宇宙の騎士
 作:kk


 彼の名前は南城二、宇宙軍の特殊部隊の一員だ。城二は都内のとあるマンションで、ゆっくりと休日を過ごしていた。城二はテーブルの上のコーヒーを手に取り、少しだけ口に含んだ。ゆっくりと、冷めるまでかけてコーヒーを飲むのが城二の癖だ。城二はコーヒーカップをテーブルに戻すと、窓から外を眺めた。窓から見える緑地から、子供の遊ぶ姿が見えた。そしてそれを追いかける両親らしき、大人の声。
 城二はその姿に勝手の自分の恋人、ひろみのことを思い浮べた。城二の恋人のひろみは、先の大戦で命を落とした。異星人との戦いの最中、ひろみは地球以外の新天地を求めるプロジェクトに参加し、航行中に異星人の軍隊に遭遇した。
 皮肉にもひろみ達が旅立ったあと、多くの目覚ましい技術革新の結果、地球軍は形勢を逆転、地球の浄化にも成功した。城二はその戦いにおいて大きな戦果を挙げ、英雄となった。
「ふう」
 城二はため息をついた。あの家族に自分とひろみを重ね合わせた。虚しい想像だった。そして何回かコーヒーを口に運んだあと、意を決したように立ち上がり、隣の部屋のドアを開けた。そこは機械に囲まれた、無機質な空間だった。城二はその部屋の入り口にある端末を操作し、あるスクリプトを選んだ。プレビューボタンをタップすると、画面には在りし日のひろみの姿が現れた。
「ペガス!テックセッター!!」
『ラー・サー』
 機械的な声でその装置が答えると、いくつかの機器のスイッチが入る。
「パワーラップ!」
 城二が身体の両側にあるバーを掴む。するとバーから白いつるのような物が腕に巻き付く。
「うぐわっ!」
 足から上に、頭上から頭部に、そして肩と股間から胴体に、そのつるは城二の身体に巻き付きながら、そして尋常でない力で締め上げながら伸びて行く。
「ぬおっ!うああぁぁ!」
 城二はその苦痛に呻き声を上げながらも、身体は完全に固定されているため見動きは取れない。やがて全身を覆ったつるは次の変化を見せる。つるが広がり、つるの隙間を埋めていく。
「うおおおおっっっ!!」
 城二の声は悲鳴に変わる。城二を覆った物質は彼の身体に完全に密着した。固体化し、城二の体の外側にある型を形成する。外から見たその姿は中世の騎士の鎧のようだ。こんな状態になりながらも、城二は性的に興奮していた。その証拠に、彼の股間はこの機械に入った時から完全に勃起したままである。つるに巻かれた中でもそれは変わらなかった。
 そして騎士となった城二に、次の変化が現れる。
「うおおっ!!!ぐおおおっっ!!!」
 城二の身体を膨大なエネルギーが貫く。全身の筋肉が鳴動する。すべてが分解されるような感覚を城二は味わう。
「ああああぁっ!!!」
 城二は鎧の中で激しく射精した。体内に注入されたエネルギーが、身体中を高速でうねる様に駆け巡る。城二の身体を包んでいた鎧が蠢き始めた。呼吸するように収縮する、振動する。
「ふわおっ、ふわおっ!」
 城二の身体が溶かされるかのような熱さに包まれる。そして動きが止まったかと追われた鎧が、一つの方向に向かって変化を始めた。腕が締め付けられて徐々にそれを細くしていく。同様に足も締め付けられる。頭部が縮められる。最も大きなな変化は胴体である。腹部が激しく締め付けられ、逆に臀部、胸部は大きく膨らまされる。
「うおおっ!うおおっ!うおおっ!」
 城二は悲鳴とも歓喜ともつかない声をあげる。激痛でもあり、快感でもある。身体が引っ張られ、締め付けられ、自分ではないものに変わっていく。その声は徐々に高くなっていき、やがて女性のそれになった。腕は半分ほどに細くなり、足は先に行くほど細く、頭部はやや長丸い形状に変化させられた。そして腰は絞られ、臀部が大きく、胸部には大きな二つの盛り上がりが作られた。
 射精後も激しく勃起し続けていた男性器は、興奮のまま胴体にめり込んでいく。
 男性器は胴体に一体化して複雑な構造を構築した。身体の全ての皮膚は艶やかに白くなり、全体に丸みを帯びた形状が構築される。
「ああああぁっっ!!」
