未知との遭遇したアタシ(34歳)
 作:ONOKILL


「さあ、目を覚ませ」
「…ここはどこ? あなたは誰?」
「私の名はバッドン星人。ここは私の宇宙船の中だ」
「…バッドン星人? …どこかで聞いたような名前ね。…ひょっとして、あなたは侵略宇宙人?」
「そうだ。そしてお前は生まれ変わったのだ」
「…アタシが? …生まれ変わった??」
「まずはこの鏡で生まれ変わった姿を見ろ」
「うぎぁああああーー! ア、アタシの身体がーー!」
「驚いただろう? 私の偉大なる力によってお前は怪獣に生まれ変わったのだ」

「こんなのありえない! 酷い! あんまりだわ!」
「さあ、絶望のあまり泣き叫ぶがいい!」
「泣き叫ばないわよ」
「へっ?」
「私、一生に一度でいいから怪獣になってみたかったのよ。その願いがかなって、今はむしろ喜んでいるくらい♪」
「だったらどうして…?」
「アタシが問題にしているのはこの身体、ゼットン(※1)の身体の事よ! これって二代目でしょ?」
「二代目?」
「バッドン星人さん。あんた、何にも知らないの?」
「…いや、その、なんだ。初めて地球にやってきて、怪獣についての知識がなかったから、ウルトラマンを倒す事が出来る最強の怪獣、というのを、ヤ○ーとかグー○ルで検索したんだ(苦笑)」
「それでこれかよ! だったら教えてあげるわ。これは宇宙恐竜ゼットン。あんた、さっきこれを『怪獣』とか言ったけど『宇宙恐竜』が正しいの」
「は、はあ…」
「しかもこれは超ぉー不細工な二代目の方(笑) アタシ、ゼットンになるんだったら初代の方が良かった。これって角はダラーっと垂れてるし、身体は基本的に中年太りでぶよぶよで引き締まってないし、ほんと醜い身体」
「…そんなに変わらないと思うが」
「根本的に違ぁーう! あの格好いい初代はウルトラマンを倒した(※2)。この不細工な二代目はバッド星人とセットで帰マンにあっさり負けた(※3)。あなたは負けた方を選んだのよ」

「それにしてもお前は妙に怪獣に詳しいな。私の情報では、地球人の女はこのような事はまったく知らないはずだが…」
「アタシ、見た目はこんな風に美人で普通のOLしてるけど、本当は重度の特撮オタクなの。4歳年上の兄の影響を受けて、その後どっぷり漬かっちゃって」
「はあ…」
「言い寄ってくる男は☆の数ほど居たけど、特撮オタクだってばれるとみんなドン引きしちゃって、それで婚期を逃しちゃって(涙)」
「…」
「あ〜ん、見れば見るほど不細工ぅ〜。でも、まあいいか。憧れの怪獣になれたわけだし、これで我慢してあげる(笑) で、バッドン星人さん。今からどうするの?」
「どうするって?」
「…(苦笑) それではお聞きしますけど、あなたはどうしてアタシをゼットンの身体に変えたのですか?」
「地球侵略の第一歩として、ウルトラマンに負けない怪獣を作る必要があった。怪獣を作るにはそれなりの素材が必要で、宇宙船内のスーパーコンピューターがお前を選んだと言うわけだ。お前はこれから私のしもべとなり地球侵略のために働くのだ」
「でしょ? だったらやる事は一つ。一緒に街を破壊しましょうよ♪」
「そ、そうだな。腕試しに街を破壊してみるか」
「それも徹底的にね。でもって、ウルトラマンが出てきたら返り討ちにする、でしょ?」
「そうだけど…、お前、ウルトラマンと戦えるのか…?」
「ゼットンの能力もウルトラマンの弱点も全て分かっているわ。だから、安心して見ていてくれて構わなくてよ♪」
「地球人のくせに随分とやる気だね…」
「当たり前でしょ。今のアタシは宇宙恐竜ゼットン。ウルトラマンを倒すのがアタシに与えられた『使命』であり『運命』なんだから(笑)」

「それじゃあ、早速いきましょう! まずはこの身体を巨大化してもらおうかしら」
「身体を巨大化? どうして??」
「どうしても何も、大きくならないとあの高いビルとか建物とかを破壊できないでしょ? さあ、早くしてよ」
「なるほど。そういう風にくるわけだね(笑) …でも、巨大化は出来ないな」
「えぇー! 何でぇ! どうしてぇー!」
「私はお前の身体の組織をDNAレベルで変える事は出来ても、質量を変える事は出来ない。つまり、そのサイズのまま姿形が変わっただけで、巨大化する事は物理的に不可能なのだ」
「嘘ぉ。それじゃあ、まったく意味無いじゃない。仮にこのサイズのまま街を破壊出来たとしても、ウルトラマンが出てきたら、アタシ、踏みつぶされちゃうよ。瞬殺だよ(※4)。その偉大なる力で何とかしなさいよぉ!」
「そう言われても出来んもんは出来ん!」
「あー、開き直ったわね。じゃあ、どうするのよ、一体(怒)」
「ではこうしよう。私があのでかいビルを凶悪ロボットに変えて、お前がそれを操縦して街を破壊する。これならウルトラマンが出てきても戦える。どうだ?」
「ビルガモかよ!(※5) でもそれだと、私がゼットンになった意味無いじゃん(笑)」
「確かにそうだな(笑)」
「ったく、何にも分かってないわね(笑) でも、マックスみたく、アタシのような美女が凶悪ロボットに乗ってウルトラマンと戦う(※6)。それはそれで面白いかも♪」
「…」

「それじゃあ、そのロボ案を採用してあげる。でもその前に、アタシの身体を元に戻してよ。さすがにこの身体じゃあ、ロボは運転できないから(笑)」
「って言うか、お前の身体は元に戻らないよ」
「えっ! …これって一時的じゃないの?」
「違うよ(笑) お前の身体をDNAレベルから分解して、改めのその身体に再構築した。一度再構築するともう元には戻らない。一生そのままだ」
「一生このまま…? そんなのやだぁ! アタシの身体を返してぇ! お願いだから元に戻してぇ!」
「だから最初に『絶望のあまり泣き叫ぶがいい!』って言ったじゃないか(笑)」
「ふぇえええん〜。酷いよぉ、あんまりだよぉ。こんな身体じゃあ、もうOL出来ないし、カッコいい彼氏も出来ないし、お嫁になんか絶対に行けないよぉ。誰か何とかしてぇ〜。助けて、ウルトラマン〜(号泣)」

おわり



※1 初代ウルトラマンを初めて倒したことで有名。二代目は造形の
  酷さで有名
※2 ウルトラマン第39話最終回「さらばウルトラマン」より
※3 帰ってきたウルトラマン第51話最終回「ウルトラ5つの誓い」
  より
※4 巨大化して自分より小さな敵を踏み潰す、は中国超人インフラ
  マン!
※5 帰ってきたウルトラマン第41話「バルタン星人Jrの復讐」に
  登場したバルタン星人Jrがビルをベースに作ったロボット怪獣
※6 ウルトラマンマックス第14話「恋するキングジョー」では
  ゼットン星人に操られた小田夏美がスーパーロボット・
  キングジョーに乗ってウルトラマンマックスと戦う








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