か・ん・づ・め

  作  うさ吉 

 

 子供の頃からの憧れ。それは「おもちゃの缶詰」をもらうこと。金のエンゼルなら1枚。銀のエンゼルなら5枚でもらえた。でも、銀のエンゼルは出るけど金のエンゼルは出てくれない。しばらくすると、2枚目の銀のエンゼルは出たけど、その時には1枚目はどこかにいってしまって、結局また1枚目から集め直し。俺のまわりにも集めている友達がいたけど、結局誰ももらえなかった。40才になった今、「おもちゃの缶詰」はまだ手に入れていない。

 ある冬の日、本屋のエロ本コーナーで立ち読みをしていると、ある写真雑誌の表紙に

「TS出版が贈る 20世紀の最後を飾る大プレゼント。あなたの望むものが手に入る!!」

という文字があった。どうせAV女優のパンティーか何かのプレゼントかと思いながらもつい開いてみると、

 

獲得ポイントにより

1.   1.  金銀宝石にアクセサリー

2.   2.  バイクに車

3.   3.  パソコン&周辺機器

4.   4.  楽しみ金・銀・銅のかんづめ

 

と書いてあった。ようは、雑誌についているインスタントくじにポイントが書いてあり、そのポイントによっていろいろなプレゼントがもらえるということだった。ポイントは1Pから10000Pまで。景品も、10Pのサイン入り色紙から始まって、宝石や車などは‘時価/100’という表示。つまり、1P100円で換算して、欲しい品物がもらえるらしい。

 ただ、金・銀・銅のかんづめだけは‘ラッキー賞。1枚でGet!’となっていた。中身が何かは書いてなかったが、1枚でゲットという位だからたいした物ではないだろう。

 俺の性格とは悲しいもので、‘袋とじ’とか‘限定’とか書いてあると直ぐに飛びついてしまうのだけれど、この時も、ただのプレゼントなら見逃したと思うけど、インスタントくじは引くし、景品は望みのまま(まあ、ポイントがないとだめだけど)だし、何よりも初詣で引いたくじが5枚とも全て大吉だったことが大きかったかもしれない。結局この本を買ってしまった。750円だった。

 

 家に帰ると真っ先に表紙の裏の銀の部分を剥がしてみた。何と50Pだった。50Pということは色紙でもテレカでも写真集までもがもらえた。でも、ポイントは累積できるので、50Pはしっかりしまって置いてもっと高価なものを狙うことにした。

 次の号を買うと、何と何と今度は2000Pだ!! 2000Pということは……お金に換算すると20万円だ〜!! 俺はなんてついているんだろう。 あまりにもうれしくて、ついこのことをカノジョに話したらシャネルのバッグが欲しいと言われてしまった。この年になると金をかけないと女はついてこないので、仕方なく俺はバッグを獲ってやった。だけど、まだ300P以上残ったので更に挑戦を続けた。

 5月号では遂に幻のかんづめ=‘銅のエンゼル’をゲットした。このエンゼル、さすがTS出版だけあって、でっかいバストとペニスがついている両性具有エンゼルだった(もっとも、本家のエンゼルも性別はないっていうけど)。何が来るかわからないけど、とりあえず送ってみると焼き鳥の缶位の大きさの銅色の缶が送られてきた。胴体には今度はTSエンゼルが浮き彫りにされていた。

 缶を開けてみると、中には半透明のフィルムでできた、花嫁さんが付けるような手袋が入っていた。俺の腕をすっぽりと包むくらいの大きなものだった。一緒に説明書が同封されていたので読んでみると、

 

優香の腕プレゼント

  1. 1.    同封のフェイクスキンに、奥までしっかりと腕を通して下さい。
  2. 2.    熱めのシャワーを腕にかけるか湯に浸かって下さい。
  3. 3.    シャワーの場合は、全体にゆっくりと湯をかけそれを何回か繰り返して下さい。

 湯に浸かった方は腕が全て浸かるようにして下さい。

4.脱ぐ時は冷水をかけるか浸かって下さい。

注〜・指をきちんといれてください。

  ・シャワーまたは浸かる湯の温度は40℃以上にして下さい。

  ・入用剤は決して使用しないで下さい。

  ・冷水は20℃以下にして下さい。

  ・脱ぐときは、すべて剥がれるまで待って下さい。

と書いてあった。

「優香の腕〜?? なんだそりゃあ??」

よくわからないけど、とにかく服を脱いで両手を手袋に入れシャワーを浴びることにした。

「え〜っと、温度は40℃以上だから……いつも通りでいいな。それから全体にゆっくりとシャワーを当ててっと………」

「お、おお〜!!」

 するとどうしたものか、シャワーの当たったところが段々と収縮してきて、しまいには俺の腕にピッタリと張り付いてしまったではないか! そして…そして……そして………、俺の黒く太かった自慢の腕はもう何処にもなく、目の前には白い腕があった!!

「こ、これは一体???」

 触ってみると、ほとんど筋肉などないプニプニと柔らかい女の腕だった。感覚もしっかりとあった。皮を引っ張ってみたが、1ミリも隙間などできず、本当の本物の女の腕になっていた。ごつごつとしていた指も今では細くてしなやかなものとなり、指先には縦長に伸びたピンク色の爪がついていた。

「や、柔らかくて気持ちいい……。こ、これが優香の腕か……?」

 本当かどうかはわからないが、優香ファンの俺としては‘優香の’といわれただけでペニスがビンビンに反応してしまっていた。

 ペニスを触ってみると、普段小便やオナニーの時に触っている感触ではなくて、柔らかくそれでいてどこかぎこちない、女に握らせた時のあの感触だった。少ししごいてみるとペニスはどんどん怒張して、ここしばらくは見ていない若い頃のような角度にそそり立った。

 恥ずかしい事ながら、40才にもなって俺は浴室でオナニーをしてしまった。小さな手でしごかれる感覚は、いつものオナニーとは違いたまらないものがあり、風呂から上がった俺は更にもう一回してしまった。

 それからの俺は、仕事から帰ると必ずオナニーをするようになった。不思議なことに、今までならとても無理だと思うのだが、優香の手で触るといつでも直ぐにビンビンに立つのだった。

 

 初詣で引いた大吉は伊達ではなく、6月号でまたもや俺は‘銅のエンゼル’をゲットした。今度は腕ではなく足らしかった。使い方は腕と同じだったが、説明書の名前は「釈 由美子」となっていたから、これは釈 由美子の足ということなのだろう。

 脱衣所で全裸になり細長いフェイクスキンに足を通し、中に入ってゆっくりとシャワーをかけてみた。するとどうだろう。腕の時と同じように袋が徐々に縮み、30秒もすると股の付け根までが真っ白な毛1本無い足になっていた。俺の体には似合わない細い足だったが、それでいて触ってみるとしっかりとムチムチとした弾力のある肉に包まれていた。

 ペニスがいつものように怒張したのでオナニーをしようとしたが、

「????」

握ってみてゴツゴツした自分の手だったことに気がついた。

「いけねぇ。これじゃあ台無しだぜ」

 直ぐに優香の腕を持ってきて装着した。客観的に見ると腕が優香で足が釈由美子で身体や顔はごつい40男の俺は、不気味な生き物だったに違いない。だが、俺からすればそんなことは関係なく、女の腕と足が目の前にあるだけだった。

「お〜〜〜〜!」

 腕も気持ちよかったが、今思うと足の気持ちよさの比ではなかった。優香の可愛らしい指でさすると、さすった所からゾクゾクする毛が逆立つような気持ちよさが生まれてきた。一度収まっても、直ぐにその場所が疼き、しばらくの間はやめることができず、ただひたすら足を撫でまわった。特に内腿は敏感で、足の先から頭までゾクゾクする感じが突き抜け、ペニスの先端がどんどん濡れていった。

「お、おう! もうだめだ……だ、出したい!! ウオッ!!