 変形が完了すると、体内に満ちたエネルギーが城二の体内で弾け、彼はもう一度絶頂に達した。だがそれは、男性の射精ではなかった。
 甲高い機械音が響き渡ると、その装置は城二が入っていった扉を開いた。中から出てきた城二は、傍に置いてあったタオルを手に取ると、長くボリュームのある、金色の髪の汗を拭きにかかる。身体を動かすと全裸の身体から張り出した、大きな胸が揺れた。すらりと伸びた細い脚、細い腕、卵型の顔立ち、大きな臀部、区部れた腰、女だった。それは、城二がよく知った女性の身体だ。城二の姿は一部を除いて寸分たがわず、彼の昔の恋人、ひろみになっていた。

 城二が入っていた装置の名前はぺガスα、城二を英雄テッカマンに変身させる装置だ。テッカマンとは、「特別な技術を搭載した人」という意味で、細胞凝縮とプロテクターによる強化により生み出される超人である。テッカマンは初代ぺガスにより戦線に投入されたが、余りにも身体的に負担を強いる変身であったため、それに適合する人間が実質、城二だけだった。城二は異星人との戦いをテッカマンに変身することでほとんど一人で担っていた。
 だがその城二の辛い立場も大幅な技術革新によって解消される。その技術革新とは、中の人間から変身させるというものだった。これにより四肢を強化したり、追加したりすることが可能となった。人間そのものを強化することが可能になったため、城二のような特別な資質がなくてもテッカマンになることが可能となった。
 テッカマンになろうとするものは、まずぺガスαの中で城二に変身するのだ。つまり別の人間に変身できる機能を開発し、搭載したのだった。テッカマン兵士の中には女性もいる。彼女たちはぺガスαに入ってまず城二の身体に変身させられる。テックセットシステムに適合した城二の身体に変身後、テッカマンに変身するのだ。二段階の変身システムの導入により、無数のテッカマンが生み出され、戦局は大きく変わった。やがて人類は異星人との戦いに勝利し、初代テッカマンであった城二は英雄となった。
 ある時城二は、その装置の特性に気が付いた。ぺガスαは女性兵士を男性に、自分と同じ身体に変身させる能力を持つ。ということは、男性を女性に変えることも可能なはずだ。英雄として特権階級に近かった城二は、自分の部屋にぺガスαを設置し、研究と称してそのソフトウェアに改造を施した。人間を変身させる機能だけを独立したのだ。城二は自分の身体を変身させる実験を行うことにしたのだった。それも、女性の身体に。
 通常の動作でペガスαは、テッカマンに変身させる人間を城二に変身させるため、まず変身させる兵士の情報をスキャンする。変身完了後、元の姿に戻すためだ。地球軍のデータベースには、各ぺガスαがスキャンした情報が保持してあった。城二がそのデータを読み出してみると、20人以上の女性兵士の情報が見つかった。その中で最も女性的なスタイルの兵士の情報を読み出し、自室のぺガスのソフトウェアに組み込んだ。
 城二は心臓が飛び出しそうな思いでぺガスに入った。城二が女の身体になる実験である。興奮で声が裏返りそうになりながら城二はボイスキーを叫んだ。
「パワーラップ!」
 変身は身体を変形させるものである。当然ながら苦痛を伴う。城二はテッカマンになるための苦痛は慣れていたが、不思議な期待感で苦痛を苦痛とも思わなかった。むしろ快感に近いものとして受け入れ、ぺガスαは工程を完了した。城二は長い髪、整った顔立ち、大きく張り出した乳房と縊れたウエスト、丸みのある体つき、細くて長い手足、そして男性にとって未知の快感を作り出す女性器、それら女性である特徴をすべてを兼ね備えた身体を手に入れた。
 城二は初めて女性に変身した夜、狂ったように自分の身体を貪った。そして女性の身体の快感に感動した城二が次に求めたものは、愛するひろみの身体だった。軍のコンピュータからひろみの身体的特徴を集め、ソフトウェアのパラメータとして埋め込んだ。城二はひろみになる装置を手に入れたのだ。

