欲望の果て(後編)

 作:Howling




「ふあぁぁ・・・・・・」

奈々美、いや中身が俊男になった彼女は、品のないあくびをしながら目を覚ました。

彼女は、自宅マンションの自室の中で全裸で眠りこけていた。

ところどころ、下着がとっ散らかっている。

それも、俊男が飽きることなく女体の快楽をむさぼり続けた結果だった。

「あぁ~・・・昨日は最ッ高の夜だったなぁ・・・・女の身体って、本当最高にいいねぇ・・・ぐふふっ」

もともと体力のあった奈々美の身体は、性欲を発散させても疲れ知らずだった。

俊男はその身体を駆使して夜な夜な快楽に溺れ続け、今に至るのだった。

「さぁ~て、今日が本番本番・・・・!」

俊男は、奈々美の記憶に従って身体を動かす。

まず、乱雑に散らかった部屋を掃除した。

「ふふっ、前の私なら卒倒ものよね。でも掃除が全然苦にならないわ。うふふふ・・・・」

1人呟きながら掃除を終わらせる俊男。

そして、初めてのはずの化粧などを奈々美の記憶のまま、慣れた手つきで終わらせ、俊男は
芦屋奈々美としてGYM AURORAへと出勤した。



「先生!今日もよろしくお願いします!!!」

ジムに着くと、すでに夏穂がいた。

俊男は感動していた。
憧れの存在が目の前にいて、自分のことを「先生」と呼んでいる。
そして、その中身が自分であることにも気づいていない。

『キター!!!
 キタキタキタキタァ!!!
 夏穂たんまじ天使ぃ~・・・・
 って、いけないいけない。奈々美さんがこんな顔しちゃいけないから・・・』

俊男は、すぐにでも食らいつきたい衝動をなんとか必死に抑える。
俊男としての素が出たらおしまいだ。

「こ、こんにちは夏穂さん。今日も頑張りましょうね。」

俊男は、奈々美の顔で笑みを浮かべた。

『あ、焦ってはいけない・・・じっくり・・・チャンスはいくらでも・・・・うへへ・・・・』





「さ、今日もランニングから始めましょう。」

俊男は、奈々美の記憶に従って夏穂を指導する。

ランニングによる有酸素運動、そして無酸素運動をバランス良く行う。

基本的にして、王道のトレーニング内容を丁寧に行う。

それが奈々美が本来行っていた基本的指導内容だった。

「お疲れ様!じゃあ今度はバーベルスクワットね。重りは合計20キロでいいかしら?」

「はい!お願いします。」

「分かったわ。じゃあ、休憩入れたら始めましょう。」


しばしの休憩を経て、夏穂はバーベルスクワットを始めた。

スクワットには、下半身だけでなく、複数の筋肉を刺激し、
代謝を上げる効果もある。

「んっ・・・んんっ・・・・!!!」

夏穂は、じっくりと負荷を実感しながらスクワットを行う。

汗が滴り落ち、顎から雫となって落ちていく。


「いいわ。いいわよ夏穂ちゃん。」

俊男は、奈々美の顔で率直な思いを伝える。

『あの夏穂たんが必死な顔で鍛えてる。こんな光景見れるのって僕ぐらいだな・・・ぐふふ・・・・』

俊男は、奈々美の顔の裏に邪な思いを浮かべていた・・・・・


そこから、背筋、脚、腹筋とまんべんなく鍛えた後、ストレッチに入った。

「今日もお疲れ様。さ、ストレッチしましょう。念入りにね。」

俊男は、夏穂をマットの上に案内する。

俊男にとって、お待ちかねの瞬間が近づいていた。

「さ、今日も手伝うわね。」

事前に奈々美の記憶を辿っていた俊男は、夏穂がストレッチするとき基本的にペアストレッチであることを知っていた。
つまりストレッチの際夏穂と密着できる、ということだった。

「それじゃ、始めるわね。」

俊男は、興奮する気持ちを必死に抑えていた。

憧れの夏穂。彼女が汗まみれになりながら自分に委ねている状態。
彼女の汗の匂いですら、神々しく感じていた。


まず、夏穂の両手を後ろから取り、上に伸ばして背中を膝で抑える。
背中周りのストレッチだ。

『ほわぁああああ・・・・・・』

夏穂の手を取っていることに興奮してしまう俊男。
俊男は、興奮のあまり、自分の下腹部がうずくのを感じていた。
若干、愛液が出てきたような感覚を覚える。
そうとも知らず、何の疑いもなく委ねる夏穂。

