は皆とTVも見ずに自分の部屋に引っ込んだ。
「なんだ、四郎はどうしたんだ?」
「夏休みになって遊び歩いて疲れてんだろ?」
「あぁ、夕べも友達の家に泊まってたみたいだぞ?」
「あれ?四郎、夕べはいなかったの?」
「気づかなかったな?」
「夕べは僕が兄貴のおかずをもらったよ?」
家族が僕の気も知らずに勝手な事を言っていた。
まぁ。こういう時は変に心配されるよりはありがたいが、気にされないのもなんだかな?
暢気な家族にちょっと苦笑して部屋に戻ると窓のカーテンが月光に晒されて輝いてた。
それを見て僕は少しドキッとする。
「いやいや、変身するのは満月の夜だけだから……」
僕は恐る恐るカーテンを開けて空を眺める。
空には少し欠けた月が煌々と輝いていた。 しかし、身体に異常は感じない。
「よかった、変身しない」
僕はホッとしてつぶやいた。
いや、ちょっと期待してたりしたんだが……
「我ながらエロかったし、変身中に撮っておかなかったのがなぁ……」
いろんなポーズで撮っておいて元に戻ってから見て楽しむとか……
そう思って兄達が隠し持ってるグラビア雑誌のモデルのように胸を持ち上げる仕草をしてみる。
「? あれ? 胸に厚みが?」
思わず胸を見下ろしてみるとTシャツを押し上げて、胸が膨らみ始めてきている!? 心なしか髪も伸び出してい
るような? 何よりも股間が熱を持ち始め……
「う、うわぁ!」
ま、まずい!満月の時だけじゃなかったのか?このままじゃまた変身してしまう!
僕は周りを見回してオロオロとしてしまう。
しかし、身体は容赦なく変化していき、瞬く間に僕は夕べの娘の姿に変身してしまった。
おっぱいがTシャツを容赦なく押し上げて、胸が苦しい。 
ジーパンが張ったお尻と太腿でパツパツに締め上げる。
「どうするんだよ、これ?」
内股になり、胸を押さえながら回りを警戒しつつ、オロオロとするばかりだ。
家族にこの姿は絶対に見られたくない。 かと言ってこのままではバレるのは時間の問題のような気がする。
なんとか、気を落ち着かせて家族の気配を探る。 二郎は風呂に行ったようだし、三郎は部屋に引っ込んで勉強
を再開しているようだ。 両親と弟は居間でTVを見ているようだ。
僕はそっと廊下に出て玄関まで歩いていく。 靴を履いてから中に向かって声を掛ける。
「ちょっと、友達の家まで行ってくる!」
そう言うと僕は玄関を飛び出し、外に走り出た。
「なに?今から遊びに行くの?」
「夜遊びはほどほどにしておけよ」、
「あれ?今の声、兄貴?」
中から、そんな声が返ってきたような気がするが、今は気にしていられない。
僕は歩を速めて目的地を目指す。
そう、トーカさん達が棲む洋館だ。 今の僕に頼れるのはそこしかない。
夏の日は長く、まだ薄暮の中を僕は早足で北山を目指す。
道行く人が思わず足を止めて僕の姿を見る。
注目を浴びるのがこんなにも恥ずかしいなんて……
歩く度にTシャツに押しつぶされた胸が上下左右に揺れて、シャツに擦られて胸の先が痛痒い。
ジーパンが太腿を締め付けて歩きにくさを感じ、締め付けられたお尻が窮屈に女を意識させる。
「まるで拷問じゃないか、これは……」
恥ずかしさに顔をうつむけさせて急ぐ。
商店街を抜けて、駅裏を抜けた所で誰かが付いてくるような気がして振り返るが、誰も居ない。
気のせいか?緊張してるから過敏になりすぎているのかも知れない。
大体、歩きで北山を目指す気は無かったのだが、自転車に乗ろうとしてもジーパンが太腿を締め付けている為に
