幼馴染

作:愛に死す


「海晴ちゃん、一緒に帰ろう」
「美咲ちゃん、僕は男だよ。いい加減にちゃんづけにして呼ぶのはやめてよ」
「嫌だよーだ。それに、私だけがちゃんで呼ばれて、海晴だけを君で呼ぶのはおかしい」
「それは僕が男で、美咲ちゃんが女だから…」
 海晴はしどろもどろにいいわけをしようとする。そんな海晴の姿が可愛い。私は海晴が困惑する顔が楽しみなのだ。海晴とは幼稚園からのつきあいになる。家が近所だった事もあって、いつも二人で遊ぶ事が多かった。高校生になったからって、慣れ親しんだ愛称はそう簡単に変えることはできない。それに他人行儀みたいで、私は気に入らなかった。
「さぁ、帰ろうか」
「あのぉ、美咲ちゃん、みんなが見ていて恥ずかしいんですけど」
 海晴がおずおずと言う。
「何か悪い事でもやっているというの?」
 私は海晴を睨みつけた。もう苛々する。私は煮え切らない態度の海晴に業を煮やした。
「さぁ、さっさと行こ」
 海晴の手を握って、私は校門に走り始めた。何かクスクス笑っている連中がいるな。最近、目に余るようになっている。今に見とれ。少し不機嫌になりながら、私は海晴と一緒に帰路についた。海晴もいけないんだ。私のほうから果敢にアタックしているのに、はっきりと応えようとしない。それなら、私にも考えがあるってもんだ。
「それじゃね、海晴ちゃん」
「ちゃんはやめてったら、美咲ちゃん。また、学校で」
 私は海晴と別れて家に帰ると、すぐさま天井裏に上がった。
「どこだったかな、あったあった」
 古ぼけた本を私は見つけ出した。埃まみれでところどころ破れている。しかし、これは我が家に伝わる宝物なのだ。
「ウフフ、これさえあれば何でも出来るはず…」
 私の亡くなったお婆ちゃんは魔女だったらしい。だから、私にもその血が混じっている。もっとも、母にはその才能がなかったようだけどね。
「あと、杖はどこだったかなぁ」
 探し回ってみたが、杖は一向に見つからない。
「この辺に置いておいた気がするけど忘れたなぁ。杖なんかなくても何とかなるかぁ」
 何しろ私は子供の頃に、お婆ちゃんに才能があるといわれたのだ。もっとも、魔法を使ってみるのは今がはじめてだけどね。
「まずは私をからかった男子生徒に罰を与えないと」
 私は魔術書に書かれていた呪いの言葉を唱えた。すると、私の体から赤い光が放たれ、四方に散らばっていった。
「よしよし、まる一日、猫の気分を味わうがいい」
 ほくそ笑みながら、次の呪文の準備にかかる。今度は海晴と心をつなげる呪文だ。距離があっても、愛する二人を隔てる事など誰も出来ない。呪文の効力は二日程度のようである。しかし、虫食いがあって読めない箇所もある。
「えーい、解読が難しい。何とかなるっしょ」
 呪文が欠けているところは、適当な事をいって済ました。しかし、どうやらちゃんと呪文が発動したようだ。
「よしよし、これで海晴ちゃんの考えていることがわかるはず…って何もわからない。失敗したかな、あれ?」
 私は自分の股間をまじまじと見た。膨らんでいる。
「ええっ!」
 スカートを急いで降ろした。股間にはペニスが生えている。おいおい、私は女だぞ。しかし、この形、どこかで見たような気がするなぁ。小さい頃から見慣れていたような…。
「そうだ、わかった。これは海晴ちゃんのものだ」
 どうやら、呪文に失敗してこうなってしまったらしい。
「困ったなぁ。そそり立ってるし。むぅ」
 私だって年頃の女の子だ。男の子には興味がある。私は軽くペニスをしごいた。気持ちいい。と、同時に頭に映像が浮かび上がってきた。
「あれは海晴ちゃんだ。あれ、自分の股間を見て慌てている。そうか、私のと交換しちゃったんだ」
 私の秘所は海晴に行ってしまったようだ。どうやら、私だけにしか海晴の様子は見えないらしい。その代わり、海晴だけが私の快感を共有し感じているようだ。
