姉の旅行 Tira (11) ――その日の夜。 夕食と風呂を済ませた優奈は、ベッドに寝ころびながら、これから起きる事を想像していた。 明日の午後には姉が帰ってくる。三木畑の電話番号は教えてもらったし、SNSでも友達になった。互いの家は結構離れているが、彼が車を持っているとの事で一時間ほど走らせたら会える様だ。とはいえ、三木畑も忙しいので週末は土日のどちらかだけ。普段の付き合いはスマートフォンになりそうだ。 自分でも気持ちが高揚している事が分かる。去年、初めて付き合った男子の時も、最初はこんな感じだった。その男子は同い年の陸上部で、何でも強引であったが、それが男らしい感じがして付き合い始め、しばらくすると体を許した。相手も初めてで、やり方も荒々しく痛かったし、一分も経たないうちに終わってしまい、セックスとはこんなに痛くてつまらないものなんだと思った。 その後、何度かセックスする間に何となく気持ちの良さが分かり始めたが、自分の手で弄った方がよほど気持ちいいと思っていた。 男子とは半年ほど付き合ったが、色々と振り回された挙句に別れる事にした。相手もサッパリしたもので、二週間もしないうちに新しい彼女を作っていた。 「まあ……いい経験だったのかも」 そんな風に呟いた優奈は、昨夜の情事を思い出した。 三木畑の愛撫は、葵の体を借りた優奈を蕩けさせた。そして、姉の体でセックスを体験し、本当はとても気持ちが良いものだという事を知った。彼の丁寧な前戯が良かったのか、姉の体が持つ感度が良かったのかは分からないが、兎に角、別れた彼とのセックスとは別物だった。 「良治さん、求めてくるのかな?」 今日は一日中、姉に成りすましてくれたおかげで三木畑に対してかなり打ち解ける事が出来た。自分でも不思議なくらい、彼を求めている。もし、三木畑から誘いがなければ、自分から行こうか――そんな風にも考えたが、はしたない女だと思われたくないので、何もないなら一人で体を慰めようと思った。 もう少し勉強してから――。 集中出来ない事は分かっていたが、とりあえず机に向かい、参考書を開いた。目で文字を追っていても、頭の中では三木畑に抱かれているシーンを考えている。昨夜の、目の前で必死に腰を振っている彼の顔が過ぎると、当たり前のように下腹部が切なくなった。自然と足が開き、股間に左手が添えられた。パジャマ越しにも分かる熱が籠った股間。もしかしたら、すでに下着が汚れているかもしれない。自分でも驚くほど、三木畑に心が奪われていた。 「やっぱり、良治さんのところに飛び込もうかな……」 時計を見ると、夜の十一時半を過ぎていた。両親はもう眠っているだろう。 椅子から立ち上がり、扉を開こうとしたところで、やはりやめておこうとベッドに座る。しかし、また立ち上がり、扉の前に立つのだが、気持ちをこらえてベッドに戻る。 「いやらしい女だって思われたくないし……」 理性を総動員しながら大きく深呼吸をした彼女は、「考えすぎたら喉が渇いちゃった」と呟き、一階の薄暗いキッチンで麦茶を飲んだ。 少しは落ち着いた感じがする。このまま部屋に戻れば眠れるかもしれない。 優奈は大きく深呼吸をすると、階段を上がった。そして、自分の部屋に入ろうとした時、葵の部屋の扉が少し開き、素の三木畑が顔を覗かせた。 「優奈ちゃん。もう寝るの?」 「あ……いや……。べ、勉強してて喉が渇いちゃって」 「そう。あ、あのさ。勉強してて悪いんだけど、ちょっとこっちに来れるかな?」 「……うん」 彼女の鼓動が一気に高鳴った。手に汗が滲んでくる。 興奮している事を悟られない様、平静を保ちながら姉の部屋に入ると、昨夜と同じようにバスタオルを腰に巻いた三木畑がベッドに座っていた。 「ごめんね、勉強してたのに」 「ううん。勉強してたんだけど、全然集中が出来なくて」 「そうなんだ。でも、どうして?」 「それは……」 理由など言えない彼女は、俯き加減で言葉を止めた。 「ねえ優奈ちゃん。明日は葵さんが帰って来るから、二人でゆっくりと出来るのって今夜だけだね」 「……うん」 「また優奈ちゃんに協力してほしいんだ」 彼はそう言うと、姉のスーツを差し出した。 「へっ?」 「葵さんのスーツを着て欲しいんだ」 「私が? また?」 「うん。