英雄と悪漢
作:嵐山GO



「あー、今日も疲れたなぁ・・・」
オレは会社から帰宅すると、すぐに上着を脱ぎ捨てリモコンを手にテレビの電源を入れた。
チャンネルを変えていると、昔見た懐かしいアニメを放映していた。
「こんな時間にアニメなんてやってんだ」
テレビの前に座り込んで、煙草に火を付けしばらく見入っていた。

そのアニメはいわゆる戦隊ヒロインモノで、セーラー服のようなコスチュームを着た数人の少女達が悪と戦うという、ストーリーは正に子供向けの単純明快なものだった。
「これって、もう10年以上前だよなー?オレが今34歳だから、
最初に見たのは大学行ってた頃で・・・」
頭の中で指折り、逆算してみる。
「やっぱり13、4年は前だ・・・時が経つのは早いな・・・」

流れていたのはテレビ版ではなく、どうやら昔に劇場公開されたものの
ようだった。
だが30分も見ていると飽きてしまい、オレはテレビを消しベランダに出て、
再び煙草に火を付けた。

安アパートの3階から外を見下ろすと、時折車が走り、人影も見えた。
「このまま40歳になり、そして50歳になるのか・・・」
オレは独身だったが、それは経済的な理由に加えて仕事場には若い女性が
おらず接触が無かったからだ。
周りの派手な奴らのように、合コンや出会い系サイトなど利用する気は、
さらさら無かった。
「一人は気は楽だが、やっぱり寂しいよな・・・ふぅー」
溜息と共に、煙草の煙を吐き出す。

「オレもさっきのテレビの女の子のように、バタバタと敵をやっつける
主人公だったら今のような単調な生活から抜け出せるのにな」
唇の形を変えると、輪になった煙が次々と吐き出され夜の街を
包んでいく・・・。

『その願い叶えてやろう』
突然、頭の中に男とも女とも言えぬ不思議な声のようなものが
響き渡った。
「な、なんだ?うわーーーーっ!!!」
声の主を探っていると、身体が宙に浮き上がったかと思うと吸い込まれるように、
オレの身体は夜の闇の中に消えてしまった。

「う、うーーーん・・・ん?」
どれくらいの時間、気を失っていたのだろうか?オレは見たこともない場所に
横たわっていた。
どこかの部屋のようでもあるが、家具など一切無く生活感がまるで無い。
(オレは何故、こんな所に・・・)
室内は、それなりに明るかったが照明の類も見当たらない。
(ここはナンなんだ?)
「誰か、います・・か?あれ?声が変だ。それに、わ!なんだ!?この服は!?」

オレは立ち上がって声を発すると女のような甲高い声に変わっており、
さらに服を見れば、先ほどテレビで見たヒロインのようなコスチューム
に変わっていた。
「なんで、こんな格好させられてんだよ。それにこの声も」

『目が覚めたようだね。驚いているようだが無理も無い。この部屋も、いま君が
着ている服も、それに身体もだが全て君の記憶から作り出したものなのだ』
先程の得体の知れない声が響くが、やはり鼓膜を通してではなく直接、脳に伝達していた。

「お前は誰なんだよ」
『私は、ココから遥か離れた天体からやってきたのだ。ある者を追ってね』
「別の天体?オレは夢でも見てるのか・・・」
『これは夢ではないよ。君はさっき言っただろう。敵を倒すために自分が
役立ちたいと。君の、その考えと私の目的が見事に合致したのだよ』

「何を言ってるんだ?」
『私は星から星へと移動しては悪さをしている、ある者を追ってここまできたのだ』
「よく分からないけど、それならオレにこんな格好させなくてもアンタがやればいいだろう」
オレは目に見えぬ相手に、声を出して反論した。

『残念ながら、私はこの星の大気中の成分が身体に合わぬのだ。
だから君が私に代わってヤツの行動を阻止して欲しい』
「ヤツってなんだ?オレにそんな化け物倒せるわけないだろう。逆にこっちの命が危ないじゃないか」

『いや、そいつは君が考えているように危険な生物ではない。ただ、この星の人間という生物に化けて悪さをしているだけなのだ』
「なら尚更の事、あんたがやればいいだろう」
『それが出来ないから頼んでいるんだよ。それに君も、そんな格好がしてみたかったのだろう?』