 ペニスに手を当てると、何とその瞬間にイッテしまった。まるで初体験の日のようだ。毎日オナニーしているにもかかわらず、ペニスからはドクドクとザーメンが溢れ出ていた。 その日は結局3回もオナニーをしてしまった。

 

 品物をもらい、優香の腕と釈由美子の足をもらい…今までおみくじや占いなんか信じたことはなかったが、ここまで運が良いとさすがに信じるようになり、俺は神社に‘寄進’に行ってきた。そして、購入する冊数も増やし、いろいろな店で30冊以上を買いあさり応募をした。

 

 するとどうだろう。夢は叶い、7月号では何と‘銀のエンゼル’が当たった。

 ‘銀のエンゼル’缶は‘銅のエンゼル’缶よりも大きくて、ティッシュボックス位の大きさだった。‘銀のエンゼル’は、どうやら全身用のフェイクスキンらしかった。

「今度はどのアイドルかな……また、優香チャンだと良いなあ−。モー娘でも………」

 期待に胸を膨らませて開けてみると、中に入っていたのは「川島なお美」だった。

「川島なお美〜。なんだ、ババアじゃねえか! クソッ!」

 てっきり若いアイドルしか入っていないのかと思っていた俺の落胆は大きかった。俺より年下ではあるが、40女のババアでは落差が大きすぎた。何処の誰が好んでババアを相手にしたいものか。女は若くてピチピチしているからこそ抱く価値があるのだ。

 結局その日は手を通すこともなくほったらかしにしたまま寝てしまった。

 

 

 翌日、俺は久しぶりにカノジョと会った。

「どうしたのよぅ。久しぶりじゃない。どこかに女でもできたんでしょう」

「そんなこと無いよ。仕事が忙しかっただけさ。ほら、その証拠にもうこんなだぜ」

「ああ、素敵。元気なのね」

 そこからはいつも通りのセックスだったが、感じ方は何か物足りないものだった。俺のペニスをしごかせたりフェラチオをさせたりパイズリさせたり、やらせることはいつもと同じなのに感じないのだ。挿入しても、確かに柔らかく絡みつき、暖かく潤っているので気持ち良いのだが何か物足りないのだ。自分でしたのでツボを押さえていたせいか、優香の腕でオナニーしたときの方が感じた気がする。更に違うのは、“触られる快感”が無いことだった。由美子の腿を触ったときの気持ちよさ。そこから生み出されるゾクゾクする快感。いくら触らせても挿入してもこれがなかった。

「ねえ、どうかしたの?」

「うん? 別にどうもしないけど…」

「何かいつもと違うわ。何か…こう……気が入ってないっていうか……気持ち良さそうじゃないっていうか……。ねえ、あたし良くなかった?」

「そんなこと無いよ。ちょっと疲れてたせいじゃないかな。君はいつもの通り最高だったさ」

「そう、ならいいんだけど。ねえ、今度はいつ会ってくれる?」

「えっ? そうだなあ………」

 その後イロイロと話をしたようだがあまり覚えてなかった。俺の頭の中には 

《触られたい!》

という欲求が渦巻いていてカノジョどころではなかったのだ。今までのセックスではなく、ペニスを思うように触られたい。腿を撫でられたい。そして……体中を触られてみたい!! 新しい性の欲求が俺の中で渦巻きどんどん大きくなっていった。

 

 マンションに帰ると、俺のペニスはさっきしたばかりなのにもうビンビンに怒張していた。これから始まる未知の世界にペニスが反応していたのだ。

 缶を開けると中には全身の抜け殻が1枚とウィッグが1枚入っていた。背中の所に切れ込みがあり、そこから身体を滑り込ませた。入った後どうしてもペニスで股間が膨らみおかしかったが、構わずシャワーを浴びてみた。するとどうだろう。湯が当たるに従って抜け殻のようだった皮膚が全身にピッタリとフィットしていった。骨格がどうなっているのかはわからないが、ペニスの跡も平らになり今の俺は全身が女であった。

 視線の位置が低かった。どうやら身長は20cmも縮み155cm位になっていたようだ。視線を下に移すと決して大きくはないがしっかりと膨らんだバストがあった。さらに下へ移すと、少したるみながらもキュッっとしまったウエストと張り出した腰、股間には丁寧に手入れされた逆三角形の茂みがあった。全身は白く、優香や由美子の時とは違う成熟した女の柔らかさで覆われていた。頭が丸坊主ではアンバランスナので、缶からウィッグを取り出し被った後シャワーを浴びるときれいに頭に張り付き、タオルでいくら拭いてももうずれることはなかった。

「ほう〜」

 風呂から出た俺は、早速ベッドルームで全身を点検してみたが、そこには紛れもなくテレビの失楽園でみた川島なお美がいた。さっきは気付かなかったが、やはり年のせいで肌に張りが無く、下腹や尻、二の腕などがたるんでいた。触ったときに押し返す感じが無く、水の入ったビニール袋を触ったような感じだったが、不思議なもので顔はしっかりとメイクされていて、シワやシミなどはあまり目立たないようになっていた。まさに川島なお美を裸にした姿だった。

「やっぱ、優香や釈に比べるとババアだなぁ。まあ、贅沢は言えないか……」

 俺は早速新しい身体の点検を始めた。

 まずは慣れている腕と足。はじめは若い方が気持ちいいのかと思ったが、触ってみるとたいした差はなかった。確かに弾力はなかったけど、それはそれで触る感触は落ちたけど触られる感覚としては同じようなもんだった。

「へっへっへっへ。次は…胸だぞぉ〜。モミモミモミ……」

「………??? あれ???」

 何で? 何で? 何でかたいして気持ちよくなかった。いつもなら女は喜んで声を挙げ、次第に濡れてくるもんなのに……気持ちよくない……。ていうか、感じない……。

「よし!」

 乳首に矛先を替えた。摘んで摘んで…まわしてまわして……クリックリックリッ………

「ア、アア〜ン。やっぱ感じる!」 

 どうやら揉む方向が逆なのと、遠慮した触り方が悪かったらしかった。その証拠に、乳首で感じてからは俺の中で何かがかわり、はじめは少し痛いくらいに触り、それでいて力を抜く時は触るか触らないかの微妙なふれ方で触るようになると、それまでの不感症気味の感覚が嘘のように鋭くなっていった。

「あっ……ぬ、濡れてる……」

 俺の股間にある茂みは風呂上がりのように濡れていた。指で開いてみるとすこしはみ出た2枚の花弁があり、その端からは充血したクリトリスが顔を覗かせていた。

「いっ痛い!」

 乳首と同じようにクリクリと摘むと痛みが走った。やはり乳首より敏感らしい。今度は慎重に割れ目の中に指を入れゆっくりと内壁をなぞるようにクチュクチュと出し入れしてみた。するとどうだろう。股間から潮が噴くように愛液が溢れ出てきた。そして、その時、アタシの中で何かが変わった。

 一旦濡れ始めると、年齢なりに開発されているせいか、はたまた芸能界で鍛え上げられたせいかそこからは早かった。全身の肌の感覚が鋭くなり、どこを触ってもゾクゾクする感じが起こり、いつの間にかアタシは……アタシの股間はペニスを求めていた。

「アア……欲しい……太い‘モノ’が、逞しい“ペニス”が欲しい………」

「誰か……誰かアタシを抱いて……“犯して”………」

 しかし、アタシ以外の誰がいるわけでもなく、結局制汗スプレーの缶を使ってオナニーをするしかなかった。仰向けになったアタシの股間には缶が突き刺さり、それを深く受け入れ離さないように閉じられる腿の間で細い右腕が激しく上下していた。左腕も休むことはなく握り潰すように胸を揉み、かと思うと口をこじ開け指を入れ犯していた。