ダメかな?」 「ダ、ダメって言うか、その……」 わざわざ裸で待っていた三木畑に期待したのに――異なる展開に、優奈はためらった。三木畑が体を求めてくると思っていたのに、拍子抜けした。 「実は、試したい事があるんだ」 「試したい事って?」 「それは……」 少し間を置いた後、「僕が付き合うと決めた彼女とだけ試したい事なんだ」と言った。 「何を試したいの?」 「このスーツの可能性を……ね」 また姉の姿になった自分とセックスしたいのだろうか? もう付き合っているのだから、お互い自分の体ですればいいのに――。 思っていたよりも恥ずかしがり屋なのかもしれない。だから姉の容姿でセックスしたいという事か。 嫌ではないが、素直じゃない。 「良治さん。私をお姉ちゃんの姿にさせて、何をするの?」 「兎に角、まずは着て欲しいんだ。それから話すよ」 釈然としない言い方に、若干の苛立ちを感じる。 「あの、私達って付き合い始めたんですよね。それなのに、どうしてお姉ちゃんの姿になる必要があるんですか?」 思わず敬語に戻ってしまった優奈に三木畑は、「ごめんね優奈ちゃん。確認したら、すぐに脱いでいいから。僕は、スーツを使って優奈ちゃんと特別な思い出が作りたいんだ。信じてほしい」と頭を下げた。 「……分かりました。そこまで言うなら着ます。着ればいいんでしょっ!」 ほんの数分前まで思っていた、彼と甘い時間を過ごしたいという気持ちが急激に冷めた。 パジャマのボタンを外し始めると、三木畑が「ゆ、優奈ちゃん。自分の部屋で構わないよ」と慌てて言った。 「別に気にしないんで。だって私達、付き合っているんだから」 半分、自棄になった彼女は、少し膨れた表情で一糸まとわぬ姿になると、姉のスーツに足を通し始めた。 そして、下半身を包み込み、両腕を通して姉の頭を被った――。 「着ましたけど」 髪を払い、姉の声で問い掛けた優奈に、また三木畑が「ごめんね優奈ちゃん」と謝った。そして、「すぐに試すから、ベッドに腰かけて」と言った。 (何よっ。謝ってばっかり! 謝るくらいなら私の気持ちを察してよっ) 明らかに不機嫌な表情でベッドに座った優奈に、再度「ごめんね」と呟いた彼は、彼女の背後に回り、滑らかな背中に両手を当てた。すると、背中に割れ目が現れる。 「このスーツには、僕の指紋が登録されているんだ。だから、こうやって背中に両手を当てると、着ている本人じゃなくても脱がす事が出来るんだ」 「昨日の夜はそうやって私からお姉ちゃんのスーツを脱がせたって事ですよね」 「うん。でも、これがしたいわけじゃなくて」 そう言うと、三木畑は割れ目を左右に大きく開いた。優奈の背中が現れ、スーツに空間が出来る。 「優奈ちゃん。痛かったら言ってね」 三木畑は彼女の耳元で囁くと、開いた空間に足を入れ始めた。 「えっ!? 何してるんですかっ」 「優奈ちゃんと一緒に、葵さんのスーツを着るんだ」 「そ、そんな事っ」 驚いた表情で振り向いた優奈に、「だから試したいんだ。二人で着たらどうなるか」と言い、強引に下半身を押し込んだ。 「ちょ、ちょっと!」 二人分の下半身がスーツに入ったが、見た目はすっきりとした姉の下半身のままだった。 「うん。出来そうだ」 今度は両腕を、スーツの中にある優奈の腕に添わせるように、肩までねじ込んだ。下半身と同じく、姉の腕の細さは変わらなかった。 「あっ!」 自然と立ち上がった体に、優奈は思わず声を上げた。両手が勝手に項を掴み、割れ目を広げている。三木畑は、その広がった割れ目に自分の頭を押し込んだ。彼の頭が入った瞬間、葵の頭は異様に伸びたが、すぐに元の大きさに戻る。すると、項から背中に掛けて開いていた割れ目が自然と閉じていった。 「う……うそ……」 背後に三木畑の生温かい体を感じる。足の裏が、彼の足の甲に乗っている感じもする。 (出来た。こんな感じになるんだ) 頭の後ろから三木畑の声が聞こえた。勝手に足が動いて姿見の前に立たされる。まるで操り人形の様だ。 驚いた様な、それでいて不安げな姉の表情は優奈のそれだった。 「い、一緒に……入ってるの?」 (そうだよ。僕と優奈ちゃんが葵さんのスーツに入ってるんだ。