続けて、脚を開かせて夏穂の上体を前に倒させる。
俊男は、夏穂と密着し、徐々に圧をかけていく。

『ふわぁあ・・・・・・夏穂たん。ええ匂いやぁ・・・・・』

夏穂の気づかないところで、奈々美の顔を喜悦に歪ませる俊男。
おそらく、とんでもなく下品な顔になっていることだろう。
自分の乳首が興奮のあまりピンと勃っていた。


こうして俊男は、満足感に浸ったまま夏穂のストレッチを終えた。



「お疲れ様。」

「はい、先生。今日もありがとうございました。」

夏穂は礼儀正しく一礼した。

「あら?先生、何か今日顔赤くありません?」

夏穂の指摘に俊男はドキッとした。

「そ、そうかしら・・・・?気のせいじゃないかしら?」

慌てて取りなそうとする俊男。奈々美の顔で平静を装う。
しかし、夏穂の次の言葉がさらに追い打ちをかける。

「そうですか・・・あ、先生。良かったら今日家でご飯食べませんか?」

「えっ!?!?」

俊男にとって、まさに青天の霹靂だった。
まさかの夏穂の家へお呼ばれすることになるとは・・・・・!!!!

「だめ、ですか・・・・?」

若干上目遣いの夏穂。
俊男にとっては、メガトン級の破壊力だった。

「え!?あ、ああ・・・いいわよ。もちろん。嬉しいわぁ」

一瞬たどたどしくも、答える俊男だった。

「良かったぁ・・・じゃあ、車で行きましょう。待ってますね。」


嬉しそうな表情で去って行く夏穂。

俊男はそれをただ見送るばかりだった。

「うそ!!!!!うそでしょ!!!やった!!!!!夏穂たんの家とかマジ最高!!!!!
 てことはいずれ・・・・・ぐへへへへへ・・・・」

俊男は、奈々美の顔でこれ以上なく品のない表情になっていた。



急がねばと、俊男は残っていた奈々美としての仕事を一気に終わらせ、着替えてジムを後にした。

駐車場で、夏穂が待っていた。

「あ、先生。こっちです。」

夏穂に促されるまま、車の助手席に座る俊男。

すぅーーーーーーーっ・・・・・・

車に入るや否や、空気を思いっきり吸う俊男。車に残る夏穂の匂いを堪能していた。

「緊張してます?大丈夫ですよ・・・」

そんな奈々美の様子を見てか、緊張してるのかと解釈した夏穂は言った。

車に乗ること数十分後、夏穂の運転する車は一等地のマンションに入った。

「私の住所、秘密ですからね♪」

そんなことを言う夏穂。

「もちろんよ。」
俊男は奈々美になりきって答える。

『もちろんだよ夏穂たん。夏穂たんの家を知ってるのは僕だけで十分さ。ぐふふふふ・・・・・』

その裏では、俊男はある種の優越感に浸っていた。

ドルオタにして、推しの家に入った男は自分くらいだろう。
今は女の皮を被ってはいるが・・・・・





「さ、どうぞ。座って待っててくださいね。」


夏穂の家、リビングに案内される。
部屋も複数ありそうだった。広々としている。
ここでも、俊男は思いっきり息を吸って夏穂の匂いを堪能した。
いわばここは彼女の中。聖域!
俊男のテンションは上がりきっていた。
それを奈々美の皮で隠す。
まるで赤ずきんに出てくる狼のようだ。