「アッ、アックッ……アフッ! クウ〜…ウンッ、ン〜ン……ア〜〜〜」

 身体が宙に浮き爆発したかと思うと目の前が真っ白になった。そして、間をおかず全身を優しく大きな快感の波が包み込み、全身の力を奪い去っていった。

 意識が戻ってからもアタシの股間はジンジンと疼き、指で触っていたら直ぐにさっきの感覚がよみがえってきた。

「な、何? 今イッタばっかりなのに……どうしたっていうの……?」

唇が、乳房が、乳首が、腕が、足が……そしてヴァギナが………全身が更なる行為を求めて疼いていた。

「な、なんて好き者なの…この女は……」

「アン! な、なんて感じるの……この身体は!!」

 

 その後のことは覚えていない。俺は何回絶頂に達したのだろうか? 気がつくとベッドにけだるい身体を横たえて朝を迎えていた。恥ずかしいことに腰の下は水をまいたように濡れていた。

「女って、こんなに気持ちのいいモノだったのか」

「こりゃあ得したな。折角今日は休みだし、もう一回楽しもうかな……」

「クンクン…汗くさい。シャワーでも浴びるかな…」

 シャワーが当たると、いつもと同じ温度、同じ水流なのに熱く痛く感じられた。

「ああ、女ってこんなに敏感なんだ……だからあんなに気持ちよかったんだな……」

「あ、ああ…こ、これは……たまらない………!!」

 ぬるめに下げたシャワーを直接股間に当てると、何と表現したらよいのか、指とは違うピンポイントで攻められる快感と切なさが全身に広がった。クリトリスも乳首も既にスタンバイできていたが、ヴァギナの物足りなさを思うとスプレーが恋しくなり、思わずオナニーをしそうになるのを何とか押さえ、ベッドルームへと楽しみを運ぶことにした。

 

 脱衣所に出ると、鏡には別人の女が映っていた。

「?? こ、これ……これって誰?」

「まさか…川島なお美……? 本当……に……?」

 どうやら化粧が落ちたようで、そこにはいくつものシワを刻んだ中年の女が映っていた。

「化粧をしなきゃ!!」

 ところが、俺の部屋に化粧品なんてあるわけがない。早くオナニーがしたい俺は、この全身を包むスキンを脱ごうとしたが、ふと考えるとどうも男の姿では無理がありすぎる。恥ずかしいがこの格好で行くしかない。

 もちろん女の服もないので、仕方なく俺は自分の服の中からトランクスとシャツとジーンズを取り出して着替えることにした。

 だが、ここでまたもや俺は女を知ることになった。

 トランクスは腰で引っかかりなかなか上がらない。やっと引っ張り上げると今度はウエストがブカブカ……。ジーンズにいたっては、体は小さいのに尻が入らずファスナーが上がらないのだ。逆にシャツ大きすぎてワンピースのようになってしまう。これでは出掛けるわけにも行かず、仕方なく仕事用のつなぎに身体を入れ、ウエストは落ち込んでベルト(30cmも切らなければ合わなかった!)で止め、手と足は折って何とかサイズを合わせた。全身ブカブカで手と足のところで折り上げながら、尻まわりだけはきつく引きつれた不思議な格好となったが何とか買い物には出られるようになった。

 

 家の側の‘しまむら’に行くと、さすがに変なのかすれ違う人が皆俺を振り返り何か言っているようだった。店内に入ってからも店員がこちらを指さしひそひそと話しているのがわかったが、逃げるわけにもいかず構わず下着と服を選びだした。

 ところが問題は続くもので、何と俺は‘自分のサイズ’を知らなかった。けれど店員に計ってもらうわけにも行かず、仕方なく俺は‘Mサイズ’に的を絞りショーツとスポーツブラ、ワンピースとサンダルを買い込んだ。

 俺は(またもやジロジロ見られながら)コンビニに入り、トイレに駆け込むと早速着替えた。

 狭い個室で苦労してトランクスを脱ぎショーツを‘初めて’穿いた。不思議なことに、あんなに小さかったのに今では俺の尻を包み込んでいる。スポーツブラにバストをしまい込み、ワンピースを着込むと一応女ができあがった。サンダルに履き替えると今まで着ていた服を袋に詰め込み、急いで店を出て化粧品を買いに出掛けた。

 しかし俺を未知の感覚が戸惑わせた。隙間無く張り付く下着の感覚。股間を手で触ると軽く膨らみがあるだけで殆ど平らなのに、股間からはショーツがヴァギナに食い込むよう感覚が伝わってくる。歩けば歩くほどこの感覚が強くなり、何度か電信柱に隠れショーツを引っ張らなければいけないほどだった。こんな感覚はブリーフにも、もちろんトランクスにはない感覚だった。胸は胸でとても窮屈で息苦しいほどだった。ワンピースを着ても、歩く度に股間からは空気がスーッっと入り込んでくるし、風が吹くと裾が広がり恥ずかしさに思わず立ち止まってしまった。

 化粧品を買いに店に入るとその値段に驚かされた。1品1品が数千円もするのだ!更にその数の多さ!! 何を買って良いかもわからず、無駄なものを買って金捨てるのもいやなので、仕方なしに何も買わず俺は店を出てマンションに帰ることにした。

 が、その途中で100円ショップに立ち寄るとそこに化粧品が売っていた。これなら値段を気にせずに買える! 結局殆どの種類を買いそろえたのに5千円もしなかった。途中の本屋でメイクの入門書を購入した後そのままマンションへと戻った。

 

 それからの俺は、仕事が終わるとマンションに直行し、毎日メイクをしてオナニーにふけっていた。男だったら腎虚にでもなりそうだが、女というのは恐ろしいもので、身体に慣れたせいか日に日に快感の度合いが高まっていった。また、いわゆる‘ツボ’がわかってきたせいで素早く快感を高め、それをじっくりと焦らして悶えまくるなんて技も使えるようになった。

 そんなある日、化粧品がなくなったので、今度はちゃんとメイクして(もちろん芸能人だから真っ黒サングラスも忘れないよ)女の服を着込んでまともな化粧品を買いに行った。

 店にはいると、そこには100円ショップとは違い、各メーカーから発売されている数え切れない程の種類と数の化粧品が売っていた。なかなか選ぶことができず、かといって川島なお美とばれるとうるさいのでうろうろするばかりだった。

 そんな時、偶然ぶつかった女子高生が

「どけよババア! 邪魔なんだよ」

「そうだよ。さっきからうろうろしやがって。メイクしたってババアはババアなんだからあきらめろよ」

「その年で男でも引っかけるつもりかよ」

「な、何ですって………!」

ほとんどインネンのような文句だが、俺には返す言葉がなかった。自分では例えババアでも芸能人なので‘サイン’や‘握手’を求められる事はあっても、まさかこんな酷いことを言われるとは思ってもみなかった。何よりもむかついたのは‘ババア’という言葉だった。そりゃあ、ババアだけど…。やっと成れた“オンナ”なんだぞ……。そりゃあ女子高生からみれば倍以上も年上のババアだけど………シワだらけのババアだけど…………だけど許せない!! 

(キ〜〜ッ!! クヤシ〜〜!!)

結局何も言い返せず、何も買えないまま店を出てまた100円ショップにお世話になった。

 

 このことが原因となり、8月号(7月発売)は先日50部購入し送っていたが、何がなんでもまた“かんづめ”を当て“若い女”になるべく更に50部を購入し送った。

 

 

 8月号は残念ながら何も当たらず、この間以来どうも川島なおみ美になる気しない毎日の中、久しぶりにカノジョに会いに店に出掛けた。

 さんざんご無沙汰の文句を言われ、どうも2人の間に冷たいものが流れよそよそしかったが、その夜ベッドにはいるとカノジョの俺に対する態度は一変した。

アアア〜!!!

