前回までのあらすじ
アタシは悪い宇宙人に無理やり凶悪怪獣に改造されてしまった花も恥じらう17歳の乙女。
ウルトラマンレオの手違い(笑)で元の姿に戻れなくなったアタシはレオの、ウルトラの母ならば何とか出来るかも、と言う言葉に一縷の望みをかけ、レオに連れられて光の国に旅立ったのだ。



未知との遭遇したアタシ(17歳) その2
 作:ONOKILL


「あら、レオちゃん、久しぶりじゃない♪」
ウルトラの母は近所に住む世話好きな叔母さんのような口調でそう言ってウルトラマンレオを出迎えた。そして二人は会話を始めた。久しぶりの再会らしく、二人は言葉を弾ませながら話し続けた。
アタシはそんな二人を見つめながら、ようやくここまで来たと胸を躍らせた。

二人の会話が続くのをぼんやりと眺めていたアタシは、自分の背後に妙な視線を感じた。
アタシが気になって後ろを振り向くと、岩陰の向こうに人が立っていて、こちらをじっと見つめているのが分かった。
アタシはその人を知っていた。そして思わずその名を呟いた。
「あんぎゃあ…?(タロウ…?)」
そこに立っていたのは紛れもなくウルトラマンタロウだった。但し、地球で見た事があるタロウよりは随分と小さくて、小学生の子供のようにしか見えなかった。
そんなコタロウ(アタシが命名)が恐る恐るアタシに歩み寄ってきた。
「お前、レオ兄ちゃんと一緒に来た怪獣さんだな?」
「あんぎゃあ…(そうだけど…)」
「何の悪さをしたんだ?」

アタシはウルトラマンコタロウの問いかけに思わず苦笑した。確かに今のアタシは誰がどう見ても凶悪怪獣にしか見えず、コタロウにとって怪獣とは全部悪者になるのだろう。
アタシはそんなコタロウに本当の事を話さなければと思った。そして尻尾でバランスを取りながらコタロウの前で腰を屈めた。
「あんぎゃあ、あんぎゃあ。あんぎゃあ…(お姉ちゃんは本物の怪獣さんじゃないの。悪い宇宙人に拉致られて、無理やりこんな姿に変えられて…)」
アタシの話を聞いたコタロウは元気いっぱいに頷いた。
それを見たアタシは、小さいながらも理解してくれた、と感心した。ところが次の瞬間…。
「悪い怪獣さんはこうだ!」
コタロウはそう言うといきなりアタシの無防備の左脛を蹴った。
「あぎゃーーあ!(いだぁーーい!)」
アタシはあまりの痛さに絶叫しながら、痛む足を抱えようとしてバランスを崩し、大きな音を立てて後ろにぶっ倒れた。
コタロウはそんなアタシの様子を見て、楽しそうにその場で小躍りした。

「あらあら、何をしているの?」
アタシ達の様子に気付いて駆け寄ってきたウルトラの母がウルトラマンコタロウに尋ねた。
「僕、悪い怪獣さんをやっつけたよ!」
得意満面に答えたコタロウに対して母は言った。
「そう、それは良かったわね。さあ、向こうへ行ってなさい」
「はぁーい」
母の言葉に従うようにコタロウは向こうへ行ってしまった。

「大丈夫? 痛かった?」
ウルトラの母は倒れているアタシを抱き起した。そして憮然としているアタシに向かって頭を下げた。
「ごめんね。まだ小さくて善悪が分からないのよ」
「あんぎゃあ…、ぐぅるるる…(そうじゃないって理解してもらいたかったのに…、うっううう…)」
アタシは脛の痛みに加えて悔しさのあまり、その凶悪怪獣の目に涙を浮かべた。するとそんなアタシを母は慰めてくれた。しかしその言葉は意外なものだった。

「男の子はその程度の事で泣いたら駄目よ。しっかりしなさい」
アタシはそれと聞くと凶悪怪獣の目を大きく見開いて驚いた。そしてすぐに怒り心頭になった。
「あんぎゃあ、あんぎぁあ! あんぎゃあ!(アタシ、男の子じゃありません! 女の子です!)」
それを聞いたウルトラの母は驚いたような仕草をした。
「…でもその身体、明らかにオスだし、てっきり男の子だと…」
「あぎゃあ?(へっ?)」
アタシは訳が分からず不思議そうな顔をしていると、母がアタシの前に跪き、アタシの下半身を探るように触り、諭すように言った。
「ほら、ここにアレが付いているでしょ?」