改めて自分の姿を見下ろすと、短いプリーツスカートにリボンの付いた半袖のセーラー風ブラウス、腕には円形のクリスタルの付いた腕輪が巻かれていた。

「オレは悪党をやっつける主人公になりたいとは言ったが、こんな少女趣味な格好をしたいとは言わなかったぞ!」
怒りをぶつけているつもりだが、どうにも可愛い声なので迫力が無い。
『言っている意味がよく理解できないのだが、君の脳の中にはその格好しか見当たらなかったのだ』
「だから、それはテレビを見ていたからだ。さあ早く、この気色の悪い格好から元に戻してくれ。その変な悪戯者と戦うかどうかは、それから考える」

『残念だが変身能力はそれで設定してしまったので、もう変更は出来ない。元の姿に戻りたいのなら敵と戦えばいい。結果がどうであろうと、それで一旦は元に戻る』
「勘弁してくれよ。じゃあ、さらに聞くけど失敗するとどうなるんだ?」
『別に命を奪われるような事はないから安心したまえ。万一、怪我をしてもその腕輪のスイッチを押せば瞬時にここへ戻れるから大丈夫だ』
「というと?」
オレは再び閉じ込められた部屋の中をぐるりと見回す。

『この部屋は君の身体に起こった不具合を全て解消してくれる。怪我も病気も、その服が破れたり汚れたりしてもだ』
「それも、オレの記憶からなんだな?」
『その通り』

「さっき、敵をやっつければ元の姿に戻れると言ったけれど、普段はどうなんだ?敵が居ない時は」
『その時は、君の本来の姿だよ』
「じゃ、今この格好が解けないのは、もしかして」
『ああ、ヤツがこの近くにいるのだ。さっそく悪さを始めようと徘徊してるようだな』

「ちぇ、結局戦わさせられのかよ。で、どうやって、そいつを見つけるんだ?」
『腕輪に付いた一番大きなクリスタルが点滅したらヤツが悪さを始めた事を示す。
そこで赤い小さなボタンを押せば瞬時に現場に移動する仕組みだ。
青色はここへ戻るとき。そして黄色は平常時に、ここから地上に降り立つ時に使うのだ』

「何か、必殺の武器とかはないのかよ」
『だから別に倒さなくても良いのだ。ただ悪さを妨害できれば』
「捕らえなくてもいいんだな」
『ああ、そこまでは必要ない。それにこの星での遊びに飽きたらまた別の星へ行くのだから』
「おい、おい。オレはそこまで付き合えないぞ」
『もちろんだ。別の星に着いたらまた、そこで悪さを邪魔する相手を私が探すだけの事だ。それが私の仕事なのだからな』

「!」
話しが一段落したところへ、タイミングよく半円球のクリスタルが発光した。
『どうやら始めたようだな。さっそく行ってくれたまえ』
「分かったよ。行けばいいんだろう。その代わり、帰ってきたら必ず元の姿に戻してくれるんだろうな?」
『約束しよう。さあ、急ぐのだ』
「やれやれ」
オレは赤いボタンを押して、悪戯が行われているという現場に急行した。



「どこだ、ここは?見たことのある通りだな・・・隣町か?」
露出度の高いセーラー風のコスチュームで、夜の通りを一人歩き始めた。
(これって見方を変えれば、正義のヒロインというよりもただの変態だぜ)
そんなことを考えていたら、すぐ近くから女性の悲鳴が聞こえてきた!
「きゃーっ!!」
「近いぞ。あっちか!」
慣れないストラップ付きのヒールに苦労しながら、オレは駆け出した。

「お、おいっ、お前!やめろ、その人を離せ!」
『ぐるる・・なんだ?お前は?』
人間の男の姿をしたそいつは、会社帰りであろうOL風の女性を羽交い絞めにしていた。
「た、助けて・・・く・・・苦しい」
「オレか?オレは・・・いや、私は正義の味方だ。名前はまだ無い」
(何だか言ってて、ちょっと恥ずかしいぞ)

『何だ?さっそく俺様の邪魔をしにきたって訳か。ぐる・・・ならばお前がこいつの代わりになれ』
男は女性を離して突き飛ばすと、両手を長い触手のようなものに変形させ、離れていたオレの身体に巻きつかせた。
「く・・・しまった!油断した」
一方、先ほどの女性は地面に叩きつけられた衝撃で気を失っている。