 城二は姿見の前に立つ。全裸のひろみがそこにいた。本物のひろみと違っていたのは乳房と臀部の大きさ、そして身長だった。この装置で体重を追加することはあれど、減らすことは物理的にも倫理的にも不可能だった。ひろみは身長は低い方ではなかったが、やはり城二と比べると10cmほどの身長差があり、体重も20Kg以上の差がある。変身後の身長を城二のそのままの高さにしても10Kg以上の体重差があり、それを城二は乳房と臀部に振り分け、そこから不自然にならない程度に身体の数値を調整した。そのため、普通の細身の女性だったひろみに対し、グラビアアイドルでもあり得ない程の女性的な、妖絶なスタイルになっていた。
 城二は大きな乳房を両手ですくい上げ、ゆっくりと揉みしだき始めた。
「ふうっ」
 甘い吐息が漏れる。鏡の中のひろみが、大きな乳房を持ったひろみがその乳房を揉みしだいている。そしてそうさせているのが自分自身であり、自分自身がひろみで、ひろみは俺だ。城二はひろみという存在を蘇らせ、それを支配した気分だった。
「うっ!」
 乳首に指が当たると城二はうめき声をあげた。そしてやがて愛撫は乳房の先端に集中する。乳首をつまんでは乳房を揉みしだき、手にいっぱいになる乳肉を楽しんだ。次に城二はひろみの乳房をすくい上げると、乳首を口に向ける。これだけの巨乳であれば、自分の舌で愛撫することも可能だ。右の乳房に吸い付くと電気が走るような快感が身体を駆け抜ける。
「あああっ!!!」
 そしてその快感に気持ちが高ぶり、左手を股間に伸ばす。既にひろみの身体の股間は愛液であふれている。
「うおおおおっ!!!す、すげえっ!!!」
 男言葉、男口調で、女の声で悲鳴を上げると城二は、そのままベッドに倒れこんだ。
「ひろみ!ひろみ!ひろみ!!」
 城二はひたすら、ひろみになった自分の身体を弄った。身体は柔らかく、ベッドのシーツに肌がこすれる度に、ひろみの身体を感じ、快感を覚える。毛の生えていない細い足同士をこすり合わせ、自分の足の形、その細さとしなやかさを確かめる。腕を身体に、乳房に、大腿に絡めるように這わせる。長い髪が顔にかかり、髪が長いという事実と、髪の当たった顔の感触を味わう。全身の肌と肌の接触する部分、その感触、自分の匂い、全てを城二は快感として受け止められる。女の身体、美しい、豊満な女の身体、ひろみの身体を全身で感じる。
「あ、うーん。胸が、胸が・・・」
 身体をうつぶせにするとメロンのような大きな乳房が身体とシーツの間で潰され、その存在感を誇示する。仰向けになれば尻とシーツが潰されて存在感を伝え、乳房が身体の上で形を変えて広がり、その存在を誇示する。
 城二は生唾を飲み込む。女の身体、ひろみの身体でひろみの唾液を飲み込む。それすらも快感だ。
 そして城二はもう一度股間に手を伸ばす。最初は触れるだけで脳天を貫くような感動だった。そして、そして指を一本入れる。細い指一本なのに、膣で感じるその大きさに圧倒される。
「いい、いい、女の身体、ひろみの身体は最高だ!!」
 城二は涎を垂らしながらベッドの上で喘ぐ。膣に入れる指が二本に増える。ひろみの身体は指二本が一番感じることを、城二は知っている。大きな胸を揉み、乳首を弄り、膣の中の指を感じる。親指でクリトリスを弄ると脳天に電撃が走る。
「うわあああっ!!!」
 城二は身体を海老反らせながら、絶頂に達する。全身が痙攣し、乳房が揺れ、髪が暴れる。
『お、おんな、おんなのからだ、ひろみ、ひろみ、ひろみ、の、からだ、、、』
 城二は息も絶え絶えになりつつも、頭の中はそんなことで一杯になる。
 しばらくして呼吸が落ち着くと、城二はまた身体を弄り始める。テッカマンに変身するには37分33秒というタイムリミットがあったが、別人への変身は細胞凝縮ではない。そのため、城二は時間の許す限りひろみの姿でいられる。城二は時間が出来るとぺガスαを使ってひろみの身体になり、全身でひろみと結ばれることを味わった。ひろみ本人と結ばれることはなかったが、ひろみ自身となることで城二の中にいつもひろみはいる。それを全身で感じながら、城二は絶頂に向かって身体を弄り続けた。

