むらかみしおり
月曜の朝は苦手だ、目が覚めてもぼーとしてしまって俺はなかなか起きる事ができない。
今朝もまたなかなか目をあけることができないまま数10分が経ってしまっていると思う。
とりあえず俺は時計を見ようと枕元にあるはずの時計を手探りで探した。
あれ?
伸ばした俺のは手は空を握った。いつもならすぐに取れる場所にあるはずの時計がそこには無かった。
どうしたのだろうと思って俺は目をあけた。
なにか・・・、おかしい。
どこかおかしい感じがする。俺はとりあえず部屋の中を見渡した。
壁にかけられたミニモニのポスターが目に映った。ここは詩織の部屋じゃないか。
なんで俺が詩織の布団に寝ているんだ???
俺が寝ていたのは今年で小3になる娘ー詩織ーの部屋だった。
おかしいのは俺が詩織の部屋で寝ていることだけじゃなかった。
身長175センチの俺の体が詩織の子供用の小さな布団に寝ているのにすっぽりと収まってしまっていることだ
「いったいどうしたんだ?」
俺はつぶやいてすぐに口を手で塞いだ。こっ、声がいつもの声と違う。
甲高い声。これじゃまるで小さな女の子じゃないか。
それに・・・、俺は口を押さえた手をそのまま目だけ動かして眺めた。手ももみじのように小さい子供の手になっていた。
いったいどうなっているんだ。
俺は布団から出ると、ちかくにあった姿見に自分の姿を映した。
そこには俺の姿は無く、俺の愛する詩織の姿が映っていた。
鏡に映る詩織は愛用のピンク色のかわいいパジャマを着ている。寝起きで髪がピョンピョンとはねている姿がいとおしいが・・・これが俺の姿なのか?
ひょっとしてこれは夢なんじゃないか?
俺は鏡の中の詩織の姿をじっと見つめた。
たぶんこれは夢だ。
すぐに覚めて、な〜んだリアルな夢だったなぁって事でおしまいだ。そうだそうに違いない!
せっかくの珍しい夢なんだから・・・。
俺はもう一度姿見を見た。やはりそこにはあどけない表情でこちらを見つめる詩織の姿が映っていた。
手をちょっと上げてみると鏡の中の詩織も手を上げる。
俺が自分の髪をちょっとつまんでみると鏡の中の詩織も同じように髪をつまむ。
ちょっと引っ張ってみる。
痛て!
ふう痛かった。子供は感覚が敏感なんだなぁ。
鏡の中の詩織の瞳にちょっと涙が浮かんでいる。
俺は目の横の涙を手でぬぐった。
今度ははにかんでみた。
当然のごとく鏡の中の詩織もはにかむ。
詩織の笑顔はいつ見てもかわいい。
俺はしばらくそうやって鏡を見ていたが、いよいよ次の段階に移る事にした。
俺は詩織のほっそりとした腕でパジャマの上着の端を捲り上げた。
鏡の中の詩織も同じ動作をする。
「う〜ん」
俺はいつも詩織がやるようにうなりながらパジャマを脱いでみた。
脱いで再び鏡を見ると、子供用の下着をつけた詩織の姿が・・・。
子供特有の柔らかい肌をつつむ柔らかい下着。こう意識してみるとけっこう着心地が良いな。
俺は詩織のすべすべと気持ちの良い肌のさわりごこちを楽しんだ。
さて・・・・俺はパジャマのズボンに手をかけた。
「めがさめたのねパパ」
うわぁあああああ!
俺は脱ごうとしていたパジャマのズボンから急いで手を離して、その場に座り込んだ。
俺の2倍はありそうな男が部屋に入ってきて話し掛けてきたのだ。
「詩織か?」
俺は確認してみた。ここが詩織の部屋で俺が詩織になっているという事から大体の想像はできる。
「うんそうよ、しおりとパパのからだをいれかえたの」
えっ?
