未知との遭遇したアタシ(17歳) その1 作:ONOKILL 「記憶が甦ったのか?」 正義の味方であるウルトラマンレオの問いかけに、凶悪怪獣のアタシは何度も頷いた。そしてその不気味な三白眼に涙を浮かべながらレオに訴えかけた。 「あんぎゃあ、あんぎゃあ(あなたの力でアタシを元に戻してください)」 アタシが哀願すると、レオは慰めるようにアタシの頭を優しく撫でてくれた。しかし次の言葉は残酷なものだった。 「残念だが、今の私には君を元に戻す力はない」 「あ、あんぎゃあ…(そ、そんなぁ…)」 アタシはその言葉を聞くと絶望のあまり、その長い首と長い尻尾を振って取り乱した。そして大きな音を立て、いつものアタシらしく器用に内股で座り込んだ。 「ぐぅるる…、あんぎゃあぁ、あんぎゃあぁ…(ううう…、こんなのやだぁ、やだよぉ…)」 アタシは鍵爪の付いた両手を目に当ててシクシクと泣き出した。その姿は傍から見ると人間の女の子が泣いているように見え、その凶悪怪獣の姿に全くふさわしくなかった。しかしそれは当然だった。何故なら本当のアタシは凶悪怪獣でなくただの人間、しかも花も恥じらう17歳の乙女だからだ。 夏休みを利用して妹喫茶と呼ばれる極めて特殊な喫茶店でアルバイトをしていた女子高生のアタシは、(店内で一番可愛いと個人的に思う)ただの普通の女の子なのに、何故か悪い宇宙人に拉致されて凶悪怪獣の身体に改造されてしまった。そして記憶を消された後、街を豪快に破壊していた。 やがてそんなアタシの前にウルトラマンレオが現れて、アタシと戦い始めた。そして直後から、アタシを改造した悪い宇宙人も現れて一緒にレオを苦しめたが、最後に宇宙人は倒され、アタシは凶悪怪獣の姿のまま記憶を取り戻したと言うわけ。 アタシの身体を元に戻した後に宇宙人を倒せば、こんな事にならなかったのに…。 レオの馬鹿ぁ! 元の身体に戻れなくなったアタシが絶望の淵に居ると、ウルトラマンレオは思い出したかのように言った。 「M78星雲の光の国に居るウルトラの母ならば、あるいは君の身体を元に戻すことが出来るかも知れない」 それを聞いたアタシがすがるような目でレオを見つめた。その時、レオの胸のカラータイマーが点滅の速度を増した。この地球上でレオに残された時間はあと僅かだ。 「私と一緒に光の国に行こう」 レオはそう言ってアタシの手を取り立ち上がらせた後、突如アタシの身体をお姫様だっこした。 (こんな姿をしていても、アタシを女の子として扱ってくれるのね♪) アタシがそう思い、ウルトラマンレオを見つめると、レオもアタシを見つめ返した。そしてアタシに向かってゆっくりと頷いた次の瞬間、アタシの凶悪怪獣の顔は熱を帯びて真っ赤になり、イボだらけの分厚い胸がキュンと鳴った。 (ひょっとして、これって…) 胸の鼓動が激しくなったアタシはハニカミながら目を閉じ、その牙だらけの口をきゅっと閉じてウルトラマンレオの顔に向かって尖らせた。 アタシは今の自分の立場をすっかり忘れて恋する乙女になってしまった。そして心の中でレオにときめき、あまつさえキスを求めた。何故なら17年間の人生において、こんなにたくましい男性に優しく扱われたり、お姫様だっこされた事など無かったからだ。 しかしそんな恋する乙女気分もそこまでだった。更に両腕に力を込めたウルトラマンレオが、ウェイトリフティングの重いダンベルを持ち上げるかのようにアタシの身体を頭上に高々と持ち上げたからだ。 (やっぱり…) アタシは妙に納得すると、そのまま深いため息をついた。 「イヤァアァ!」 いつもの気合の掛け声と共にウルトラマンレオはアタシを持ち上げたまま空を飛んだ。そして間もなくマッハ7となり、一気に大気圏を超えた。 「あんぎゃああああーー! あんぎゃあ、あんぎゃあぁーー!(うぎゃあああーー! 怖いぃ、怖いよぉーー!)」 アタシはあまりの速さに恐怖し、大声で叫びながらその巨体をじたばたさせた。 「じっとしていなさい」 「あ、あんぎゃあ…(ご、ごめんなさい…)」 アタシはレオの言葉に身を縮めしかなかった。そして無限に広がる大宇宙を見つめながら考えた。 光の国って、どこにあるのだろう? つづく |