未知との遭遇したアタシ(19歳) 作:ONOKILL 第5話 これまでのあらすじ みんなの平平凡凡な日常を守るため、本日もいつものように怪獣と戦っていた正義のヒーロー・ウルトラマンこと、花も恥じらう19歳の乙女のアタシ♪ 楽な仕事だと思ってたのが一転、怪獣の強烈なウ◯チ攻撃により絶体絶命のピンチを迎えていた。 こんなので死んじゃうのって有り得ないよね! どうする、アタシ! (…7、6、5) 胸のカラータイマーの点滅が巨大化終了に向けて激しさを増す中、アタシは心の中でカウントしていた。 アタシはこの絶体絶命のピンチの中で諦めていなかった。 巨大化が終了して元のサイズに戻るタイミングを見計らって怪獣から全速力で逃げようと考えているのだ。 アタシはこの場から逃げることに何もためらいもなかった。 ウルトラマンとして英雄気取りで死ぬ気なんて更々なかった。 まずはこの場から逃げる。 そしてその後(まずはシャワーを浴びてこのくさい臭いをしっかりと落としてから)、怪獣にリベンジする。 …かもしれない。 だって、どうしたらいいのか分かんないんだもん…。 (…4、3) 巨大化終了間近で緊張感が高まる中、何かがぶつかった物凄い音と共に身体が軽くなった。アタシの身動きを封じていた怪獣の圧力が無くなったのだ。 「…ーム・クリー…」 遠くで聞こえるその声の後、全身が暖かくて爽やかでいい香りがする何かに覆われた。 すると顔を覆っていたウン◯臭の嘔吐物が溶けるように無くなり、カラータイマーが初期の点滅に戻った。 僅かとはいえエネルギーが回復したのだ。 「ヘェアァ?(大丈夫?)」 アタシはその場で身体を起こすと、後ろからアタシを助けたと思しき何者かに声を掛けられた。 「ジュワァ…!?(うん…、えっ!?)」 アタシが後ろに振り向くとそこにウルトラマンが立っていた。 (へー) アタシはそのウルトラマンに思わず見惚れた。 赤をベースに所々に銀色のラインが入ったボディを持っていたが、今のアタシ、誰もがイメージするウルトラマンと根本的に違っていたからだ。 同じ類の顔立ちながら優しく繊細な顔。 細くてスラリと伸びた手足。 筋肉もりもりの分厚い胸の代わりに、お椀型で美しい膨らみを持つ二つの胸。 その胸から流れるようにキュッと引き締まったくびれとボリュームのある尻で描く絶妙なS字ライン。 そのウルトラマンはアタシの知らないウルトラマン、女の子のアタシも魅了するボディを持つ女性型のウルトラマン、ウルトラウーマンだった。 「ジュワッ(あのー、はじめまして)」 「ヘェアァ(えっ、いや、こちらこそ)」 間抜けな挨拶を交わした後、アタシはウルトラウーマンに手を貸してもらい、ようやくその場から立ち上がった。 ウルトラウーマンは男のアタシと並んで立つことで女らしさがより極まった。 「ジュワァ?(どうやってアタシを?)」 「ヘェアァ(その話は後。まずはあいつを倒さないと)」 アタシはウルトラウーマンの言葉に大きく頷いた。 「ヘェアァ(あいつの弱点は、ボクがさっき見たあいつの背中にある赤い膨らみだと思う)」 「ジュワァ?(そうなの?)」 「ヘェアァ(背中の甲羅で隠しているから、多分)」 アタシはそれを聞いて、そんなアバウトな、と呆れつつ、その発想が何だかアタシに似ているな、と思った。 「ヘェアァ(今からボクがあいつの動きを止める。君はあいつの背後からその赤い膨らみを撃つんだ)」 ウルトラウーマンはアタシにそう言うや否や怪獣に突進し、細いながらもしなやかな筋肉を持つ両腕で怪獣の太い両腕を閂(かんぬき)に捉えて、体格に勝る怪獣の動きを止めようと試みた。 それを見たアタシは大きくジャンプし、怪獣の背後に立った。 怪獣は二人のウルトラマンを前にして自分がピンチを迎えていると感じたらしく、ウルトラウーマンを力任せに振り回し始めた。 「ジュワッ!(こら! 動くな!)」 アタシは怪獣に向かってそう叫びつつ両腕を十字に交差させ、怪獣の背中の甲羅の隙間にある妖しく脈打つ赤い膨らみに向けてスペシウム光線を撃とうとするが、体格で劣るウルトラウーマンは怪獣の動きを止めることが出来ない。 