 けたたましい警告音が鳴り響く。赤いライトが点滅するのが見える。女性の身体の快楽に耽っていた城二は我にかえり、ぺガスαの前に駆け寄った。
「緊急出撃要請?」
 異星人の急襲により、他のぺガスαの基地が襲われたらしかった。テッカマン及び城二の身体への変身には特別なエネルギーが必要だが、エネルギー生成のためのジェネレータが破壊され、現時点でテッカマンに変身できるエネルギーを有しているのぺガスαは1体のみ。城二のものだけだった。
「ぺガス!テックセッター!」
 城二は全裸のひろみの姿のまま、ひろみの声で叫んだ。
「ラー・サー」
 ぺガスαの扉がもう一度開く。城二は中に入って端末を操作する。城二の姿に戻ってテッカマンに変身すべく、プログラムを起動する。ふいに、端末から警告音がなり、メッセージが出力される。
「エネルギー不足!?」
 城二は呟いた。そもそもぺガスαでの変身には膨大なエネルギーを使う。一旦ひろみになることでかなりの量のエネルギーを使用していた。現在のひろみの姿から城二の姿に戻り、テッカマンに変身するだけのエネルギーをチャージするには、ジェネレータを3時間以上駆動しなければならないようだ。
 そうこうするうちに端末には、被害状況がどんどんと入ってきていた。城二への出撃要請がもう一度送信されてくる。このままではあの大戦のようになる。なんとか戦局を打開しなければならない。そのためにはテッカマンの力が必要だ。
 だがこのままテックセットしても、このひろみの身体は適合しないかもしれない。そうなれば城二は黒焦げである。しかし出撃しなければ多くの仲間が命を落とすことになる。躊躇している時間は無かった。城二は意を決し、緊急出撃要請にYesを回答した。端末上のモードを変更した城二は、ひろみの姿で、高い声で叫んだ。
「パワーラップ!」
 その美しい女の身体は、そのボイスキーとともに両側に固定される。身体に白いつるが駆け巡り、包帯のごとくぐるぐる巻きにする。
「うふう!」
 城二は女の声で呻く。だがそこに苦痛の色はない。何か快感を感じているかのようだ。女の身体で、ひろみの姿でテックセットする、とてつもない挑戦だが、その初めての経験に城二は期待感のようなものを覚えていた。
「うぐうっ!」
 白いつるが広がり、女の身体の外側を完全に包み込む。そして徐々に形を変え、騎士の姿を構築する。テックセットシステムは本来テックセットする人間の身体に合わせて形状を変更するものだ。出来上がった騎士は大きく二つの乳房がせり出し、ウエストが括れた、艶めかしい姿だった。
「はあああ!!!」
 女性体のテッカマンに細胞凝縮のためのエネルギーが注入される。多くの人間はこのエネルギーに適合せず、黒焦げになって死を迎える。これまでに変身に適合できたのは城二ともう一人、先の大戦で異星人に連れ去られた少年の二人のみ。どちらも偶然の産物だった。そしてそのどちらも、変身は強烈な苦痛を伴った。
 適合しないかもしれない、通常ならば適合しないはずのひろみの身体でテックセットを行ったのは城二の賭けだった。城二はいつもよりも何倍もの苦痛を感じるだろうとの覚悟をし、テックセットを受け入れた。
「あ、ああ、あああああっ!!」
 城二は歓喜の声を上げた。
『何だこれは、き、気持ち良い!とてつもなく気持ちいい!!』
 その身体はひろみであってひろみではない。女性兵士の身体をベースに城二がパラメータ変更で作り上げた肉体である。実際にあり得ない体格を持ったその女性の身体が、テックセットシステムに最適な反応を見せた。入ってくる全てのエネルギーをその身体は嬉々として受け入れ、力に満ちていった。

「ウオオオオン!!!」
 ぺガスから飛び出したテッカマンは、いつもの城二と違う、女性的なフォルムを持った丸みのある、誰もが見とれる美しい姿だった。テックランサーと呼ばれる諸刃の槍を手にすると、ぺガスαと共に異星人の部隊に果敢に突入した。
「こ、これは!身体が、身体が軽い!」
