宇宙人に食べられた俺は・・・。 前編
 作:BAL


ある夜の事だった。俺がいつものようにバイトから帰宅しようと玄関の鍵を開けようとした時、空から眩い光が隣の家の庭に落ちるのが見えた。

「えっ、なんだあれっ!?」

光は静かに音もたてず、ぼんやりと消えていく。
不審に思った俺は自宅には帰らず、慌てて隣の家に向かった。
隣の家には幼馴染の来栖 陽菜(くるす ひな)が住んでいる。
父親は転勤で母は夜勤、陽菜は今一人のはずだ。俺は慌てて玄関のチャイムを鳴らす。

「陽菜、おい、陽菜!」

しかし、いくらチャイムを鳴らしても一向に出る気配がない。俺は念のため、陽菜の家の玄関のドアに触れると

「あ、開いてる…?」

不用心にも家の鍵は開いていて、俺は中を伺う。

「おーい、陽菜!」

俺は再度声をかけるもやはり中から返事は聞こえなかった。もしかしたら鍵をかけないで出かけたのか?
俺は仕方なく、彼女のケータイに電話をかけると

~♪~♪~♪・・・

「あれ、中から聞こえる?」


寝てるのか、お風呂で今出られない可能性もあるが、その時はその時、謝れば許してもらえるだろう。
俺はゆっくりと彼女の部屋に向かう。だんだんと近づくにつれ、奇妙な”音”が聞こえてくるのが分かった。

ぐちゃ・・・にちゃ・・・ずる・・・ぐちゃ・・・

その音は水音ような、なにか大きなガムを噛んでいる時のような音だった。
先ほどの光の件もあり、俺は慌てて彼女の部屋に入る。そこには、信じられない光景が広がっていた。

「なっ・・・!?」

大きな水の塊のようなものが部屋の中にあったのだ。粘着性のあるそれは意思があるかのように全体をブルブルと大きく震わせていた。
濃い緑色のそれはまるで大きなスライムの様だった。
そして、緑色に濁った水の中に人影あった。水の中でおぼれているかのようにもがく姿。
見覚えのあるシルエット…そして、俺の足元には普段彼女が着けているヘアピン。

「陽菜あぁーーー!!」

俺は恐怖心など忘れ、その水の中に手を伸ばす。

ドプ、ボチャンッー!

水の抵抗のように動きにくい中、必死に伸ばす手がゆっくりと彼女の暖かい手に触れる。

「よし、今助けるからーーーっ!?」

彼女の手を引こうとすると、自分の腕から激しい高熱と痛みを感じるが、目をつむり必死に堪える。
そして、水の抵抗がなくなり、しりもちをつく。どうやら引っぱり出せたようだ。

「もう大丈夫だぞ・・・ひ・・・な・・・。」

ーー目を開けるとそこには思っていた光景とはかけ離れていた。

俺の腕から先が無くなり、大量の血があふれ出していた。そして水を見ると
彼女のもがく腕が俺の腕”だけ”を掴んだままだった。

「ーーーーーーっ!!!」

俺は激しい痛みに部屋の中を転がりまわる。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになりながらもその水を睨みつける。
その瞬間、ついには中のシルエットは動きを止め、その水に溶けるように消えてしまった。

「あ・・・あ・・・あぁ・・・ひ、ひな・・・っ!?」

俺はその時、陽菜の死を悟ってしまった。
陽菜の笑顔、涙、幼いころに一緒に遊んだ公園。真っ赤になりながらバレンタインにチョコを渡してくれた陽菜。
俺の”大好きだった”陽菜が・・・もう、いない?

にちゃにちゃと音を立てる水がだんだんとこちらに近づいてくる。

ーーく、くそ・・・

俺は恐怖と絶望から、必死に床をはいずるように逃げる。
しかし、それもついには限界を迎え、俺は、全身を生暖かい粘液に包み込まれてしまった。
全身が焼けるように熱い。

ーーもしかして、俺の体も溶けてるのか・・・陽菜のように。
ーー陽菜・・・こんなに熱くて苦しい思いをしたのか・・・

俺は、悔しかった。俺の好きだった陽菜を奪い。理不尽に殺されるこの瞬間を。

ー死んで・・・たまるか・・・!