実際にどうなるか分からなかったけど、特に問題なさそうだね) 「問題ないって言うけど……」 (今は僕が動いたけど、今度は優奈ちゃんが動いてみて) 「私が?」 不意に、操られている様な感覚が無くなると、全身が優奈の意思で自由に動いた。姿見の前でウェストを触ったり、背中を映してみたり。 女子高生と大柄な男が入っているのに、姉のスーツは、あくまで姉のままだった。 (体が勝手に動くのって、操られているみたいで不思議な感覚だね) 「三木畑さん……良治さんもそんな感覚なんだ」 (うん。じゃあ今度は、そのまま葵さんの体を優奈ちゃんの意思で動かし続けてみて) 「……こんな感じ?」 優奈は目の前で両手を開いたり握ったりした。しかし、すぐに手は動かなくなった。 「あ、あれ?」 (僕が意識して手を止めたんだ。どうやら後から入った僕の方が体の主導権を持っているみたいだね) 「そうなんだ。じゃあ私、良治さんに操られちゃうって事?」 (そうだけど、僕が先に入ったら逆の立場になると思うよ) 「ふ〜ん……」 体の自由が戻った優奈は、姉の姿でベッドに腰を下ろした。 (優奈ちゃん、ありがとう。二人で入ってもスーツは機能する事が分かったよ) 「べ、別にいいけど……」 (あのね、優奈ちゃん。もう一つだけ試してみたい事があるんだ。付き合ってくれるかい?) 「まだあるんですか?」 (うん……。僕の鼓動が優奈ちゃんの背中に伝わってるかな?) 「えっ……」 (こんな風に優奈ちゃんと密着出来るなんて、すごく興奮しているんだ。スーツの中にいるから、僕と優奈ちゃんの身長は同じ。頭から足まで、完全に触れ合っているんだ) そう言われると、優奈も背後にある三木畑の全身を意識してしまった。 「あっ……」 優奈は咄嗟に足を閉じ、股間を押さえつけた。急に股の間に、温かいモノが現れたからだ。 (分かった? 僕のが優奈ちゃんの股に挟まってるんだ。意識したらこんな風に出来るんだ) 「や、やだ。ちょっと……」 姉の股間を見ても、特に変化は感じられない。しかし、確かに股の間には三木畑のいきり立ったモノを感じる。 (優奈ちゃん。僕は葵さんの中で優奈ちゃんと繋がりたいんだ) 「う、うそっ。こんな状態で!? わっ!」 また体が勝手に動き、姿見の前に立たされた。先ほどと同じ様に、姉の顔で驚く。 (優奈ちゃん……大好きだ) ズルズル――。 葵の腕から三木畑の腕が抜けた感じがした。そして次の瞬間、腹部を撫でられる感覚が現れた。 「ちょっ……」 (僕の腕を抜いて、直接優奈ちゃんのお腹を触っているんだ。見た目には分からないけど、こうして意識すれば……) 「なっ!」 また優奈は葵の顔で驚いた。腹部に彼の腕と手が現れたのだ。正確には、腹部の皮膚の中で蠢いている。 (葵さんのスーツの中で優奈ちゃんのお腹を触るとこんな風に見えるんだ。なんか触手みたいで気持ち悪いね) 優奈は、葵の手で腹部の中にある彼の腕をスーツごと掴んでみた。姉のスーツから感じる、皮膚を掴まれた感覚と、自分の腹部に添えられた三木畑の腕の感覚を同時に感じる事が出来、とても不思議だった。 「す、すごく変な感じ……」 (僕もだよ。姿見に移るのは葵さんの姿なのに、こうして触っているのは優奈ちゃんの体なんだ。あの……ごめん優奈ちゃん。興奮しすぎて……この状況でしっかりと理性を保てないよ) 「えっ? ちょ、ちょっと待って良治さん。それって……はあんっ!」 姉のスーツの中で力強く抱きしめられ、思わずため息交じりの切ない声を上げた。背後から舐められた項への愛撫に、更に「やっ……はぁ」と声を漏らした。姉の手で首筋に触れても、三木畑の頭の存在が確認できない。彼の腕はスーツの表面で盛り上がっているのに、頭は全く盛り上がっていないのは、股間に挟まった彼の象徴の様に、三木畑がコントロールしているからだろう。 「ま、待って良治さん。私、こんな状況で……んんっ!」 腹部を撫でていた彼の手が優奈の胸に宛がわれた。葵の乳房の皮膚に現れた男らしい指の起伏が、優奈の胸をいやらしく揉みしだく様子を現わしている。人差し指の腹がスーツの中にある彼女の乳首を優しく弄ると、姉の声に変換された優奈の声が「あはぁっ!」と漏れた。 たまらず両手で胸を押さえるも、スーツの中で這い回る指を止める事はできない。