 身体が驚くほど軽く、驚くほどの力が湧きだした。テックランサーの一振りで起こるかまいたちで、多くの異星人の機体が破壊された。異星人の機体を蹴って跳ね上がると、テッカマン自身が起こす衝撃派で、周辺の機体まで撃墜された。
 異星人の部隊は数分のうちにテッカマンによって半分以上が撃墜された。そして異星人達は最後のあがきともいえる一斉攻撃を、残った戦力をすべて投じてテッカマンに向けて仕掛けた。その攻撃に対しテッカマンは慌てることなく、必殺技を放った。
「ボルテッカァッ!!!!」
 額から放たれた光の矢は、その主の思い通りに縦横無尽に駆け回り、異星人達はテッカマンに指一本触れることはできなかった。

 宇宙人の部隊が殲滅させられたのは、テッカマン登場から僅か10分後のことだった。地上に降り立ったぺガスαとテッカマンに、地球軍のスタッフが集まる。ひろみの父である天地局長もその中にいた。
「きょ、局長!あ、あの、こ、これは、、、」
 テックセットを解いてひろみの姿に戻った城二は、ぺガスαの機能で戦闘服を装着し、出迎えたスタッフの前に出た。そして、戸惑いながら天地局長と対面した。天地局長は満面の笑みで、
「素晴らしい。城二君!テックセットに完全に適合する身体を、遂に見つけたんだね!!」
 と叫んだ。
「あ、は、はい。。。」
「これまでどうやっても見つけられなかった、テックセットシステムに最適な身体。まさかひろみの身体が最適だったなんて。やはりひろみのフィアンセだった城二君ならではの回答だ」
 局長は純粋に城二が研究を重ねた結果、ひろみの身体が最適解だと見つけたのだと信じて疑わなかった。自室で城二がひろみの身体になって、何をしていたかなど想像もしなかったのだろう。そして城二はテッカマンに究極の改良を加えた功績で、再び英雄となった。
 テックセットシステムは城二の持っていた技術を元に改良が加えられた。これまで変身の度に城二の姿になっていたテッカマン兵達は、城二に変身する、そしてテッカマンになるという二重の苦しみを強いられていた。このため体力の消耗が激しく、10分~15分程度しか戦えないという問題があった。これは城二がテッカマンになった際の変身限界、37分33秒の半分以下である。改良後はテッカマン兵達はひろみの身体に変身する苦痛さえ乗り越えればよいことになった。しかもひろみの身体のテッカマン体への適合率は凄まじく、城二の身体よりも更に長時間の活動が可能となり、変身限界は数時間から数十時間に達した。
 そして城二がソフトウェアを改良することによって作られた人間の身体を変身させるだけの機能を、ぺガスαに単独の機能として搭載されることになった。これによりテッカマン兵達はまずひろみの姿に変身し、その身体で有事に対して待機することになった。こうすれば出撃の際に苦痛を感じることなく戦闘に参加でき、戦闘への対応も早くなる。男性も女性も、テッカマンになる可能性のある人間は全員、普段はひろみの姿で生活した。多くの女性兵士はこれを喜び、男性兵士にも概ね好評だった。男性兵士の中にはひろみの姿でいることを積極的に楽しむ者も少なくなかった。
 テッカマンの性能は急激に向上し、地球の平和は更に堅固なものとなった。テッカマン志願者も増え、ひろみテッカマンによって危険な作業に従事することも可能になった。技術、環境、安全、様々な進化が遂げられた。
「このワンピース、試着していいですか?」
 ひろみの姿のまま街に出かけた城二は、ブティックでニットのワンピースを手に、店員と言葉を交わす。城二は普段の生活をひろみの姿で過ごすようになった。究極のグラビアアイドルと言っても過言ではないセクシーな身体は、異星人と戦う象徴となり、その姿でいることに確固たる権利が与えられた。城二はひろみの姿で街に出かけ、食事をし、ショッピングを楽しみ、オシャレを楽しんだ。城二の新しい人生が始まった。






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