いずれは彼女を・・・・・
という欲望と、推しを汚してはいけない!という良心とがせめぎ合っていた。


通されたリビングは整然としており、イメージを崩す要素は全くなかった。

生粋のアイドルってこういう感じなんだな、と俊男は純粋に好感を持った。

テレビ横の棚には、アイドル活動をしている彼女のDVDなどが整然と並べられていた。

『おおっ!!これあのライブの限定版!?すごい・・・すごいですぞ・・・・』

俊男はそのラインナップに目を輝かせていた。


「お待たせしました。」

夏穂の声で我に返る俊男。

出されたのは和風パスタだった。

「飲み物何にします?お酒もありますけど・・・・」

「じゃあ・・・・ビールいただけるかしら?」

そう答える俊男。

昨夜、思いっきりビールを飲もうとして奈々美の身体が受け付けなかったのを思い出したが、
缶1本くらいは大丈夫だろう、と思った。

「分かりました。帰りはまた私が車で送りますから、私はジンジャエールで・・・」

夏穂は、ビールとジンジャエールをコップに注いでテーブルに運んだ。

「どうぞ。」

「あ、ありがとう。」


「それじゃ、乾杯」

2人は、グラスを合わせた。


俊男は、パスタを口にする。

味は・・・・・

「最高・・・・・・」

思わず口いっぱいに頬張りそうになるのを抑える俊男。

「うふふ、美味しかったみたいでなによりです。」


あまりの美味しさに食が進み、あっさりと完食してしまった。

最後のビールを思いっきり飲み干す。

「ぷは~っ・・・・・美味しかったわ夏穂ちゃん。ありがとう。」

「いえいえ。」

完食した直後だった。

「あ、あら・・・・」

突如、強烈な眠気に襲われる俊男。

酔いが回った・・・・そんなことを考えながら、俊男の意識は薄れていった・・・・・





「うぅ・・・・・・」


どれくらい寝ていたのだろうか。

俊男は目を覚ました。
しかし、身体を起こそうとするも、起き上がらなかった。

「むぐっ!?」

声を出そうにも、声を出せなかった。
そして俊男はようやく、今自分がどうなっているのか理解した。

『えええええええ!?』

何と、今俊男が着ている奈々美の身体は下着姿の状態で
後ろ手に縛られていた。
腕、手首、太もも、膝、足首と要所要所を縄で固定され、身動きがとれない。
しかも、口には何か詰められていて、しゃべることもままならなかった。

「うーむっ!!!!!むむーっ!!!」

声を出そうにも、くぐもったうめき声にしかならなかった。

「あ、先生・・・起きました?」

現れたのは、夏穂だった。

しかし、その表情は、今まで見たこともないほどに高揚しているのが窺えた。

「うむうううっ!?」


「あー、喋らなくて大丈夫ですよ。私、ずっと楽しみだったんです。
 先生といつかこんな遊びができる関係になれたらなって・・・・」


俊男は、普段自身が知っている夏穂とのあまりにもかけ離れた本性に唖然とした。
正直混乱していた。なぜ夏穂がこんなことを・・・・?

「先生には縄が似合うって、ずっと思ってたんですよ。
 だって先生、筋肉が引き締まってて素敵ですし、それに・・・・」

夏穂は、俊男が着ている奈々美の身体、その太もも部分をつーっと指でなぞった。

「うむむうううんんんんっ!!!!!」

俊男は、今まで感じたことのない快感に呻いた。

「知ってましたか?全身の筋肉、特に下半身が引き締まった女性って本当感度がいいらしいんです。
 だからちょっとなぞっただけでも・・・・」

「うぐううううううんんんっっ!!!」

再度来るあの快感に呻く。

「ね。キモチイイでしょ?だから先生、ワタシのモノになってください。 
 私が先生を、たあっぷりキモチよくしてあげますからね。」


そこから、夏穂は奈々美の身体を繊細な指使いでなで回し始めた。

女の快感に慣れない俊男にとって、その刺激は耐えきれるものではなかった。

「うむううううっっっ!!!!!ふぅううううっっっっ!!!」

首を激しく動かし、快楽に身をよじらせる俊男。


「ふふっ、そんなにいいんですね。じゃあ、こんなのはどうかしら?」

そう言って、ピンク色のコードがついた物体を出す。
「!?」
あろうことか、ピンク色のローター、それも3つだった。

「うふふ、失礼しますね。」

夏穂は、奈々美の両方のおっぱいに一つずつ、乳首に当たるように固定する。
そして、最後の一つを、奈々美のショーツの内側、クリトリス近くで固定しようとショーツに手を入れる。