ペダルを漕ぐ事が困難を極めそうだったし…… かと言って、着替えようにもジーパンを脱ぐにはかなりの努力
が必要で、悪戦苦闘しているウチに家族に不審に思われて様子を見に来られてはアウトだったし……
そんな事を考えながら歩き続けていると、やっと北山の森林が見えてきた。 すでに陽は落ちたが、回りは月光
に照らされている為に明るい。 
「あの森の中にいけば……」
ほっと安心してつぶやきが漏れるが、その時、背後から伸びてきた手が僕の口を塞ぐ。
「うぐっ!?」
「静かにしろ」
男の静かな低い声が聞こえた。
もう片方の太い腕が腰に回されて僕の身体が拘束される。
「ふぐぐ!」
「俺といい事をしようぜ?お前もそのつもりで俺をこんな人の来ない所に誘ったんだろ?」
イヤらしそうな男の声が僕に怖気を与える。僕は必死で否定の為に首を振る。
「くく、嘘を吐くなよ。これだから女ってヤツは。 エロい本音を隠して格好付けやがって」
「ふぐ!ふぐぐぐ」
口を塞がれている為に声が出せない。
「なぁ?殺されるのと、俺と気持ちの良い事をするのとどっちがいい?俺と気持ちの良い事をしたいのなら首を
縦に振れ」
命あっての物種、と言う言葉が脳裏をよぎる。 
殺されては何もならない。 僕は必死に首を上下させる。
「よぉし、いい娘だ。 声を上げたり、逃げたりしようとしたら刺すからな?その事は理解してるな?」
僕は必死に首を振る。ナイフを持っているのか?
男の手が僕の口から離れる。
「い、命だけは……」
「判ってるよ、お前が無駄な抵抗しなければ酷い事はしない」
そう言うと男の両手が背後から僕の胸を揉みしだく。
「はぅ……」
「いい反応だ。しかしでかいオッパイだな?こんなシャツで胸を締め上げてるのは勿体ないだろ?」
強引に僕のシャツを捲り上げる。パツパツのシャツが僕の胸の先を強く擦り上げ、首の所で止まる。
上半身をさらけ出された胸がシャツに擦られた痛みで勃起してた。 しかし、夕べと違って痛いばかりで気持ち
良さはカケラもない。
僕は落ち葉の敷き詰められた土の上に押し倒され、男は僕の上に馬乗りになる。 
そこで初めて見た男の顔は下卑た小太りの日焼けした無精髭を生やした中年のおっさんだった。 
嫌悪感に身の毛がよだつ。
「ふふふ、若い女は久しぶりだな?しかも上物」
そう言いながら僕の上に乗った男の両手が僕のオッパイを弄ぶ。 そこには快感なんて存在しない。
僕の胸に出来た女性のオッパイ。でもそれは今の僕にはただの大きな脂肪の塊に過ぎない。
夕べ、身体が感じた気持ち良さなんか全くない、あるのは恐怖だけだ。 
僕は声を出す事も忘れて男の為すがままにされる。
「さて、前菜はこれくらいにして、メインディッシュといこうか?」
そう言いながら男は僕の足の方に膝行り、腰のジーパンのボタンに手を掛ける。
犯される?夕べのトーカさん達の痴態を思い出す。 ブラムスさんのでかいチン〇がトーカさんの股に飲み込ま
れていた光景……
僕のお股の中にこの男のチ〇コが挿入れられる? じょ、冗談じゃない。 そんな見も知らない男の汚らしい物
が僕の中に?
「ん?なんだ、これは?きつくってボタンが外せねぇ」
男が僕の腰に手をやってジーパンのボタンを外そうとするが、キツキツのジーパンはそれを安易に許さない。
男の意識がそこに集中している隙を狙って、僕は必死な思いで男の顔を殴る。
ガツッ!
「痛てぇ!このアマ!優しくしてやりゃあ、つけ上がりやがって!」
男の平手が僕の頬を打つ。
パシッ!!
