美貌の女詐欺師、三上志穂は焦っていた。これまでは、執拗な警察の捜査の網をのらりくらりとかわし続けていたのだが、今度ばかりは逃れられそうになかった。いよいよ年貢の納め時なのだろうか?いや、身の危険を感じた志穂は、どんな手を使っても警察から逃れるつもりでいた。


      
 「あるバイト」    作:イニシャルM


 志穂が、その奇妙な張り紙にふと気付いたのは、全くの偶然だった。

 『高額アルバイト募集。人生を変える研究に協力してみませんか? TS研究所』

 そんな訳の判らない張り紙が、古ぼけた洋館の扉に張られているのを見つけた志穂だったが、最初は気にも留めず通り過ぎようとした。ニ,三歩行過ぎてから詐欺師独特の第六感に何か引っ掛かるものを感じ、慌てて引き返し張り紙をじっと見つめた。追い詰められていた志穂は、自分の勘を信じることにし、心を決めると洋館の中へと入っていった。

 中へ入ると、ドクターSと名乗る白衣を着た男が現われた。男にどことなく胡散臭さを感じながらも「張り紙を見たんですが?」と志穂が告げると、ドクターSは「丁度よかった、中へ入ってくれたまえ」と志穂を研究室と思しき部屋へと連れて行った。部屋はいかにもマッドサイエンティストを連想させる何に使うのか訳のわからない機械でごった返しており、椅子に高校生くらいの平凡そうな男の子が腰掛けていた。

 部屋に入り男の子の隣の席に志穂を座らせると、向かいの席に着いたドクターSが話始めた。

 S 「いやー、丁度タイミング良くバイトの希望者が二人来てくれて助かったよ。」
男の子「それで、バイトって何なんですか?」
 S 「じゃあ、早速説明しようか。ところで、君達の名前と職業は?」
男の子「僕は、平野博之です。夢幻高校の2年生です」
志穂 「えーと、三上志穂と申します。OLをしております」

 本当は詐欺師であるが、そんなことを正直に言える訳がない志穂は、とりあえずOLと偽ることにした。

 S 「ふむふむ、平野君に三上さんか。実は、この研究所は、男が女になる、もしくは女が男になるということを研究していてね・・・」
博之 「ふむふむ・・・?」
志穂 「は?」
 S 「で、今回出来上がった試作機『入替えクン8号』の被験者になって欲しいんだよ」
博之 「へ、どういうことなんですか?」
 S 「簡単に言うとね、アノ機械で君達二人の心と体を入替えたいってことなんだ」
志穂 「え、そんなことが・・・。嘘でしょ?」

 博之と志穂は思わず顔を見合わせてしまったが、ドクターSは構わず話を続けた。

 S 「嘘とは失敬な。これまでの実験でもちゃんと成功してるよ」
博之 「本当に、そんなことが・・・」
 S 「それで、今回の実験期間は三日間、その間君達を入替えたいんだが、被験者になってもらえないだろうか?」
志穂 「危険はないんですか?」
 S 「もちろん、安全は保証するよ。それに、私自身の体でも確認済だよ。それで、日給は一万五千円、これでどうだろうか?」

 博之は志穂の姿を横目で見ながら考えていた『うーん、こんな綺麗なお姉さんになるのか。ひょっとして、ウハウハやり放題かな?こんな機会めったにないだろし、断る手はないよな〜』。一方、志穂も『この状況は利用できそうね』と内心ほくそ笑んでいた。

博之 「やります」
志穂 「引き受けさせて頂きます」

 二人同時に了承の返事を貰ったドクターSはホッとした表情になると、二人を『入替えクン8号』の所へ連れて行き、そのシートへ座らせた。そして、ヘルメットのような物を二人の頭に被せると、「じゃあ、いくよ?」と声を掛けて、スイッチをオンにした。スイッチが入った瞬間、博之と志穂の意識は真っ白になり、気を失ってしまった。
 二人はすぐに意識を取り戻したが、お互いの顔を見合わせるとビックリした表情になり、すぐに自分の体を確かめ始めた。特に、志穂(博之)の方は、新たな自分の体に興味があるらしく、自分の豊かな胸の感触やくびれた腰をしきりに確認していた。

 二人がある程度落ち着いた頃を見計らって、ドクターSが声を掛けた。

   S  「どうだい、何の危険もなかっただろ?」
博之(志穂)「ええ、でも本当に入替るなんて、驚きましたわ」
   S  「じゃあ、三日後のこの時間に、もう一度来てもらえるかな?その時に元に戻してあげるのから」
志穂(博之)「はい、わかりました」
   S  「バイト料はその時に払うからね。それと、出来ればこの三日間で、平野君には女にしか体験できないことを、三上さんは男にしか体験できないことを経験してもらえるとありがたいんだがな・・・」
博之(志穂)「努力はしてみますわ」
   S  「まあ、よろしく頼むよ。では、三日後に」