「あぎゃあ!(キャ!)」
アタシはウルトラの母の手の感触に驚き、女の子らしく叫んで腰をのけぞらせた。そして今まで感じた事が無い不思議な感触に恐る恐る自分の下半身を凝視した。するとイボだらけでポッコリ膨らんだ下腹部の影に隠れるようにそれがあった。
「…あんぎゃあ、あん、ぎゃあ?(…これって、ひょっとして男の子の、アレ?)」
「そうよ。だから間違えたの(笑)」
「あーんぎぁあ。あんぎぁあ。ぎゃあぎゃあ、…あんぎゃあああ!(なーんだ。これなら間違えるよね。あはははは、…って笑い事じゃないわよ!)」
「…ご、ごめんなさい」
母は恐縮しながら再び頭を下げた。
アタシは怒りを通り越して呆れかえった。そして、ひょっとして母って天然なのでは、と思った。

「あんぎぁあ、あんぎゃあ(それにしてもコタロウ君、随分と小さかったですね)」
その後、何とか落ち着きを取り戻したアタシはウルトラの母にそう尋ねた。何故なら地球で何度か見たウルトラマンタロウは、ウルトラマンレオと同世代(あるいは年上)にしか見えなかったからだ。

アタシのそんな問いかけにウルトラの母は恥じらうように人差し指で頬をかいた。
「あの子は二人目なの…」
「あんぎゃあ…?(二人目…?)」
「父さんがね、私より少し年上なんだけど、あの歳になってもしつこくて(笑) で何だかんだで、また出来ちゃったってわけ」
恥じらいながらもそう話す母は何だか嬉しそうだった。
アタシはそんな母やコタロウの姿を目の当たりにして、神のような存在だった「ウルトラマン」の人たちもアタシたちと何ら変わりがない事が分かり、妙に親近感が湧いた。

凶悪怪獣のアタシとウルトラの母は、光の国の中にある治療センターに居た。そして今、センター内にある面談室のテーブルを挟んで、母はアタシを見つめながら悩んでいた。
数時間前、母はアタシを連れてここにやってきた。そして光の国の科学力を屈指してアタシの身体を隅々まで調べた後、アタシに言った。
「あなたをその身体に変えた原因がようやく分かったわ」
しかしその後、治療方法を話そうとする母は何故か悩み始めて、それから数分が過ぎたのだ。

「あんぎゃあ…?(アタシ、元に戻れそうですか…?)」
この間に我慢出来なくなったアタシがウルトラの母に尋ねると、母は意を決したように重い口を開いた。
「あなたを怪獣の身体に変えた特殊なエキスを、あなたの身体から抜けば元に戻れるわ…」
「あんぎゃあ!(本当ですか!)」
「でもね、その抜く方法がね、男の子の、ううん、女の子のあなたに耐えられるのかどうか…」
「あんぎゃあ、あんぎゃあ!(アタシ、元に戻れるんだったら何だってやります!)」
「…分かったわ。では教えるわね。その方法と言うのはね…」
母は椅子から立ち上がるとアタシの隣に立ち、凶悪怪獣の大きく尖った耳元に両手を当てて小さな声でヒソヒソと始めた。
アタシはその方法を聞くと思わず絶句したが、母は答えたことに満足したらしく微笑みながら言った。
「今のあなたはオスの身体だし、それが一番手っ取り早いのよ(笑)」

「あんぎゃあ。あんぎゃあ。あんぎゃあ? あんぎゃあ?(アタシ、やる。やります。で、相手は誰? どんな怪獣なの?)」
元に戻る方法は、女の子のアタシにとって色んな意味で初体験だった。しかしアタシは迷ってなんかいなかった。一刻も早く元の姿に戻って地球に帰りたかった。だから、どんな恥ずかしめも受ける覚悟だった。

そんなアタシを見たウルトラの母は妙に緊張しながら言った。
「その相手と言うのは…、私…」
母はそう言って、恥じらう乙女のように両手を口元に添えた。
「あんぎゃあー! あんぎゃあーー!(ええぇー! 嘘ぉーー!)」
アタシは驚きのあまり、凶悪怪獣の牙だらけの大きな口を開けて絶叫せずにはいられなかった。
「で、でも、勘違いしないでね。これはあくまでも、あなたを治療するために行う事なの。それは分かってくれるわよね?」
銀色の顔を僅かに赤く染め、慌てふためきながら説明する母に、アタシは開いた口が塞がらず、ただただ頷くしかなかった。

おわり





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