しかし、俺の抵抗も虚しく、俺の意識は体とともに粘液に溶けて消えてしまったーーー。




「はっーー!?」

ーーここは・・・。
俺は、床の堅さにふと目を開けた。気が付くと陽菜の部屋のフローリングに寝てしまっていたようだ。
慌てて右手を見ると、俺の手は繋がっていて辺りには粘液もいなかった。

「なんだ、夢・・・か」

どうやら陽菜の部屋で転んで気絶でもしていたのかもしれない。
俺は再度、陽菜の家を確認するも、どうやら留守のようだ。

「まさか・・・な」

念のため、陽菜のSNSに不用心を注意する文と合鍵で閉めておくと連絡して自宅にもどることにした。





「あ、お帰りー・・・ 遅かったね。」

自宅に戻ると、けだるそうに妹の綾香がソファーでくつろいでいた。
ソファの上で足をゆっくりバタバタと揺らしながら少女漫画を読んでいるようだった。

「ただいま・・・」
「あれ、なんか疲れてる?」

妹がむむっ・・・と心配そうに俺の顔を覗き込む。

ーードキリッ

妹の顔が近づくにつれ、俺の心臓はドクドクと鼓動を早くする。こんなこと今までなかったのに・・・
俺は慌てて距離を取り頭を振る。

「な、なぁ・・・綾香」
「ん・・・なに?」

俺が問いかけると彼女は首を傾げて俺の目を見つめる。

「俺が帰ってくる前・・・なんか外光らなかった?」
「外?・・・気が付かなかったけど?」
「そ、そうか・・・」

きっとあれはなにかの見間違いだったのだろう。俺はそう思うことにした。
俺の頬を冷たい汗が流れる。

「ねぇ、どうしたのよ、さっきからお兄ちゃんなんか変よ?」

ーードクドクッ!

再度距離を詰める妹を慌てて、突き飛ばす。

「きゃっ!?」

悲鳴を上げ尻もちをつく妹に罪悪感が沸く。

「あ、わ、悪い! 疲れてるみたいだ、ちょっと先に寝るわ。」
「あ、お兄ちゃん!?」

俺は妹の呼ぶ声を無視して慌てて自分の部屋に駆け上がる。
慌てて昇る為、普段はたてないようなドタドタと音を立て、一段踏み外しそうになる。
心臓がドクドクと激しく音を立て警告を鳴らす。
バタン!と勢いをつけて自室のドアが閉じるとはぁはぁ・・・と息を整える。

「な、なんだったんだ、さっきのあれ・・・」

俺は自分の心臓を押さえながら、気持ちの 高揚を落ち着かせる。
そうでもしないと先ほどの事を思い出してしまいそうだから・・・

ーーースゴク、オイシソウダナァ・・・。

そんなことを考えるなんて、普通だと絶対にあり得ない。
あんな夢を見た後だから、おかしなことになってしまったのだろうか・・・。
俺は再度スマホを確認するが、陽菜へ送った文はいまだに既読にはならない。
既読がついて、ありがとうー、と一言だけ見ることができれば安心できるのだが。
どうも、俺はつかれているようだ。あんなスライムなんているはずがない。
ばかばかしいと思い、俺はベッドに横たわる。
もう寝てしまおう、そう思い俺は静かに目を閉じる。




それからどれだけ経ったのだろうか・・・・。
俺の意識は真っ暗な何もないところにあった。どうやら夢を見ているらしい。
夢を見ていることを理解できるのもおかしな話だが、なんとなく頭が理解していた。
そんなことを考えている時、目の前にだれかがいるのが分かった。
ーー陽菜だった。
陽菜は悲しそうに目に涙を浮かべながらこちらをほほ笑んでいた。
陽菜どうした?・・・と声をかけようとするも自分の体は思うように動かなかった。
自然と体は陽菜に向かって歩きだす。一歩、一歩と・・・。
そして、陽菜の目の前にたどり着いた瞬間。陽菜は今まで見たことのない悲しい笑顔を浮かべ、『今まで、ありがとう・・・。』とほほ笑んだ。
その瞬間、俺の体がドロリと溶けだす、まるでスライムのように。
ドロリと溶けた体がゆっくりと陽菜に包まれていく。
ーーいやだ・・・なんで、陽菜逃げないんだ・・・!
キスをするように目をつぶってすべてを受け止めようとする陽菜。
俺の体は・・・陽菜をすべて包み込んで・・・。


「うわぁぁーー!!」

俺はベッドから飛び起きた。冷たい汗がだらだら額から流れる。

「はぁ・・・はぁ・・・夢、か・・・。」

本当に今日はろくでもない夢ばかり見ている気がする。
汗を 拭うとぶるりと体が震える。たくさん寝汗をかいて体が冷えたからだろう。
尿意を催してきたのがわかった。
俺はトイレに行こうと体を起こそうとする。その瞬間、ものすごい違和感が体を襲う。