触手はさらに何本にも枝分かれすると、オレの四肢を広げ大の字になるように
宙に持ち上げ固定した。
「や、やめろ・・・くぅ!外れないぞ」
『助けに来たというのに、無様な姿だな。くくく』
両足は更に広げられ短いスカートは捲りあがって、太股を露わにした。

『なかなか、そそる身体だな。ぐるる・・・では頂くとしよう』
触手の先端をペニスの亀頭部のような形に変形させると、粘液を垂らしながら
身体中を這い回った。
「やめるんだ・・・ぬめぬめして気持ち悪い」
『ぐふふ・・・それはお前の快感を高めるものだ。たっぷりと身体中に染み込ませてやるからな』
「な、なんだと・・・うう」

大小の様々な触手は衣服の中にまで侵入してきた。
「あわわ、やめろー、やめてくれー」
ブラの隙間から入り込んでは両方の乳房にグルグルと巻きつき、次にはパンティのゴムを潜ってアナル、膣腔へと入り込もうとした。

「た、頼むから・・・そこは止めてくれ。初めてなんだ。オレ・・・私、
処女なんだよ。お願いだから、そこだけは・・・やめて」
『ぐへへ・・・それはいい。楽しませて貰おう。なーに、お前の穴に合ったサイズで入れてやるから安心しろ。それに、すぐに気持ちよくなる』

男は不敵な笑みを浮かべると、すぐに口、膣、肛門へと触手をねじ込んだ。
だが確かに、それらは大きすぎるものではなく粘液も潤滑剤の役を果たし、すんなりと入り込んできた。
「う・・・うう・・・くはっ」
(うわ、なんだ!この感じ・・・体内に深く入り込んでくるのに痛みが無い。むしろ気持ちいいくらいだ・・・)

『ぐへ・・なかなか、いい具合じゃないか。いいモノを持っているな』
「あ、あぐ・・・うう」
(や、やばい!本当に快感が高まってきた。このままでは無様にイカされてしまう)
触手の抽送運動を拒絶しようと身体に力を入れるとかえって膣道や直腸を締め、亀頭部の出っ張ったエラの感触をモロに受けてしまう。

『ぐへへ・・・さすがに初物はいいな。それにお前、本当に名器だぞ』
「うぐ・・ぐぐ」
(そんなこと言われてもちっとも嬉しくない。だ、駄目だ・・・中が引き摺り出されるような凄い快感だ。もう、これ以上は耐えられない!)

ぐちゅ、ぐにゅ、ぬちゅ、じゅぽっ
細いツタのような触手まで入り込んで、クリトリスの皮を剥き巻きついた。
「あ・・うはっ・・」
(ああ、そ、そこは駄目・・・そこは一番感じる場所なのに)
『ぐへへ、ますます締め付けてくるじゃないか。感じてるんだな。ならば、もう少し太くしてイボまで付けてやろうじゃないか』

ずぶ、ずぼ、ぬるーり、じゅぶっ!
「かはっ・・・あぐ・・・」
(ふ、太くなってきたー。しかも無数の突起まで付いて・・・もう、駄目っ!イ、イク・・・イッちゃいそう!)
『身体が震えているぞ。ぐふふ・・・さてはイクんだな。では俺様もイクか』

ぐちゅ、ぶちゅ、ぬちゅ!
「はっ・・・あう!ぐうっ!!」
(イ、イク!もう駄目っ!こんな格好でイカされる!イッちゃうーーーー!!)
『出すぞ!ぐへ、穴という穴に流し込んでやる!ぐふっ!!ふんむっ!』
びゅるんっ!!

大量のスペルマが膣内,直腸内,口内に放出された。
「あ、熱っ・・・ひ・・・ひどい」
体外にいた無数の枝分かれした触手たちも一斉に、射精したのでコスチュームはスペルマでまみれた。
『ぐへへ、最高だったぜ。今までの中で一番かもな。良かったらまた相手してくれよ。
次は蛸のように無数の吸盤をつけて遊んでやるからさ。ぐふふ』
そう言い残すと、触手を縮めた男は闇の中へと消えていった。

「く、くっそー・・・完全にイカされてしまった」
オレは乱れた服装を直すと、倒れていた女性を起こした。
「大丈夫?怪我はない?もう、あの変な男は去ったから安心して帰っていいわよ」
オレは慣れない女言葉を駆使して、女を家路へと向わせた。