頬が熱い!殴られた痛みが後からやってくる。僕が抵抗したせいで恐怖が更に加速する。
全身が恐怖に硬直し、身体がさらに動きを鈍くさせる。
「ふぅ、やっと外せたぜ。 しかしどうやって履いたんだ?」
強引に僕のジーパンを引きずり下ろそうとする男。
「ん?なんだ、お前?ブリーフなんか履いてるのか?淫乱なだけかと思えば、とんだ変態だな?」
少しだけ引き下ろされてジーパンの中から僕の履いているブリーフが見えた。
「…………」
「知ってるか?強姦で訴えると裁判の時に状況を詳しく聞かれるらしいな。俺がお前を襲った時にお前が男物の
ブリーフを穿いてたのもばれるぞ?」
下卑た笑いで僕の両足に跨ぎ、見下ろす男。
僕は女じゃないから男物の下着を穿いていても変態じゃない。
でも、そんな事を言うのはこの状況では意味がないのはわかる。 かえって男を刺激するかも知れない。
「くく、覚悟を決めてヤるきになったか?まぁ、実際にお前から誘ってきたんだから最初から覚悟はできてたん
だろうがな」
そう言って僕のジーパンをブリーフごとグイグイと引き下ろし始め、僕の股間が男の前にさらけ出され始める。
「淫乱そうな娘のクセに綺麗なマン〇をしてやがるな?あれ?その様子からするとひょっとして始めてなのか?
いけないなぁ、興味本位で行きずりの男に身体を投げ出すとは。最近の娘は何を考えてるんだか」
男が勝手な事を言いながら僕の股間を撫で上げ、膝立ちになったかと思うと自分のズボンを下ろす。
そこには太く黒光りする凶器がそそり勃起っていた。
「ひぃっ」
そのおぞましさに僕は益々身体を硬くする。
「大丈夫だ、痛いのは最初だけですぐに気持ちよくなるから。 もっとも、俺は女が痛がるところを見るのが好
きだから、長く痛がってくれると嬉しいがな」
そう言って自分のチン〇を握り、僕のお股の割れ目を弄ぶように軽く擦る。
「ヒィ……や、やめて……」
僕は涙目で男を見上げて懇願する。
「いいねぇ、その表情。犯る前に女が見せるその顔がそそるねぇ」
笑いながらその凶器が僕の割れ目に狙いを定める。
「い、いやだぁ。男のチ〇コなんか挿入れられたくないよぉ!」
恐怖に限界が突破して堰を切ったように感情が爆発する。
「泣け、叫べ!この一瞬が堪らないねぇ」
そう言って男の物が僕の中へ挿入れられようとした時……
「人のテリトリーで俺の眷属に手を出すんじゃねぇよ!」
「がふっ」
男の背後から声が掛かったと思うと男が僕の上から吹っ飛ぶ。
そこに居たのは男のトーカさんだった。
「お前も人ン家の庭先でおかしなプレイをしてんじゃないよ」
トーカさんが僕を見下ろして可笑しそうに笑う。
「あははは…… 僕は変態じゃありませんよ」
トーカさんの顔を見た安心からか肘をついて身体を持ち上げて涙目のまま、かろうじて笑みを見せる。
「てめぇ!人がこれから楽しもうって時に!」
男が立ち上がって、後ろのポケットから大きなカッターナイフを取りだしてトーカさんに向かって凄む。
「はいはい、判ったからこっちを見てね」
男の背後から肩に手を置いて強引に振り向かせると、そこにはブラムスさんが立っていた。
ブラムスさんの目が赤く光ったかと思うと、男が催眠術に掛かったかのようにふらふらと身体が揺れる。
「それじゃ君はそのナイフを持ったまま、交番の前に言って人を傷つけないように振り回して歩こうか?」
「はい」
男は抑揚のない声で返事をしてナイフを持ったまま酔っ払ったような足取りで商店街のある方に帰っていく。
「これで男も捕まるだろう。 加藤君の強姦未遂で捕まえられないのは残念だけどね。 それで加藤君はなんで
こんな所で変態プレイを僕たちに見せようと思ったんだい? ひょっとしてマジで見せたい願望が?」
そう言って僕たちの方に歩み寄ってくるブラムスさん。
「ありませんよ、そんなもの。 う、う、うわぁ~ん」
僕は助かった安心から気が緩み、トーカさんに縋って泣き出した。
僕に縋りつかれてトーカさんは困惑したようにブラムスさんと顔を見合わせる。







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