未知との遭遇したアタシ(19歳)
 作:ONOKILL


第4話

これまでのあらすじ
アタシは青春真っ盛りの19歳の女の子。
そんなアタシが半年前から代理で正義のヒーロー・ウルトラマンをやっていて、この日もいつものように怪獣と戦っていた。
この日の怪獣は力が強いが炎や光線を吐くこともなく、色んな意味でにぶくてのろかったので楽勝に感じたアタシは、戦いを早めに終わらせるべく、ウルトラマンの必殺技であるスペシウム光線を怪獣に浴びせた。
ところがこの怪獣にはどういう訳かスペシウム光線が全然効かず、ダメージを与えることすら出来なかった。
早めの必殺技はピンチの始まり、というヒーローの鉄則を今更ながら思い出したが時すでに遅し。
どうする、アタシ…。

アタシはアタシに向ってゆっくりと迫る怪獣に対して一定の距離を保ちながら、もう一つの必殺技である八つ裂き光輪を放った。
怪獣は八つ裂き光輪を避けようとしなかったので首にクリーンヒットしたが、切断はおろか傷一つ付けることなく割れて飛散した。
それを見たアタシは先程までの余裕がすっかり消えて及び腰になり、いつの間にかピンチを迎えていることに気づいた。
確かにこの半年間、色々な怪獣や宇宙人と戦って色々なピンチを迎えたが、それはアタシが戦いに慣れていなかったからだ。
しかしこの日はそうではなかった。アタシはウルトラマンらしく、いや、本物のウルトラマン以上に余裕をもって戦っていたが、それがものの見事に覆されたのだ。

アタシは怪獣から出来る限り視線をそらさないようにしながら後ずさりし始めた。そして周りをチラ見しながら奴(アタシの身体になっているウルトラマン)が居たビルの屋上を探した。
アタシは今こそ奴のアドバイスが欲しかった。この半年間、奴の適格なアドバイスを受けることでピンチをしのいできたからだ。

(居た!)
アタシはそれなりに半壊したビルの屋上に居る奴を見つけたが、奴はその場に倒れていた。
周りの噴煙のせいで全身が僅かに薄汚れているものの傷ついているようには見えず、単なる気絶だと知り、アタシはホッと胸を撫で下ろした。
奴は怪獣の攻撃に巻き込まれて気絶したとは思えないような可憐な顔(寝顔)に、可愛いメイド服の彼方此方が破けて胸元と足が淫らに露出していて、ある種のヒロピン(ヒロインのピンチ)状態だった。
(くっそ、可愛いじゃん)
アタシはそんな風に奴を見つめながら心の中でそう呟いた次の瞬間、怪獣に捕まってしまった。
「ジュワッ!(しまった!)」
怪獣に捕まり焦ったアタシはパンチとキックで応戦するが、がっつりと捕まえられていて近距離で力が入らず、攻撃が全く効かなかった。
やがて怪獣はアタシを捕まえたまま地面に押し倒した。
(重っ!)
怪獣は何故かこの時だけは素早い動きでアタシに対して完璧なマウントポジションを取った。力強い上に見た目以上に重いため、アタシは怪獣を押しのけることが出来ず、その下でみっともなくのたうち回ることしか出来なかった。

アタシに圧し掛かった怪獣は、アタシの顔や胸を引っ掻いたり地面に強く押し付けたりしてぬるく責めていたが(笑)、突然両手でアタシの両腕を抑え、アタシの顔をじっと見つめ始めた。
(な、何? 何なの?)
怪獣が何を考えているのか分からず困惑しながらもその円らな瞳を見て、こいつ意外に可愛いな、と呑気に思っていたが、次の瞬間、驚愕した。
何故なら怪獣は口をあんぐりと開けて、アタシの顔に向って何かを吐き出したからだ。

「ジュワッ?!(マジ?!)」
怪獣が口から吐き出したのは深緑色をした嘔吐物、ゲロだった。
ゲロがドロドロでネバネバしているのを知り、危険を感じたアタシは反射的に目と口をギュッと閉じたが(イメージ。そうする必要は全くないが、身を守ろうとする乙女の本能として(笑))、それがアタシの顔面に触れるや否や思いっきり叫んだ。
「ジュワァアアアッーー!(くさぁあああいぃーーー!)」

怪獣が吐き出したゲロに毒性や溶解性がなかったが、途轍もなくくさい臭いを発していた。
今のアタシの、ウルトラマンの鼻のように見える部分にも当然ながら臭いを嗅ぐ機能があり、そこに真面に刺激を受けたのだ。
アタシはゲロのあまりのくささにウ○チを想像した。
アタシは顔を大きく振って○ンチ臭のゲロを避けようとしたが、両腕をがっつりと抑えられていて殆ど動けず、怪獣にやられたい放題だった。
怪獣はウン○臭のゲロをアタシの顔に向って念入りに吐き続けた結果、ゲロはとぐろを巻いた糞のような形でアタシの顔を覆い尽くした。
ゲロに視界を遮られたアタシは心の中で叫び続けた。
(げほぉ、くっさ、いきが! おげぇえ、くさくって、げえぇ、いき! いきがぁ、できないぃ!)

ウルトラマンの身体は水の中や宇宙空間と言った空気が無い世界でも普通に生きていけるし、ありとあらゆる毒液や毒ガスに対して強い耐性があり、例え身体の中に入ったとしても短期間で浄化出来る能力を備えている、と奴は言っていて、確かにこの半年間の戦いの中でも同じような攻撃を受けたことがあったが、その時はダメージが殆ど無かった。
ところが今は顔面がウ○チまみれになるという、普通の女の子としてはありえない状況に精神的なダメージを追うことである種のパニック状態になってしまい、呼吸が出来なくても問題がないことを忘れてしまい、浄化能力も使えずに普通にもだえ苦しんでいるのだ。

怪獣に圧し掛かられて大の字にされて何も出来ず、息苦しくてくさいウン○にひたすら苦しむアタシは、次第に意識が遠のき、それに合わせるかのように胸のカラータイマーが点滅を始めた。
アタシが巨大化していられる時間は残り僅かだ。
仮に時間が来て人間サイズに戻ってしまった場合、○ンチの中に埋没したまま踏み潰されてぺちゃんこされてしまう、じゃなくて、マジで瞬殺されるに違いなかった。

アタシは暗闇の中でカラータイマーが虚しく鳴り響くのを聞きながら、ウルトラマンになって初めて死を意識した。
奴の話ではこの身体は20,000年くらい生きているらしいが、元のアタシは人間の女の子で19年しか生きておらず、まだ処女だった。
アタシは女の喜びを一切知ることなく、処女のまま死んでしまうことに全然納得がいかなかった。
そして正義のヒーロー、と言うよりはむさ苦しい男の身体のまま、ウ○チまみれで死んでいくというのはあまりにも恥ずかしくて情けなくて、これって有り得ないよね? と思った。

つづく







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