「いったいどうしたの? き、気持ち良すぎる〜〜〜!!」 

 さっきまで冷たかったのに、1回戦が終わるときにはもう俺にべったりで、直ぐに2回戦・3回戦と連戦をねだってきた。結局俺は自分が1回イクまでに、カノジョを5回もイカセてしまった。だが、そこには俺自身の満足感はなかった。確かに女をイカセまくって得意ではあったが、俺自身はずっと冷めたたままだった。川島なお美の時のオナニーに比べたら全然気持ちよくなかったのだ。

 俺がセックスの間考えていたことは

(女になってセックスしてみたい!)

(この女と同じように、すべてを忘れる位に狂ってみたい!!)

 だった。女としての快感を知るにつれて、今では俺の心はもう男の快感では満足できないようになっていた。

   

  じっと耐えた1ヶ月。9月号で遂に俺は幻のかんづめ“金のエンゼル”をゲットした。

 今度の缶は更に大きくてバケツくらいの大きさだった。開けてみると

 「あなたの望みの女の子になれる」

という文字が目に入った。中には大きなチューブに入った白いペンキのような液体と白い粉、はけとビニールシートなどが入っていた。どうやら今までの缶とは違い、今度の缶は自己制作キットらしかった。説明書によると、

『どんな女の子も望みのまま。あなたの好きな女の子をモデルとしてあなただけのフェイクスキンを作って下さい。作り方は

  1. 1.    まずシートの上に女性を寝かせて下さい。
  2. 2.    女の子に同封のチューブに入った液体を、添付のはけで塗り残しのないように丁寧に塗って下さい。
  3. 3.    全身に塗って下さい(図@参照)。
  4. 4.    塗った部分には粉を振りかけ乾燥させて下さい。
  5. 5.    透明になったら完成です(約1時間かかります)。
  6. 6.    背中に切れ込みを入れ剥がして下さい(図A参照)

注〜剥がす際にかなり伸びますが心配はいりません。お湯をかけるとしっかりと密着しま    

  すので安心して下さい。

  髪の毛については、写真と見本の毛を1本当社までお送り下さい。1週間以内にカツ  

  ラをお送りします。』

となっていた。また、もう1枚注意書きが同封されていて、それには

『同封の金のエンゼルを2枚お送り下さったお客様には、好きな女性の全身フェイクスキンを当社で制作し“プラチナ缶”に入れお届けします』

と書かれていた。どうやら、プラチナのエンゼルが最高らしかった。金のエンゼルをしっかりとしまい込み、俺は誰のフェイクスキンを作るかを考えた。

(年は……ババアはもう嫌だ。でも、コギャルっていうのもなんだなあ〜。20代がいいかな。スタイルは……細目で出るところは出てるっていうのがいいな。ウエストなんかキュッとしまってて……そこから尻がバーンとでかくなってて……胸なんか揉むと……柔らかくって、でもプリプリと張りがあって……それでもって……アソコは………)

 

『ピンポーン』

ドキ〜ッン!!

 突然チャイムが鳴った。いやいや驚いた。別に悪いことをしていた訳ではないが、そう……若い頃、部屋でオナニーをしているときに、突然母親がドアをノックしたときのような驚きだった。

「はい〜」

「ねえ〜、開けて〜。あたしよ〜」

 何と、どうやら祐子(=カノジョ)らしい。あっ、そうだ。この間晩飯を作ってくれって頼んどいたんだっけ。

 急いでかんづめを片づけると祐子を中に入れた。

「何やってたのよ〜。折角ごはん作りに来てあげたのに外で待たせるなんて〜」

「悪い悪い。ちょうどトイレで気張ってるとこだったんだよ。いやこれが今朝からひどい下痢でさあ。もう、ビチビチッと………」

「えっ? やめてよもう!汚〜い!! 言っとくけど、今晩はカレーライスなんだからね」

「え!!」

 それから祐子自慢のカレー作りが始まった。タマネギを4個も刻んで飴色になるまで炒めて、そこに炒めた牛肉と同じく炒めた人参・ジャガイモを加えて赤ワインで煮込み始めた。ある程度煮込めると水を加えてコトコト。途中でアクを取ってコトコト。味付けは市販のカレールウを混ぜ合わせた所にリンゴ・バナナ・蜂蜜とサンザシとクコの実。そして隠し味にオイスターソースを加えて出来上がり。と思ったら、今度はそのまま最低4時間くらい置くんだと。作り始めてから何と最低6時間!! 俺が作る3分間とは大違いだ。

 さっきやましい想像をしていたからではないだろうが、祐子の後ろ姿を見ていたら俺はムラムラしてきてしまった。作っているときは控えていたが、待ち時間になると我慢できなくなってしまい‘つい’祐子を押し倒してやってしまった。

 腹が減ると性欲が強くなるというけど、カレーの匂いに刺激されたのかまあ燃えてしまった。祐子が悶えまくるのに刺激され俺が2発。祐子は5回もイッてしまった。いつもなら祐子もこんなには燃えないんだけど、俺の攻め方が上達したせいかうらやましいくらい悶えまくっていた。

『!!』

 閃いた! そうだ、祐子になろう。年も25歳でスタイルは……全体にほっそりとしていていかにも女という感じだった。胸と尻が小さいのが不満だけどそれくらいは我慢しよう。何よりも美人だし、髪も俺好みのロングだし……。それに、今見たように、身体の感度はかなり良いみたいだし。

 そうと決まったら善(?)は急げだ。とっておきのクスリを取り出して、やり疲れてクタッとしている祐子の鼻にゆっくりと吸わせた。すると、30秒もすると祐子はぐっすりと寝てしまった。何回か名前を呼んで確かめたが、全く意識がないようだった。完璧だ。

 床にビニールを敷き祐子を寝かせると、かんづめの中からチューブを出し、刷毛で塗り残しのないように塗り、渇いたところで裏返してまた塗った。問題はヴァギナだったが、どういうものか多目に塗ると中に染み込むように入っていきちゃんと膜になったようだった。

 完全に渇いたのを確かめてから背中から尻まで切れ目を入れて、苦労したが何とか祐子を抜き出して全身のフェイクスキンができあがった。下手に引っ張ると破れそうだし、かといって頭・腕・足などなかなか抜けないし大変だった。(後で説明書を見たら、フェイクスキンは部分装着可能なので、パーツに分けて型をとると楽だと書いてあった。)

 全部片づけて祐子を起こし、何もなかったかのように二人でカレーを食べた。本当はこの後同伴する予定だったが、祐子の身体が素晴らしくてセックスし過ぎたし、カレーがおいし過ぎて腹が一杯なので今日は勘弁してくれと言ったら、多少不満そうだったが、誉められたのがうれしかったのか何も言わずにシャワーを浴びに行った。その後カレーのご褒美にと2万円渡すとうれしそうに出勤していった。 

 

 満足しきれなかった俺は、久しぶりに川島なお美に変身してオナニーをした。だが、身体は川島なお美でも心は祐子だった。この垂れた乳は祐子の小さな胸だ。たるんだウエストは祐子の締まったウエストだ。そして、使い込んでいるこの部分は……祐子の……だ。そう思いこむだけで更に萌えてしまった。

 その後冷たいシャワーを浴び脱着し、疲れた身体をゆっくり横たえて寝てしまった。

 

 

 翌日‘速達’で祐子の髪の毛を送った。すると5日後には祐子のカツラが送られてきた。 その夜、早速俺は祐子に変身することにした。

 この間作ったフェイクスキンを取り出すと、慣れた手つきで潜り込みカツラを被った。 剥がすときに伸びたとはいえ、158cmの祐子の身体から採ったフェイクスキンは結構きつい部分もあった。だが、決して切れることはなく、足りないところはゴムのように伸びて無理もなく俺の全身を包んだ。

