バブルスキン 作:D/I 「あ、いたいた。勝巳くん、探したんだよ。」 「お、優駿か。どうした?」 「うん。いつものことなんだけどね……」 「ってことはまた新しい発明品か?いいぜ、今回はどんなやつなんだ?」 「さすが、話が早いや。あのね……」 ……俺は「有馬勝巳」、普通の高校三年生。 で、俺を探していたというこいつは「宝塚優駿」、幼なじみで 1学年下の二年生……とは思えないくらいの天才だ。特に発明に関しては次々と信じられない物を発明しては俺を楽しませてくれる。今日も新しい発明品を見せたくて俺を探していたようだ。さて…… 「……これは何なんだ?」 優駿の手には2つのビンが握られていた。1つには透明な液体が、もう一方にはなにやら粉末状の物が入っているようだ。 「うん、これが今回の発明。そうだね、『バブルスキン』とでも名付けようかな」 「バブルスキン?一体どんな効果があるんだ?」 「それはね……そうだ、実際に見てもらったほうがいいかな。勝巳君、ちょっといいかな」 そう言うと優駿は俺の髪の毛を1本抜いた。 「いてっ!なにすんだ!!」 「あ、ごめん。痛かった?じゃあこれをこうして……」 申し訳無さそうに言いながら、俺の髪の毛を液体の方のビンに入れる優駿、するとビンの中の髪の毛は見る見るうちに溶けてなくなってしまった。 「それじゃこっちのビンに……」 その液体を今度は粉末の入ったビンに注いで混ぜ始めた。次第に粉末だった物がなにやら固まりになり、今度はそれを手のひらに乗せて丸め始めた。 「……なんか風船ガムみたいに見えるんだけど……」 「あ、さすが勝巳君。いい勘してるね。そう、その通り、風船ガムなんだよ」 「まさかただの風船ガムが今回の発明って言うんじゃないだろうな?」 「あはは、まさか。ただの風船ガムじゃないよ。これはこうして……」 そう言うと優駿はその風船ガムのような物を口に入れてくちゃくちゃと噛み始めた。 「……どう見てもただの風船ガムにしかみえないんだけど……」 しかし優駿は俺の言葉を無視してガムを噛み続け、そしていきなり服を脱ぎ始めた。 「ば……ばかやろう!一体何を始めるんだ服なんか脱いで……」 今、俺の目の前には素っ裸でガムを噛んでいる少年が立っている。人に見られたら何て言えば良いのか困るような状況だ……すると突然優駿はガムを噛むのをやめて膨らませ始めた。 「……なあ、完璧にただの風船ガムじゃないか。いや、お前のことを疑うつもりは無いんだけどさ……」 俺の言葉が聞こえていないのか、なおも膨らませている……って何だその大きさは!人が入れるくらいの大きさじゃないか!! 「お、おい。いくらなんでも大きすぎだろ。もう破裂寸前じゃ……」 『バン!!!』 言おうとした瞬間、限界まで膨らんだそれは大きな音を立てて破裂して優駿の体にまとわりついた。 「……言わんこっちゃない……あーあ、体中にひっついちゃって……待ってろ、今取って……」 取ってやろうと言おうとしたとき、優駿の体に変化が訪れた。体中についたガムがまるで生き物のように全身を覆い始めると、なにやら不気味にうごめいて優駿の体の形を変え始めた。 「お、おい。いったい何が……」 恐る恐る優駿の様子を見ていたが変化が終った途端、信じられない光景に我目を疑った。 今まで優駿が立っていた所には毎日鏡で見ているある人物が立っているのだから…… 「……お、俺?」 そこには毎日見慣れた自分が素っ裸で立っていたのだ。 「ふう、成功したみたいだね。どう?どこから見ても勝巳君でしょ。あ、声も変わってる……うん、完璧完璧」 「ちょ……おま……成功って……」 あまりの出来事に言葉がうまく出てこない。そんな俺を嬉しそうな顔をして俺(?)が見ている。 「これが今回の発明。さっきのガムみたいに見えたのは実はガムじゃないんだ。最初に勝巳君の髪の毛を貰ったの覚えてる?」 「……あ、ああ」 「あれで勝巳君のDNAを読み込んでその情報をこのバブルスキンに入れて体の表面に付着させる。そうするとその読み込んだ人物そっくりに姿を変えることが出来るんだ」 ……なんて話だ……今までコイツの発明には結構驚かされたが今回は今までで一番ビックリした。 だってまるで何処かの怪盗が変装するかのごとく別人になれるなんて…… 「どう、ビックリした?まだ試してはいないんだけど理論上は老若男女誰にでもなれるはずなんだ」 「……老若男女?」 その言葉に俺は自分を取り戻した。 「じ、じゃあ、例えばの話、俺が女の子になることも……」 「可能だよ。と言うより実は今回は勝巳君に試して欲しいことがあるんだ」 「試して欲しいこと?」 「うん。実は姿形は女の子になれるんだけど、性感のほうまでは確認できなくて……」 その言葉を聞いて俺は…… 「つまり、俺に女の子に変身してそれを確認してほしいと……」 「そういうこと。前に勝巳君女の子になってみたいみたいなこと言ってたからちょうどいいかなって思って」 ……確かにそんなことを言った覚えがあるが、軽い冗談のつもりだったんだけど…… 「どうかな、やってもらえる?」 ちょっと考えてみたが断る理由が見つからない……っていうかむしろ大歓迎?女の子の快感というのは男のそれとは比べ物にならないって言うし…… 「OK、引き受けた……ところでどんな娘になってもいいのか?」 「ありがとう。うんとね、あまり体格差がありすぎると無理なんだけど……身長で20センチくらいまでの差なら大丈夫かな」 「20センチか……それなら大抵は大丈夫だな」 「そうだね。もしかしてもう誰になるのか決めてあるとか?」 「……まあ、一応はな」 「それじゃよろしく。結果は後で報告してね」 「ああ、まかせとけ」 俺の返事に優駿は嬉しそうに去っていった……さて、それじゃあ俺も早速行動に移すとしようか…… プロローグ完 |