「檻〜ORI〜 序章・白い檻(二)
作:JuJu



「だめ!」
 わたしが激しく頭を左右によじると、やっと偽者のくちびるが離れた。それでも偽物の指は、わたしの大切なところを亀裂にそってなぞり続ける。
「お願い、やめて……」
 わたしの叫びを受け入れたのか、偽物はアソコから指を離した。
「ふーん? やっぱり、まだ触ったこともなかったのね」
 偽物はわたしのアソコにさわった指を自分の口元に寄せた。おいしい物を食べるように目を細めながら、指に舌をからませる。
 半開きのまぶたから、上目遣いでわたしを見ている。その目は、わたしを軽蔑するような、同時に愛おしいような、そんな目つきだった。
「まだ何も知らないのね。わかっているわ。自分の体だから。
 すぐに感じる体にして上げる。
 あなたは気が付いていないでしょうけど、あなたの体ってものすごく淫乱な体なのよ。わたしが言うんだから間違いない。すぐにあなたにもわかるわ」
 偽物はわたしの体を仰向けにすると、わたしの体を跨(また)ぐように上に立った。腰を落としながら体を前に倒す。ひざを床に付け、わたしに覆い被さるように体を沈める。
 偽物はわたしに肌を重ねた。わたしの胸に顔を寄せたと思うと、胸を舐め始めた。
 逃げたかった。目を閉じた。手足が縛られているわたしに出来る、唯一の抵抗手段だった。
 偽物の舌が、わずかに盛り上がっているわたしの胸を這う。くすぐったいだけだった。偽物にも、わたしがくすぐったいだけだと言うことがわかっているのか、舌はだんだん体を昇ってゆき、首筋を舐め始めた。くすぐったいのは胸と同じだが、今度はくすぐったさの中に、心地よい感覚があった。
「うふふ。気持ちいいでしょう? わたしは首筋が性感帯だから……」
 しばらく首筋を舐めていた偽物のわたしの舌は、ふたたび下って、わたしの胸に戻る。
「あ……」
 かすかだが気持ちよさがあった。さっきはくすぐったいだけだったのに、今度は首筋を舐められた時と似た快感が走った。
 わたしのかすかな声に気が付いたのか、偽物の舌づかいが丹念になった。もう片方の胸にも、偽物のわたしの指が伸びた。胸をいじくるは指は、触れるか触れない程度の距離で、じらすように何度も何度もわたしの乳首を襲った。触れられるたびに、わずかずつだが快感が増していく。
 やがて舌はさらに下がりはじめ、肋骨(ろっこつ)を通ると、おへそをなで始めた。
 胸でも、肋骨でも、おへそでも、どこを舐められてもくすぐったさと、かすかな快感があった。
 突然舌の感触がしなくなった。
 目を開く。偽物の顔が目の前にあった。
 偽物のわたしは、自分の指を吸い付くように舐めていた。親指から小指まで一本一本丁寧にしゃぶっている。全部の指をしゃぶり終えると、偽物は指をわたしに見せつける。ねっとりと唾液で濡れていて、天井からの照明を受けて輝いていた。
 濡れた指が下がっていく。その指がどこに向かうつもりなのか、わたしにはわかった。本能と言うのだろうか? それが教えてくれた。
「そこはだめ!」
 だが、わたしの願いはむなしく、偽物のわたしの指は止まらなかった。
 さっきまでの亀裂にそってこするような指使いではなく、予感のしたとおり、一本の指が亀裂から中に入り込んできた。
「痛い!」
 わたしは首を左右に振って抗議したが、その抗議が聞き入れられないことは、わたしもうすうす感じていた。
 突然股間から、さっきまでの体を舌で舐められた時とは比べ物にならない快感が襲ってきた。
「ひゃっ!」
 わたしは快感に驚いて、声を上げた。
 痛みが減ったわけではない。が、偽物の指がわたしのアソコの中に触れる度に、痛みをはるかに超える快感が、アソコからわき出てくる。
 さらに二本目の指が中に入ってくるのがわかった。二本の指は、まるでわたしの体の感じる部分を知り尽くしているように、的確に感じる場所を探し当てた。
「あん……だめ……」
 アソコが熱くなっているのがわかる。
 体が熱い。息が自然に激しくなる。声がうわずる。
 悔しい。誰だかわからない相手に、女の子同士で、こんなにも感じてしまうなんて。
 でも、こんな気持ちのいい事初めて。やめないで欲しい。
 そんな正反対の気持ちが、わたしの中で互いにせめぎあっていた。



(つづく)


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