 いよいよシャワータイムだ。いつものように41℃にセットしてゆっくりとシャワーを浴びた。全身の隅々まで完全にお湯がかかるようにゆっくりと。

 頭から浴びることも忘れない。初めはただ目の前に濡れた髪の毛が垂れていただけだったのが、次第に‘自分の’頬に掛かっていることが感じられるようになった。手や足も‘キュッ’としまってきたのがわかる。どういう構造なのか、胸からはちょっと小振りだがオッパイの重みも感じられるようになった。

 全身でシャワーを感じられるようになったら完了だった。祐子になった‘アタシ’はちゃんと‘髪に’タオルを巻き、バスタオルを‘胸から’巻いて浴室を出た。すると、鏡の前には見慣れた祐子がいた。

 鏡に近づいて顔を触ってみたが、何処を触っても祐子そのものだった。頭のタオルを取り、いつも祐子が風呂上がりにやるように拭いてドライヤーをかけてみた。やはり何処から見ても祐子だった。髪に触る腕の白さも、ドライヤーを持つ指の細さも……。

 そして遂にアタシはタオルを外した。すると、軽く紅色に染まった身体を惜しげもなくさらした祐子がそこにいた。触りたい欲求が爆発しそうだったが、何とか押さえ込んでできるだけ身体を見ないようにしてタオルで拭いていった。

(が、いつもと同じタオルで優しく拭いているつもりなのに、やけにゴワゴワして少し痛く感じるのはなぜだろう? それに胸や尻だけでなく、腕も足も、どこもかしこも柔らかくてプニプニしているのは? 川島なお美の時にはあまり感じなかったけど……やっぱ若い女だからかな?)

 全身を拭き終わると、俺は用意しておいた下着と服を着ることにした。通販で買った真っ赤なブラとショーツのセットに黒のアミタイツ。もちろんパンストタイプではなくてガーターベルトで留めるやつだ。それにピンクのミニのチャイナドレス。一度でいいから抱いてみたいと思っていた格好だった。

 それから化粧。これも念入りにやった。下地クリームにリキッドファンデ。ファンデーションにマスカラ、アイカラー、チーク……etc。練習の時よりのりがいいのはやっぱり肌の違いかな? 出来上がりは化粧品が安物なので大満足ではなかったが、十分合格点の出来だった。鏡の中には普段見ている祐子にそっくりな‘アタシ’ができあがった。

 

 通販で購入した全身が映る大きな鏡をクローゼットから出し、アタシはそこに今の自分の姿を映してみた。そこにいるのは紛れもなく祐子だった。大きくクリクリッとした瞳に可愛らしい鼻。ちょっと小さめの口。広めのおでこの上からは脇まである髪の毛が伸びていた。チャイナドレスの胸の膨らみが小さいのが減点だったけど、ピンクのドレスからのびている白い腕もストッキングに包まれた足も十分に魅力的で、思わずうっとりと眺めてしまった。

 頭の後ろに手を回し髪の毛の下に腕を入れ、尻を少し突き出すようにし、徐々に腕を上げていくとそこにはとんでもなく色っぽい祐子がいた。髪がサラサラと腕の上を滑り落ちる時に少しだけ唇を開き突き出すようにすると当に俺を誘っている祐子がいた。

「ああ〜ん」

 半開きになった唇から甘い声が漏れた。出た後で色っぽさにドキッっとしてしまった。

 椅子を置いてその上に座り、それからの何分間は十分に視覚からのエロティックな快感を楽しみ、その後は体感する官能を十分に堪能した。

 初めはただ座るだけだったが、それでも、ほんのり上気した顔、小さいのが気になるがその分ほっそりとスレンダーで魅力的なバストからウエスト・ヒップへの女性的なライン。それにミニのドレスから伸びる網タイツに包まれた足とその先にある黒のハイヒールへと続くラインは、見ているだけで思わず唾を飲み込むほどだった。

 膝を開き股を広げると少しスカートがめくれ、鏡には網タイツに包まれた股間の奥に色づく赤いショーツが映った。

「あっ…、あう〜ん……」

 胸を揉んでみる。すると、乳房全体から身体が熱くなっていくような感覚が身体を包み、敏感になっていた乳首からは頭の先から足の先まで貫くような快感が走った。

 股間に手を這わすとそこはもうしっかりと潤っていた。いや、湿っていた。ショーツの中央からしみ出した愛液は尻の方まで来ているようだった。左手で股間を触りながら、口に手をやり人差し指と中指を舐めていると、鏡には今にもペニスをくわえ込みたいと俺を誘っている祐子が映っていた。

「ハア、ハア、ハア……あん……アウッ……ああ〜ん………」

 胸をはだけブラジャーを取ると、乳首はしっかりと勃起していた。腰を浮かせてショーツを脱ぐともうグッショリとなっていた。体中が熱くなり、唇が…乳首が…尻が…太股が………そしてヴァギナが触って下さいと疼いていた。アタシはもう何も考えることができなくなっていた。ただひたすら身体の、欲求の求めるがままにオナニーをしていった。 

 

 その後のことは覚えていない。気が付いた時にはもう12時をまわっていた。お腹がグウ〜っと鳴っていた。アタシは“さかりのついた猫”だったようだ。

 お腹は空いていたけど時間も遅いので、サラダとオレンジジュースを食べた。

「オ・イ・シ・イ・な〜……っと???」

 サラダにオレンジジュース? なんで俺が……? サラダっていうか生野菜は嫌いだったハズ……だよな? それにオレンジジュース!! 食事の時にジュースなんて何年ぶりだろう? 記憶にあるのは……やっぱビールか酎ハイか日本酒か……。 これじゃまるで本当の女になったみたいだな……。

 本当の女? そういえば、さっき使った材料って、確かこの間祐子が来たときにカレー

の付け合わせに買ってきたものだったよな……。あの日も祐子はおいしいって言って食べてたよな……。もしかしたら、これって味覚まで祐子になっちゃったってこと……かな?

 なんかこの夜は気分が良くて、いつもなら脱いで寝るフェイクスキンを着たまま寝ることにした。

 シャワーを使って汗を流した後、真っ赤なブラとショーツのセットを着た上に祐子のお泊まり用に買ってあげたスケスケのネグリジェを着てみた。ベビードールっていったかな?祐子は趣味が悪いっていって着なかったけど……、結構いいじゃない!!首のフリルも可愛いし、ミニの裾から真っ直ぐに伸びる太股のおいしそうなこと!!

 こうなったらやることは一つしかない。オナニーの第2回戦だ。

 大鏡の前に行くと、アタシはまたエッチなポーズをとってみた。馬飛びの馬のように膝に手を当て、胸元が見えるように正面を向いてみると、祐子の顔のすぐ下に可愛らしい二つの膨らみの谷間が見えた。

「う〜ん。やっぱここはもっと大きい方がいいなあ〜」

 腕を内側に寄せると“キュッ”とバストが寄って谷間が大きくなった。

「そう、これくらいは欲しいなあ」

 今度は後ろを向いてちょっとお尻を突き出してみる。ミニの裾からお尻の一番下の膨らみが見えてとてもセクシーだ。太股から大きな膨らみへと身体をおったまま手でお尻を触ってみる。何処を触ってもスベスベで、押してみるとバストとは違う弾力性の強い柔らかさが押し返してくる。

「う〜ん。ここもできればもう少し大きい方がいいなあ〜。もっとこう……触っても筋肉が分からないくらいにムチムチ・プリンプリンと大きい方が……それに……ウエストからのこのラインも、スレンダーもいいけど、できればもっとこうググ−ッと大きく張り出すような感じがいいなあ〜」

