未知との遭遇したアタシ(19歳) 作:ONOKILL 第6話 これまでのあらすじ 青春真っ盛りで花も恥じらう19歳の乙女のアタシは、半年前から正義の巨大ヒーロー・ウルトラマンとなり、今日も今日とて地球の平和を守っていた。 てなわけで、本日戦った怪獣は純粋な乙女の心理面から攻撃してくる(!)中々の難敵だったが、突然現れたウルトラウーマンと二人で力を合わせて怪獣を何とか退けた(怪獣にとどめを刺さず、ウルトラウーマンが怪獣ランドに連れていった)。 そして戦いを終えた後、謎の男性と共に再び現れたウルトラウーマンと対峙することになった。 何なの、これ? この展開って、一体何? 「あなたはさっきのウルトラウーマン…」 アタシがウルトラウーマンに向ってそう言うと、アタシの隣に立つ奴がアタシを押しのけるように言った。 「ベスじゃないか。久しぶりだな」 するとウルトラウーマンの前に立つ男性が言った。 「Man, It’s been a long time.(マン、お久しぶりね)」 それを聞いた奴は不思議そうな顔をした。 「あっ、いや、えっ…、…おい、あいつ、何て言ったんだ?」 奴は戸惑いながら、奴に向って答えた男性ではなく、アタシに問いかけてきた。 男性はアタシと同年代と思しきカッコいい男の子で何故か英語で話しかけてきた。 ところが奴はその英語を理解することが出来なかった。何故なら本当のアタシが英語を話すことも理解することも苦手なのでその影響を受けているからだ。 そこで今では全ての言語を理解出来るアタシに助けを求めてきたのだ。 「マン、久しぶり、って言ったのよ」 奴に説明した後、アタシは二人に向って言った。 「それより、あなたたちは一体何者? どこから来たの? Your name?(あなたの名前は?)」 「My name is Beth.(私の名前はベス)」 男の子が右手を胸に当てながらそう答えると、アタシは思わず問いかけた。 「えっ? ベス? あなたが? 男なのに?」 「Waht(何て言ったの?)」 男の子はアタシの早口の言葉を理解出来ずに首を傾げた。すると男の子の背後に立つウルトラウーマンが助け舟を出した。 「彼女、こんな風な見た目だけど、日本語は殆ど分からないんだ。彼女の名前はウルトラウーマンベス。この身体の本当の持ち主。彼女とボクは入れ替わっているんだ」 「何ですって?」 アタシはそれを聞いて驚愕せざるを得なかった。男の子とウルトラウーマンベスの二人もアタシたちと同じパターンで心と身体が入れ替わっているからだ。 −ウルトラウーマンベス− 地球の平和を守るために宇宙からやってきたウルトラウーマンで、ウルトラの母、ユリアンに次ぐ女性型のウルトラマン。二人の男性型のウルトラマン(スコット、チャック)と共に凶悪怪獣や侵略宇宙人と戦う。日本ではなくアメリカ(の西海岸辺り?)が舞台となる(年齢はウルトラマンよりは若い10,000歳とのこと)。 ボクはアメリカ生まれでアメリカ育ちの日系アメリカ人で、アタシよりも三歳年下の16歳のハイスクールボーイ。 通学途中で怪獣に襲われ、そこに助けに来たウルトラウーマンベスと心と身体が入れ替わってしまったらしい。 こうしてウルトラウーマンベスとなったボクはアタシと同じように普段はウルトラウーマンベスの姿のまま暮らしていて、必要な時に三分間だけ巨大化して怪獣や宇宙人と戦っているとのこと。 そして入れ替わりから三ヶ月が経ったこの日、ボクの両親が日本に転勤するのに伴い、二日前に日本の高校に転校したばかりのウルトラウーマンベスに呼ばれ、生まれて初めて日本にやって来たのだ。 ウルトラウーマンベスは、我々が居るこの世界は別のウルトラマンが居る世界とは異なり、身体に突然変異を起こす妙な入れ替わりが発生し易い世界かも知れない、という説を主張し、奴も何となくそれに同意した…、っていうか、この仮説、これまでのボクの話、それからアタシと奴に関する話は全部、アタシとボクの間で行われ、それをお互いの言葉が理解出来ない奴とベス(と英語力が乏しい作者)に向けて翻訳した。 ちなみにアタシとボクはウルトラマンの言語で話している。 「それじゃあ、アタシ、行くね」 「「ああ、それじゃあ、またな。…で、えっと、べす、あー、わ、わっと、どぅーいんぐ、なう?」 アタシは16歳の男の子と化したウルトラウーマンベスに向かって一生懸命に話す19歳の乙女と化した奴を何故か微笑ましく思った。そして背を向け、ぼんやりとこちらを見ていたボクに話しかけた。 「あなたはどこに住んでいるの?」 「えっ! ああ…」 アタシに改めて見つめられたボクは困ったように顔を伏せ、その美しい胸と股の部分を隠すように両腕を配置した。まるで水着姿を見られるのを恥ずかしがる女子高生のように。 「緊張してんの?」 「人間サイズだと、この身体を変に意識して、何だか恥ずかしいんだ…」 ボクは先程の怪獣との戦いで見せた勇敢さとは打って変わり、その仕草はその素晴らしいスタイルも相まってまるで本物の女の子のように可愛らしい。 