「おっとと・・!?」

俺はベッドに倒れそうになり、ふらりとする体をなんとか支える。

「な、なんだ・・・これ?」

自分の体が自分のモノではないような違和感。ふと視線を下げると・・・。
視線の先には主張の大きな2つの膨らみがあった。

「は、はぁ!?なんだよこれっ!?」
俺は慌てて膨らみを掴む。するとふにょんっ!とまるで大きなマシュマロを掴むかのような抵抗が手に伝わる。そして、同時に掴まれる感覚が脳に甘い刺激を送るのだった。

「んっ・・・!」

甘い電気のような刺激に体がビクンと跳ねる。
ーーこれって女の子のおっぱい・・・だよな?
なぜ、自分におっぱいがあるのか、自分はどうなってしまったのか。

「そ、そうだ・・・鏡っ!」

俺は慌ててクローゼットを開ける。歩くときも少しふらふらと頼りない感じで不安が増す一方だった。
ドキドキとする胸と荒くなる呼吸が気になりつつもゆっくりと鏡を覗き込むと・・・。

「!?・・・ひ、陽菜・・・なのか?」

鏡に映っていたのはいつもより髪をボサボサにしつつも、見慣れた幼馴染の姿だった。
寝ぐせがあるもサラサラと流れるような髪、服装は俺の普段着を来ていて、まるで陽菜が俺のコスプレをしているんじゃないかと錯覚をする。
しかし、これは俺なのだ・・・陽菜ではなく。手を上げると陽菜も同じように手を上げ、変顔をすると、俺の前では絶対に見せないであろう顔もする。・・・そんな顔も可愛いと思ってしまうのだが・・・。

「なんで・・・俺が、陽菜になってるんだよ・・・。」

一日に何度も、非日常を経験している俺は認めるしかできなかった。
きっかけはきっと、そう・・・あの光。

「あの奇妙な粘液が・・・原因なのか・・・?」

俺は恐怖から体を無意識に抱きしめる。陽菜になった体は本当に華奢で頼りなかった。
あの粘液はどこへ行ってしまったのだろうか。俺が目を覚ました時にはすでにいなかったはずだ・・・ということは俺や陽菜の様な被害者がまた出るのだろうか・・・。
しかし、そんなことを考えている時だった。再度体がぶるりと震える。

「ひぅ!?・・・こ、これって・・・!」

恐怖からの震えではないことはわかった。下腹部に、奇妙な圧迫感と焦り。
・・・生理現象だった。

「お、おしっこ・・・いきたい・・・」

しかし、再度鏡を覗くとそこにはやはり幼馴染の陽菜が顔を紅く染めていた。

「と、トイレ・・・トイレにいかなくてはいけないのか・・・?」
焦る気持ちが増す。生理現象は待ってくれないのだ。
俺は罪悪感と焦燥感からパニックになってしまう。ここでお漏らしをするわけにもいかない。

「陽菜・・・ごめん!」

俺は限界が近いのを体で悟り、慌ててトイレに向かう。
廊下を歩くと足元がとても近く感じる。陽菜の身長が低いから視界に入る風景も変わるのだろう。
トイレのドアを開け、俺は生唾を飲み込む。本当にしてもいいのだろうかと再度躊躇ってしまうが、漏らしてしまっては元も子もない。俺はトイレの蓋をあけ、便座を上げようとして、思いだす。

「座ってするんだったよな・・・。」

便座に座り、ドキドキしながらもパンツを下ろす。俺のボクサーパンツを陽菜が穿いていたと思うと少し変な気分になりそうだったが、女性もののパンツでなくて逆に良かったのかもしれない。

「さすがに立ってするわけにもいかないよな・・・」

しかし、いざ便座に座ってみるが、どうすればいいのかわからずに俺は呆然としてしまう。
確かにおしっこがしたいと体と頭は理解しているのだが、どう出せばいいのかがわからない。
普段自分でするときはしたいときにちゃちゃっと無意識で出す気がするが、男性と女性の力加減がさっぱりわからない。
体の構造が違うだけでこうも苦戦するとは思わなかった。それに・・・。

「ん・・・いつまでも陽菜のおま〇こを見てるわけにもいかないよな・・・。」

正確には見えるわけではないが、なにも付いていないことが嫌でも目に入ってきてしまう。
こんな状況なのに、焦燥感と・・・そして興奮が俺を襲う。
できれば、すぐにでも済ませたいところなのに・・・。
あれや、それやしているとぴゅっと軽く飛沫が吹く。

