「あっつーい! もうダメ! 限界!」
「あ、こら。なに勝手に脱いでるのよ!」
「笹子の頼みだからこんな格好したけど、こんなに暑くちゃやってらんねーよ」
「あのね、バイト料払ったでしょ? 1週間そのまま過ごすって約束したでしょ?」
「ダメだって。もう無理だよ、限界だよ、不可能だよ、」
「今日なんかまだ涼しい方だったじゃない」
「だってさぁ……」
「って言うか、そのびりびりに引き裂いちゃったスーツ、どうすしてくれるのよ」
「どうするって?」
「それ作るのにいくらかかると思ってるの? まだこれから何度も使わないといけないのに、そんなにしちゃって……」
「あ……。ごめん……」
「その代価は身体で払ってもらうわよ」
「身体で、って……」
「幸いスーツはもう1着あるから、それを着て引き続き実験に協力してもらうわよ」
「まあ、給料分はやるよ」
「1ヶ月間ね」
「1ヶ月!?」
「今日からだと……、ちょうど夏休みいっぱいね」
「ちょっと待てよ、1週間だけじゃないのかよ」
「ただでさえ実験は遅れがちなのに、あんたが今1着ダメにしちゃったのよ。その遅れを取り戻すためにはペースを上げていかないといけないんだから、1ヶ月間休み無しでキリキリいくわよ」
「でもさぁ……」
「それとも損害賠償請求した方がいい? 夏休み中バイトしても足りないわよ」
「それは……」
「やってくれるわね?」
「……わかったよ。やればいいんだろ、やれば」
「そう。やればいいの」
「くっそー。俺の夏休み……」
「別にいいじゃない。それだけかわいい顔してるんだから、この夏ステキな出会いがあるかも知れないわよ」
「……誰とも出会いたくねぇ……」
(おしまい)