「今も地元の人が全く居ない深い森の中に一人で暮らしていて、彼女が必要な時に呼ばれるんだ」 アタシはボクの言葉に頷きながら、それもアタシと一緒じゃん、と思った。 「今日は彼女に呼ばれてからここに来るまでにすごく時間が掛かった。今後、ここが戦いの舞台になるなら、これからが大変だ。テレポーテーションはすごく疲れるからあんまり使えないし」 ボクが困ったように言うと、アタシはボクの可憐で小さな手をぎゅっと握りしめて言った。 「だったら今日から、アタシが住んでいる森で一緒に暮らさない? とても雰囲気のいい森なんだよ」 それを聞いたボクが同意するように強く頷くとアタシは心の中に新しい風が吹いたように感じた。 アタシはいつものように力強く胸を張り、両腕を腰に当て、空を見上げてタメを作った後、両腕を上げながら空に向かって勢いよく飛び上がった。そしていつものように高速で空を移動すると、ボクも遅れずについてきた。 アタシは隣を飛行するボクに向って問いかけた。 「アタシのウルトラマンの“任期”はあと2クールらしいんだけど、あなたの“任期”は何クール?」 「いつまでウルトラウーマンベスをやるか、ってこと?」 アタシが頷くとボクは軽くため息をついた後、答えた。 「それについて一度だけ彼女に聞いたけど、どうやら決まっていないらしいんだ。皆がボクの力を必要とする限り、ずっと、かな?」 「ふーん、それはほんとーに大変だね」 アタシは、同じウルトラマンでも日本とアメリカでは仕組みが違うんだ、と思わず同情した。 「すごく素敵な場所だね」 「ありがと」 数分後、アタシはボクを連れていつもの森に帰ってきた。ボクの住んでいる森とはかなり違うらしく、それなりに感動しているようだ。 アタシはそんなボクの手を取り、近くの湖に連れていった。森のすぐ近くあるエメラルドグリーン色に染まったその小さな湖は、沢山の木々に囲まれているため日の光があまり届かず、ある種の神秘さに満ち溢れている。 アタシは湖に近づくとその前で腰を下ろした。そして湖を鏡にして自分の姿を見つめた。 「この身体になって独りぼっちになって、毎日が本当に辛かった。例え全知全能の力を持っていたとしても、アタシはそれだけじゃあ、生きていけないんだ」 「ボクも同じだよ」 アタシはそんな風に答えたボクを見上げた。 「あれ? 湖の中に何かいる。ちょっと見てみて」 アタシの手招きにボクは湖に近づき、その何かを見ようと顔を近づけた。 「ほら、あそこだよ、あそこ」 「? どこにいるんだ?」 ボクが湖を見つめながら不思議そうにそう呟いた次の瞬間、アタシは「えい」と言ってボクの背中をポンと押した。すると無防備だったボクはみっともなく湖の中に落ちた。 ボクが落ちた瞬間、湖底が揺れて、澄んでいた水が汚泥で澱んでしまった。 「何をするんだ!?」 泥で汚れたボクは湖の中でペタンコ座りした。湖は意外に浅瀬で、ボクの腰から上が湖から出ている。 アタシは湖の中に歩を進めて、ボクの目の前に座り込んだ。 「あなたの身体、水と泥にまみれると何だかすっごく綺麗だよね」 アタシはそう言って、怪獣の攻撃で嘔吐物だらけになったボクを思い出した。そしてその時と同じく、頭の先から背中に向けて電気のようなものが迸るのを感じた。 「確かに人間の皮膚とは撥水性が違うみたいだね」 ボクは濡れて汚れた自分の胸の谷間やしなやかな腕を見つめながら言った。 アタシはそんなボクの身体を舐めるように見つめていたが、やがて我慢出来なくなり、ボクの胸を両手で鷲掴みにした。 「な、ななっ!?」 「この胸のラインから腰、それからお尻にかけて…」 アタシがそう言いながら、ボクの胸から下半身に向けて両手を動かすと、ボクは訳が分からずに逃げ腰になった。 「どうしたの? どうして逃げるの?」 アタシはそう言い、逃げるボクを強く抱きしめた。そしてそのまま湖の中に寝転んだ。 「あなたの濡れて汚れた身体をとっても色っぽく感じる。アタシ、もう我慢出来ない」 アタシは相変わらず戸惑うボクの顔に思いっきり顔を寄せて囁くように言った。 「ウルトラマンのセックスってどうやってするんだろう?」 「そんなこと、考えているの?」 ボクの恐る恐るの問いかけにアタシが大きく頷いた次の瞬間、アタシの下半身が光り始めた。 「これがウルトラマンのアレかぁ。人間のものと違うっぽい」 アタシは心の中で笑みを浮かべながら、下半身に生えた大きくて光り輝く得体のしれないものを強く握りしめた。 「あなたのはどんな感じ?」 「い、いやぁ、ボク、そんなの知らないんだけどぉ…」 「じゃあ、一緒に勉強しようよ。アタシだって初めてなんだから」 「えっ、いや、それは、ち、ちょっとぉ…、あっ!」 「へぇー、こんな感じなんだぁ。コレって人間のものと全然違うよね」 「ああぁ…、あああぁ…、ああああああぁーー!」 何だかんだ言いながらアタシとボクがウルトラマンらしく(!)交わりだすと、アタシたちの全身が輝き出した。そして二人の身体がその周囲から発生したまばゆく光る赤い球体に包まれた。 アタシはその球体の中でボクと気持ちよく一体化しながら、残りの半年間は別な意味で楽しめるな、と思った。 おわり |