「お・・・こうか・・・・んっ!」

軽く力を入れ、そしてゆっくりと抜いていくと・・・薄黄色の液体が放たれていく。

「はぁ、あっ・・・あぁ・・・」

男性の放尿でも多少の解放感はあったが、やはり女性の体でも排泄という行為は気持ちのいいことなんだと身をもって経験してしまった。
おしっこが出ている場所が男の感覚と違いすぎて理解ができない。
ーーびくん、びくん、しょわわわ・・・
我慢していたぶん、おしっこの音が響く。今体をみればきっと陽菜のおしっこしている姿が見えるはずだ。本人の許可なく絶対に見てはいけない部分だ。俺は懸命に目を閉じる。
しかし、俺の鼻孔にはかすかなアンモニア臭が漂ってきた気がする。

「はぁ、はぁ、はぁ、あぁ・・・おしっこ、気持ちいい・・・」

あまりの解放感につい口に出してしまう、その声は女性の陽菜のモノだとわかると羞恥心が膨れる。陽菜に俺はなんてことを言わせているんだ・・・。

「あぁ・・・自己嫌悪・・・。」

俺はトイレから出ようと立ち上がると、雫がツーッ・・・と太ももに垂れてくる。

「し、しまった・・・拭かないと!」

女性が拭くものだということをすっかり忘れていた。俺は秘部をトイレットペーパーで拭う、するとおしっことは違う粘液が糸を引いた。

「これって・・・愛液?」

俺は放尿・・・ただの排泄行為でさえ興奮してしまうような変態なのか・・・?

「いや・・・これって・・・!?」

愛液だと思ったそれは・・・悪夢の再来だった。

「ひっーーー!!」

俺は慌ててトイレットペーパーをトイレに投げ入れ流す。
そして、慌てて階段を駆け上がり自室に戻る。

「な、なんで・・・あのスライムが・・・!?」

おれはドキドキとする胸を落ち着かせながら考える・・・。
あのスライムはどこから来たのか・・・俺はもしかしたら、とんでもない思い違いをしているんじゃないかと。
そもそも、あの夢が本当だとして、あの時何が起こったのか。
ーー陽菜が吸収され、俺の腕は落とされ、俺も・・・吸収された。

俺は恐る恐る、彼女の手を掴んだ切り落とされたであろう手を見る。すると俺の手はようやく気が付いたのかと言わんばかりにドロドロと溶けだした。

「ーーーーっ!?」

恐怖で声がでないとはこのことだろう。俺の手は・・・。いや、俺の体は・・・!

「スライムになってるんだ・・・!」





それから俺は再度クローゼットの鏡を見つめていた。
鏡には不安そうな顔をした陽菜の姿が映る。

「俺は・・・なんでスライムになっているのか・・・。」

俺はゆっくりと仮定をする。そうでもしないと心が死んでしまいそうだったから。
あの時、俺はきっとスライムに吸収されたんだと思う。あの時の体の焼ける感覚はいまだに鮮明に思い出される。ただ、どうして俺はここにいるのかということ。

「あの時の絶対に死にたくないって気持ちが、もしかしたらスライムの意識を乗っ取ったのか?」

そうでもなければ俺がここにいる理由が考えつかない。俺はスライムに吸収されたが、スライムの意識を吸収した・・・そんなところだろうか。

「でも、それって・・・」

俺は気が付いてしまう。これは俺とスライムだけの話ではないということを・・・。
鏡に映る大切な幼馴染・・・陽菜も被害者であるということを。

「く、陽菜・・・うぅ・・・くそ・・・!」

陽菜は完全にスライムに吸収されてしまった。体も意識もすべて、それはやはり陽菜の死に繋がるわけで・・・しかも、俺がスライムになったってことは俺がしたことになるんじゃないか・・・?