「ここは………アッ! ここはこれでいいみたい……す、すごくいいわ……」

 股間にある花園をショーツの上からその溝の通りに後ろから前へ撫でてみると、お尻の穴に触った後割れ目へと続き、そして手が前に来て割れ目が終わるちょうどその部分で突然敏感な突起へとぶつかった。女の身体というのは不思議なもので、さっきまで十二分に感じていたアタシの身体はちょっとクリトリスに触っただけでもう濡れてしまった。

「ああ〜。いいわ〜」

 鏡の前には、ベビードールの胸を左手で揉みながら右手で真っ赤なショーツの股間を擦っている祐子が映っていた。

「ア、アタシ……イヤラシイ……」

「も、もっと…触って…。揉んで……」

「ああ〜、いいわぁ〜。もっと、強く…そ、そうよ……メチャクチャにして!」

 ベッドに上がったアタシは、あたかも“俺”がそこにいてアタシを犯しているかのような気がしてどんどん燃えてきた。初めは自分で触って揉むだけでも満足できていたけど、だんだんと物足りなくなってきたアタシは、ベッドの横のチェストから一つの箱を取り出した。その中には………

「そう、これが欲しかったのよね…」

‘ヴィーン’

 モーター音とともにうねり始めたのは、男性の……というとちょっと大きすぎる一本の電動のディルドウだった。

 不思議なもので、男だったときには考えもつかないけれど、このグロテスクな棒が妙に可愛らしく恋しかった。口に含んで舐め回すと、それだけで股間や乳首に軽く甘いような疼きが生まれてきた。

(女の口って性感帯なんだな…)

そんなことを考えていると何かこう……足りないと言うか何というか……

(触って欲しい)

という感じが生まれてきた。

「うっ!」

 口から出したディルドウを乳首に当てるとしびれのような感じが足の先まで突き抜けた。それまで疼いていたヴァギナから愛液が溢れ出て股間をぬらした。

 そしていよいよディルドウを股間に挿入してみた。モーターの音が段々とくぐもったものとなり、それと共にディルドウがゆっくりと侵入していった。

「ううん…うん……。はあはあ……。あっ…ああ……あん……」

あ〜…あ〜…!!

 一旦奥まで挿入されると、それまでなんとか押さえられていた快感と欲望が一気に吹き出してきたようで、もう全ての神経が股間に集中し、そこではグチュグチュといやらしい音をさせながらディルドウが抜き差しされていた。そして、1回出入りする度に、オナニーでは感じられなかった快感と満足感が全身を駆けめぐっていた。

ああ〜!!

 そしてあるところまで来るとそれらは大きな波となりアタシは目の前が真っ白となりそのまま意識を失った。

 

 それからしばらくの間は暇さえあれば祐子に変身してオナニーをしまくった。そして、夜時間ができると外出もしてみた。フェイクスキンを着込むと心まで女になるのか、すれ違う男性がアタシを見たり、歩きながら感じる男性の視線が妙に気持ちよかった。

 そんな中、ある日ハンサムな男性に誘われたけど……すごく“うれしかった”けど……だけど何となく“祐子を他の男に抱かせる”のは嫌だった。それからは外出をやめて、祐子とセックスする日以外は毎日ディルドウを使ってオナニーをしていた。

 

 

 そして、奇跡は起きるもので、翌月には二つ目の“金のエンゼル”が当たった!!

 今度は祐子にはないというか、祐子では満足できなかった部分を満足させるために風俗へと行ってみた。条件は美人で…スタイルが良くて…若くて……そんな女が良かったからだ。ターゲットは考えに考えた末、巨乳フードルで有名な“愛ちゃん”にした。ロリ系の顔に大きく形の良いオッパイ。キュッとくびれたウエストに大きなヒップ。まさに理想的な女だった。

 

 渋谷にあるファッションヘルス“ダラー”に行くと、1時間ほど待ったがなんとか愛ちゃんを呼ぶことができた。

 驚いたことに、雑誌で見るとすごく大きなオッパイやヒップかと思っていたけれど、実際に会ってみるとそれほどでもないことが分かった。相対的には雑誌で見たとおりに大きいのだけれど、そう、愛ちゃんの身長自体が149cmしかなかったのだ。

 それでも初心貫徹。一度フェラで抜いてもらった後で頼んでモデルになってもらった。愛ちゃんは訳が分からず初めはしぶったけど、5000円チップをあげたら気持ちよく協力をしてくれた。

 祐子の時と同じようにビニールシートに寝てもらい、全身に白い液を塗りその上から白い粉をかけていった。乾いた後は俯せになってもらい後ろ半分を同じように塗っていった。30分もすると全身が乾き愛ちゃんのフェイクスキンが完成した。

 

 男の姿のままでは恥ずかしかったけど、祐子より15cmも小さい愛ちゃんに合うようにキャミソールとカーデガンのアンサンブルとミニのスカートとミュールを購入して帰った。

 帰ってから早速愛ちゃんになることにした。祐子の時もきつかったけど、愛ちゃんはもっと小さいので、フェイクスキンが切れないか心配で仕方なかった。着終わったときには伸びきっていてムンクの絵のようになっていたのが、不思議とシャワーを浴びると全身にぴったりとフィットした。ただ、いつものことだが、これはフェイクスキンが伸びたのではなく、その中にいる俺の身体自体が縮小し変形したためだった。

 風呂から上がると、早速いつものように鏡の前に行って全身を鑑賞してみた。鏡を通さず普通に視線を落としてみるとたいして大きなオッパイではなかったが、鏡で見ると雑誌で見た通りしっかりと巨乳に見えた。

「ふ〜ん。やっぱ愛ちゃんって巨乳だったんだなぁ。触ってみると……こんなに柔らかいし、何より……この手の平から溢れ出る感じがたまらないんだよなあ〜」

 しばらく巨乳の感触を楽しんだ後、買っておいたちょっとセクシーなピンクのジョーツとブラを着て、その上にさっき買ってきた赤いミニスカート白いキャミソールとカーデガンを着た。クルッっとまわってみると、そこには初めて見る普段着の愛ちゃんがいた。

「う〜ん。愛…アタシってかいいわねぇ〜。ちょっと背が小さいのは好きじゃないけど、こんなにオッパイは大きいし、お尻もプリプリで、腿なんかムチムチしてていいわぁ〜」

「じゃあ、お出かけしようかなっ!」

 今晩は、初めて変身したままで食事に行くことにしていた。初めてで女としてのマナーとかはよく分からないので、とりあえずは普段よく行くイタリアンレストランに行くことにした。

 この店は外人が多くて日本人が少ないのが特徴だった。結構静かな感じで、でも飾らない普段着っぽい客が多いのでとてもリラックスできるので好きだった。店にはいると、客の視線が集まりちょっと緊張したけど、それもすぐになくなり、案内された席に着く頃にはアタシも客の一部になっていた。

「あ〜、おいしい〜」

 最初にグラスワインを飲んだ。不思議なことに、男だったときには軽すぎるし甘めだったのでもの足りなかったけど、祐子がすごく気に入っていたので頼んで飲んでみるとこれがもうおいしかった。どうやら、味覚が女性化しているらしい。

 その後は食べ方を注意して食事をしていった。小さめに切って、口をあまり大きく開けずに食べること。口の中に食べ物がなくなってから次のものを食べること。唇に付けないように注意すること………。祐子を観察していて気が付いたことを実践してみた。メニューとしてはスープにサラダ。すずきをトマトソースで煮込んだものやピザ風のパンなどを食べた。そして最後は甘〜いアイスクリームとフルーツ。いつもより軽めにしたのに、体が小さいだけあってお腹が満腹になった。

 食事が終わると、一人の外人の男性がやってきた。

「スイマセン、カワイラシイオジョウサン。ショクゴノワインヲゴチソウサセテクレマセンカ?」

「えっ? ええ、いいですけど……」

 答えが終わる前に、アタシの前にちゃっかり座っていた外人さんはワインを注文し、それがくると二人でそれを飲んだ。これも甘口のワインで、いつの間にか進んでしまいボトルが空いてしまった。