 そんな会話の後、ドクターSに見送られた博之(志穂)と志穂(博之)は古びた洋館を後にした。

 洋館を出てすぐに、志穂(博之)が博之(志穂)に話しかけた。

志穂(博之)「ねえ、三上さん、これからどうしましょう?」
博之(志穂)「あら、志穂でいいわよ。そうね、まずは情報交換かしら?これから三日間、お互い入替って過ごさないといけないんですものね」
志穂(博之)「それはそうですね。あ、それと、僕も博之でいいです。」
博之(志穂)「そう?なら、博之君の行きつけで、二人でゆっくり話せる所ってある?」
志穂(博之)「いいえ、残念ながら・・・」
博之(志穂)「じゃあ私に任せてもらってもいいかしら?」
志穂(博之)「ええ、お願いします、志穂さん」
博之(志穂)「じゃあ、付いて来てくれる?」

 と言うと、博之(志穂)は志穂(博之)を連れてとある建物の前へとやって来た。「着いたわよ」と博之(志穂)に言われて、志穂(博之)が見上げると、そこはラブホテルだった。

 思わず顔を赤らめ「し、志穂さん・・・」と言いかける志穂(博之)に対し、博之(志穂)は「バッカね〜、二人っきりの内緒話には、ここが一番なのよ。喫茶店なんかで話してて、周りの人に聞かれたらどうするの?」と簡単に言いくるめると、とっと中へ入り手馴れた様子で部屋を選びフロントで鍵を借りてしまった。そして、何かを思い出した様子で「ごめん、すぐに行くから、先に部屋に行っててくれる?」と志穂(博之)に告げると、どこかに姿を消した。

 しばらく後に、博之(志穂)が部屋に入ると、志穂(博之)は回転ベッドに腰を掛け、部屋の中を物珍しそうに見回していた。「ひょっとして、初めてかしら?」と訪ねる博之(志穂)に、恥じらいながら「はい、実は・・・」と答える志穂(博之)。そんな志穂(博之)の様子をどことなく厭らしい目で眺めながら、「喉が渇いてるでしょうから、これでも飲んで」と冷蔵庫のジュースを勧めた博之(志穂)は、自分もジュースを飲んで一息つくと「じゃ、始めましょうか?」とお互いの情報交換を始めた。

 まず、志穂(博之)が自分紹介を始め、博之(志穂)は巧みな話術で「博之」として暮らして行くのに必要な情報を的確に聞き出していく。家族構成・趣味の話・学校での生活・住所・etc・・・。「夢幻高校2年生C組出席番号16番。父母との三人暮らしで、兄弟姉妹はなし。帰宅部で、クラブには無所属・・・」。「博之」の詳細な情報を得るにつれ、『これは思っていたより楽そうね、ラッキーだったかしら?』と博之(志穂)は心の中で呟いていた。
 志穂(博之)から必要な情報を聞き出すと、次に博之(志穂)が自己紹介を始めた。といっても、自分が詐欺師なんてことを正直に言えるはずもないので、名前と年齢以外は全て嘘っぱちの口から出まかせであったが・・・。そんな大嘘を、志穂(博之)は真剣な表情で真面目に聞いていた。

 やがて、お互いの情報交換が終わる頃になると、志穂(博之)の頬がほのかに桜色に染まり、何かモジモジし始めている様子であった。『そろそろ頃合かしら?』と思った博之(志穂)は、ベッドに腰掛けた志穂(博之)へと襲い掛かった。

志穂(博之)「し、志穂さん、何するんですか?」
博之(志穂)「ふふふ、いいじゃない。ここで男と女がやることって言ったら、決まってるでしょ?」
志穂(博之)「そ、そんな・・・」
博之(志穂)「それに、ドクターSに、女にしか体験できないことを経験しておいて欲しいって言われてたでしょ?」
志穂(博之)「それは、そうですけど・・・」
博之(志穂)「それに、私の体に興味はな〜い?私は博之君の体に、とっても興味あるんだけどな〜」
志穂(博之)「そ、それは確かに・・・」
博之(志穂)「ね、じゃあいいでしょ?」

 と言うと、博之(志穂)は志穂(博之)のパンストとショーツを脱がせ、元は自分の物であった秘所へと顔を埋めると、いきなり舌を這わ始めた。先ほどのジュースに混ざっていた催淫剤が十分効いているようで、既に肉の裂け目からは愛液が滴り落ちており、敏感になっている突起を舌で刺激してやると、志穂(博之)は息も絶え絶えに「うん・・・、あはん・・・」と志穂の声で艶かしい喘ぎ声を洩らす。その声を耳にした博之(志穂)は、ついさっきまで自分の物であった体が艶かしく反応するのに興奮を覚え、また志穂(博之)も、思わず洩らした自分の声が甘い女の声ものに変わっているのを耳にし、更に刺激を受た肉壺をひくつかせるのであった。