「くそ・・・俺は一体どうしたらいいんだ・・・?」

必死に目を閉じ、涙をこらえる。
ーー陽菜、陽菜・・・!
俺は陽菜の事だけを考える。すると、どうだろうか・・・脳裏に俺の知らないことが浮かんできた。
陽菜が生まれてからのこと、小学校で俺と同じクラスになれて嬉しかったこと。いじめられていた時、俺に助けられて嬉しかったこと。小学校ではじめて初潮を迎えお母さんに泣いて話したこと。・・・俺に告白しようと友達に相談していたこと・・・陽菜のすべてが、まるで俺が経験したかのように浮かんでくる。

「これって・・・陽菜の記憶・・・?」

このスライムは吸収した相手のすべて、本当にすべてを自分のものにしてしまうのか・・・。
その時、心臓がドキリと跳ねる。スイッチが切り替わるように興奮が溢れてくる。
ーー俺は、今大好きな陽菜になっている。すべてが理解できる。
ーーもう、なってシマッタコトハシカタナイダロ。
ーーソレヨリモ、コノカラダヲモットカンジタイ。

ごくりっと喉を鳴らす。鏡の前には頬を赤くしている陽菜。
陽菜のすべてを俺が好きにできる。

「はぁ、はぁ、はぁ・・・。」

どういうことだろう、こんな精神状態で絶対にあり得ないことなのに・・・俺は性的にこの体に興奮していた。

「・・・んっ」

無意識に、陽菜の胸に触れてしまう。彼女の胸からは甘い衝撃が脳に伝わり、甘い声が出てしまう。

「陽菜の・・・おっぱい・・・。」

いつからか女性らしい体型になったとは思っていた。制服の下で微かに揺れる胸に俺の・・・男子の目がいかないはずがなかった。今、その胸は俺の好きにできる。
実は陽菜になってることに気が付いてからは胸が少し重いという感覚と揺れる感覚、陽菜本人でなければ感じることのできない感覚に頭がおかしくなりそうだったのだ。

「おっぱい・・・」

先ほどの刺激をもう一度感じたい。俺は下から持ち上げるように胸を掬い上げる。

「俺に、おっぱいが付いてる・・・陽菜の、おっぱい」

俺の興奮が体伝わったのか、陽菜の胸はツンと上を上を向いていた。
彼女の細い手を使い、ゆっくりとモミ、モミと揉み始める・・・。

「ん・・・んぁ・・・」

ーー女性の胸の感覚がこんなに敏感だなんて・・・!
俺は思わず出てしまう陽菜の甘い声に脳が痺れる。
俺が、陽菜にこんな声を出させてしまうなんて・・・さらに興奮してしまう・・・!
俺の手の動きがだんだんと大胆になって、ついには鷲掴みといってもおかしくないほど揉みしだく。

「あんっ!・・・ふぁぁ・・・んっ!」

鏡を見ると、陽菜が顔を赤く興奮に耐えている様が見える。
ぐにぐにと手を欲望のままに、誘われるままに動かし、形が変わる乳房の動きとともに。
揉む度に切ないような甘い感覚が全身に広がり、胸だけではなくお腹の奥・・・
そう、お腹の奥がムズムズと切なく、落ち着きのないようなもどかしさが全身を震えさせる。

「んっ・・・きもちいい・・・うぁ・・・これ、頭おかしくなりそう」

体の芯が、全身が、じわりじわりとだんだん熱くなるのを感じる。
俺の本来の体であれば、興奮で主張しているであろう股間は、今は見る影もなく、さらには刺激を求め触ってほしいと猛烈なもどかしさという快感を与えてくる。
ぐちゅり・・・と、股間から粘液が染み出してくる。
また、スライムが溢れてきているのか、それとも愛液なのか・・・。
俺の興奮に支配された頭ではどうでもいいことだった。
俺の期待に股間が、陽菜のおま〇こが反応していると思うと、顔がニヤリとゆがむ。
ついには手が胸を離れ、ゆっくりゆっくりと彼女の股間に向かっていく。

「触るぞ・・・陽菜・・・」

手が俺のズボン、パンツの中へと潜り込み陰毛をかき分けて進んでいく。

「んぁあっ!!」

手で触れるそこは、想像以上に興奮でぐちょぐちょだった。
頭では絶対にもうこれ以上は駄目だと、止めたいと思っているがあまりの興奮に体がいうことを聞かない。

「はぁ、はぁ・・・あっ、ふぅ、いいっ・・・ここ、すごく気持ちいいっ!」

指が無意識に股間の突起を擦る。指の下にあるのはきっとクリ〇リスだろう・・・。
指先がさらに刺激を求め動き続ける。

「これが、女の子のオナニー・・・愛液、いっぱい溢れてくる・・・!」
「あぅっ!・・・もっと、もっと・・・あぁん!!」

甘えるような声が自然と出てしまう。声も自分ではよくわからないがきっと陽菜の声で・・・。
その声が聞こえるたびに、さらに興奮が増し・・・透明な雫が飛び散る。
ぐちゅぐちゅと卑猥な音が響き渡る。
不審に思った妹がもし入ってきたらどうしよう・・・そんな背徳感がさらに興奮に代わる。
そう思うだけで指がさらに一段と激しく動きだす。