「ではオレも戻るとするか・・・」
言われたとおりに、青色のボタンを押すと瞬く間に例の部屋へと移動した。
『お帰り。人助けは上手くいったようだね』
又あの声が聞こえてきた。

「助けはしたけどね。代わりに私、いやオレがいたぶられたよ。さあ、約束だ。元に戻してくれるんだろう?」
『そうだったね』
物分りのいい返答があった後、天井から光の集合体のような不思議なビームが身体を包み込んだ。

「ああ・・・おっ?戻れたんだな・・・服もオレの着ていたものだ」
『これから、どうするんだ?』
「どうするって自分のアパートに帰って寝るよ。明日も会社なんだ。さすがに
もう寝ないと朝がつらい・・・」
(今日の事は夢だったという事にして、忘れてしまおう)
『では行きたい場所を腕輪に告げ、黄色のボタンを押すのだ』
「お、おい。オレはもう人助けは辞めたんだ。この腕輪は返すよ」
『記念に君にあげよう。それにソレがないと地上には戻れないからな』

「だが、こんな目立つもの腕に巻いて外を出歩けないぞ。みっともなくて」
『大丈夫だ。普段の姿で地上に降りたときは細いブレスレット状になるから』
「それもまたオレの記憶からなんだな?」
『そういう事だ。さ、試してご覧』
「言われなくても試すさ。さ、オレのアパートに帰してくれ」

腕輪の大きなクリスタルが声に反応して、半球体に画像を浮かび上がらせた。
「な!なんだ・・・火事か?」
見覚えのあるオレのアパートの一室が黒煙を上げ、数台の消防車からの放水を受けていた。
「し、しまった!オレの落とした煙草か・・・」
パトカーも停まっており、数人の警察官が住民と話しをしている。

『どうしたのだ?ボタンを押して戻らないのか?』
「戻れるわけ無いだろう・・・オレに放火の疑いが掛かってるに違いない。
それに、なんてこった。家財道具もすべて消失してしまった」

『では、どうするのだ?』
「それは、こっちが聞きたいよ。人助けなんかしたばっかりにオレの帰る場所が無くなってしまったじゃないか!」
『ああ、ならばココに住めばいい。家具は君の好きなように作り出してあげる』
「それはイイとしてもオレはもう、この姿では外を歩けない」
『では、もう一度先程の姿にしてやろう』
再び光がオレを包み込む。

「ああ、また女の子に・・・」
『どうだ?今回は君の記憶から普通の服というのを着せてみたのだが』
見れば、先程のコスチュームではなく10代の女の子が好んで着る様なスカートとブラウス姿になっていた。

「だけど、どうやって生活するんだよ。これじゃ会社にも行けないし」
『ココにいれば何も不自由する事はない。欲しいものは何でも出してあげるよ』
「うう・・・そんな事って・・・ううっ」
オレは、その場に座り込むと込み上げる涙を必死でこらえた。

『その姿なら地上に降りても問題はないのだろう?』
「そうだけど・・・」
(不自由はないと言っても、こんなとこにずっと閉じ込められてたまるか。
コンビニでバイトでもして、またアパートを借りるか・・・)
『必要な物は何でも君の言うとおりに出してあげる。だから、あの悪戯モノが
また出てきたら向ってくれないかな?』

「うー、それはイヤだなー・・・」
『そこを何とか頼むよ。さっきも言ったが私はこの星の大気が合わないので、実体を出せないのだ』

「うーーーー、でも・・・・ん?」
(そういえばあいつ、オレの身体を気に入ってたっけ?それに次は吸盤付きの触手で苛めてくれるって言った・・・それって、結構いいかも)
無数の蛸の足が身体中に巻き付き、さらに陰部に侵入してくる様を想像すると、股間が熱をおび湿ってきた。

「分かったわ。私、正義の戦士になって戦う!」
立ちがると天井に向って見上げ、声の主に向けて宣言した。

『おお、やってくれるか!』
「うん、やるわ。だから最初のお願い聞いてくれる?」
『いいとも。何なりと言ってごらん』
「私、シャワーを浴びたいの。大きな鏡の付いた浴室を作って頂戴。それから可愛いベッドとパジャマもね」
『お安い御用だ』

「うふふ」
(案外コレはコレで楽しいかもね。こうなったらもう女の子として楽しまなくっちゃ損だわ)


     終わり


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