「パパと詩織の体を入れ替えたって・・・これ詩織がやったのかい?」
「うんそうよ」
俺になった詩織はコクンとうなずいた。普段は可愛いと思うそのしぐさももう35にもなる男がやるとかなり変だ。
「これは悪い夢だ・・・」
俺はつぶやいた。
「ゆめじゃないよ、だってほら」
俺になった詩織は俺の頬をつねった
「痛い痛い!」
頬をちぎられるような痛さだった。
「あ、ごめんつよくつねりすぎちゃった。ぱぱのからだってちからがつよいね。ないちゃだめだよ」
俺になった詩織はそこらへんにあったティッシュで俺の頬をぬぐった。また涙が出ていたらしい。
「これが夢じゃないとすると一体どうやってやったんだい?」
俺は俺の頬をティッシュでふいている詩織を見上げながら言った。
「うんとねぇ、裏のおじいちゃんがおしえてくれたの。いれかわりたいひとがねているあいだにおててつないでひみつのことばをとなえるればいれかわれるって」
裏のおじいちゃんってあの変りものの爺さんか。
「ひみつのことば? どんなことばなんだい?」
もとにもどるほうほうをきかなくては。おれはできるだけやさしいこえできいてみた。
「それは秘密です」
おれのからだのしおりはにっこりとわらってっていった。
「じゃあいい! しおり、とにかくからだをもとにもどしなさい」
おれはわざとすこしこえをあらげていったがしおりのかわいいこえではすこしもはくりょくがない。
「詩織は元に戻りたくないの」
しおりはゆっくりとくびをよこにふった。なんだかさっきよりどうさがすこしおちついているかんじがする。
「なんで?」
おれはゆっくりとしつもんした。おかしいな、しおりとはなしだしてから口がうまくまわらなくなってきた。
「だってあたし学校に行きたくないの。パパが詩織の代わりに行って」
なんだって?おれはしおりのかおをみた。
「パパ言ったじゃない。昨日詩織が学校に行きたくないって言ったらパパが『あんな良い学校ないぞ、できればパパが行きたいくらいだ』って」
そっ、それはこまるぞなんとかもとにもどしてもらわないと!
「だっ、だからってパパはしおりになりたいっていってないぞ。それにしおりもパパのからじゃいやだろう?」
やっぱりおかしい、いつもならでてくることばがでてこなくなっている。
「ううん、詩織は嫌じゃないよ。これから詩織がパパとして生きてあげるよ」
なんとか、なんとかしなくちゃ。
「そんな、ええと、パパのからだで・・・、いきていくにはいっぱいいろんなことをしらなくちゃいけないんだぞ。しおりは、え〜とすごいこまるぞ!」
ことばが、ことばがでてこない・・・。
「大丈夫、入れ替わった相手とばらく話せばお互いの知識が入れ替わるって裏のおじいちゃんが言ってたわ」
しおりはおれをみながらやさしくいった。
おれのあたまはさっきよりぼんやりしてきている。なんとかなんとかしなくちゃ。
「しおり!ええと、おとなになったらしおりのすきなおこさまらんちもたべれないんだぞ!」
しおりはすこしびっくりとしたかおをした。
「ふふふ、パパ知らないんだね。大人になっても言えばお子様ランチって出してくれるんだよ」
えっ?あ・・・だめだ・・・。
・・・・・・・・・
・・・・
「ほら、し・お・り! ぼんやりしないで早く着替えなさいママが困るだろう」
パパはそういってあたしのせなかをおした。
「もうパパ!しおりのせなかおさないでよ!」
あたしはほおをふくらませていった。
「ごめんごめん、今度デパートで詩織の大好きなお子様ランチ食べさせてあげるから」
「やったー!」
あれ? あたしなにかわすれているかんじがする。なんだろう?
・・・・・
よくわかんないや。
あたしはきにすることなくきがえはじめた。
−了−
あとがき
最後まで読んでくださってありがとうございます。おひさしぶりのSSです。はじめて小学生ものをかいてしまいました#(^。^)#
しかし、小学生って書くのが異常にむずいです。
自分が小学生だったときなんてはるか昔だし、その年代の知り合いもいないし・・・。ああ知りたい。
って何を言っているんでしょうね。
ではでは