「んひ、あぁぁ! ふぁぁっ んんっ、イク、イッちゃう・・・イクぅ!」

体がビクンっと跳ね、大きくのけ反り震える。
女性のイク感覚、それはあまりにも衝撃的で目の前がチカチカと弾ける。
ーーこれが、女性のイク感覚・・・頭が真っ白になる・・・。

男の感覚とはまた違う波のような快感に頭がおかしくなりそうだった。
体全体が性感帯になっているような敏感な感覚。波のような溢れる快感。
どれをとっても男の何倍も気持ちがよかった。
そして、それら女性の快感の中にただひたすらに求めるものを感じてしまった。

ーーこれでち〇こを入れたらどうなっちゃうんだ・・・。

女性の快楽の中に入れてほしいという欲求が溢れていたのだ。

「あぁ・・・ち〇こが・・・ほしい・・・。」

自分の男性器を想像したその時だった。
ムズムズとする感覚が股間を襲ったかと思うと陽菜の女性器である股間に粘液が溢れだし、いつしか股間には慣れ親しんだ男性器がついていたのだった。

「これは一体・・・っ!?」

ーーもしかしたら、粘液だから部分的に体を変化させることができるのか!?

クローゼットには陽菜の股間に男性器が生え、アンバランスな姿が映っていた。
まるで陽菜が男の娘、ふたなりだったのではと思わせる姿だった。

「陽菜に俺のち〇こが・・・ごくっ」

興奮で喉を通る唾さえ、気持ちがいいとさえ錯覚を起こす。
おそるおそる、陽菜の細い指が俺の慣れ親しんだ男性器に向かい近づいていく。

「ひゃあっ!?」

触れた瞬間、ゾクゾクと甘い電気が全身に流れ出す。
陽菜の柔らかくきめ細やかな指は男性器には刺激が強すぎた。

「ひ、陽菜の柔らかい手が俺のち〇こを握って・・・あんっ! 触ってるなんて・・・!」

俺の手とは違う感覚に、体がビクビクと震える。
鏡を見ると顔を赤く染め上げ、だらしなく微かに涎を垂らす陽菜の顔と、男性器を一生懸命擦り続ける姿が映る。

「こ、こんな小さくて柔らかい手が・・・俺のち〇こをシコシコしてる」
「気持ちいい、あん、はぅ・・・いつもの自慰と全然ちがう・・・っ!」

ーーこ、こんなの耐えられるはずが・・・ないっ!!

「うぅ、い、イク・・・イッちゃうッ・・・陽菜、ひなぁっ!!」

ービクンッ!ビクンッ!ビクンッ!

体を大きく震わせながら、股間の男性器から白い液体が飛び散る。
勢い余って、クローゼットの鏡にもぺちゃりと音を立てて付着させる。

「はぁ・・・くぅ!・・・ふぅ・・・っ!」

ちらりと鏡を確認すると、そこには煽情的な陽菜の姿があった。

「ーー・・・えっ?」

俺はその姿を見た瞬間。我に返り、血の気が引くのを感じた。

「俺・・・なんで?」

絶対にあり得ない。俺は興奮なんてしていなかったはずだ。
自分がスライムなんかになってしまっているんだぞ、あり得るはずがない。
陽菜を失い、自分自身もわけのわからない存在になってしまっている、それのどこに興奮する要素があるのだというのだろうか。

「これは・・・このスライムの欲望なんだろうか・・・。」

ー妹を見て、食べたい吸収したい。
ー体を変化させ、繁殖行為をしたい。

きっと、俺の意志が弱ければあの時、すぐに妹さえも食べてしまっていただろう・・・。

「なんとかしなければ・・・。」

ーーいっそ、このまま死んでしまおうか・・・。

頭に過ぎる言葉に俺は首を振る。粘液を・・・宇宙人が人間と同じ方法で死ぬとは思えない。むしろ俺の意思がある限り、これは逆にチャンスなのだと思う。

「これ以上、粘液―俺―に犠牲になる人を出さないためにも・・・」
ーー俺は、粘液の意志なんかには絶対に負けない・・・!

俺は歯を食いしばり、手を強く握りしめるのだった。

精液が垂れるように付着したクローゼットにはニヤリと笑う陽菜の姿が・・・俺が映っていることに気が付かないままーー





続く





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