「辻田れんの転輪

イラスト:ひやまゆう
文   :toshi9


(1)

文科省の一室で二人の男が会話をしていた。
黒ぶち眼鏡の男が恰幅の良い男に何やら報告しているらしい。
だが報告を聞いていた男は、話を遮るように口を開いた。

「ところで辻君、あの学園艦の件はどうなったんだ」

その問いに、黒ぶち眼鏡の男は体をピクッと震わせる。

「はっ、先日はうまくいきませんでしたが、いましばらくお待ちください。現在各所に根回ししているところで」

その言葉を聞いた男は机の中からペットボトルに入った飲み物らしきものを取り出した。

「ふむ、人任せにしてはいかんな、我々役人の悪い癖だ」

「は?」

「これを飲みたまえ」

「あ、あの、これは?」

「飲むのだ、飲めばわかる」

「は、はぁ」

黒ぶち眼鏡の男は、豪華な机に置かれたその飲み物を手に取ると飲み始める。

「ごくっ、ごくっ……うぐう」

突然苦しみだす男、その姿が徐々に変化していく。
背が低くなり、肩幅は狭く、そしてなで肩に変わっていく。
髪が伸び、そしてズボンの中で股間のモノが消失し、代わりに胸がぷくぷくと膨らんでいく。
顔も小さくほっそりとしたものに変わり、かけていた黒ぶち眼鏡がずり下がる。





「なっ、なっ、なんだこれは?! 胸が、え? 声が!!」

着ていたスーツがだぶだぶになる一方で、ムチムチと大きくなった両胸がワイシャツのボタンをはじき飛ばさんばかりに押し上げていた。

「成功のようだな。さあ、これに着替えるのだ」

男は机の下の置いていた紙袋を黒ぶち眼鏡の男……いや、今やぶかぶかのスーツを着た10代後半の少女にしか見えなくったた男に渡した。
紙袋の中には、セーラー服一式と黒の皮ジャケットが入っていた。

「これは、あの学園艦の制服……、女子の……セーラー服!?」

「そうだ、君が自らあの学園艦に潜入して、戦車道部を内部からかく乱し、そして叩き潰すのだ」

「いや、そんな無茶な」

「文科省に二度の失敗は無い。それとも離島の小学校で定年まで用務員として暮らすのがいいかな? さあ選ぶのだ」

「わ、わかりました、ではあの学園艦に潜入して私自らあの戦車道部を叩き潰してご覧にいれましょう。」

「転校手続きは取っておこう。早速明日にでも乗艦するのだ。君の名前は辻廉太だったな、名前は……そうだな『辻田れん』ということにしておこうか」

「辻田……れん……ですか!?」



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