逆に押さえつける事により、姉の乳首が蠢く指の甲に刺激され、双方の乳首の快感に襲われた。 「んああっ!」 足が震え、腰に力が入らなくなった優奈は姿見の前でへたり込んだ。 「だ、だめっ! そんなにしたらっ」 (止まらないんだっ!) 背後から三木畑の荒い息が聞こえる。 「はっ!?」 不意に足の自由が奪われ、M字に開かされた。姿見には両腕で胸を抱きしめ、眉を歪める姉の姿が映し出されていた。 (見てっ、優奈ちゃん) 内側から乳首を弄っていた右手が乳房から離れ、スーツの中を下に下りてゆく。まるで肌色の競泳水着の中に手を入れられている様な雰囲気だ。その手は腹部を通り過ぎると、綺麗に処理された姉の股間を異様に盛り上げた。 「ああっ! だ、だめっ!」 右手で姉の股間を押さえたが、やはりその中で動く指を止められない。 「んっ! んんぅっ!」 背中を丸め、必死に抵抗する優奈だが、三木畑の指に自身の小さな豆を執拗に弄られると、体に力が入らなくなる。 (優奈ちゃんにもっと感じて欲しいんだっ) 「待って良治さんっ。お姉ちゃんの姿でこんな事っ!」 胸を庇っていた左手が自然と離れた。そして、股間に添えられていた右手を押しのける様に割り込むと、葵の小さな豆を執拗に弄り始めたのだ。 「ひうっ!」 声にならない声を上げた優奈は、姿見に映る姉を、目を細めながら見つめた。三木畑が操る左手を、右手で必死に引き離そうとする姿が映し出されている。しかしその右手は、自身と姉の硬く敏感な小豆から同時に発するとてつもない快感に翻弄され、急激に力を失っていった。 「あっ、あっ、んんっ! んんんっ!」 瞬間的にオーガズムを迎え、視界が暗転した。 そして気づくと、姿見の前で膝立ちし、右手をダランと垂らしながら左手で股間を弄る姉の姿が映っていた。 「あっ、はぁっ。あっ、あっ……うあっ……んっ」 意識が覚醒したかと思うと、またオーガズムを迎えた。姿見に映る姉の股間からは、粘り気のある透明な愛液が溢れ、フローリングに滴り落ちていた。 (優奈ちゃん。僕、もうこれ以上は我慢できないっ!) 執拗に弄られていた小豆から指が離れた。そして、姿見の前で四つん這いになったところで、熱い愛液が湧き出る優奈の入口に彼のモノが触れる感じがした。 「りょ……良治さんっ!」 (入れるよっ) 「こ、この状態で? ふあぁ〜っ!」 熱くて硬いモノがめり込み、そのまま滑った彼女の中を押し広げていく。 「んはああっ!」 (う……うぅ) 背後から彼のぐもった声が聞こえた。 (す……すごく熱い。それに僕のを強烈に締め付けてくるっ) 「ふっ……うぅ。良治さん……」 伸ばしていた肘を床に付き、葵の姿で猫の様に丸まった優奈は、彼女の中でゆっくりと動き始めた彼のモノに自然と意識を集中させた。こんなに奇妙な状態だが、彼とセックスしているのだ。 (気持ちいいよ。優奈ちゃんの中っ) 「あっ、んんっ!」 三木畑の太くて硬いモノに内部を擦られ、ぞわぞわとした快感が背筋に走る。姉のスーツの中で腰を掴まれているが、表面上はあくまで姉の葵が床の上で背中を丸めて蹲っているだけだった。 優奈の一番奥にキスをした彼のモノが入口に戻り、また奥を目指してめり込んでくる。その動きは優奈の脳を蕩けさせた。 「ああっ! や……やだぁ」 (熱いっ。優奈ちゃんの中っ……本当に熱いっ。こんなにヌルヌルして僕を受け入れてくれてっ) 次第に腰の動きが早くなった。ニチャニチャといやらしい音が、普段と変わらず、閉じられた葵の股間の奥から聞こえる。しかし、その入口からは粘り気のある透明な愛液が物欲しそうに滴り落ちていた。 「んああっ。はっ、はっ、ああっ」 優奈は、姉のスーツからパンパンと肉同士がぶつかり合う音が聞こえ始めると、丸めていた背中を床に倒し、仰向けになりながら足を突っ張った。 「あああっ。あっ、あっ、やっ……あっ!」 どの様な体勢になっても、三木畑のセックスから逃れる事は出来なかった。快感が何度も押し寄せ、オーガズムが津波の様に訪れる。 「あっ、あっ、あ、あ、あっ……んああっ!」 自分ではどうする事も出来ない状態。意識が飛んだかと思うと、またオーガズムによって目を覚まし、更に意識が飛ぶ。 「優奈ちゃんっ。出るっ!」 意識の遠くで、三木畑の声が聞こえた様な気がした――。 (続く) |