「はふ~っ」
 ペニスを私がしごくと、海晴も快楽を感じて頬が朱に染まっている。しかも、秘所が濡れ始めているようだった。私は悪戯心をだして、ペニスをゆっくりと優しくさする。私の呼吸も快感で荒くなるが、何もわからない海晴はどうしていいのかわからず、ただ快感に流されるまま悶えている。しかし、我慢できなくなったのか、海晴は指で秘所で弄びはじめた。慣れない手付きで、秘所をさわる仕草が可愛らしい。私の胸がキュンとなる。そのうち、海晴は指だけで達してしまったようだ。無理もない。女の快楽は初めてだろうし、私はまだ処女だ。海晴にあげようと思っていたからね。しかし、このままの状態で、海晴と一体になるというのもいいかもしれない。海晴は女々しい性格で、いつも二人の性別が入れ替ったらいいと私は思っていたからだ。
「よーし、明日学校帰りに実行だ」
 私は決意を固めた。翌日、学校に登校してみると、私が呪いをかけたはずの男子生徒の姿があった。
「なんで来てるんだ。おっかしいなぁ」
 しかし、呪いをかけた男子生徒には不審な点があった。頭を帽子で隠している。先生に注意されても脱ごうとしない。休み時間、私は不意をついて帽子を奪ってみた。
「か、かえせよ!」
 男子生徒が慌てる。そいつの頭には、茶色の猫のような耳が生えていた。似合わない事おびただしい。呪いが中途半端な形でかかってしまったようだ。
「猫耳少女ならまだましなものを…」
 私は呟いた。すると、いきなり男子生徒の体が変化し、女になってしまった。どうやら、呪いのかかっている身だったので、呪文をかけた私の言葉に体が反応してしまったらしい。
「にゃーっ!?」
 男子生徒だった猫耳少女は、そのまま窓から逃げ出した。三階から飛び降りたにもかかわらず、無事着地できたらしい。さすが猫だ。
「それなら、海晴ちゃんにも有効かな」
 私は小声で海晴に胸ができろと呟いた。すると、私の胸がペッちゃんこになる代わりに、海晴におっぱいが出来たようだ。、海晴は困って、男子トイレの中にずっと入り浸りだった。海晴は調子が悪いので、しばらく手洗いに行くと先生に言ったらしい。
「先生、調子が悪いので私も休ませてください」
 手を挙げて教室から出ると、男子トイレの中に入った。海晴のこもっているトイレの扉を魔法でこじ開ける。さすがにこの程度の呪文で失敗したりはしない。そこでは、海晴が困った表情をしながらも、胸を揉んで秘所をいたぶっていた。
「美咲ちゃん!?ここ、男子トイレだよ」
「海晴ちゃん、私、男になっちゃったの!」
 私は海晴にいきなり抱きついた。
「ど、どうしよう?」
 慌てているふりを私はする。海晴は混乱してしまったようだ。私がここにいるという事も、うやむやになってしまっている。
「海晴ちゃん、それにこれ、海晴ちゃんのものみたいだよ。海晴ちゃん、何かしたでしょ」
 私はペニスを指差した。
「ええっ、そ、そういえば、僕のものに似ているような気がするけど…」
「責任とってよ。それにそんな姿を見せられたら、もう我慢できない!」
 混乱している海晴に襲い掛かって、私は手篭めにしてしまった。事がすむと、私と海晴の持ち物は無事元の場所に戻ったようだ。
「初体験だったね」
「ううっ、何か違う」
 海晴は股間を押えながらうめいている。まだ余韻が残っているらしい。私だって秘所がジンジンと感じているけれど、あまり弱いところを海晴に見せられない。
「今日起きた事は二人だけの秘密だよ」
「わかってるよ」
「フフフ…」
 女の体を知って、海晴も少しは女心を理解できるようになるといいな。




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