そんな怪獣だったが、ウルトラウーマンの努力の前に諦めたのか突然動きを止めた。 それをチャンスと感じたアタシはスペシウム光線を撃つべく一点集中したが、怪獣がウルトラウーマンを見つめながら大きく口を開けるのを見て思わず叫んだ。 「ジュワッ!(早く逃げて!)」 ウルトラウーマンはそんなアタシの言葉に動揺して思わず閂を外してしまい、逆に両腕をがっちりと掴まれた。 「ヘェアァ!(しまった!)」 ウルトラウーマンが叫ぶのと同時に、怪獣はあのウ○チ臭の嘔吐物をウルトラウーマンの頭に向って吐き出した。 ウルトラウーマンの美しい顔や胸がウン○臭漂うドロドロでベトベトの嘔吐物に覆われていくのを見たアタシは思わず固まってしまった。そして突然、頭から背筋に向って電気のようなものが流れるのを感じた。 (な、何、この感覚?) 「ヘェアァアアアー!(早く撃つんだぁあー!)」 ウルトラウーマンの絶叫を聞いたアタシは、頭を左右に大きく振って我にかえった。そしてもう一度狙いを定めてスペシウム光線を放った。 眩く光るスペシウム光線が怪獣の赤い膨らみに直撃すると、怪獣は断末魔の咆哮を上げた後、大きな音を立ててその場に崩れ落ちた。 (こんなにあっさり倒せるなんて、さっきまでのアレは何だったんだぁ!) アタシは心の中で思わず叫んだ。 ○ンチ臭漂う嘔吐物まみれになったウルトラウーマンは疲れたのかしばらく肩で息をしていたが、落ち着くと軽やかに両手を広げた。そしてその美しい声で力強く叫んだ。 「シュープリーム・クリーン!」 そう叫んだ後、ウルトラウーマンの全身が淡いエメラルドグリーンの光に包まれた。そして身体を覆っていたウ○チの嘔吐物が大気に溶け込むように無くなった。 アタシはそれを見て、絶体絶命のアタシを救ったのもあの力だ、と思った。そして、何て便利な能力なんだ、と感心した。 アタシとウルトラウーマンは倒れた怪獣を見つめながら話し始めた。 「ジュワァ…(いつもみたいに爆発しなかった…)」 「ヘェアァ(気を失っただけだよ。心臓の鼓動が聞こえるから)」 「ジュワッ!?(マジかよ!? どんだけ頑丈なんだよ!)」 アタシは驚きのあまり思わず怪獣を見た。そう言われれば戦い疲れて眠っているようにも見える。 「ヘェアァ(ボクは今からこいつを怪獣ランドに連れていく)」 「ジュワァ?(へっ? 何それ?)」 「ヘェアァ(宇宙の多次元空間にある怪獣の楽園のようなもの)」 それを聞いたアタシは、アタシが好んで住んでいるあの森を想像した。 「ヘェアァ(それじゃあ、ボクは行くね)」 「ジュワァ?(また、会えるよね?)」 ウルトラウーマンはアタシの問いかけに大きく頷き、アタシにサムズアップすると、足元に倒れている怪獣をあっさりとリフトアップし、大空に向けて飛び立った。 ウルトラウーマンを見送った次の瞬間、巨大化の時間切れとなり、アタシはあっという間に元のサイズに戻った。 (また、独りぼっち…) アタシはウルトラウーマンが消えた大空を見つめながら気が抜けたようにその場にぺたりと座り込んだ。そして心の中で思いっきり落ち込んだ。 何故ならウルトラマンとして孤独に戦い続ける今のアタシにとって、ウルトラウーマンは唯一無二の存在になれたかもしれないからだ。 「しっかりして、大丈夫?」 数分後、アタシは奴が居るビルの上に戻り、気を失っていた奴を揺り起こした。数分後、アタシは奴が居るビルの上に戻り、気を失っていた奴を揺り起こした。 「…随分と気を失っていたようだな」 奴は女の子らしくその場にペタンコ座りした。そしてアタシに問いかけた。 「で、怪獣はどうした?」 「何とか倒した」 アタシの答えを聞いた奴は安堵のため息を漏らした。 「Not cool.(カッコ悪いわね)」 その声を聞いたアタシと奴は、導かれるようにビルの屋上の入り口に立つ二人の人物を見つけた。 一人はお洒落な衣装に身を包んだ知らない男子で、その後ろに隠れるように立つもう一人はアタシがとても良く知る人物だった。 「うっそぉ!?」 アタシは思わず叫んだ。何故ならその人物は先程までアタシと一緒に怪獣と戦っていたあのウルトラウーマンだったからだ。 つづく |