 ひとしきり志穂(博之)の下半身を攻め続けた博之(志穂)は、志穂(博之)の衣服を脱がせ生まれたままの姿にすると、自分も手早く裸になった。ベッドの上に横たわった志穂(博之)は、天井の鏡に写った自分の衣服が次第に脱がされ、桜色に染まった美しい女の裸身が徐々に現われてくるのに興奮を覚えていた。しかし、遂には黒いブラジャーが外され豊かな胸が白日の元に曝されると、その女体が現在の自分であることを思い出し、思わず両手で形良く盛り上がった真っ白な胸を反射的に隠してしまった。だが、もう十分反応し始めている女体は正直なもので、既に勃起している乳首からは肉壺からとはまた違った快感が送られ、またも甘い喘ぎ声を上げてしまった。

 そんな志穂(博之)の反応を見た博之(志穂)は、ニヤリという笑みを浮かべると「私の体はどう?すっごく感じるでしょ?」等と言いながら、勝手知ったる自分のツボを的確に責めていった。首筋・耳の裏・乳首・脇の下・肉襞と的確に・・・。そして、タイミングを見計ると、ギンギンに勃起したペニスを愛液滴るヴァギナへと挿入した。元自分の物であった肉棒をついさっき獲得したばかりの女の部分で受け入れた志穂(博之)は、新たに発生した強烈な刺激に飲み込まれ、ひとたまりもなく快感の奔流に流されてしまった。元の自分の秘部に熱い男根を突っ込んだまま、博之(志穂)は志穂(博之)を四つん這いにさせ、後ろから腰を振り続けた。正面の鏡に写る、後ろから男に犯されながらも満足しきった表情の美貌の女と目線が合ったその瞬間、自分の肉壺の中に熱い何かがぶちまけられるのを感じた志穂(博之)は、絶頂に達しそのまま気を失ってしまった。


 しばらくして、志穂(博之)が目を覚ますと、博之(志穂)は身支度を終えていた。それに、何だか外の様子がおかしいような気がした。部屋に備え付けのバスローブを裸身に羽織り、窓からホテルの外の様子を覗った志穂(博之)は、多量のパトカーを見付け困惑していた。「???」
 そんな訳の判らない様子の志穂(博之)に、博之(志穂)が声を掛けた。

博之(志穂)「やっと、来たようね」
志穂(博之)「え、一体なんなんです?」
博之(志穂)「あら、アナタのお迎えよ」
志穂(博之)「え、どういうことなんです?」
博之(志穂)「私がOLっていうのは嘘っぱちなの。実は、指名手配の詐欺師なのよ」
志穂(博之)「ということは・・・」
博之(志穂)「そう、やっと判ったようね?アナタを捕まえに来たのよ」
志穂(博之)「・・・」
博之(志穂)「じゃ、後はお願いね〜♪」
志穂(博之)「え?し、志穂さん?」
博之(志穂)「志穂は、あなたでしょ?僕は平野博之ですよ」
志穂(博之)「そ、そんな・・・」

 ことの真相を聞かされ、思わずベッドに座り込んでしまう志穂(博之)。そんな志穂(博之)を一人部屋に残して廊下に出た博之(志穂)がエレベータに乗ろうとすると、丁度刑事と思しき人間が中から出て来、先ほどまで博之(志穂)がいた部屋へと向かうのが見えた。
 入れ違いにエレベータに乗り込んだ博之(志穂)は、心の中で喝采を上げていた。

『これで、今日から私は自由身よ〜。うふふ〜♪』





 それから、一週間後・・・

 志穂が気付いた時、彼女は留置所の中にいた。『あれ、確かTS研究所とかで「入替えクン8号」とやらの実験体として高校生の男の子と入替るはずだったのに、なんでこんなとこにいるのかしら?』

 一方、博之が気付いた時、彼はラブホテルでエッチの真っ最中だった。『あれ、綺麗なお姉さんと入替るはずだったのに、どうしてこんなとこにいるんだ?おっ、気持ち良い〜。えっ、憧れの啓子先輩とエッチしてる?こりゃ、ラッキー・・・』と、腰を振り続けていた。

 ちょうどその頃、TS研究所ではドクターSがつぶやいていた。

「うーん、あれから一週間経つのにあの二人やって来ないな?ま、そろそろ元に戻る頃だし、バイト代も後払いで実害もないから、まあいいか。ただ、データが取れないのだけは残念でだが・・・。さて、次の試作品はどうするかな?早く研究を完璧なものに仕上げたいものだな・・・」

 

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