「ワタシハ、アナタノヨウナチャーミングナジョセイトワインヲノメテシアワセデスネ。コノオレイニ、アチラノカウンターデカクテルヲゴチソウサセテクダサイ」

 酔いが回っていたアタシは、深く考えずにカウンターへ連れていってもらいそこで今度はカクテルを飲み始めた。もともと酒は強い方だったので、気にしないでグイグイ飲んでいたら、ご馳走してくれた外人さんの話がおもしろくておもしろくて、いつの間にか‘ろれつ’がまわらなくなり、目の前がクラクラして意識が何処かへと消えていった。

 

“シャ〜”

「う、ううん……」

 アタシは水の音で目が覚めた…けど……、ここは何処? 大きなベッドに暗く落ち着いた雰囲気のモノトーンの部屋。ちょっと無機的だけどいい雰囲気の部屋だった。

「アア、メガサメマシタカ?」

 ドアを開けて入ってきたのはさっきまで一緒に飲んでいた外人さんだった。

「ここは…何処? なんでアタシ……。 あなたは……?」

「オウ、シンパイイリマセンネ。ココハワタシノヘヤデスネ」 

「愛サンハヨッテイタノデココニハコンデヤスンデモライマシタネ」

 外人さんはそう言うと、アタシの横に来て腰掛けアタシの肩に手を回してきた。

「えっ? あ、ありがとう…でも、もう大丈夫よ。アタシ帰るわね」

 身の危険(!)を感じたアタシは手を振りほどくと立ち上がって部屋を出…ようとした……けど、結局できなかった。酔いがまだ残っているせいで身体がふらついてしまいまともに歩けなかったのだ。

「ダイジョウブデスカ? モウスコシヤスンダホウガイイデスネ」

「シンパイイリマセンネ。ダイジョウブ。ワタシニマカセテクダサイデスネ」

 変な日本語だなあと思っていたら、いつの間にか抱きかかえられていてまたベッドに寝かされてしまった。いや、さっきよりもっと状況は悪くなったかもしれない。だって、アタシのカーデガンはなくなっていて……キャミソールの中では手が動いているし、それにスカートの中というよりショーツの中で何かが動いて冷たい空気が自由に入り込んでいたから………。これってもしかしたら………。

「ちょっと、やめてよ〜。イヤだったら〜!」

「ダイジョウブネ、ダイジョウブ」

 何が大丈夫なのか分からないけど、何を言っても返事は‘ダイジョウブ’ばっかりで、その間にもアタシはどんどん脱がされて体中を触られていった。

 そして、アタシの身体と気持ちにも変化が起きていた。初めは男になんか触られるのが気持ち悪くて抵抗していたけど……、だけど、今ではそれが気持ち悪くない……というか、はっきり言って気持ちよかった。愛ちゃんの身体が感じすぎるのかもしれないけど、祐子の身体でオナニーしているのとはまた違って、痒いところを掻いてもらえなくて焦れているときに掻いてもらったというか、とにかく自分でするのとは違って気持ちよかった。それに、外人さんが大きいせいか、胸もアソコもゆったりと包まれるように触られて安心していられた。自分で気持ちのいいところに触って一気に感じるのもいいけど、男の人に抱かれるっていうのも悪くない……かな?

 その後は酔いも手伝って、恥ずかしながらアタシは初めてのセックスに熱中して感じまくってしまった。特に、彼のペニスがアタシの中にはいってきた時は……もう感動ものだった。

 それまで、感じて感じてジンジンというかウズウズしていたアタシのヴァギナに、太くって、大きくって、長〜い暖かいペニスが入ってきた。初めは上から押し広げられて挿入されたのでなんか昆虫採集の標本になったみたいだったけど……だけどそれからはもう別世界!! ペニスが出入りする度に強烈な快感がうまれて、アタシはもう悶えるしかなかったもの。それにあの充実感。なんか、体中が快感で一杯になってもうこのまま死にたいって思ったくらいだった!! それに、アタシ何回いったのかしら? 1回目は正常位で……2回目は彼に正面から抱かれてあぐら型で……3回目はバックだったかな? 4回目からは……もう覚えていないわ。でも、確実に5回はいったと思う。 それに、初めてしたフェラチオ。気持ち良いわけではなかったけど、されているときの彼の切なそうな表情が妙に可愛らしくてすっごく良かった。

 いつの間にか意識を失ってしまって、気が付いたときにはもう翌日になっていた。横には彼が寝ていたけど、酔いが醒めたせいか、昨夜のことが思い出されると、もうどうしようもない嫌悪感で一杯になってしまって、すぐに服をきて部屋を飛び出した。家に帰る途中も、何であんな事をしてしまったのか……後悔という字が体中から溢れ出て、歩く度にこぼれているようだった。よりによって、俺は男に抱かれただけでなく、自分から‘フェラチオ’をしてしまった!! 男のチンポを舐めてしまったのだ!! それも喜んで!!

 どうしようもない気持ちで部屋に帰ると、なぜか玄関の鍵が開いていた。

(泥棒!!??)

 ちょっと恐々とドアを開けると……誰もいなかった。中に入ってみても荒らされた様子もないし……鍵を閉め忘れたかな?

 気にしても仕方ないので、アタシはシャワーを浴びることにした。なんか全身からあの外人さんの匂いがしてそうで気持ち悪かったから。それに、なんか女でいるのが怖くなってしまったから。今思うと、この愛ちゃんの身体ってとってもスケベだと思う。ちょっと触られると感じまくるし、あんなに大きなペニスもあっさり受け入れて余裕で感じてたし。多分昨夜あんなに感じたのは、もちろん酔っていたのもあると思うけど、本当の原因はこの身体のせいだと思う。このままこの身体でいるとまた男が欲しくなりそうで……怖い!

 

「ねえ、帰ったの?」

えっ!?」 

(何で? 何で祐子がいるの?)

 訳が分からないけど、祐子が外にいる!! どうしよう!! 

(そうだ。このフェイクスキンを早く脱いで元に戻らないと!!)

 俺が冷たいシャワーに切り替えようとしたその瞬間風呂のドアが開いた。

「えっ? あんた誰?」

「あっ! あう…あう……あうう………」

 焦ってしまって言葉にならない。

「ねえ! あんたここで何してるのよ。誰にことわってシャワーなんか浴びてるのよ!!」

「あうあう……」

 言い訳しようとするんだけど…だめだった。祐子の顔がどんどんきつくなっていった。

「何訳の分からないこと言ってるのよ」

「ちょっと〜! 出なさいよ!!」

 俺は夜叉顔になった祐子に腕を捕まれて無理矢理引き出されてしまった。

「何とか言いなさいよ!!」

「あ…の…俺……た、竜也です……」

「竜也〜? ふざけるんじゃないわよ。あんたの何処が竜也なのよ!!」

「い、いや。本当に竜也なんですぅ〜」

 その後、角の生えた祐子に俺は状況を説明した。

 1時間はしただろうか。ようやく祐子も俺が竜也だということを認めてくれたので、だめ押しに俺は風呂場へ行って冷たいシャワーを浴びてフェイクスキンを脱いで戻った。

「あっ。本当に竜也だったのね…」

「ごめん」

「でも、あたしってカノジョがいるのに何でこんなもの使うのよ。まさか、竜也ってオカマだったの?」

「まさか! 俺は正常だよ。いつだって祐子のことを愛しているさ。これは全部祐子のためなんだよ。祐子のことを少しでも喜ばせようとして変身してたんだ。ほら、女の感じるところは女が一番わかってるって言うじゃないか」

「そんなの……うそよ。だってあたしに聞けばいいじゃない。なにも竜也が女にならなくたっていいじゃない」

「違うんだよ。男って女には分からないところで努力していくもんなんだよ。女に教えてもらうっていうのはどうもカッコワルイものなんだよ。ほら、スキーの時だって、祐子と行く前に俺はスキー教室に行って教わってきたじゃない? ダイビングだってそうだろう」