「あらあら、気持ちよかったみたいですね。先生のアソコ、もう濡れ濡れですよ♪」

楽しそうに話す夏穂。

実際、ここまでの愛撫だけで俊男は限界を迎えていた。

俊男自身、頬が紅潮し、口からよだれが滴り落ちていた。
額には、脂汗がにじんでいる。

「んおうっ!!!!!」

股間にローターが固定されるだけでうめき声を上げるほどに身体が敏感になっていた。

「あとは仕上げね・・・・」

そう言って、夏穂は奈々美の身体の股間近くに指圧をする。

「むぐぅっっっ!!」

「うふふ、先生。今先生の快感を引き上げるためにツボ押させていただきました。
 このローターのスイッチを押したら、今までのなんか比にならないくらい気持ちよくなれますよ。」

俊男が目をやった先、そこには、笑みを崩さない夏穂が楽しそうにローターのスイッチに手をかけていた。

「じゃ先生。イッちゃってください。」

スイッチは、無慈悲に押された。


「んおおおおおっっ!!!おほぉおおおおっっっっ!!!おんおおおおおおおんんっ!!!!!」

獣のようなうめき声を上げる俊男。

両方の乳首から、股間から、全身から快感が襲ってくる。
どうすることもできない快楽を強制的に味わわされているのだ。

股間からは、今までにないほどの量の愛液が溢れていた。

あまりの気持ちよさに、こんな感情が頭をもたげる。

もう、このまま奴隷になってもいい。夏穂の欲求に応え続ける奴隷。
それがどんなに甘美なものか・・・・
加藤俊男であったことすら捨てて、完全な性奴隷・奈々美として堕ちるところまで堕ちてしまいたい。

そんなことすら思い始めた。

やがて・・・・・

『こ、こんなの、だ、ダメだっ!!!い、イク!!!イッちゃうううううううううっっっっ!!!』

俊男は、奈々美の身体で、今まで味わったことのない絶頂を味わい、果てた・・・・・・・・







「うふふ・・・・先生。最高のイキっぷりでしたよ。」

目の前でへたり込む奈々美の身体を一瞥し、満足げに言う夏穂。

「猿轡、外してあげますね。」

夏穂は、口にした猿轡を外し、中から布を引っ張り出した。

「げほっ、げほっ・・・・・・」

大量のよだれを吐き出しながら咳き込む。

「実は、口の中に詰めてたの、私のショーツなんです。
 幸せなんじゃないですか?」

「はぁ・・・・・はぁ・・・・・・」

肩で息をするしかできない様子の奈々美を見つめる夏穂。

「ねえ先生、これからも私とこういう遊び、してみませんか?」

夏穂は笑みを絶やさず問いかける。

俊男は、その笑みに、底知れぬ恐怖と快楽が織り交ぜになった何かを感じていた。


しかし、迷う理由はなかった。
それほどまでに、魅了される笑みだった。

「はい・・・・・お願い・・・します・・・・夏穂様・・・・」

「あらぁ♪様だなんて偉いわね。じゃあ、ご褒美上げないと・・・・」

そう言って、夏穂は右脚を差し出す。

「命令よ。舐めなさい・・・・」

冷ややかに言う夏穂。

俊男にはもう、抗う意思はなかった。
そしてこの瞬間、俊男は、男であることを辞めた・・・・・・・・




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そこからは早かった。

私は男だったことを捨てて、夏穂様の奴隷になる道を選んだ。

表向きでは、夏穂様のパーソナルトレーナーとしてサポートを行い、

夜は、夏穂様の奴隷としてご奉仕する。

身体の奥深くまで快楽を覚えさせられ、時折夏穂様の性欲を満たして差し上げる。

今では男だったことが遠い昔のようにも感じる。しかも記憶が曖昧にさえなっている。

そういえば、あの注射器の説明書きに
『強烈な快感を何度も味わうと、皮に自我を呑まれる』

って書いてあったようだけど、今はもうそんなことは気にならない。
今の自分が当たり前のように感じるわ。

こうして、人に、それも最愛のご主人様に必要とされるのがどれだけ素晴らしいことか。

私は性奴隷・奈々美。

ご主人様の夏穂様の欲望を満たすための奴隷・・・・・・・


終わり









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