「う、うん。確かにね……分かったわよ。今回のことは……」

「でも、もうやめてね。いくらあたしのためって言われても……やっぱりイヤだから」

「うん、わかった。もう絶対にしないよ。このフェイクスキンも…ほらこうして捨てちゃうよ」

 俺は思い切りよくフェイクスキンにハサミを入れて切り刻んでゴミ箱に捨てた。

「あっ!! いいの?? それってやっと当たったものなんでしょ」

「いいんだ。やっぱり祐子が一番大切だし、その祐子が嫌がっているんだから当然だよ」

「竜也………」

「祐子。俺はお前を世界で一番愛しているんだ。だから、だからお前のためなら何でもするよ」

「竜也〜」

 何とか危機を切り抜けた俺はその後祐子を抱いた。祐子のご機嫌は最高だった。いつも以上に燃え、いつも以上に奉仕してくれた。

 祐子が寝た後、俺は引き出しから2枚の“金のエンゼル”を出してハガキに貼った。これで新しいフェイクスキンを手に入れることができる。祐子と愛ちゃん、川島なお美はなくなったけど、そのくらい大丈夫さ。だって、今度は俺の好きな女の名前を書けばその女のフェイクスキンが手に入るんだから。

 誰を書こうか……〈AV女優〉がいいかな? いや、愛ちゃんで懲りたな…。だったら〈優香〉か〈釈由美子〉かな…。う〜ん………。そんな時、俺の目にマガジンの表紙が目に入った。《酒井若菜》!!そうだ!! 《酒井若菜》にしよう!! オッパイが大きくて、若くてピチピチで、可愛らしい………これって《酒井若菜》しかいないでしょう!! 俺はその希望氏名欄に書きこんだ。

「《酒・井・若・菜》っと。これでいいぞ。1週間もすれば……ひっひっひ!祐子も愛ちゃんも良かったけど、やっぱり若菜ちゃんが最高さ。だって、感想メールをくれたMさんも好きだって言ってたもんな」

 

 それから1週間が経った。そしてやっと待ちに待った若菜ちゃんのフェイクスキンが届いた。缶は伝説のプラチナ缶だった。

 その日は仕事でかなり疲れていたので、シャワーではなく風呂に湯を張って大好きなバスクリンの檜の香りを入れてフェイクスキンを密着させた。いつも通りに裸の上に着込んで……カツラを被って……。

(おっ!? 髪がアップになってる?? 若菜ちゃんって髪の毛長かったかな……?あっ、そうか。確か昔は長かったからその頃のフェイクスキンなのかな?)

 着込んで見ると、今までのものよりオッパイとお尻に余裕があるようだった。

(やっぱり若菜ちゃんだな〜。スタイルがいいんだな〜)

 湯舟にはいると段々と密着してきた。あれっ? いつもより胸と尻の密着が遅いかな?

ピンポーン

「!! 誰だよ!!」

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン

「うるさいなあ。出ないって言ってるだろう。って聞こえないか。まあいいや。勝手に鳴らせば……。出ないもんね」

ガチャッ! ギー!

え!? 何でガチャなの?? 入ってこれるの???」

「竜也〜。帰ってるんでしょう」

「ゆ、祐子だ〜!! やばい!! 水を浴びて脱がなきゃ!!」

 俺は急いで出て水を浴びた。

????? 脱げないよ?? 何で??

「竜也〜。シャワー浴びてるの〜?」

 祐子がとうとう風呂場に来てドアを開けてしまった!!

(あ〜!! もうだめだ!! と、とにかく謝らなきゃ!!)

「ゆ、祐子。ご、ごめん!! これには訳があって……………」

「あなた……竜也?」

「ごめん。本当にごめん」 

すると祐子が突然笑い出した。

「アッハッハッハッ。あなた送ったのね?」

「え? 送ったって?」

「とにかく出て体を拭きなさいよ」

 俺の腕をとると引っぱり出して、俺の身体をバスタオルで拭き始めた。

(この間はあんなに怒ったのに……やけに今晩はサービスがいいな……?)

(祐子も酒井若菜が好きだったのかな? それとも……レズでもしたいのかな……? それならそれで楽しそうだけど……)

「はい、拭けたわよ。じゃあ、あっちに行こう!!」

 やけに機嫌のいいというか、笑いをこらえている祐子に引かれて俺はベッドルームに行った。

(そうか、やっぱり祐子はレズをしたかったんだな。よし、それなら俺も!! 女同士は初体験だけど、頑張ってみよう)

 俺は俺より大きな祐子を抱きしめ(祐子の方が大きい??)……キスをした。

「ちょっとぉ〜。やめてよ。もう。あたしそんな趣味ないわよ。オ・バ・サ・ン」

「何言ってんだよ。お前だってその気だった………?????」

オ・バ・サ・ン?」 

「そうよ。あたし若い女の子だったらレズってもいいけど、オバサンとなんて嫌よ」

「オバサンって、あたしはまだ20歳よ。悪いけど祐子の方がオバサンじゃない!」

 ちょっとムカッっとしてアタシは言ってやった。25歳の祐子にオバサンだなんて言われたくないわ。こんなペチャパイのオバサンに!!

「何言ってるのよ。その垂れた胸と尻の何処が若いのよ!! 鏡見た方がいいんじゃないのオ・バ・サ・ン!!

「え?」

 アタシは言われるままに自分の身体を見てみた。

???????」 

 あれっ? 胸がやけにしぼんで垂れてる……?? それに尻も垂れて……??? 何?? どうしたっていうのアタシ????

「ほら、か・が・み!」

 祐子が出した全身鏡に映っていたのは……

「オ・バ・サ・ン!?」

「そうよ。オ・バ・サ・ン」

 何とアタシは50過ぎらしいオバサンだった!! でもどこかで見た事のある……

あ〜、酒井和歌子だ〜!!

「ピンポーン。正解〜。酒井 和・歌・子さんで〜す!!」

「えっ?? アタシはだって酒井若菜ちゃんのハズ……」

「残念でした〜。竜也の書いてたあのハガキの名前をあたしが書き換えたんだよ〜だ」

「え〜!!」

「もうしないって言ったのに約束を破ったから、その罰よ!!」

「そんな〜………酷いよ〜」

「罰としてしばらくそのままでいなさいよ。いいわね」

「勘弁してよ〜。お詫びに何でも買ってあげるからさぁ〜。もう絶対しないから」

「そうね〜。じゃあ……これにサイン頂戴!」

 祐子が出したもの……それは婚姻届けだった!!

「あたしをお嫁さんにして頂戴。そして一生大切にして!!」

「祐子!!」

 俺は祐子を抱きしめた。

「ちょ、ちょっと待って。竜也って分かってるけど、やっぱ、酒井和歌子と抱き合うのはまっぴらだわ。早く脱いでらっしゃいよ。そして、あたしを抱いてメチャクチャにして」

「うん」

 俺は勇んで風呂場へ向かった。身体が女だから見えないけど、今の祐子の言葉で俺の股間はもうビンビンだった……見た目には濡れているだけだったけど………。

 

「シャ〜…シャ〜……シャ〜………シャ〜…………」

「あれ? ぬ、脱げないぞ?? 何でだ??」 

 

 そう、俺は忘れていたのだった。

【入用剤は決して使用しないで下さい】

という但し書きがあったことを………。

 その結果、俺はその後TS出版に連絡し、かんずめ製造の会社から研究員が来るまでの一週間の間、会社を休んで《酒井和歌子》として過ごすしかなかった………。

 ああ〜。こんな幸運は二度とこないだろうに……酒井和歌子とは……トホホホホ……。

 

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